■MCは、小原ブラスとフィロソフィーのダンス・奥津マリリ。初回ゲストは元乃木坂46で現在心理カウンセラーとして活躍の中元日芽香
エンタテインメント業界で活躍するアーティストやクリエイター、そして彼らに直接携わるスタッフの心と身体の両面をサポートすることを目的として、2021年ソニーミュージックが立ち上げたプロジェクト『B-side』。プロジェクト名にはA-side(表に立つ自分)だけでなく、B-side(ありのままの自分)を大切にしてほしいという思いが込められている。
2022年には、心と身体の状態に気を配り、自分自身を大切にしていくことの重要性を、幅広い層に伝えていくことを目指しポッドキャスト番組『B-side Talk〜心の健康ケアしてる?』を立ち上げた。番組MCの山崎あみと小原ブラスが、毎回テーマに沿って専門家や著名人をゲストに迎え、心の健康についてトーク。今回、まもなく50回目を迎えるタイミングで番組をリニューアルした。山崎に代わって、小原ブラスと共に番組を盛り上げる新MCに、5人組アイドルグループ:フィロソフィーのダンスのメンバー・奥津マリリが就任した。その初回収録(7月5日公開)が、ゲストに元乃木坂46で現在心理カウンセラーとして活躍している中元日芽香を迎え、行われた。その【前編】をレポートする。
この日収録前が初対面の小原と奥津。小原は「何て呼ぼうかな。マリリンはちょっと浅はかやなと思って。マ、って呼ぼうかな(笑)」と言うと奥津が「えーっ」と苦笑。「じゃあマリちゃんって呼ぶわ。私のことはブラちゃんって呼んで」(小原)と提案すると「呼べなーい(笑)。でも頑張ります」(奥津)と早くも息はピッタリだ。さらに小原は奥津が所属するフィロソフィーのダンスというグループ名にも触れ「偏差値高そうな感じ。この番組も一見すると偏差値高そうな感じやねん。でも実際中身は…そんなことないよって(笑)」と、先輩MCとして奥津の緊張を和らげる。早速ゲストに中元日芽香を呼び込み、心理カウンセラーになったきっかけからトークはスタート。
中元は2017年にグループを卒業。その後、認知行動療法やカウンセリング学などを学び、2018年、カウンセリングサロン「モニカと私」を開設し、心理カウンセラーとして活動を始めた。
■話すだけでこれぼど楽になるのかと、心理カウンセラーさんとの会話に衝撃を受けた
「アイドル時代に休業していた時期があり、そのときマネージャーさんからカウンセリングを勧められ受けてみることにしました。それまで誰かに相談するとか頼るとかをあまりしてこなかったので、“心理カウンセラーさんとお話して何が変わるんだろう”と最初は懐疑的でした。でも話すだけでこれぼど楽になるのかと衝撃を受け、なんて素敵なお仕事だろうと思いました」(中元)
さらに中元は「自分の性格も見た目も、頑張れないところも好きじゃないとずっと自己否定が強かった。でもグループから離れ自分の気持ちを整理してみて、やはり乃木坂時代に学んだことで、今の私に繋がっている部分もたくさんあるなと思えたんです」と吐露。
それを受け、小原は「やっぱりグループって、みんな仲間といえば仲間やけどやっぱりライバルで、友達に相談するようなわけにはいかないと思う。かといってマネージャーやスタッフに相談すると、面倒くさいやつやなって思われないか心配になって動けない、逃げ場がない子もおるんかな」と語っていた。
中元はメンバーの前ではどうしても明るく振舞ったり、悩んでいることを言いたくなかったと打ち明けた。小原が言うようにどこにも「逃げ場」がなかった。奥津も大きく頷き「集団行動だから自分だけが休むとか、輪を乱しちゃいけないって思っているから、つらくても我慢しちゃうと思う」と語っていた。現役アイドルのリアルな言葉だ。
さらに中元は「当時は自分に自信が持てなかった」ことが、自身を追い詰める原因だったと語っていた。アンダーメンバーの時期が長かった中元は、どうやったら選抜メンバーになれるのかを考え続け、悩み「自分の中で努力の仕方がわからなくなった」と語る。そして「息抜きや気分転換も下手くそだった」ので、どんどん息苦しさが増していった。
この中元の経験について奥津は「めっちゃわかります。やっぱりアイドルは自分のキャラクターに悩んだり、どうやったらお仕事がもらえるんだろうとかずっと考えていて、それは就職活動のとき、自分の長所短所をすごく考えるじゃないですか、それが一生続く感じです。就職活動ってほとんどの人がつらいって言っているように、うっすらつらいのがずっと続くみたいな感じで、ずっと自分を試されているような…だから中元さんの言っていることがすごくわかります」と共感していた。アイドルが抱える悩みが、生々しい言葉と共に伝わってきた。
中元と奥津が感じていることはアイドル、グループという「場所」だけでの話ではなく、学校でも会社でも家でも感じることであることを、3人は改めて伝えてくれる。そんな苦しんでいる人の助っ人になる心理カウンセラーの役割を中元が説明すると、小原は「確かに答えをもらいに行くというよりも、自分で答えを探すためのヒントをもらいに行く、自分が答えを見つけるまでの道を、自分で整理するための手助けをしてくれる存在、というのが近いんですかね」と自身の理解を語ると、「そうですね。悩みを抱えている人がちょっと寄りかかることができる、一緒に並走する存在が、心理カウンセラーだと思います」と、“寄り添う”存在であることを教えてくれた。
小原の、時に鋭く核心を突くハッとする言葉の数々と、でも温かな空気感が全体を包み、大きな愛でフィロソフィーのダンスのメンバーをまとめる奥津の、その懐の深い人間性とが初回から交差し、番組の新しいカラーと温度が生まれていた。
初回の収録を終えたばかりの小原、奥津、ゲストの中元に話を聞くことができた。
──リニューアル一発目の収録を終えたばかりですが、小原さん、新MCの奥津さんと“セッション”はいかがでしたか?
小原:最初はちょっと仮面被ってるかなって思ってたけど、全然被ってなかった(笑)。打ち合せのときそれを確信しました、とっても面白いコだって。
奥津:変な人って言われることが多いので、それを出さないように頑張りました。
小原:ちゃうねん、それを出してほしいなって。これからこの番組をやっていく中で出し切っていってほしい。他の現場では出せないことや愚痴もここに持ってきていいで。ここに話しに来る感覚で、収録を楽しみに来てくれるようになったらいいな。その代わり私の愚痴も聞いてよ。
■メンバーや自分の家族、友達が悩んでるときに、何か助けるものを持っていたい。番組はその学びの場になりそう
──奥津さんにはここがそれこそカウンセリングの場になりそうな予感が。小原さんと初回とは思えないコンビネーションで、早速爪痕を残していました。最初にこのMCのお話を聞いたときはどう思いましたか?
奥津:私自身も心療内科に行った経験があったり、心と自分というものに対してすごく考えてきた人生でした。だからこういう機会はうれしかったのと同時に、メンバーや自分の家族、友達が悩んでるときに、何か助ける手札になるものをひとつでも多く持っていたいって思っていたので、その学びの場になりそうです。
──小原さんの印象はいかがでしたか?
奥津:これまでの放送を聞いたり、ブラスさんの本やインタビューを読んで、毒舌とか切り込む角度が凄いというのはわかっていたので、隣に座って私がしゃべれるのかな、力不足じゃないかなって心配な部分はありました。でも話を聞いてくださっているときのブラスさんの目がすごくまっすぐで、真摯に聞いてくださっていることが伝わってきて…。
小原:それ全部書いといてくださいね(笑)。自分はマリリンのこと、なるべく調べないでここにきてん。
奥津:本当ですか。
小原:逆にネットとかで書かれている情報や、表に出ているキャラクターでその人のことを判断するとき、どうしてもバイアスがかかった状態で見てしまうのって、ちょっと違うというか僕の求めているコミュニケーションにはならへんなと思って。だからあえて何もバイアスをかけんと来たら、最初は読みきれへんかったけど、ほんまに素やったんやっていうね(笑)。
──収録を聴いて、早くも名コンビ誕生という感じでした。
小原:本当はどう思ったの、私を見て。本当のこと言っちゃいなよ、これオフレコだから(笑)。
奥津:温かって思いました。
小原:それもういっぱい言って!私のことなんか世間は怖い人って思ってんねん。
奥津:そうなんです(笑)。でも本当にお話ししているのが楽しくなるというか、壁を全部取り払ってくださったので、初回にしては自分としてもよくしゃべることができたと思っています。
小原:よかった。最初頭のいいしゃべり方をする、ABEMA Primeに出てくるアナウンサーさんぐらいちゃんとしてるなってビックリしたもん。すごく頼りがいがあります。
■ゆるく聴いてゆるく自分に当てはめていいとこだけを切り抜いて食べていくみたいな、そんな番組になったら
──中元さんはゲストで出演されてこの番組にどんなイメージを持ちましたか?
中元:もっと堅く、真面目な感じなのかなと思い、楽屋でずっと緊張していました。でもおふたりがとても温かく迎えてくださって、3人でお茶でもしているようにアットホームな雰囲気の中で、心の問題についてお話できたすごくいい時間でした。
小原:たぶんずっと番組を聴いてくれる人はわかっていると思うんですけど、ゲストのカウンセラーさんも、それぞれ向き合い方や人によって言っていることが様々なので、このゲストさんが言っていることが全て正しいと受け止めずに、自分に合ってるかどうか、自分に合わせて聴ける番組になっていると思う。だからこっちも全部正しいって思って聴かへんし、みんなもそう。押しつけがましい感じもないし、それがいいかなと思う。ゆるく聴いてゆるく自分に当てはめていいとこだけを切り抜いて食べていくみたいな、そんな番組になったらいいなと思っています。
──皆さんは「B-side」というプロジェクトの取り組みを最初に聞いたときはどう思いましたか?
中元:タレントさんやアーティストさんに対してのそういう取り組みはあっても、会社全体でというところがすごく温かいなと思いました。乃木坂46で活動していたときは、マネージャーさんもメンバーと近い世代かちょっとお姉さんくらいの方たちも多く、すごく忙しくしていたし、メンバーが稼働してない時間も動いています。常にメンバーを守ってくれる立場で、その方たちが人間関係やライフスタイルの中で悩んだりしたとき、誰が守ってくれるんだ?と思っていました。そんなときこの「B-side」のことを聞いて、すごく素敵なプロジェクトだと感じています。
小原:きっとこれは何か社会を変える、今後の日本の芸能界だけではなく、さらにその先のところを変えることになるんちゃうかって、勝手に思ってるんです。期待してます。だからお金のためと思って出るわけではないですよ(笑)、ちゃんと信念持ってやってます。
奥津:ソニーミュージックに属している身としては、こういうプロジェクトが立ち上がること自体がすごいありがたいし、幸せな環境にいるなって感じました。表現をする人ってやっぱり心の波が大きな職種ではあると思うし、でもそれはともに付き添ってくれているマネージャーさんも同じです。この職種だから必要というわけではなくて、心のケアはどの職種にも必要なことなので、このソニーミュージックという会社で始まったことが、社会に広まる、その発信をするお手伝いを頑張ろうと思いました。
■【後編】では、現アイドル(奥津)と元アイドル(中元)の体験を踏まえての言葉が心に響く内容に
番組の【後編】では中元が心療内科、精神科、カウンセリングの違いをわかりやすく説明し、自身のセルフケアの方法も教えてくれる。さらに奥津が過去にアルバイト先でパワハラにより心に不調を抱え、心療内科に行き、薬を処方されるも根本的な解決にならなかったという経験をもとに、カウンセリングに行くことの大切さを語ってくれる。どうやって前を向くことができたのか、現アイドルと元アイドルの体験を踏まえての言葉が心に響いてくる。必聴だ。
メンタルケアのことをあらゆる角度からカジュアルに話せる場所──ありそうでなかった場所が「B-side Talk~心の健康ケアしてる?」だ。小原の「ゆるく聴いてゆるく自分に当てはめて、いいとこだけを切り抜いて食べていくみたいな、そんな番組になったらいいな」という言葉が、すべての視聴者の心に寄り添うこの番組の本質を表しているのではないだろうか。
TEXT BY 田中久勝
PHOTO BY 大橋祐希
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