■「今年は詰め込み過ぎて、充実して、ちょっと水分カラカラで。水分が逃げていった感じの年でした」(のん)
映画『私にふさわしいホテル』の公開記念舞台挨拶が12月28日、東京・新宿ピカデリー スクリーン1で行われ、のん、田中圭、滝藤賢一、若村麻由美、そして堤幸彦監督が登壇した。
映画上映後、大勢の観客が集まった会場内にやってきた堤監督とキャスト陣。堤監督も、実際に映画を鑑賞した観客を前にし、「熱気が違いますね。温かい力をいただいた気がします。日々つらいことがありますが、そういうことを忘れて楽しんでいただけたらいいかなと。もし面白いと思ったらたくさんの人に薦めてください」と感慨深い様子であいさつ。
主演ののんも「撮影はすごく楽しかったです。加代子を演じて、普段言えないような暴言を吐いたり、担架を切ったりとか、(滝藤演じる)東十条先生と首を絞め合ったり、(田中演じる)遠藤先輩とハラハラするシーンなどもあって楽しかった」と念願だった“悪い役”を思いっきり楽しんだことを振り返った。
遠藤を演じるうえでの難しさについて田中は「遠藤は加代子とは敵が味方か、それと何を考えているのかわからないミステリアスさがあって。でもミステリアスといえば僕も常日頃言われているので、自然にできました」と述べ、「違いましたっけ?」照れながら答えた。
そしてこれまでいろいろな作品でタッグを組んできた田中と堤監督は、今回は久々のタッグだったという。「最初に会ったときは、女性キャストのオーディションがあって。実際に出演もしている田中圭さんにもオーディションの相手役として付き合ってもらったことがありました」と異例の超豪華なオーディションだったことを明かした堤監督は「何十人もいるので、何回も同じことをやっていて、だんだん僕が変えたくなっちゃっちゃって。だから次は渡部篤郎でやってみようかとか。いろんなオーダーをすると、全部そのとおりに答えてくれるという。そこからは正確無比な芝居をしてくれる人という認識をしております」と語るなど、田中圭に全幅の信頼を寄せている様子。
そこで田中が「でも今考えるとすごいですよね。なんで呼ばれたんですか?」と首をかしげると、「なんでですかね? 普通は呼ばないですよね」と笑う堤監督。さらに田中が「しかも女性の役のオーディションのはずなのに、俺のものまねでみんなケラケラ笑っているから。大丈夫なのかなと思っていました」と付け加えて、会場を沸かせた。堤監督だからこそスペシャルなオーディションが実現したようだ。
のん自身は、加代子が東十条の家に乗り込むシーンがお気に入りだったという。「あのときのエピソードはいっぱいあります」と切り出した若村は、「滝藤さんとは無名塾で一緒で。26~7年ぶりにお会いしたので本当に楽しかった」と述懐。さらにそのシーンで着物を着ていたのんを「本当に白い着物が似合う。思わずきれいねと言ってしまったくらい」と若村は称賛した。
ちなみにその着物は、劇中では約500万円の着物という設定になっていたが、実際の着物の値段は800万円の着物だったと明かしたのんは「その着物でお鍋を食べないといけなかったんで、すごく怖かった。1回、しょうゆがこっちに倒れそうになったことがあったんですが、危機一髪で回避しました」と笑いながら振り返った。
そんな監督とキャスト陣に、2024年を振り返ってもらうことに。まずはのんが「今年は詰め込み過ぎて、充実して、ちょっと水分カラカラで。水分が逃げていった感じの年でした」と明かして会場を笑わせた。
さらに田中が「振り返ると、いろいろやらせてもらったなと思いますが、全部今年じゃないんじゃないかと思うくらい記憶がなくて。今年は何をやったっけとすぐに出てこないんですが…よく考えると今年はあれもあった、これもあったという感じで、だから充実した年でした」と続けると、滝藤も「僕はのんびりゆっくりやれました。充実した年で満たされましたね」とコメント。
若村は「わたしはやはり元日の震災から始まり、いろいろな思いを抱えながらの1年でした。能登には無名塾の能登演劇堂もあるので、能登の支援をしていましたし、お仕事も大変充実していました。ある意味めまぐるしく、何が一番大切なのかを考える年でもありました。結論としては今を存分に味わうということでした」とコメント。
そして堤監督が「今年というよりは、来年の11月にわたしは70になるんです。ただ70からは、この作品を皮切りに自分の思いのたけをぶつけていこうと、もっと暴れていこうと思います」と決意を語った。
そしてそのことを踏まえて、登壇者たちも2025年の抱負を発表。まずはのんが「2025年はたくさん水分をとって、渇きを潤していきたい。そしてこの映画をたくさんの方に観てもらいたいなと思うので、やはり年末年始にこの映画を観ると御利益があるんじゃないかと思うので、その御利益が広がってほしいなと思います」と意気込むと、田中も「やはり日々、笑っている方が絶対に楽しいんで。日々笑えるように、僕もたくさん水をとって潤っていきたいなと思います」とコメント。
さらに滝藤が「今年は家族で旅行にいけなかったので、来年こそは行きたいです。子どもが喜ぶような室内プールとか、バイキングがあるようなホテルだったらいいですね」と家族思いな一面を見せると、若村も「今年は年始に“笑顔”ということを目標にしていたんですが、来年の目標といえばひとつしかなくて。“よくかむこと”。そしゃくして、食べ物に感謝していただくことを心がけたいと思います」と笑顔。そして最後に監督が「来年は70になるので、よく噛んで、水を飲みたいと思いました」と締めくくって会場を沸かせた。
劇中ではのん演じる加代子が、滝藤演じる東十条の前でシャンパンを手に“文豪コール”を行うシーンがあったが、この日はその“文豪コール”を生披露することに。若村のマイクフォローのもと、シャンパンを手にしたのんは、「逍遥(しょうよう)、四迷(しめい)に鴎外(おうがい)、露伴(ろはん)~」といった具合に、名だたる文豪たちの名前を次々と連呼すると、最後に「一気! 一気! 一気!」とたたみかけて会場を大いに盛り上げた。
その様子に「一気に居酒屋になりましたね」と笑った堤監督。このコールを一気にそらんじてみせたのんも「セリフを覚えるときは大変でしたが、今は染みついています」と笑顔。堤監督によると、このコールは撮影前日に5分ほどで考えたものだったそうで、のんも「5分で考えたんですか!? すごく練っているんだと思いました」と驚いた様子。
さらに堤監督が「大学受験のときはまったく勉強してなかったんです。だからどうやったら勉強できるかということで、文学史の年表には、二葉亭四迷とか、坪内逍遥とか、大作家の名前が黒ゴシックで書いてあって。高校2年の夏休みに、本屋で文庫本を一気に買ったんです。それで読み出したら楽しくなっちゃって、読み終えたんですが、その人たちを羅列したということですね」とこの“文豪コール”が生まれた背景を明かした。
最後に観客にむけてメッセージを送ることに。まずは若村が「のんさんの魅力が爆発で。パワー溢れる女の子がどんなふうに文豪をギャフンと言わせて自分の夢をかなえていくのか。本当に楽しくて温かい映画です」と語ると、滝藤も「もし今日観ていただいて、気に入っていただけたら、またお友だちを誘っていただいて。初笑いをしてもらえたらうれしいです」とコメント。
続けて田中も「昨日からスタートした映画ですが、笑って楽しめて、勇気をもらえる作品なので、ぜひお友だちを連れて。年末年始の、初詣のあとなどにもピッタリな映画なので。よろしくお願いします」と呼びかけると、のんが「登場人物がひとりひとり面白くて。きっとこの映画のキャラクターの中に推しが見つけられると思うので。ぜひ推しを見つけていただけたら。そして日々ため込むことや、モヤモヤすることがあっても、加代子が代わりに吹き飛ばしてくれると思うので、ストレス解消にぜひ来てください」とメッセージ。
そして最後に堤監督が「もし気に入っていただけたのなら、ぜひ山の上ホテルに行ってください。今は工事用のガードで囲まれていますが、明治大学さんが購入してくださり、保存されることとなったので。本当にうれしいかぎりです。そしてその最後の瞬間をわたしたちが撮れたというのは本当に光栄なこと。楽しい映画になったと思っておりますので、笑っていただけたら」と会場に呼びかけた。
映画『私にふさわしいホテル』は、全国公開中。
映画情報
『私にふさわしいホテル』
全国公開中
出演:のん
田中圭 滝藤賢一
田中みな実 服部樹咲 高石あかり / 橋本愛
橘ケンチ(EXILE) 光石研 若村麻由美
監督:堤幸彦
原作:柚木麻子『私にふさわしいホテル』(新潮文庫刊)
脚本:川尻恵太
音楽:野崎良太(Jazztronik)
主題歌:奇妙礼太郎「夢暴ダンス」
配給:日活/KDDI
(C)2012柚木麻子/新潮社
(C)2024「私にふさわしいホテル」製作委員会
『私にふさわしいホテル』作品サイト
https://watahote-movie.com/