■野外音楽フェスでは初となるミディアムバラード「大阪ロマネスク」も披露
「19年目にして、初めてを経験させてくれて感謝」と語った2023年の夏。
SUPER EIGHTは、千葉市蘇我スポーツ公園で開催された『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2023』に、念願の出演を果たした。
会場を埋め尽くしたオーディエンスを熱狂させた5人は、ロッキンでのアクトで勢いをつけ、その夏、3つのフェスを経験。
1公演1公演、1曲1曲を血肉にしながら自分たちの音楽をより強固なものにしていった。
2023年のロッキン開催後、25周年となる2024年には5年ぶりとなる国営ひたち海浜公園でも開催するというビッグニュースが伝えられ、音楽ファンが多いに沸いた。
時を同じくしてデビュー20周年という節目を迎えるSUPER EIGHTにとって、ひたちなかという聖地に立つことは、まさに念願──。
そして、あらたなグループ名と共に歩み始めたこのメモリアルな年に、その夢が実現したのだ。
さまざまな音楽とミュージシャンとの出会いによって、進化してきたSUPER EIGHT。東京スカパラダイスオーケストラとの出会いも、また彼らに大きな力を与えた。
2018年から、音楽を通じて絆を深めてきた両者は、共にひたちなかのステージへ進む。
この日、記念すべき25周年のRIJFに今年35周年を迎え、映えあるひたちなか凱旋ステージのトップバッターを務めていた、東京スカパラダイスオーケストラ(以下、スカパラ)が、アクトの後半に「ここでスペシャルゲスト!」と伝えると会場が期待に包まれた。
谷中敦が「SUPER EIGHT!」と高らかに呼び込み、スカパラと同じピンクのスーツをまとった5人が現れると、会場からは割れんばかりの大きな歓声があがった。
横山裕は少しまぶしそうな表情で、「急に日光浴びてビックリしてます」と笑いを誘い、大倉忠義は「これから僕たちが皆さんを爆発させたいと思います!」と宣言!
安田が長年の夢だったと語った、スカパラ名義の楽曲にフィーチャリングで参加したコラボ曲「あの夏のあいまいME feat.SUPER EIGHT」。疾走感あるホーンのイントロが響き渡ると、全員が笑顔に。スカパラのメンバーとSUPER EIGHTのメンバーが交互に並んで互いに目を合わせ、時に肩を組みながら音を奏でる。
その姿があまりに自然で、2組の絆の強さを物語っているようだった。
茂木欣一が「せっかくなので、もう1曲」と、「メモリー・バンド」を演奏。さまざまな時期を超えてきた2組だからこそ、分かりあえる歌詞──それをあふれんばかりの感情を乗せて、歌い演奏する姿はとても美しかった。
会場が西日に照らされ、夕方の心地よい風が吹き始めた16時25分ごろ、SUPER EIGHTとしてのステージが始まった。
新たに進化させたインストゥルメンタル「High Sprits」にのせて会場LEDにSUPER EIGHTの文字が浮かぶと、悲鳴にも近い感性が。
会場の手拍子に迎えられ、5人がGRASS STAGEに登場。安田章大がオーディエンスに「Clap Your Hand!」と呼びかけると大きな手拍子が広がっていく。
横山のトランペットをきっかけに、メンバーの演奏がスタート。大倉忠義のタイトなドラムに乗せて、丸山がアグレッシブなスラップを響かせると、会場から驚きの歓声が上がる。さらに歌うように奏でる安田のギター、村上の鍵盤がスパイスとなって、グルーヴィーなサウンドを彩った。
「今日くらいは、無責任に生きていこうぜ~」という安田の煽りと共に始まったのは、バンドの代表曲とも言える「無責任ヒーロー」。
大倉が繰り出す小気味いいリズムに、観客も体をタテに揺らして音に乗っていく。
村上が右手でキーボードを弾きながら、ファンにはおなじみの手振りをやってみせると、同様に手を掲げて会場がひとつになる。
そこには、ジャンルを超えて人々を巻き込んでいく、SUPER EIGHTらしい光景が広がっていた。
続いて丸山が「ロッキンひたちなか、いけるのか? もっともっと盛り上がれるって…“言ったじゃないか~”」と叫ぶと同時に、「言ったじゃないか」のイントロが始まる。宮藤官九郎ワールドがさく裂する歌詞と、銀杏BOYZの峯田和伸が作曲を手掛けたパンキッシュなサウンドがフェスムードをさらに高めていく。曲途中には、「Say!」と観客に振る村上に続いて、「言ったじゃないか」の大合唱が巻き起こった。
流れる様に、2023年のロッキンでも会場を一体にした、打首獄門同好会・大澤敦史からの提供曲「ハライッパイ」へ。アップテンポな音に乗せて、メンバーが“ハライッパイ”食べたいものや会話のような歌詞を感情たっぷりに歌いつなぐコミカルさを持ちながら、次々と曲調が変わっていくハードルの高い楽曲でもある。
16ビートのロックサウンドからテンポダウンしたり、ソウルフルなグルーブをかもしたり、と展開するだけでも技術を求められる楽曲だが、それをさらに全員がボーカルを担いながら、オーディエンスを煽り、余裕のあるパフォーマンスを見せつける。
そんなところにも、彼らがフェスで積み重ねてきた経験を感じた。曲が終わった直後、安田が「もう一発いいですか~?」と問いかけ、「ハラ!」と叫ぶと客席から「イッパイ」とレスポンスが。その一体感にメンバーもたちも思わず笑みを見せた。
ここで、5人は楽器を置いてハンドマイクを手に、ステージの前へと歩み出る。
村上が「我々、バンドだけじゃなくて、踊ったりする曲もあります。よろしかったら一緒に覚えて、ちょっと遊んでやってみてください」と「前向きスクリーム!」のダンスをレクチャー。「音楽好きな皆さん、一度見ていただいたら、じきにできると思いますので!」と村上。そして、曲が始まると“前向き! 前向き!”というキャッチーなフレーズに合わせて、人差し指と親指を立てL字にした両手を揺らして一緒に踊る観客たち。
さらにサビでも見事に揃ったダンスを見せ、参加型のライブを会場中が楽しんでいた。
さらに彼らのライブ定番曲、「T.W.L」では、タオルを手に会場中がクルクルと色とりどりに回して、ひとつになる。
サビではウォーターキャノンが高く上がり、熱くなった会場を爽やかな風が吹き抜けていった。ダンスとタオル回しを終え、安田が「右手とか左手とか大丈夫?」と問いかけると、横山が「3人くらい、腕取れてるんちゃう?」とのっかり、村上が「明日、筋肉痛になったら『T.W.L』じゃなく、『じょいふる』のせいですから。苦情があったら、いきものがかりに言ってください(笑)」としっかり落とす。フェスならではの、トークで楽しませた。
大倉が「僕たち、今年20周年になるんですけども…」と話始めると、会場から大きな拍手が送られ、「ありがとうございます。すみません、言わせてしまって」とちょっと照れくさそうに返す。さらに「20年以上前から、大阪で1000人の会場からやらせていただいたんですけど、そのときから、ずっと歌っている曲がありまして…」と曲紹介をし、野外音楽フェスでは初披露となるミディアムバラード「大阪ロマネスク」へと続く。
まさにデビュー前から歌い続けてきたファンへのラブソングであり、節目節目で彼らが大切に歌ってきた楽曲でもある。
SUPER EIGHTが生まれた大阪の街の風景が思い浮かぶような歌詞と、ノスタルジックなメロディーから生まれる、ある種アイドルらしい楽曲は、きっと音楽ファンには新鮮に映ったのではないだろうか。
落ちサビを感情たっぷりに歌いあげる丸山、高音フェイクを響かせる安田…。
夕暮れどきの空が作る少しセンチメンタルなムードの中、真っすぐ前を見つめて歌う5人の優しい声に、オーディエンスも聞き入っていた。
「大阪ロマネスク」の余韻が残るなか、丸山が「後半戦、まだまだ盛り上がれますか〜?」と呼びかけると、会場からは大きなレスポンスが返ってくる。
しっとりした雰囲気から一転、パンチのある「ゴリゴリ」でスタート。
青春感むき出しのストレートなロックが持つ、いい意味の泥くささはSUPER EIGHTによく似合う。楽器を抱えて純粋な言葉を紡ぎ出す姿は、さまざまな壁を越えてきた5人だからこその説得力をもっていた。
さらに畳みかけるかのように、「ズッコケ男道」へ。待ってましたとばかりに、会場のボルテージがさらに上がっていく。
ハイスピードなナンバーを大倉と丸山のリズム隊がどっしりと支え、安田のパワフルなギターがロックな色を添えて、底抜けに明るいサウンドを生み出す。
横山の実直さが伝わる真っ直ぐなギターの音と、音色を変えながら厚みを与える村上の鍵盤が合わさって、SUPER EIGHTらしい音を作り上げていた。
さらに、彼らのライブの定番曲「“超”勝手に仕上がれ」で、観客を自分たちの世界に巻き込んでいく。メンバーたちはマイクをヘッドセットに、村上はショルダーキーボードへと持ち替えて、ステージを自在に動きながら客席をこれでもかと煽る。それに呼応するように、会場が波打つように揺れ“S・U・P・E・R!SUPER!E・I・G・H・T!”のコールや、「ニーニニニーニニニニニニニー」の歌声で、オーディエンスがさらにひとつになっていくのが見えた。
最後に…安田が「(20周年を迎えるまで)いろんなことがあったグループですけど、ここまで連れてきてくれたのはファンの皆さんだったし、今ここで僕たちの音楽を聴いてくれてる他のアーティストのファンの皆さんのおかげです」と感謝を伝え、「ラスト1曲だけ、歌わせてもらっていいですか? 今から歌う曲がもし心にしみたら、泣きそうになったとき、何かつらい思いをしてつぶれそうになったとき、聴いてもらえたらと思います」と熱い思いを伝え、ラストナンバー「音楽が聴こえている」を披露。
SUPER EIGHTらしい泥臭さとポジティブなメッセージ、骨太なロックっぽさとポップさが融合したサウンドに体を揺らし、手を掲げて楽しむオーディエンス。
楽曲の「未来はみんなのもの」という強く温かなメッセージを届け、5人は何度も「ありがとうございました!」と手を振りながら、充実した笑顔でステージを去っていった。
もしかすると、音楽フェスに出始めた頃のSUPER EIGHTは、耳の肥えた音楽ファンが集うアウェイな場所だからこそ、バンドで勝負しようという想いがより強くあったかもしれない。
けれど、昨年のロッキンを始め、さまざまなフェスを経験する中で、温かく迎えてくれるオーディエンスに触れ、まっすぐ届けることで伝わる手応えを得た今の彼らは、より自由に、純粋に音を奏でることを大切にしているように見える。
だからこそ、今回はバンド曲だけにこだわらず、ハンドマイクで歌い踊る曲やバラードを披露し、いつも通りのSUPER EIGHTを届けたのではないだろうか。
その姿はとてもたくましくもあり、オーディエンス心を揺るがすに十分なパワーを持っていた。
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