■「音楽ってこんなに楽しくて、ルールがなくて、自分がやりたいことをこんなに自由に表現できるものなんだということを、こどもたちが感じてくれたら」(清塚信也)
ソニー音楽財団とサントリー芸術財団がタッグを組んで届ける世界最大級のこどもを対象にしたクラシック音楽の祭典『こども音楽フェスティバル 2025』が、5月3日〜6日にサントリーホール(東京都港区)およびアーク・カラヤン広場にて開催される。
チケット販売に先立ち、記者発表が2月5日にサントリーホール ブルーローズ(小ホール)にて実施された。
『こども音楽フェスティバル 2025』は2022年に第1回が開催され、来場者約3万人、配信視聴約10万とクラシック音楽のイベントでは異例の動員数を叩き出した大人気イベント。“こころ はずむ ひびきあう”という言葉とともに音楽に触れる感動と、音楽を分かち合う歓びをこどもたちに伝えていく。
記者発表では、公演内容、出演者、周辺施設での企画、配信情報などフェスティバルの全貌を発表し、出演者の中から公式アンバサダーを務めるピアニストの清塚信也、YouTubeチャンネル登録者140万人突破、世界での活躍も目覚ましい角野隼斗、指揮・オルガン・作曲家・プロデューサーなど多彩な活動を展開するマルチ音楽家の鈴木優人、そしてキャスター・タレントとして活躍し、5歳よりヴァイオリン経験のあるフリーアナウンサーの高見侑里(司会)が登壇した。
■イベントレポート
司会を務める高見侑里の呼び込みで公式アンバサダーの清塚信也が登場するや、会場がぱっと明るい空気に。この会見はYouTubeでのライブ配信も行なわれ、多くの音楽ファンが注目するなかでのラインナップ発表となった。
2022年に開催された第1回の『こども音楽フェスティバル』でも、配信番組で息のぴったり合ったトークを繰り広げていた清塚と高見。第1回のフェスティバルの写真を見ながら思い出を語り合う。清塚はどの公演も印象深かったとしながらも、とくにピアニストの横山幸雄がツェルニーの練習曲を演奏した公演に感銘を受けたとのこと。超一流の音楽家が、こどもが練習する曲を聴かせてくれるのも、このフェスティバルならではだ。
第2回を迎える今回はさらにパワーアップ。5月3日から6日までの4日間で全14公演が、サントリーホールの大ホールとブルーローズ(小ホール)で予定される。さらにアーク・カラヤン広場ではミニステージやイベント、展示なども盛りだくさん。だれもが楽しめるインクルーシブなフェスティバルを目指して、最新のテクノロジーを使った取り組みも行なわれる。
そして、ここで清塚から重大発表! 前回に続き今回も、無料ライブ配信番組を放送するとのこと。朝から夕方まで、ほぼすべての公演を配信するほか(大ホールの一部公演は有料)、配信総合パーソナリティの清塚と、パートナー・パーソナリティの高見が楽しいトークでフェスティバルを盛り上げる。当日会場に行けない人も気軽にアクセスできる「こども音楽フェスティバル2025 オンライン!」にも注目だ。
さらに、ゲストには人気お笑いコンビのチョコレートプラネットが出演することが発表された。とっておきの音楽ネタで、清塚との絡みも期待が高まる。
続いて清塚がピアノに向かい、ガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」を演奏。ピアノとオーケストラのための作品だが、今回は即興をふんだんに盛り込んだ清塚オリジナルのソロで。軽妙洒脱なジャズのテイストではじまり、途中から、まるでベートーヴェンやラフマニノフのように情熱的な展開をしていくさまは、さすがヴィルトゥオーゾ・ピアニスト。ジャンルにとらわれない幅広い音楽性と、クラシックの表現を深く掘り下げていく姿勢、どちらも兼ね備えた音楽家であることが伝わってきた。そしてなにより、とても楽しそうに弾いている姿が印象的だった。
『こども音楽フェスティバル 2025』では、角野隼斗がコンサート・プログラマーを、鈴木優人がミュージック・パートナーを務めることでも話題を集めそうだ。ここで角野と鈴木が登場し、日本のクラシック界の宝とも言うべき3人がステージに揃った様子はまさに圧巻! トークでは、まず自身が出演する公演について、それぞれ語った。
角野隼斗「コンチェルト・ワンダーランド」
ソリストとオーケストラが舞台上で共演するコンチェルト(協奏曲)と呼ばれるジャンルがあるのですが、今回はピアノ、ヴァイオリン、オーボエのコンチェルトを一気に楽しめる、まさにワンダーランドのようなコンサートになっています。
角野隼斗「ピアノ+」
ピアノを学んでいるお子さんはたくさんいらっしゃいますが、ピアノ以外の楽器に目が向くことって意外と少ないのではないかと思います。このコンサートではピアノだけでなく、オーケストラの楽器にも注目がいくようにプログラミングしました。ピアノ・ソロ、弦楽アンサンブル、管楽アンサンブル、そしてオーケストラという構成でお楽しみいただけましたらと思います。
鈴木優人「バロック・ライブ」
文字通り“ライブ”なコンサートということで、僕も角野も即興演奏するのを活かしたプログラムになっています。バロック音楽というと博物館に並んでいるような古めかしいもの、バッハは堅苦しい音楽といったイメージがありますが、そういったイメージを覆すようなコンサートにできたらと。
たとえば、レッスンでよく取り上げられるバッハの「インヴェンションとシンフォニア」を、チェンバロで角野くんが弾いてくれたりするかも!? ホールのパイプオルガンも使いたいと計画しています。
即興の文化もバロックからはじまったもの。こどもの純粋な心でどんどん即興するようになってくれたらいいなと思います。
清塚信也「クロージング・コンサート」
鈴木優人とは親友で、「まさぴー」「きよぴー」と呼び合う仲。今回はオーケストラをまじえて一緒に音楽ができるということで、とても楽しみにしています。
次に、高見が客の声を代表して質問を投げかけた。「こどもたちに音楽を届けるにあたって一番重要だと思うことは?」という問いに、3人の音楽家が真剣に答えた。
鈴木優人:私にとってこどもは、本音で、心の底から素直に音楽に向かってくれる存在で、それは有り難くもあり、怖いところでもあったりするのですが、そういった正直なお客さんに向けて、こちらもこども向けだから簡単にしたり、レベルを下げるのではなく、いつもよりも本気の姿と真剣な音楽をお届けできるよう心がけています。
角野隼斗:なにより自分が楽しむことではないでしょうか。お客さんに楽しんでもらうことをやるだけではなく、自分はこれだけこの音楽を面白いと思っているということを、どうしたらこどもたちに伝えられるかと考えたときに、自分自身がいちばん楽しんでいる様子を見せることが大事ではないかと思うんです。そして、こういう楽しみ方だけではなく、こんな楽しみ方もある、こんなことを知ったらもっと楽しめるということを伝えていきたいですね。
清塚信也:超一流の音楽家が、こどもやその親御さんに向けて一流の演奏を楽しくお届けする姿を通して、「音楽ってルールがあるわけじゃないんだ」というのが伝わると思うんですね。クラシックは伝統を守ることがひとつの美学ではあるのですが、それとともに、古いからこそ新たな解釈をしたり、現代の音楽家の感性のフィルターを通してお伝えすることもできる芸術です。音楽ってこんなに楽しくて、ルールがなくて、自分がやりたいことをこんなに自由に表現できるものなんだということを、こどもたちが感じてくれたらいいなと思います。
そして最後は、それぞれのこども時代の写真を見ながら、思い出を語り合うコーナー。幼稚園や小学校の子が楽器を演奏する写真が映し出されるや、すぐに誰かわかった。
高見侑里:こども時代はピアノとヴァイオリンを習っていたのですが、これは10歳のころのヴァイオリンの発表会で、父がピアノを弾いて、はじめて一緒に舞台にたったときの写真です。バッハのメヌエットを弾いたのですが、父はとても緊張していましたね。
角野隼斗:小学校1年生ぐらいの頃だったと思うのですが、コンクールのときの写真で、なにを弾いたかまでは忘れてしまいました。この写真では姿勢よく弾いていますが、昔の僕の弾き姿を見ると、ずっと首を傾げているんですよ。
鈴木優人:2歳になる前ぐらい、小型のチェンバロのスピネットという楽器を弾いている写真です。当時はオランダに住んでいて、家が狭くてピアノが置けず、スピネットを置いていたんですね。
清塚信也:いかにも町のピアノの発表会という写真ですね。首と靴下のリボンがアクセント。この頃すでに外見から入っていたんですね。
それにしても、こうして皆の写真を見ると、すでにこども時代から今につながるルーツがしっかりあるんですね。そういう意味でも、こういったフェスにお子さんを連れてきて、音楽を体験させることには意味があるのだと思います。
日ごろから仲のよい音楽家同士のアットホームなトークは、清塚のツッコミや、それに対する角野の切り返し、鈴木のあたたかな雰囲気も相まって、まるで華やかなライブセッションのよう。続きは『こども音楽フェスティバル 2025』で!
■こども音楽フェスティバル 2025
「こども音楽フェスティバル」は、次世代の音楽文化発展を目指し、こども向けコンサートで多数の実績を持つソニー音楽財団とサントリー芸術財団サントリーホールがタッグを組んでこどもたちに贈る、世界最大級の本格的なクラシック音楽の祭典。0才の乳児から未就学児、小・中・高校生や 10代の青少年まで、こどもたちのそれぞれの年齢に合わせてプログラミングされたコンサートなどを同時に多数開催し、クラシック音楽を一日中余すところなく楽しめる世界でも類を見ない規模のイベント。
今年のゴールデンウィークに開催される『こども音楽フェスティバル 2025』は、ホール企画が全14公演、カラヤン広場では多数のミニステージ企画やワークショップを開催する。出演者は、清塚信也(ピアニスト)、角野隼斗(ピアニスト)、鈴木優人(指揮者、オルガニスト)をはじめとした国内外で活躍するアーティストが大集結。
そのほか、お笑いコンビのチョコレートプラネットやNHKEテレ『おかあといっしょ』第12代体操のお兄さんを務めた福尾誠、子役としてドラマや映画、ミュージカルで活躍中の池村碧彩、YouTubeで「ちくわ笛」の超絶技巧パーフォーマンスが話題のプロ・フルート奏者、多久潤一朗、キャスター・タレントとして活躍中の高見侑里などもフェスティバルを盛り上げる。
PHOTO BY (C)池上直哉 / SUNTORY HALL
イベント情報
『こども音楽フェスティバル 2025』
05/03(土・祝)~05/06(火・休)東京・サントリーホールおよびその周辺
出演:清塚信也、角野隼斗、鈴木優人、チョコレートプラネット、福尾誠、多久潤一朗、池村碧彩、高見侑里ほか
イベント公式サイト
https://www.kofes.jp/