■DAY2はGOZが再集結! 「20年ぶりだそうです。このメンバーね。もう、いろいろ忘れてて」
奥田民生が10月26日、27日に東京・両国国技館にて『奥田民生 ソロ30周年記念ライブ『59-60』@両国国技館』を開催。
ユニコーン解散後(※2009年に再始動、現在も活動中)の1994年にソロ本格始動してから、2024年で30周年、そして来年2025年5月12日に60歳を迎えるという節目で、行われることになった2デイズである。
初日は『ひとり股旅スペシャル@両国国技館』と銘打って、過去、大阪城ホール(1998年)や日本武道館(2003年・2018年)、広島市民球場(2004年)、厳島神社(2011年)、マツダスタジアム(2015年)などで行ってきた、ひとりで弾き語りする形式でのステージ。
2日目は、『GOZ LIVE AT RYOGOKU KOKUGIKAN』というタイトルで、ソロデビューから10年間ライブ活動を共にしたGOZ(Gu・長田進、Ba・根岸孝旨、Dr・ドラム、Key・斎藤有太)が再集結してのライブである。
この2日間を伝えるライブ・ビューイングも、全国50館の映画館で行われた。
まず初日。過去の『ひとり股旅』は、作務衣姿で頭にタオルを巻き、座ってアコースティク・ギターを弾きながら歌唱する、というスタイルだったが、この日の奥田民生(以下OT)は、“森の神様”の出で立ちで登場。仁王立ちでギターを弾き始めると、「農夫」に扮した浜崎貴司が登場し、ふたりでどぶろっくの「キングオブコント2019」の優勝ネタ「農夫と神様」を歌い始めた。
途中から、本物のどぶろっくのふたり(森慎太郎と江口直人)も登場し、曲に加わる。2023年・2024年のどぶろっくの対バンツアーの東京公演にOTが出演、共にこの曲を歌った、という縁から、今回のこのオープニングが実現した、と思われる。
歌が終わると、OTが着替える間を、どぶろっくのふたりが持ちネタ(持ち歌)の「魅惑のパンティライン」でつないで、3曲目から本来のかたちでの『ひとり股旅』へ。
ソロのファースト・アルバム『29』(1994年)の1曲目である「674」で始まり、「羊の歩み」「俺のギター」「エンジン」の4曲を聴かせていく。
両国国技館の客席が、ステージの四方を囲む形になっていることに配慮して、1曲終わるごとに床が回転し、両国国技館の正面→東→向こう正面→西、と、歌うOTの向きが変わっていく。
もともとこの『ひとり股旅』は、事前にセットリストを決めず、OTがその場で次はどの曲を歌うかを決めていくスタイルで、それは今回も踏襲されていた。
1曲始まるごとに、国技館のホール上部の画面に曲名が出る、というサービスが設けられている。
7曲目からは、1曲ずつゲストが登場する。ひとりめは、バイオリンベースを手にした寺岡呼人で、1992年から不定期にライブ等を行っているこのふたりのユニット“寺田”のレパートリーである「健康」(初出は1992年の「ユニコーン全員ソロシングル企画」でOTがリリースした「休日」のカップリング曲)を、「寺田のテーマ」(ジングル的な短い曲)ではさんで披露する。
OTが唐突に提案した休憩の時間をはさんでの、ふたりめのゲストはトータス松本。「民生くんのリクエストで」と、ウルフルズの初期の代表曲「いい女」を、ハープを吹きつつ熱唱する。OTも2コーラス目でリードボーカルをとり、後半ではギターソロを聴かせた。
3人目の斉藤和義は歌とエレキギター、OTはドラムを叩くという編成で、曲は「ずっと好きだった」。1コーラス目は斉藤和義、2コーラス目はOT、と、リレーでボーカルをとる。
4人目は浜崎貴司。「俺は(オーディエンスにとって)味がしなくなっちゃった。さっき一回出たから」などとぼやきつつ、ふたりで歌ったのは「ありがとう」。井上陽水奥田民生のファースト・シングルだが、近年はこのふたりがセッションする時の定番曲になっている。
ここから再び、ひとりで歌う時間を経てから、次のゲストのブロックに入るはずだったが、OT、段取りを間違えて、次のゲストである吉井和哉を呼び込んでしまう。
当然、本人もスタッフもまだスタンバイしておらず、慌てて出て来た本人と、しばしやり取りした末、一度引っ込んで、予定通り3曲歌うことになる。
というわけで、「野ばら」「ロボッチ」「何と言う」の3曲を歌唱し、改めて吉井和哉を呼び込む。
さっきの段取りミスのおかげで、いかに自分とスタッフたちが裏でバタバタしたかを説明する吉井。「いや、俺はもうあのまま順番を逆にしたらいいと思って」と言うOTに、「逆にならないよ! 冷静に考えてみてよ!」と返し、爆笑を取る。曲はTHE YELLOW MONKEYの「LOVE LOVE SHOW」。イントロで入る「おねえさん!」は、ふたりで声を揃えて叫んだ。
そしてOT、「吉井くんとどぶろっくを、どうしてもくっつけたかったのよ」と、どぶろっくを呼び込んで、4人で「もしかしてだけど」を歌う。江口→森→吉井→OTとリレーでボーカルをとり、後半は江口が「♪民生に抱かれたい 和哉に抱かれたい」と、オーディエンスに歌わせる。曲の締めの「♪そういうことだろ」は、OTが担った。
ひとりに戻ったOT、「なんかあの、褒美をいただいた気持ちです」と、お礼を言う。そして本編ラストに歌ったのは「さすらい」。曲途中からゆっくりと床が回り始め、360度に向かって歌いかける形になる。この曲恒例、後半のOTとオーディエンスの「♪どうなった」の掛け合いは、この日も、とてもきれいに決まった。
アンコールは、OT・寺岡呼人・トータス松本・斉藤和義・浜崎貴司、つまりYO-KINGを除くカーリングシトーンズの面々がステージに揃い、どぶろっくが加わってシトーンズの「俺たちのトラベリン」と「ソラーレ」の2曲を歌唱する。
この日、水戸ライトハウスで真心ブラザーズとフラワーカンパニーズの対バン企画が入っていて、来れなかったYO-KINGの代わりは、サングラスとカツラでYO-KINGに寄せたどぶろっく森が務めた。「俺たちのトラベリン」では斉藤和義が、と「ソラーレ」ではOTが、ドラムを叩く。
さらに、最後の1曲のために、吉井和哉も登場。OT、「最初は、ほんとにひとりっきりでやれって言われてたんですよ。もう俺イヤなのよ、ひとり。『ひとり股旅』とかずっとやってたけんだけど、好きじゃないのよ!」と本音をぶちまける。
「そしたらこんなことになりました、みなさんほんとにありがとう!」とゲストたちに感謝を伝え、「これからもなるべくひとりでやらないよう、誰かと、誰かと!」と叫んでから、全員をバックに、「イージュー★ライダー」を歌った。
そして2日目=10月27日は、GOZの5人でのライブである。
前日と同じく、正面・東・向こう正面・西の四方とも、びっしりとオーディエンスで埋まった両国国技館のステージの上は、後列左にドラム古田たかし、右にキーボード斎藤有太、前列は左がベース根岸孝旨・まんなかがボーカル&ギターOT・右がギター長田進、というフォーメーション。
5人編成のバンドのオーソドックスなスタイルだが、現在のOTのバンド=MTR&Yは4人で、OTの立ち位置は左なので、このかたちが新鮮に映る。
古田たかしの4カウントから、ファースト・アルバム『29』収録の「ルート2」でライブがスタートする。OTが弾いているのは、ギブソン1959年サンバースト・レス・ポール、YouTube等でおなじみの「家が買えるギター」である。ギターソロは長田進が担い、OTはがんがんリフを弾く。
「彼が泣く」と「ときめきファンタジーⅢ」、2001年のアルバム『GOLDBLEND』からの2曲を経て、最初のMCタイム。
OT、「20年ぶりだそうです。このメンバーね。もう、いろいろ忘れてて」と、名前を間違えるボケを軽く入れながら、ひとりずつ紹介する(ただし、MTR&Yのメンバーでもある斎藤有太は「この人はいいよ」と、雑に扱われる)。
「夕陽ヶ丘のサンセット」に続いて演奏された「風は西から」は、2013年のシングルである。つまり、このメンバーでライブ活動を共にしていた時代の曲しかやらない、というわけではないことが、ここであきらかになったわけである。
13曲目の「無限の風」も然りで、曲に入る前にOT、「これはどうなの? やってた?」とメンバーに問い、「知らない曲です」と返される。
そこから「メリハリ鳥」、MCをはさんで「トリコになりました」「ワインのばか」「KING OF KIN」と、このメンバーの時代のライブの人気曲が並び、オーディエンス、大喜び。その喜びは、10曲目の「息子」で、一度目のピークを迎える。
「KING OF KIN」は、曲の最後が人力フェイドアウト(だんだん音が小さくなって最後に消える)で終わり、「息子」は曲が終わると同時に5人揃ってびしっと両腕をVの字型に上げてしばし静止する、という、当時やっていたムーブも再現された。
「なんで(両腕を)上げることになったんだろうね? なんか懐かしいよね。リハで思い出すんだよ、誰かが。さっきのフェイドアウトにしても」と、OT。
観ているこちらも同じで、多くの曲の締めの合図が根岸孝旨のキックであることなどにも、「ああ、こうだった、このバンドのライブは」と、いろいろと思い出す。
そして、リリース当時、「意識して正面からこういう曲を書いてみた」と語っていた、OTのレパートリーの中でも数少ないラブソングであり、数少ないバラードである「The STANDARD」で、さらにオーディエンスを歓喜させる。
MTR&Yでもライブで演奏される機会が比較的多い「手紙」、前述のようにGOZでは初披露の「無限の風」、これもGOZでは初披露であるうえに、近年ライブで披露されることはほぼない「MANY」、という流れで、この5人ならではのバンド・グルーヴを、存分に聴かせてくれるGOZ。
続く「コーヒー」も、現在のOTのライブにおいてはレアな曲で、イントロが鳴ったと同時に、ワアッと歓声が上がる。ライブではその時々の実年齢に変えられてきた「もう30だからと言うことで」のところは、「もう60だからと言うことで」と歌われた。
NHKの音楽番組『SONGS』の収録をした、11月に放送される、という告知をはさんでから、後半のブロックへ。
「恋のかけら」と「MILLEN BOX」、人気曲だが今やライブで聴けるのはレアな二連発で、またオーディエンスが沸騰する。
その次の、イントロで古田たかしが叫び、間奏で根岸孝旨がソロを聴かせた「御免ライダー」までがピークタイムで、本編の最後は、OTがしばし土俵入りのポーズをとってから曲に入った「トロフィー」(これも近年ライブで披露されるのはめずらしい)と、「ソロOTに2曲だけあるストレートな心情吐露曲」(もう1曲は「それはなにかとたずねたら」)である「CUSTOM」の2曲で、ずっしりと、そしてしっとりと締められた。
暑苦しさや押しつけがましさからもっとも遠い方法で、人の心を奥底から動かす、OTならではの感動に満ちた2曲だった。
アンコールは、まず「マシマロ(ック)」。「マシマロ」の翌年に出たシングル「まんをじして」のカップリングに収録された、「マシマロ」を3コードのロックンロールにリアレンジしたバージョンで、この曲も含めると、このライブ、『GOLDBLEND』から5曲もやっている。前日の『ひとり股旅』での「羊の歩み」も足すと、6曲になる。
そして、「ありがとうございました。来年もがんばります」というOTの挨拶から歌われた、2日間のラスト・ナンバーは、ソロ本格始動と同時にいきなり大ヒットした「愛のために」だった。曲の中盤以降、OTは何度もマイクから離れ、リードボーカルをオーディエンスに委ねた。
ステージを去る前、前日もそうしたように、メンバーを引き連れて、全方位のオーディエンスに、丁寧に挨拶に行くOT。ステージの真後ろの席や、斜め後方の席までびっしり入った人たちに、感謝を伝えかったのだと思う。
5人が去ったあと、画面で告知あり。『29』と『30』の12インチアナログ盤(各2枚組)と、当時のツアー2本『tamio okuda TOUR”29-30”』『tamio okuda TOURDUST”0-30”』のブルーレイ2枚を収めたボックス「『記念ライダー30号』29-30 BOXスペシャル」が、2025年3月8日に発売される、とのことである。
TEXT BY 兵庫慎司
PHOTO BY 三浦憲治
【セットリスト】
[DAY1] 10/26(土)
1.農夫と神様 w/浜崎貴司・どぶろっく
2.魅惑のパンティライン(どぶろっく)
3.674
4.羊の歩み
5.俺のギター
6.エンジン
7.寺田のテーマ~健康~寺田のテーマ w/寺岡呼人
8.いい女 w/トータス松本
9.ずっと好きだった w/斉藤和義
10.ありがとう w/浜崎貴司
11.野ばら
12.ロボッチ
13.何という
14.LOVE LOVE SHOW w/吉井和哉
15.もしかしてだけど w/吉井和哉+どぶろっく
16.さすらい
<アンコール>
En-1 俺たちのトラベリン w/カーリングシトーンズ+どぶろっく
En-2 ソラーレ w/カーリングシトーンズ+どぶろっく
En-3イージュー★ライダー(ALL CAST)
[DAY2] 10/27(日)
1.ルート2
2.彼が泣く
3.ときめきファンタジーIII
4.夕陽ヶ丘のサンセット
5.風は西から
6.メリハリ鳥
7.トリコになりました
8.ワインのばか
9.KING of KIN
10.息子
11.The STANDARD
12.手紙
13.無限の風
14.MANY
15.コーヒー
16.恋のかけら
17.MILLEN BOX
18.御免ライダー
19.トロフィー
20.CUSTOM
<アンコール>
En-1 マシマロ(ック)
En-2 愛のために
リリース情報
2025.03.08 ON SALE
『奥田民生『記念ライダー30号』29-30BOXスペシャル』
放送情報
NHK総合『SONGS 奥田民生 ~自然体の極意~』
【放送】 2024年11月7日(木)午後10:00~(NHK総合)
【再放送】 2024年11月11日(月)午後11:50~(NHK総合)
奥田民生 OFFICIAL SITE
https://okudatamio.jp/