4月4日・5日・6日の3日間行われた、新都市型フェス『CENTRAL MUSIC & ENTERTAINMENT FESTIVAL』(以下『CENTRAL』)。「日本の響きを世界へ」を掲げた本イベントにおいて、リアルとバーチャルの垣根を越え、自由自在に最新型のポップカルチャーを体現するアーティスト全15組が集結した“VIVAL”をレポートする。
■第1部はオンライン配信で開催!10アーティストが登場
第1部のトップバッターをつとめたのは、天籠りのん(あまこも りのん)。登場するや否や、曲調が目まぐるしく展開する自身初のオリジナル曲「虚無虚無です。」を炸裂し、キャッチーなメロディと振り付けがクセになる新曲「メメメのメ」で一気に会場のボルテージを上げた。
NÄO(なお)は姿を見せたと同時に「midnight parade」を歌うと一気に夜の世界へと誘う。自分の心に自問自答するような「ジレンマ」では、刹那的な情景を描いていく。
春の風を運ぶように甘葛すもあ(あまづら すもあ)は「ショコラ・ザ・バス」でピンクでキュートな世界を作ると、「冠(short ver.)」から「Carol」で心地よさをもたらす。
月白 累(げっぱく るい)は、力強く生命力を感じるピアノと歌の「絶対零度の世界から」、心がギュッと締め付けられるような「メーデー」で感傷と希望を表現。
IMI(いみ)は緊張気味なMCとは反対に、堂々とした歌いっぷりで、ストイックなビートとラップの「Bad girl」、ダークさと美しさのコントラストが印象的な「DRIVE」で表現力・歌唱力の高さを見せつけた。
続いて、常勝無敗ぐぬぬ(まけなし ぐぬぬ)の「黙ってらんない」は、今の心境を表すかのように快活に歌っていて実に痛快だった。その後「シャンパン」「恩反し」と音楽性の豊かさを提示。
CULUA(かるあ)はアッパーなダンスチューン「ハレバレ」で勢いづけたかと思ったら、「ベビ・デビ」でさらに観るものに高揚感を与え、まさに圧巻のステージだった。
AKAGIMI(あかぎみ)は般若の面が飾られたインパクトの強いステージに現れ、和を感じる「序鬼」に始まり、「紅雨」で唯一無二の宴へと誘い、「死花」「裏裏」で危険なムードにそそられる乱舞の空間を創出した。
奏みみ(かなで みみ)は「ナニサマ?」の第一声からパワフルな歌声で圧倒。「Crazy Crew」では彼女の歌に合わせて無数のペンライトが上がり、“一体感”という絶景を生成した。
トリを飾ったのは白玖ウタノ(しらたま うたの)。のっけから「未来証明」で惚れ惚れするようなステージングで魅了し、物語性の高い「主人公になれるはずのストーリー」から最後は新曲「BREAK OUT DREAMER」を初披露して特別感の高いライブで第1部を締めくくった。
■七海うらら「命を懸けて生き様を歌います」第2部一番手を飾る
第2部の一番手をつとめたのは、パラレルシンガー・七海うらら(ななみ うらら)。ステージに姿を見せると、「私を知らなくても大丈夫です、誰ひとりも置いていきません!」と発して、2024年11月にリリースした1stフルアルバムのタイトル曲「Kiss and Cry」で幕を開けた。
同曲名は、フィギュアスケートで滑走が終わったあとに点数を待つ場所のことを指すのだが、かつて七海は浅田姉妹に憧れ、実妹と一緒にスケートに励んでいた。しかし、思うような結果を出せずに七海はリンクを降りるが、妹はプロとして活躍。全国のアリーナで華麗に舞う妹の姿を見て、自分もアーティストとして叶えられることがあるのではないか? という思いを形にしたのが「Kiss and Cry」で、大舞台の一発目に披露したことに、特別なドラマを感じた。
「七海うららは命を懸けて生き様を歌います」と宣言した後、「Trigger」「Love and Hate」と力強いナンバーを投下し、会場の熱気を高めていく。七海は以前にHBOC(遺伝性乳がん卵巣がん)を患い、寝たきりで過ごしていた経験がある。不安や孤独を知っている彼女だからこそ、ここまで生き様を音楽に昇華できているのだろうと引き込まれていく。
光に満ちた希望の歌、東日本女子駅伝大会応援ソング「Seventh Heaven」では、会場を感動的なムードに染め上げる。観客が七海の歌に心震わすなか、最後に選んだのは彼女にとって初のバラード曲「茜光」だ。その歌は優しくて、繊細で、温かい。それらをまとめて“美しい”と表現したくなるような、素晴らしいステージングであった。
■ClariS新体制で、ライブハウス初パフォーマンス
“VIVAL”第2部2組目は、今年10月にデビュー15周年を迎えるClariS(くらりす)が登場。
初期メンバーのクララと新メンバーのエリー、アンナの3人でライブハウスに立つのはこの日が初めて。そんな記念すべきステージは、TVアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』オープニング曲であり、彼女たちの存在を世間に知らしめた代表曲「コネクト」で序盤から熱狂を生んだ。
2曲目には勇気を持って一歩を踏み出すことを表現した歌詞とキラキラしたポップなサウンドが春にピッタリな「STEP」、美しい旋律と疾走感のあるリズム、繊細なニュアンスで想いを伝える3人の歌声が重なる「SHIORI」、大事な“君”との思い出を歌った抒情的な歌詞と思わず走り出したくなるようなサウンドの「CLICK」(TVアニメ『ニセコイ』オープニングテーマ)、海外のリスナーを含めて絶大な人気を誇るライブの定番曲「ヒトリゴト」と重ねていく。
新章を進むClariSは、最後に“ClariS史上最もエモーショナル”だという新曲「Trigger」を披露。クララが「皆さんの心を射抜けるパフォーマンスになればうれしい」と言って、3人はエネルギッシュに歌い踊った。彼女たちは明るくてかわいい曲や、爽やかな曲を歌う印象が強いが、そのイメージをひっくり返すアグレッシブさに魅了された。
この日、冒頭から彼女たちの軌跡を見せるような楽曲を届けつつ、最後はさらなる可能性を感じさせる最新曲を配置したことで、3人の未来により期待が膨らんだ。
■ヰ世界情緒が紡ぐ優しい世界で会場を包み込む
バーチャルダークシンガーのヰ世界情緒(いせかいじょうちょ)は、2024年3月リリースの2ndフルアルバム『色彩』リード曲の「描き続けた君へ」を披露。“この世界が愛しいのに息が詰まるよ/波打つ悲喜の緊迫感を/包んでくれた無限のアニマ”というフレーズは、彼女がこの世界で抱き続けてきた愛と葛藤を表しているようで、思わず胸が熱くなる。
次曲「果てなきソラへ」でひと言ひと言を噛み締める彼女から発せられる歌が心に沁みてきて、これが歌心なのだと再確認した。ここで和やかに元気よく挨拶。歌っているときと違って、MCはほどよく力が抜けていて、そのギャップにも惹かれる。
ヰ世界情緒にしか生み出せない優しい世界に会場を包み込むと、3曲目は3月25日にリリースした新曲「みらいのかたち」を歌唱。ヰ世界情緒が自身の歩んできた人生と向き合い、“私”は何者なのかを表出しているように思える。
そこから「ヰ世界の宝石譚」を経て、「とっても名残惜しいんですけど、次が最後の曲になってしまいました」と告げて「シリウスの心臓」へ。出だしの“歌を歌うのは寂しいから/目を閉じるのは聞きたいから”から一気に心を掴まれる。彼女のステージはここがライブハウスであることを忘れ、まるでヰ世界情緒という宇宙にいるみたいだった。
■Reolの扇動で会場全体がダンスフロア化!音の渦に酔いしれる
『CENTRAL』開催前日、Reol(れをる)はX(旧Twitter)で「曲作りは一瞬を残すためにやる ライヴは一瞬をできるだけ特別な一瞬にするためにやる 残るから永遠になるものと、過ぎ去るから永遠になるもの」と思いを明かしている。
曲作りは一瞬を残すためにやる ライヴは一瞬をできるだけ特別な一瞬にするためにやる 残るから永遠になるものと、過ぎ去るから永遠になるもの
明日は特別な一瞬を増やすためにステージにいます、観にきてね!宜🥷✨ #VIVAL pic.twitter.com/zrWT6alpyy
— Reol れをる (@RRReol) April 4, 2025
その言葉の通り、彼女のステージには、あの日あの場にしか生まれない特別な一瞬が散りばめられていた。
Reolはダンサーふたりとステージに姿を現すと「第六感」を投下。これはストリーミング1億再生超えをした彼女の代表曲のひとつだ。当然といえば当然だが、楽曲というのはメロディも歌詞も過去に書かれたものなので、時間が経てば曲の鮮度が落ちることもある。ただ、「第六感」の“今が一番若いの”というフレーズ通り、今この瞬間を大切に全身全霊を注ぐReolは“この歌唱がいちばん輝いている”を更新しているのが素晴らしい。
その後も勢いを緩めるどころか、「飛べるよ横浜! もっと飛べるよ!」「めっちゃ良いじゃん!」と積極的に扇動して「煩悩遊戯」「十中八九」で観客の興奮をさらに高めていく。「みんなと歌いたいと思うんですけど、一緒に歌えますか?」と声出しをレクチャーして「Boy」へ。「シンカロン」「ヒビカセ」と何度も沸点を更新し、ラストナンバーは「劣等上等」だ。会場全体がダンスフロアと化して、みんなが恍惚の表情を浮かべて音の渦に酔いしれた。
■HIMEHINA「怒涛の、怒涛の、怒涛のライブをしていきます!」
“VIVAL”トリを任されたのは、田中ヒメと鈴木ヒナからなるVtuberユニット・HIMEHINA(ひめひな)。大きな拍手に迎えられて、クールな雰囲気を放つダンスナンバー「LADY CRAZY」を届けた。
田中が「会場の熱気すごいねー! なんと我々が最後ということで…ここから怒涛の、怒涛の、怒涛のライブをしていきます!」と宣言すると、鈴木が「イエーイ! 中華街行ったかー!?」と面白い投げかけをした。
ふたりらしい和やかな空気にしたところで、今年3月2月にリリースして大きな反響を呼んでいる「キスキツネ」をパフォーマンスすると、観客も一緒になって全身全霊のダンス。序盤から一体感を作っていくのもすごかったが、そこからの畳み掛けもすさまじかった。
「マザードラッグ」「Hello, Hologram」「アダムとマダム」「絶望を翔る恒星」のショートアレンジを連投し、曲を重ねるごとに歓声が大きくなっていく。最高潮の盛り上がりを見せるなか、言葉遊びとリズムが心地いい「相思相愛リフレクション」で熱の高さを塗り替え、気づけばライブは終盤を迎えていた。
そんなタイミングでHIMEHINA初のオリジナル曲「ヒトガタ」となれば、観ている側もそれに応えないわけがない。完璧とも言えるセットリストの最後に待っていたのは、彼女たちの代名詞とも言える「愛包ダンスホール」だ。この日、ふたりは観客全員の心に特大の花火を打ち上げて、有終の美を飾った。
TEXT BY 真貝聡
■セットリスト:VIVAL 第1部(オンライン配信)
『CENTRAL MUSIC & ENTERTAINMENT FESTIVAL 2025』
2025年4月5日(土)VIVAL 第1部
天籠りのん
01.虚無虚無です。
02.メメメのメ
NÄO
01.midnight parade
02.ジレンマ
甘葛すもあ
01.ショコラ・ザ・バス
02.冠(short ver.)
03.Carol
月白 累
01.絶対零度の世界から
02.メーデー
IMI
01.Bad girl
02.DRIVE
常勝無敗ぐぬぬ
01.黙ってらんない
02.シャンパン
03.恩反し
CULUA
01.ハレバレ
02.ベビ・デビ
AKAGIMI
01.序鬼
02.紅雨
03.死花
04.裏裏
奏みみ
01.ナニサマ?
02.Crazy Crew
白玖ウタノ
01.未来証明
02.主人公になれるはずのストーリー
03.BREAK OUT DREAMER
■セットリスト:VIVAL 第2部(KT Zepp Yokohama)
『CENTRAL MUSIC & ENTERTAINMENT FESTIVAL 2025』
2025年4月5日(土)神奈川・KT Zepp Yokohama
VIVAL 第2部
七海うらら
01.Kiss and Cry
02.Trigger
03.Love and Hate
04.Seventh Heaven
05.茜光
ClariS
01.コネクト
02.STEP
03.SHIORI
04.CLICK
05.ヒトリゴト
06.Trigger(新曲)
ヰ世界情緒
01.描き続けた君へ
02.果てなきソラへ
03.みらいのかたち
04.ヰ世界の宝石譚
05.シリウスの心臓
Reol
01.第六感
02.煩悩遊戯
03.十中八九
04.Boy
05.シンカロン
06.ヒビカセ
07.劣等上等
HIMEHANA
01.Introduction
02.LADY CRAZY
03.キスキツネ
04.マザードラッグ(Short)
05.Hello, Hologram(Short)
06.アダムとマダム(Short)
07.絶望を翔る恒星(Short)
08.相思相愛リフレクション
09.WWW(Short)
10.ヒトガタ
11.愛包ダンスホール
■イベント情報
『CENTRAL MUSIC & ENTERTAINMENT FESTIVAL 2025』
04/04(金)神奈川・Kアリーナ横浜、臨港パーク
04/05(土)神奈川・Kアリーナ横浜、横浜赤レンガ倉庫 赤レンガパーク特設会場、KT Zepp Yokohama、臨港パーク
04/06(日)神奈川・Kアリーナ横浜、横浜赤レンガ倉庫 赤レンガパーク特設会場、KT Zepp Yokohama、臨港パーク
『CENTRAL MUSIC & ENTERTAINMENT FESTIVAL 2025 in Taipei』
04/19(土)Zepp New Taipei
『CENTRAL MUSIC & ENTERTAINMENT FESTIVAL 2025 in Kuala Lumpur』
04/26(土)Zepp Kuala Lumpur
『CENTRAL MUSIC & ENTERTAINMENT FESTIVAL 2025』公式サイト
https://central-fest.com/