■映画のハッシュタグは「#碁盤斬り」もしくは「#ごばんぎり」に決定。「ご飯じゃないよ、ごばんだよ。このフレーズ気に入っているけど、いまいちウケなくて…」(草なぎ剛)
草なぎ剛(「なぎ」は、弓へんに前+刀が正式表記)と白石和彌監督がタッグを組んだ映画『碁盤斬り』が、5月17日、TOHOシネマズ 日比谷他にて全国公開。このたび、本作の豪華キャストが勢ぞろいし、完成披露先行上映会が開催された。
■『碁盤斬り』完成披露先行上映会 実施概要
日程:4月23日(火)
会場:TOHOシネマズ 六本木 スクリーン7
登壇者:草なぎ剛、清原果耶、中川大志、奥野瑛太、音尾琢真、市村正親、斎藤工、小泉今日子、國村隼、白石和彌監督
【イベントレポート】
寡黙な武士、柳田格之進を演じた草なぎは、舞台挨拶冒頭から満面の笑みを浮かべ、充実感を漂わせる。撮影以来となる共演者との再会を喜び「みんなのグルーヴがすごくいい!」とニッコリ。自分の持っているものすべてを出し切れたと話した草なぎは「幸せな環境で映画が撮れました」と報告、撮影現場は作品に関わるすべての人、職人のこだわりが詰まっていたとし「皆さんのおかげで(格之進を)ちゃんと演じられました。代表作になったと思います!」と胸を張った。
格之進の娘・お絹役の清原は「現場で草なぎさんを見かけるたびに、“父上”という気持ちになって。格之進として佇んでいらっしゃって、とても支えられました」と感謝。父・草なぎの背中を「追いかけられたらいいな、支えられたらいいなという思いで見つめていました。草なぎさんのおかげでお絹ちゃんとしていることができたと思います」との清原の言葉に草なぎは「その言葉、一生大事にします! 忘れません」と返し、父娘のほっこりトークで和ませた。
萬屋の亭主・萬屋源兵衛役の國村は「タイトルにもあるように碁盤を挟んだシーンがたくさんあります。碁がテーマでもありますが、碁のシーンを通して、格之進の性格を伝えていくという意味合いもある作品です。碁のシーンで格之進の中身が変わっていくのを感じられると思います」と笑顔でアピールした。
萬屋の手代・弥吉役の中川は「すごくピュアで真っ直ぐな武士の子。小さいときに源兵衛に拾ってもらい、息子のように育ててもらった青年です。映画の中で起きる事件に大きく関わるという役どころ。囲碁がベースになっていますが、とても親近感のある、身の回りで起きるような出来事を描いた作品です。弥吉のポジションは苦しいけれど、応援したくなるような弥吉になればいいなと思いながら演じました」と役作りを振り返った。
音尾が演じた萬屋の番頭・徳次郎はトラブルの発端となる役どころで、いわばトラブルメーカー。中川が「あの人のせいです!」とトラブルを引き起こした音尾を指さすと、「トラブルを起こして申し訳ありませんでした」とお詫び。中川と音尾のトークのコンビネーションで会場を沸かせた。撮影現場で印象的だったのは座らない草なぎの姿と明かした音尾は「神経が研ぎ澄まされているのでしょうか。本番に合わせてググッとフィットしていくために、研ぎ澄まさせている姿を見ていました。今日は現場と違ってかなりふわっとしています」と撮影中とイベントでの草なぎのギャップを指摘。
音尾のコメントに「ありがとうございます、高倉剛です」と撮影現場で座らないことで有名だった高倉健になぞらえ、キリッとした表情を見せ笑いを誘った草なぎは、座らない理由について「5秒で眠くなっちゃう(笑)。みんなよく眠くならないよね。僕は夜10時には寝るけれど、座ると眠くなっちゃうんだよね」とマイペーストークを展開し、会場を笑い声でいっぱいにした。
すべてのキャストと絡みがあった草なぎは、撮影中のエピソードを次々と披露。音尾については「ずっと写真ばっかり撮っているカメラ小僧」とニヤリ。「この話でいいの?」と確認しつつ、カメラトークは止まらず、中川に至っては音尾にすすめられたカメラを購入したことも明かされた。自身のトークの順番だったにも関わらず、どんどん共演者とのエピソードを話し続ける草なぎに、時折ツッコミを入れ笑わせた音尾は、しっかりと作品に触れる場面も。「いい役をもらいました。今年も白石監督にお歳暮を送ります」と白石作品常連・音尾ならではのおなじみのフレーズで盛り上げた。
草なぎはそれほど囲碁には興味が持てなかったようで「囲碁を打つところだけ教えてください、って先生にお願いしました(笑)」と照れ笑い。「先生が“え?”って感じになっていたけれど、中川くんと清原さんが熱心に(先生に)囲碁のルールを質問してくれたのでよかったと思います」と安堵。國村との共演シーンを振り返ると、「春のシーンだったけれど、実はすごく寒くて。映像では綺麗に映っているけれど本当は寒いんです!」と草なぎが撮影時の裏話を暴露。國村が「きっと寒かったんやろうな、って思いながら観てください」と舞台挨拶後に鑑賞予定の観客に呼びかけると、草なぎは「僕(格之進)と國村さん(源兵衛)のラブストーリーにも注目してください!」と本作のおすすめポイントを伝えた。
格之進と因縁のある武士・柴田兵庫役の斎藤は「ずっとかっこいい!」と大絶賛の草なぎ。「佇んでいるだけですごくクール。なんでいつもそんなにかっこいいだ、チクショー!という気持ちを込めました」と対峙シーンへの意気込みを解説し笑わせた。町の親分・長兵衛役の市村については「すごく気遣ってくれる大先輩」と感謝した草なぎ。「いつも元気ですごい。役者として見習いたいので、健康法を教えてくださいと訊いたら、親が元気なので、と言われて(笑)。遺伝だからって。元も子もない!」と、まさかの回答があったことも明かし、笑い飛ばしていた。
彦根藩の藩士・梶木左門役の奥野については「ずっと途方に暮れていた」と撮影現場での様子をレポートした草なぎ。共演者全員との撮影を振り返り「僕はみんなと交流があったので!」と一緒のシーンがなく、今日が初めての顔合わせとなるキャストへの気配りで、いろいろなエピソードを公開したと説明していた。
「役柄としては非常にクソ野郎です…」と小声で話した斎藤の役作りは「正義への考え方」だと解説。正義の反対は悪ではない。もうひとつの正義という気持ちで兵庫なりの悪を演じたとし、格之進役の草なぎとは「最小限の動きの競技である囲碁と殺陣。静と動、ふたつの対峙をやらせてもらいました。どんなに熱を沸騰させた状態でいても、格之進と対峙すると水が変わるというのでしょうか。研ぎ澄まされた空間になってしまう。そういう格之進に静かに鳥肌を立てながら撮影していました」と語った。
このコメントを聞いた草なぎは「かっこいい…。“静かに鳥肌を立てながら”っていうセリフもらいます!」とニヤニヤ。これまでの斎藤との共演経験を踏まえ「(対峙の)集大成のようなシーンが撮れました。感謝しています」と深々とお辞儀した。そして奥野は、演じた役柄について「格之進に、つねにつきまとっている役。格之進が実直で、健気で、武士らしい姿を見せてくれるので、全幅の信頼をおきながら、ただただついていく。彼の背中をただただ執拗に追いかける役です」と独特の表現で分析し笑いを誘った。
草なぎとは29年ぶりの共演となった小泉は「まだ剛くんが20代前半だった頃。少年っぽさが淡く残っていたときにテレビドラマで共演して。放送が始まって剛くんのキャラクターが人気になって、出番が増えていき、キャラクターが大きくなっていったのを覚えています」としみじみ。「当時から演じることを楽しんでいたし、すごく素敵でした。久しぶりにお芝居を一緒にしたけれど、背中が素敵で。主役としてすべてを背負って引き受けている姿に感動しました。この背中の役に立ちたいと思いながら、お庚という役を一生懸命演じました」と話す小泉に草なぎは「キョンキョン大好きです!」と答え会場を盛り上げる。
さらに草なぎは17年ほど前に小泉からプレゼントされたTシャツにサインをしてもらったエピソードも明かす。「和柄で、今回の作品に合っていて。撮影中の2週間、パジャマにしてました、洗わずに(笑)」と付け加え、さらなる笑いを誘っていた。「春の撮影で花粉症がつらそうだった」と撮影中の草なぎの様子を思い出した小泉。すると草なぎが「かゆいし、鼻をかむと髭がとれちゃう。鼻をかむたびに(メイクの)直しが入って。それがいちばん大変だったかも」と撮影時の苦労を明かす場面もあった。
市村とは「いつか一緒にミュージカルを!」という話で盛り上がったそう。イベントで草なぎがその話を続けようとしたところで「今日は『碁盤斬り』の話をしましょう!」と市村が脱線を防ぐナイスなフォローを見せて笑わせた。
本作で時代劇に初挑戦した白石監督は「日本の映画史は時代劇とともに発展しました」と切り出し、「スマホの寄りを撮らなくていいなど、(現代劇とは違う)発見がいろいろとありました。今後もぜひ、時代劇に挑戦したいです」と充実感を漂わせる。こだわったのは江戸時代の光源だとし、限られた光源でどれだけの表現ができるのか、かなり攻めたとも話していた。さらに「普段はフレームからはみ出るような荒々しい映画をと思っているけれど、今回は美しい映画をという思いがありました」と初時代劇への見せ方にも触れ、注目してほしいポイントともしていた。
作品にちなみ“復讐したいこと”を尋ねられた草なぎと清原。草なぎは「今日の舞台挨拶をもう一回やり直したい。リベンジしたい(笑)」と少しうつむき、「テレビカメラとかいっぱい入っているのに、どこが切り取られるんだろうと急に不安になってきて…」とここまでの自由なトーク展開を苦笑い。「では、私はそのリベンジを応援します!」と気合いを見せる清原に草なぎは「清原さんはちゃんとしてたよ」と優しく返答。「これだけ(キャストの)みんなが集まるのは最初で最後かもしれないのに…」としながらも「映画をたくさんの人が観てくれたらリベンジできるかも!」と、今後もイベントが開催されることを願いつつ、たくさんの鑑賞を呼びかけるというナイスなPRで大きな拍手を浴びていた。
最後の挨拶では本作の宣伝を務める観客に向けて、SNS投稿時の「#(ハッシュタグ)」も発表。「#碁盤斬り」もしくは「#ごばんぎり」とのこと。「漢字は難しいから、ひらがなでもいいです。ご飯じゃないよ、ごばんだよ。このフレーズ気に入っているけど、いまいちウケなくて…」としながらも、最後までしっかりと映画を宣伝していた。
■すでに海外から反響も!
なお、本作は、英語タイトル『BUSHIDO(ブシドウ)』として、4月に開催されるイタリアのウーディネ・ファーイースト映画祭のコンペディション部門での上映が決定。さらに、フランスの配給も早々に決定。フランスの配給会社、ART HOUSE FILMS(アートハウス・フィルムズ)社の社長エリック氏は、「演出も俳優陣の芝居もとてもいい。この映画は侍映画の伝統を引き継いでおり、とてもエレガントでよく出来ている」は語っている。
【囲み取材】
参加者:草なぎ剛、清原果耶、中川大志、斎藤工――時代劇への挑戦。役作りで気をつけていたことは? 役との共通点は?
草なぎ:食べ過ぎないこと。食べすぎると気持ち悪くなっちゃうので。食べすぎないでよく寝ること。役作りは現場の皆さんのお芝居の熱量で「バーン!」って出す感じ(笑)。京都の撮影所だったので、必要以上に役作りをしなくても、現場の雰囲気に溶け込むだけで十分だった気がします。格之進との共通点はまったくない! かわいらしい娘がいるのに、なんでそんなことをするんだとイライラしながらやっていました。詳しいことはネタバレになるので言えないけれど…。
清原:時代劇らしい所作を先生に教えていただいたくらいかな。草なぎさんがおっしゃったように、現場に行って父上と対峙したときに感じるもの、それを信じればいいと思っていました。役作りとして特に深くいろいろと考えたことはなかったです。似ているところはまっすぐなところ。お絹ちゃんが自分の信念を持っているところは共感できると思いました。
斎藤:撮影所から出るオーラとか周波数で役作りができました。あの時代の生活や空気感を作品に関わる職人たちが生み出してくださったので、その世界に入っていけました。役柄としては史上最低のキャラクター(笑)。救いがないなと思いながらも、(役とは)演じるという関わり方だったので、彼は何を信じて格之進と対峙するのか、唯一の理解者として兵庫というひとつの生物を演じました。
中川:囲碁の達人でもある格之進と出会って、弥吉も影響を受けて囲碁を始めます。(ネタバレになるので言えないですが)実はもうひとつ、弥吉には囲碁を始めるきっかけとなる動機があります。現場に囲碁の先生がいたので、教えていただきました。スマホのアプリから始めて、小さなマス目の少ない囲碁を撮影の合間にセットの隅っこで清原さんと一緒にやっていました。囲碁を始めたばかりという役だったので、自分とリンクさせて囲碁を楽しみながら演じられました。役と通じる部分は、板挟みになるところ…かな?(笑) あのときあーしておけば、大ごとにならなかったのに、みたいなことってみんなが経験しているはず。はっきりとものを伝えることが苦手なときもあるので、そんなところは共感してもらえると思います。――撮影中のエピソード。父娘役を演じる上でのコミュニケーションについて。
草なぎ:会った瞬間から初めてじゃないような雰囲気があって。清原さんだけに清らかな心で(笑)。ご自身もおしゃっていたけれど、ストレートでまっすぐな方。僕は初めての方には緊張するところもあるけれど、清らかでまっすぐな心がスポーンと入ってきた感じがあります。最初のふたりのシーンは平和なシーン。すごく大事なところで、(初対面の印象が)いちばんの大きな役作りになりました。
清原:ずっと「いつかご一緒できたらいいな」と思っていたので、実はすごく緊張していて。初めましてをどういう距離感で言えばいいのか迷っていたら、会ったときに「絹ちゃん、僕の娘だから」と言ってくださって。その言葉にすごく励まされたし、その事実だけを信じて(京都という場所で)やっていれば、それ以上のことはいらないと思えました。
草なぎ:(清原のコメントに対し)照れちゃう! 幸せです。ありがとう!――舞台挨拶でも触れた、本作に関わった職人のこだわりを感じた点。
斎藤:格之進との対峙では殺陣があったけれど、僕は準備の時間が結構あったのですが、剛さんは合間の時間で立ち回りを覚えていらっしゃった。すぐに落とし込んでいる姿を見てすごく驚きました。ダンスの振り付けのように覚えるんです。本番ではそこに感情がのっている。神技を見たような気がしました。
草なぎ:(斎藤のコメントに対し)褒められてばっかりでうれしい! こういう場所っていいよね(笑)。工くんはターニングポイントで戦い合うみたいな形で共演しています。今回はその集大成。胸を借りてぶつかっていけたので、人間同士が戦っているような殺陣になったと満足しています。クライマックスに注目です。
中川:京都の撮影所に初めて行ったのは10代のとき。撮影所の独特な雰囲気、伝統もあるし、変わらぬ技術や受け継がれてきた技術がある。そんな撮影所に、初めての時代劇に挑戦する白石監督。昔ながらの技術と初めての時代劇への挑戦というのがミックスされて、日本の時代劇へのリスペクトもあるし、今の時代劇の形だとも思いました。世界のお客さんに観てほしい作品になりました。――京都での撮影。リフレッシュ方法は?
草なぎ:割と朝から晩まで撮影していたのですが、隠れて古着屋に行ってました。お店を開けてもらって、隠れて行って(笑)。古着を買いました。デニムも買って。結構いいお店があるんです!
斎藤:映画館、ミニシアターに通っていました。――初共演の草なぎ、中川。お互いに感じたすごさとは?
草なぎ:仕上がりですよね。日本屈指のイケメン! 世界の方が観ても工くんもそうだけど、「ナイスイケメン!」ってなるはず。ただカッコイイだけじゃなく、内側から出てくるパッション、エネルギーを感じます。他の作品でも感じていました。そういうのを持っているのはすごく魅力的。「ただのイケメンじゃない」って言えちゃう人。中川グルーヴを心に抱えている。僕のほうが年上だけど、尊敬できるマインドがある人です。
中川:いつか共演させていただきたいと思っていたので、今回はすごくうれしくて。これまで作品で観てきた草なぎさん、バラエティなどで観てきた草なぎさんは知っていたけれど、現場でお芝居にアプローチしている姿は共演しないと見えません。いろいろなアプローチをする役者のなかで、どんな感じで現場にいらっしゃるのか、(直接、目にできることに対し)すごくドキドキしていました。実際の草なぎさんは拍子抜けしてしまうほど自然体。すごくホッとしました。初日は緊張していたのですが「おはよー」って感じで現場に入ってきて。本番に向けてギアがあがっていく感じを近くで見れたのもうれしかったし、完成した映画でよりいろいろなことに気づくことができました。今まで会ったことのないタイプの方。いろいろ衝撃的でした。――碁盤の達人、格之進の武器は囲碁のスキル。ご自身の武器は?
斎藤:よく言われるのは声。年々低くなっているのを舞台挨拶でのマイクを通して感じています。退化なのか進化なのか(笑)。僕の特長だと思うので、今後も観察していきたいです。
中川:洗濯物をたたむことかな(笑)。SNSなどでいろいろたたみ方を探すのが好き。Tシャツとか綺麗に畳めます。お店のようなたたみ方、かつ素早くたためます。
清原:雨女、晴れ女、ではなく自称・風女(笑)。自分の寄りになると風を吹かせられるんです。風が吹いて撮り直しになったこともあるくらい。風が吹いちゃいます!
草なぎ:みんないいこと言ってずるいなー。僕は凹まないところかな。失敗してもなんとかなるんじゃないかって、ポジティブに考えられるところ。でも、今日の舞台挨拶はちょっと凹みました。久しぶりの舞台挨拶で、たくさんのテレビ(のカメラ)も久しぶり。空回りしちゃったかも(笑)。でも、それもすべて自分。凹みません。失敗の先に成功がある。ポジティブでしょ? アハハハ!
映画情報
『碁盤斬り』
5月17日(金)TOHOシネマズ 日比谷他全国ロードショー
出演:草なぎ剛
清原果耶 中川大志 奥野瑛太 音尾琢真 / 市村正親
立川談慶 中村優子
斎藤工 小泉今日子 / 國村隼
監督:白石和彌
脚本:加藤正人
音楽:阿部海太郎
配給:キノフィルムズ
(C)2024「碁盤斬り」製作委員会
映画『碁盤斬り』作品サイト
https://gobangiri-movie.com