■本日のMCでもあるトミタ栞が元気に姿を現すと、会場からは一斉に歓声と拍手が鳴り響く
11月1日、歌手・トミタ栞の対バンイベント『トミタイバン Vol.5』が行われた。デビュー12年目のトミタ史上最大規模となる今回のイベントは、ソニー・ミュージックアーティスツ(SMA)の50周年とCLUB CITTA’の自主企画イベント『MY POP TOWN』のコラボレーションでもある。
近年はインスタコードという楽器を使い、持ち前の澄んだ歌声で弾き語りをするショート動画が注目されたことが記憶に新しいトミタ。ラーメン屋の娘というパーソナリティを活かし、「ラーメンウォーアイニー」という曲も作り、時にはラーメン・レポートをSNSにアップするなど、その活動は多岐に渡る。
そんなトミタが主となり様々なアーティストとの化学反応を起こす今回のイベントは、オープニング・アクトにELSEE(エルシー)を迎え、コアラモード.、足立佳奈、末吉9太郎と、トミタ栞の他4組のアーティストが集結した。
会場に入ると、トミタのライブではお馴染み「さるぼぼ」が、上手に作られたサブ・ステージの上で見守っている。定刻より少し前に、本日のMCでもあるトミタ栞が元気に姿を現すと、会場からは一斉に歓声と拍手が鳴り響く。“トミタ栞”と言えば!なオーバーオールにTシャツ姿の彼女は、まだ入場しきれず焦る観客に「ゆっくりで大丈夫ですよ〜まだ始まらないですからね〜」と優しく声掛けをしつつご挨拶。この後オープニング・アクトを務めるELSEEの紹介をし、頃合いを見て彼女が捌けると『トミタイバン Vol.5』オリジナルのジングルが流れる。
■オープニング・アクトは、初のステージパフォーマンスをする5人組ダンス&ボーカルグループELSEE
集まったオーディエンスの待ちきれんばかりの熱気を、オープニング・アクトとして受け止めたELSEE。彼女たちは今年9月にFirst Songをリリースしたばかりの5人組ダンス&ボーカルグループで、なんとステージでパフォーマンスをするのは今回が初(ちなみに前々日、トミタとELSEEは「インスタライブ」で公開初対面を果たす)! 披露したのはFirst Song「POW POW」。青い光に照らされ魅せる華麗な群舞と力強い歌声に、一瞬で会場の空気が変わるのが分かる。まだ新人なのが信じられないほどに、堂々とした自信に満ちたパフォーマンスで、自然と手拍子が起こっていた。
パフォーマンスの後、自己紹介に続く好きなラーメン紹介(!)では、客席からも賛同のリアクションから驚きの声まで、様々なレスポンスが。最後に挨拶で締め舞台から捌けると、トミタが再登場。次のアーティスト、足立佳奈の紹介を始める。足立はトミタと同じ岐阜県出身で同じSMA所属。出会いたての頃一緒に焼き鳥屋に行ったエピソードを教えてくれた。トミタの呼び込みによりジングルが流れ、登場した足立。まずはチルでポップなサウンドの「Me」を披露。カラフルな照明がキラキラとした足立の衣装を輝かせる。曲が終わったところでこの日のバンド・メンバー、関根史織(Base Ball Bear / B)、堀之内大介(Base Ball Bear / Dr)、小幡康裕(コアラモード. / Key,Gt)を紹介。先ほどのトミタからのエピソードを受け、焼き鳥トークから続くは「カンパイ」。足立が“僕らの未来に今日もカンパイ!”と歌い上げると、観客たちも拳を突き上げる。そしてデビュー当時を振り返りながら「フレーフレーわたし」を披露。堀之内が叩くボンゴと関根のシェイカーが優しく鳴り響く。
■足立佳奈は、トミタを呼び込み一緒に「Film」を歌唱
ここで足立が「今日は特別に!しーちゃんが一緒に歌ってくれます!」と、トミタを呼び込み。駆け込むトミタとハグを交わす。その掛け合いは仲の良い姉妹のようで、トミタのお姉さん感がなんだか新鮮だった。そして、足立がシェアハウスをしていたときに友人を想って書いたという「Film」を歌唱。最後、フィルムに切り取られる一瞬を演出するかのようにピースを決めるふたりはとても眩しかった。曲が終わりトミタが捌けると
足立「幸せ空間ですね〜!」
と満面の笑み。最後に披露した「Good day」では、ステージいっぱいに歩き、力強い歌声を隅々まで届けてゆく。「皆さんの声も聞かせてください!」と、観客と合唱を奏でた。会場にいる全員が身体を揺らし、一体となる。普段応援しているアーティストは違うのに、ひとつになっているのが良いなぁとグッとくる一瞬だった。
キラキラした笑顔で足立が去った後、MCトミタが登場。着ているTシャツと手にしているタオルは足立のグッズ。今回のイベントでは、転換中もトミタがサブ・ステージに立ち、アーティストとアフター・トークをしたり、次のアーティストを紹介する時間となった。足立を呼び込み語った後、次のアーティスト、コアラモード.の紹介に。
トミタ「数年ご挨拶だけの関係が続いたあと、『MY POP TOWN』の際に『そろそろ、仲良くなりませんか……?』と思い切って声をかけたら、コアラモード.のふたりも同じように思っていてくれたみたいで(笑)」
シャイ同士の、なんとも可愛らしいご縁の始まりである。あんにゅ(Vo)、 小幡康裕(Key)が登場すると、小幡の鳴らすピアノの音に早速手拍子が起こる(この日のバンド・メンバーは、オザキショーダイ[Gt]、シュウゴ[Dr])。彼らがインディーズ時代から歌ってきた「雨のち晴れのちスマイリー」のサビでは、統率の取れた雨晴れダンスが客席のあちこちで見えた。続く「セキララ☆キラキラ」はトミタも参加!
■トミタ栞と同世代ならではの仲の良さが溢れ出るコアラモード.
あんにゅ「持ち曲!?(笑)」
トミタ「やっぱさ、“どうせなら呑みいく? 野毛いく?”が私らしいよね」
あんにゅ「そうだ、しーちゃんのために作ったわ」
トミタ「(笑)」
小幡「ふたりでカラオケで歌っているような盛り上がりだったよ(笑)」
という一幕があるほどに、同世代ならではの仲の良さが溢れ出る。3曲目に披露したのは『TikTok』で再人気を博した「さくらぼっち」。遠距離恋愛の切なさを可愛らしく歌い上げる。そして、しっとりとしたムードのままに「ビューティフルデイズ」(アニメ『逆転裁判~その「真実」、異議あり!~Season 2』EDテーマ)を披露。ラスト1曲を前に
あんにゅ「私、気付いたんですけど、ギターを初めて持っていないライブです!小幡さんも今日はサポート・メンバーとして、コアラモード.では弾かないギターを弾いていて新鮮」
と、いつもとは違うコアラモード.の一面を見せるライブになったと話す。そして最後はメジャー・デビュー・シングルの「七色シンフォニー」(アニメ『四月は君の嘘』OPテーマ)を歌い、ステージを締めた。
その後、今度はコアラモード.のグッズであるトートバッグを肩に提げトミタが登場。コアラモード.のふたりとトークをした後はフリータイムを案内することも忘れない。自身も裏へと捌け、区切りの時間を迎えた頃、トミタのライブでは見ない、ペンライトが光り出したではないか…! 最後のゲストである、末吉9太郎のファンたちが、色とりどりのペンライトで会場を照らす(色により新規ファン、古くからのファン=古参、など意味があるそう!)。そして光の渦に迎えられたMCトミタは、“その変な衣装、何?”という刺繍の入ったヘア・バンド(末吉のグッズ)を着けて現れるやいなや、「何それー!楽しそうー!!」とファンの持つペンライトに興味津々。何かにハマる体験をしたくも、ここまでハマれるものがなかった人生だったというトミタ。だが、“9ちゃん”のショート動画や曲に出会い激ハマり。これまで交流がなかったものの、勇気を出してオファーをしたと経緯を話す。
トミタ「9ちゃんの曲は、笑いながら聴き始めるのに、2番で胸がキュッとなって最後泣いちゃうんです。それくらい(1曲に)すごく起伏がある」
■彼のショート動画や曲にトミタが出会い激ハマりしたという、末吉9太郎
『トミタイバン』の出演者としても新鮮な9太郎の出演(ソロとしてのライブ出演は初だそう!)。軽い足取りで登場した9太郎が、切なさを感じさせるサウンドに乗せて披露したのは「機材席開放ってなんですか?」。会場にいる多くが、いや、誰かのライブに行った人ならきっと抱いたことがあるのでは?という気持ちを代弁してくれる歌だ。続く「一夜干し」は、歌い出しから“今干したね お尻向けたまま 目の前通過したよね”と情景が一瞬にして浮かぶ描写でオタクの心を掴む。トークでは、トミタからのまさかのオファーについて、なかなか出演することのない“対バンイベント”への不安を口にしながらも、しっかり爆笑をさらい、会場をさらに温める(素晴らしいのが、自身もアイドルオタクでありオタク心が分かるので、自分のファンはしっかり見つけて一人ひとりと目を合わせているようだった!)。
9太郎「あれ、こんなところに誰かのピックが落ちてる!すごい!お守りにしちゃおーっと」
と、ステージに落ちたピックさえ、物珍しかった模様。3曲目「あたしの自名義」では手拍子も起こり、観客にその存在を印象付けた。9太郎のステージが終わると、残るはトミタ栞のステージのみ! 9太郎とのアフター・トークを終えたMCトミタが捌けてから数分後、陽気なBGMと共にバンド・メンバー(関根、堀之内、小幡)が入場。そしてこの日のトリ、トミタ栞が登場! 一段と大きな拍手が起こる。衣装も黒いTシャツ&ショートパンツにネオン・グリーンのチュール・ワンピースをレイヤード、ショートブーツと合わせシルエットがとても綺麗なスタイルにチェンジ。ギターをかき鳴らし始まったのは「だめだめだ」。演奏が終わると
トミタ「さっき9ちゃんに拾われたの、私のピックです(笑)」
■上京するときの想いを歌詞にした「300」を披露した、トミタ栞
先ほどの9太郎の発言を回収。バンド・メンバーを紹介し、デビュー・アルバムから「まにまに」を披露。懐かしい曲に手拍子が起こる。その後、地元・高山から上京するときの想いを歌詞にし、それを小幡が編曲した「300」を響き渡らせる(ちなみにこのとき、足立は舞台袖で号泣していたそうだ)。歌の後、空気をガラッと変えるかのように
トミタ「まだ私が今日コラボしていないアーティストがいます!」
と、元気良く9太郎を呼び込む。9太郎がルンルンでステージに登場すると、なぜか逃げるトミタ、そして追う9太郎。急に舞台からいなくなるボケが始まり会場が爆笑に包まれる。9太郎の一挙手一投足にケラケラと笑いが止まらないトミタの図がとても可愛らしかった。ふたりで披露したのは、「HAPPY AND HAPPY」。観客も皆ハートを作る振りを踊る空間はとても愛に満ちていた。9太郎が捌けた後、続くは「もしもワールド」。そしてここでトミタからライブのお知らせが!
トミタ「毎年誕生日にライブを行ってきましたが、来年もワンマン・ライブを開催します!椅子のある会場でしっとり大人なトミタ栞を見せます!」
誕生日である2月1日にYokohama mint hallで行われる『トミタ栞バースデーライブ2025「ビター・テイスト」』のアナウンスが。一気に会場が高まりを見せたあと、「会いたいマン」でさらに盛り上げ、本編は終了。
が、熱冷めやらぬ会場のアンコールに応え、『トミタイバン』Tシャツを着たこの日の出演者が一斉に再登場。それぞれが感想を伝え、お馴染みの「ラーメンウォーアイニー」を順に歌い、オーディエンス含めた全員で踊り、大喝采の中終演した。
TEXT BY 上野綾子(BARFOUT!)
PHOTO BY 米山三郎
MY POP TOWN × SMA 50th Anniversary『トミタイバン Vol.5』
2024年11月1日 CLUB CITTA’
出演/ELSEE(OA)、コアラモード.、足立佳奈、末吉9太郎、トミタ栞
セットリスト
ELSEE(OA)
1.POW POW
足立佳奈
1.Me
2.カンパイ
3.フレーフレーわたし
4.Film (withトミタ栞)
5.Good day
コアラモード.
1.雨のち晴れのちスマイリー
2.セキララ☆キラキラ(withトミタ栞)
3.さくらぼっち
4.ビューティフルデイズ
5.七色シンフォニー
末吉9太郎
1.機材席開放ってなんですか?
2.一夜干し
3.あたしの自名義
トミタ栞
1.だめだめだ
2.まにまに
3.300
4.HAPPY AND HAPPY (with末吉9太郎)
5.もしもワールド
6.会いたいマン
EN.ラーメンウォーアイニー(全出演者)
Sony Music Artists 50th Anniversary 特設サイト
https://www.sma.co.jp/s/sma/page/50th?ima=0000#top