■巨大なビジョンにさまざまな方向から角野の演奏を映す
Kアリーナを会場にした「CENTRAL STAGE」の2日目のトップバッターは2024年に世界デビューを果たしたピアニスト・角野隼斗。チャンネル登録者数147万人を超えるYouTuber・Cateen(かてぃん)としても知られる。まず、誰もが知るモーリス・ラヴェルのバレエ曲「ボレロ」を奏で始めた。巨大なビジョンにさまざまな方向から角野の演奏を映した映像が映り、徐々に演奏に熱がこもっていくのがありありと伝わってくる。角野がマイクを持って立ち上がり、自己紹介。「僕はクラシックのフィールドにいることが多い人間なので、どう盛り上がって良いかわからない人もいるかもしれませんが、僕もあまりわかってないので(笑)」と言うと客席から笑い声が上がった。「正解はないので、皆さん思い思いの方法で楽しんでもらえたらと思います。せっかくなんで最高に盛り上がっていきましょう!」。
「1曲目に演奏した『ボレロ』は自分が施したピアノアレンジ。CENTRALフェスにちなんでたまたまCメジャー(コード)の曲だったが、次もたまたまCメジャーの曲」と告げて、「きらきら星変奏曲」へ。「きらきら星」をモーツァルトがアレンジした「きらきら星変奏曲」にさらに自由な解釈を加え、音楽の楽しさを拡大してみせた。
自らが所属する6人組ツインリードヴォーカル・バンドPenthouseの浪岡真太郎と大島真帆を招き入れると、大島が「心の距離を近づけるために、皆さん立ってみましょう!もちろん皆さん自由に楽しんでください」と言って「一難」へ。浪岡と大島の美しいボーカリゼーションと角野の流麗なピアノのハーモニーにオーディエンスは酔いしれた。次の「恋に落ちたら」では客席から自然とハンドクラップが巻き起こった。
■角野が「実は僕たち大学の同級生」と語り、キタニとのコラボ2曲を披露
角野が「実はもうひとりコラボしたい人がいます。今日の「CENTRAL STAGE」のトリを飾るこの方です!」と言ってキタニタツヤを呼び込んだ。サプライズにオーディエンスは大いに沸いた。角野が「実は僕たち大学の同級生なんですけど、在学中はそんなに関りがなくて。でも、大学1年の新歓のとき会っていたことがさっき発覚しました」と明かした。新歓でキタニは角野に自分の曲をプレゼンしたそうで、角野は帰り道にニコニコ動画でキタニの曲をチェックしたという。キタニが「僕の曲を角野さんに選んでもらって編曲してもらった曲を2曲披露します」と言って、まずは高速で言葉が吐き出される「Moonthief」。時に椅子から腰を浮かし、熱っぽい演奏で繰り出される角野のピアノにキタニが熱いボーカルを乗せた。
ピアノでアレンジしたキタニの「ユーモア」でコラボを終えた角野は「ピアニスト単独でこういうステージにたつことはなかなかないと思うのでありがたいなと。皆さんのおかげです」と言った後、11月29日にここKアリーナで単独でピアノリサイタルを開催すると告げた。最後は、これまた誰もが知っているショパンの名曲「英雄ポロネーズ」を気迫がこもりつつも人懐っこい音色で魅せた。
■日本の漫画やアニメは世界に誇れるコンテンツです。そこから生まれた結束バンドだからこそ、こうやっていろんな場所で歌わせてもらえる
二番手は人気アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』の作中に登場する結束バンドだ。The Stone Rosesの「Love Spreads」が流れた後、90年代オルタナティブロック直系のパワフルなバンドアンサンブルが鳴らされ、結束バンドのボーカル・喜多郁代を演じる声優、長谷川育美が姿を見せた。「忘れてやらない」「ラブソングが歌えない」を続けて歌ったあと、「結束バンドのライブが『忘れてやらない』みたいな明るい曲で始まるのは今回が初めて。応援してくださる方もびっくりしたのではないかと思います。2曲目の『ラブソングが歌えない』は23年5月のワンマンライブ『恒星』で披露して以来の2度目の披露になります」と言って、レアなセットリストであることを明かした。
長谷川が「結束バンドのライブはこんな風に乗らなきゃいけないっていうルールはないので、周りの人に迷惑をかけない範囲内で自由に楽しんでもらえればと思います!」と宣言して、「ドッペルゲンガー」へ。激しいギターリフが貫くヘビーなアンサンブルでオーディエンスを揺らした。
「CENTRALフェスには“日本の響きを世界へ”っていうコンセプトがあるらしいんです。日本の漫画やアニメは世界に誇れるコンテンツですし、そこから生まれた結束バンドだからこそ、こうやっていろんな場所で歌わせてもらえることで、音楽だけでなく日本のアニメは素晴らしいんだぞっていうことや、いろんな可能性が広がっていることを世界中の人に知ってもらえるんじゃないかと思って歌わせていただいてます!」と言った長谷川。「星座になれたら」でウキウキするような四つ打ちのビートに合わせて笑顔で手を左右に振ると、たくさんのオーディエンスも手を揺らし始めた。
後半には結束バンドのギタリスト・後藤ひとりを演じる声優、青山吉能が登場し、後藤ひとり歌唱として初のオリジナル曲である「夢を束ねて」をエモーショナルに歌い上げた。左手を胸に当て、顔を歪ませて、思いを目いっぱいオーディエンスに届けた。青山は自己紹介した後、「普段MCをしないので緊張します」と初々しいムードで話し、場内を一気に和ませた。「私たち結束バンドは、とある大先輩の恩恵をうけて発達していったアーティストです。ASIAN KUNG-FU GENERATIONさんとは切っても切り離せないご縁があるのですが、今まで結束バンドとして歌い続けてきた音楽とこれまで歌い継がれてきた音楽とが交差してひとつの円になっています。でも、CENTRALフェスのイメージは四角。なので今日はみんなと一緒に四角が作れたらいいなと思ってます」と言って、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの「転がる岩、君に朝が降る」を愛とリスペクトを込めて歌った。
■「ぐちゃぐちゃしてて統一感がないのがJポップ。それを誇りに思って俺は演奏する」と語ったキタニタツヤ
トリは先ほど角野のステージにも登場したキタニタツヤだ。気合が漲った表情を浮かべ、日本を代表するアニメ『BLEACH 千年血戦篇』のオープニング主題歌であり、エッジーなギターロック曲「スカー」からライブをスタート。続いては、『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 京都動乱』第1クールのオープニングテーマ曲としてなとりとコラボした「いらないもの」。日本のアニメとJポップが掛け合わさることで生まれる伸びやかな可能性を早くも提示してみせた。
「初めて開催されるフェスの2日目のトリを務めさせていただき、とても光栄に思ってるんですが責任重大です!頑張ります!」と言って顔をほころばせたキタニ。“日本の響きを世界へ”という本フェスのコンセプトに触れ、「ひと昔前だったら、日本の音楽を海外に聞いてもらおうと思うと、形を変えて持っていこうという風潮があって、『なんだかなあ』と思っていました。今日の角野隼人、結束バンド、キタニタツヤっていうラインナップを見て『これこれ!このめちゃくちゃ感だよ』と思いました。ぐちゃぐちゃしてて統一感がないのがJポップ。それを誇りに思って俺は演奏するし、来週再来週には台北とクアラルンプールでもそういう気持ちで演奏させてもらおうと思ってます!」と、CENTRALフェスの海外公演に向けての気合も入れたうえで、ファンク調の「人間みたいね」を奏でた。
轟音ギターからアニメ『平穏世代の韋駄天達』のオープニング主題歌「聖者の行進」へ。サビで一気にダイナミックな音像に展開。ハンドクラップが巻き起こる中、ハンドマイクでステージの上手から下手へと歩きながら歌い、場内の温度をどんどん上げていった。シリアスでセンチメンタルな「私が明日死ぬなら」ではマイクを握って目をつぶって熱唱。最後は指切りのポーズを高く掲げた。
■「青のすみか」では青いレーザーが舞い、拳を突き上げるたくさんのオーディエンスの姿を照らした
「僕のライブは撮影とか録音とかOKなので思い出を持ち帰ってください。次は撮りがいのある、友達に自慢できるであろう曲をやろうと思うのでよろしくお願いします」と言って、TVアニメ『呪術廻戦』「懐玉・玉折」の主題歌であり、キタニタツヤの名前を日本のみならず、世界に拡散した「青のすみか」へ。サビでは青いレーザーが舞い、拳を突き上げるたくさんのオーディエンスの姿を照らした。
おどろおどろしくコミカルなイントロからアニメ『戦隊大失格』のオープニングテーマの「次回予告」へ。祭囃子のようなテイストも混じっており、まさにJポップにしか持ちえない音像の楽曲だ。ラスト曲は、昨年5月のキタニがインターネットに楽曲を投稿して10年目の記念日にリリースされた「ずうっといっしょ!」。軽快なドラムロールとキタニのシャープなギターリフが合わさり、テンションを高めていった。日本のカルチャーを世界に響かせていこうという気概に満ちた、堂々たるトリのパフォーマンスだった。
TEXT BY 小松香里
■セットリスト:CENTRAL STAGE DAY 2
『CENTRAL MUSIC & ENTERTAINMENT FESTIVAL 2025』
2025年4月5日(土) 神奈川県・Kアリーナ横浜
CENTRAL STAGE DAY 2
◎角野隼斗
1.ボレロ
2.きらきら星変奏曲
3.胎動
4.追憶
5.千のナイフ
6.一難(Undertaker)(W/penthouse)
4.恋に落ちたら(W/penthouse)
6.Moonthief (W/キタニタツヤ)
7.ユーモア(W/キタニタツヤ)
8.英雄ポロネーズ
◎結束バンド
1.CENTRALのテーマ
2.忘れてやらない
3.ラブソングが歌えない
4.ドッペルゲンガー
5.あのバンド
6.星座になれたら
7.milky way
8.夢を束ねて
9.転がる岩、君に朝が降る
10.今、僕、アンダーグラウンドから
11.青春コンプレックス
◎キタニタツヤ
1.スカー
2.いらないもの
3.悪魔の踊り方
4.Rapport
5.人間みたいね
6.聖者の行進
7.化け猫
8.私が明日死ぬなら
9.ユーモア
10.ウィスパー
11.青のすみか
12.次回予告
13.ずうっといっしょ!
■イベント情報
『CENTRAL MUSIC & ENTERTAINMENT FESTIVAL 2025』
04/04(金)神奈川・Kアリーナ横浜、臨港パーク
04/05(土)神奈川・Kアリーナ横浜、横浜赤レンガ倉庫 赤レンガパーク特設会場、KT Zepp Yokohama、臨港パーク
04/06(日)神奈川・Kアリーナ横浜、横浜赤レンガ倉庫 赤レンガパーク特設会場、KT Zepp Yokohama、臨港パーク
『CENTRAL MUSIC & ENTERTAINMENT FESTIVAL 2025 in Taipei』
04/19(土)Zepp New Taipei
『CENTRAL MUSIC & ENTERTAINMENT FESTIVAL 2025 in Kuala Lumpur』
04/26(土)Zepp Kuala Lumpur
『CENTRAL MUSIC & ENTERTAINMENT FESTIVAL 2025』公式サイト
https://central-fest.com/