■「artificial idiot.」では、この楽曲にフィーチャリング参加したオーストラリア発のバイリンガルラッパー、Cyprusが登場!
CVLTEが、3月13日にリリースしたメジャー1stアルバム『DIGITAL PARANOIA 2052』のリリースパーティーを3月16日に大阪・BIGCAT、3月29日に東京・Zepp Shinjukuで開催した。この記事では、3月29日に開催された東京公演の模様をレポートする。
開演前、Zepp Shinjukuのフロアには緊張感と高揚感が漂っており、駆けつけたオーディエンスが、これから始まるCVLTEのワンマンライブに並々ならぬ期待を寄せていることがありありと現れていた。
そんななか、場内が暗転すると同時にSE「2052.(main menu)」が響き渡った。ゲームのメニュー画面を連想させるサウンドで一気に会場はCVLTEが描く『DIGITAL PARANOIA 2052』の世界へ。ライトの激しい明滅と合わせてメンバーが次々に登場するとクラップと同時にフロア前方は押し寄せるオーディエンスで早くも混沌とした様相と化した。
その勢いのままにアルバムと同じ流れで1曲目「vanish.」のイントロが流れステージバックのLEDビジョンには砂漠を連想させる岩肌の映像が流れた。「vanish.」はブレイクビーツのリズムを軸にスケールの大きなラウドロックを連想させるドラミングが重なってくる構成が最高にダンスできる曲でもあり、すでにフロア全体がジャンプしており異様な一体感が構築される。
「vanish.」に限らず、アルバム『DIGITAL PARANOIA 2052』に収録されている曲には、トラップやテクノ、ブレイクビーツにハウスなどクラブミュージックとバンドサウンドの絶妙なミクスチャー感が表現されている。この個性はCVLTEが本来持ち合わせている魅力ではあるが、その表現がよりいっそう深く濃いものになっており、それゆえに映像とのシンクロ率も高くライブ全体を通して没入感のあるものになっていた。
かと思えば、3曲目の「lullaby.」で壮大な世界観を感じさせるラウドロックを奏でて軽快な気持ちにさせてくれたり。4曲目の「iShadow.」では再びブレイクビーツに乗り徐々に一体となっていくサウンドに合わせて、aviel kaei(Vo)がフロアに差し出したマイク目掛けてサビを大合唱したり。曲ごとにジャンル的振れ幅が大きく、さながら音で脳をかき混ぜているような感覚をあって独特の陶酔感が感じさせれた。それを象徴するようにフロアにはいい知れない高揚感に満ちていた。
終曲後、ステージが暗転。仄暗いライトと自然の音をサンプリングしたSEに合わせて「いいエネルギーですね。」というavielの言葉から「kill without the k.」へ。イントロのヘヴィなリフを弾くTakuya(Gu)とFuji(Ba)のふたりは全身を使ってヘッドバンキング。イントロの後は四つ打ちのビートにR&Bを彷彿させるメロデイが乗るパートへ展開するのだが、オーディエンスはその激しい曲展開にぴったりと付いていく。その整合性が取れた光景に驚かされた。
avielは常に曲に合わせて右に左に揺蕩うように動きながらも、しっかりとオーディエンスに向き合う。「dead2me.」ではオーディエンスのスマホを受け取りライトを点灯させて左右に揺らして場内に祝祭めいた一体感を生み出すなど、広いZepp Shinjukuではあったがバンドとオーディエンスのたしかな繋がりを感じさせたシーンが多々あった。
その後の「opium.」ではバンドのパフォーマンスにすっかり見惚れてしまった。一聴するとバラードを彷彿とさせるような美しい旋律が特徴の曲なのだが、リリックの内容は異なっており、そこには寂寥さが落とし込まれている。ときに項垂れ、俯いて歌い上げるavielに対し、TakuyaとFuji、HAL(Dr)の3人は一体となったように一定のリズムを刻みながら曲の雄大さをアクトで示す。その豊かな表現力は大型音楽フェスなど数々の大舞台を経た今のCVLTEだからこそ実現できるものであり、バンドとしての強さを感じさせられたワンシーンでもあった。
続いて、静けさのなかでギターリフとともにスタートした「girls lie.」は一転してポップパンクな雰囲気が感じられ伸びやかなメロディがサビで爽やかな心持ちに。曲ごとに音像がくるくると変わるのだが、どの曲を取ってもCVLTEの音楽でしかない。そんな不思議に調和が取れた空間の中にいると、次にどんなビートが投げかけられるのかワクワクしてしまった。
真っ赤な照明が会場全体を包みこみ、ダークなSEが流れ、「hellsong. (let it in)」のイントロが流れるとワッと大きな歓声があがりステージへ差し伸べられていく無数の手。ヒップホップ的なビートとバンドサウンドのバランスが調和した曲はまさしくハイブリッドなCVLTEの世界観であり、その独特な音像が実に心地よい。
11曲目はアルバム『DIGITAL PARANOIA 2052』収録曲の「artificial idiot.」。ここで、フィーチャリングされているオーストラリア発のバイリンガルラッパー、Cyprusがステージに登場。どこかメロウでポップなメロディ感が心地よい曲でもありオーディエンスもCyprusの歌に合わせて思い思いに飛び跳ねていた。
HALのドラムとTakuyaのギターリフからスタートするCVLTEらしいラウドな曲「happy.」では会場が明るく照らされフロアは大興奮。曲の中盤でドラムの上に立ってフロアにアプローチするHAL、そんなドラムセット目掛けて激しく身体を揺らすFujiにTakuya。「happy.」同様、この日はCVLTEを代表する過去曲も演奏された。特筆すべきは14曲目の「falling apart.」であろう。2019年に発表されたシングルでもあり、ラウドロック然としたサウンド感やメロディが魅力的でギターのアルペジオが美しい。まさかの選曲には会場も大歓声。昔からのファンにとっては至極のひとときだったのではないだろうか。
ライブ終盤戦。「bloodbath.」から「eat acid, see god.」と立て続けにポストハードコア的な攻撃的ナンバーを投下し、フロアはぐちゃぐちゃのカオティックな空間へ。一気にライブはクライマックスを迎え、avielがマイクを差し出して煽れば、当たり前のように大きなシンガロングで会場が埋め尽くされる。
「memento molly.」では曲間でオーディエンスを座らせてからのジャンプ。完全にステージとフロアは一体となりアルバム『DIGITAL PARANOIA 2052』の最終曲「digital paranoia.」へ。本楽曲の後半にはテクノパートが用意されており、そこに差し掛かると会場の様子は一変。先ほどまでのライブハウス空間からクラブの光景へ様変わりし、四つ打ちに合わせてステージを動き回るCVLTEのメンバーに合わせてオーディエンスもバウンス。四方八方に歓声が挙がり、CVLTEならではのダンスタイムが生み出された。
「声を聞かせてください」というavielの言葉から最終曲は「scorpion.」。この曲こそあらゆるジャンルの音楽やビートが組み込まれた楽曲であり、巧みに組み合わされたリズムが観衆の感受性を揺さぶる。同時にサビは全員で合できるポップさを兼ね備えており、同時にヘヴィなギターリフもふんだんに盛り込まれている。
CVLTEは、2023年8月から3ヵ月連続公演『SCORPION PROJECT』を、この日と同様にZepp Shinjukuで開催したが、そのプロジェクト名にもなった曲である。現在のCVLTEらしさを凝縮させた曲のひとつであり、その曲がしっかりとオーディエンスの一部に昇華されていた。
鳴り止まないSEのなか、メンバーが各々に感謝を示してステージを去ったあともしばらくの間ビープ音のようなサウンドエフェクトが続き、次第にハウリングが止んでいくようにフェードアウトしていって終幕。一瞬の静けさののち、拍手が瞬く間に会場全体へ波及し、まるでひとつのサイバーパンクな映画を観たような多幸感とトリップ感に包まれたまま、観客は夢見心地で会場をあとにしていた。
TEXT BY Ryo Tajima
PHOTO BY Erina Uemura
<セットリスト>
01. vanish.
02. tokyo insomnia.
03. lullaby.
04. iShadow.
05. kill without the k.
06. dead2me.
07. mutant.
08. opium.
09. girls lie.
10. hellsong. (let it in)
11. artificial idiot. feat. Cyprus
12. happy.
13. run.
14. falling apart.
15. bloodbath.
16. eat acid, see god.
17. memento molly.
18. digital paranoia.
19. if I stay high.
20. scorpion.
セットリストプレイリスト
https://cvlte.lnk.to/DP2052_Live_Setlist
CVLTE OFFICIAL SITE
https://www.cvltecult.com/