■「(カイは)意外な弱点があって子ども好き」(リョウガ)、「リョウガさんは特に可愛いところが多い」(カイ)
9人組ダンス&ボーカルグループの超特急でメインダンサーを務めるカイとリョウガが、ふたりだけのトークライブ『稜海しました!』を2月25日に東京・大手町三井ホールで開催した。
超特急のライブでは毎回MC担当として、巧みなトークさばきを披露しているふたりが、本名の小笠原海と船津稜雅名義で主催し、そのコンビ名をタイトルに取った本イベントも、2023年秋に続き2回目。東京と大阪で行われた前回は、カイによると「TWICEなみの倍率」を叩き出し、今回も当初は名古屋と富山のみで公演される予定だったにもかかわらず、急きょ東京での追加“凱旋”公演が決まったという。結果、3都市6公演すべてのチケットは、当然ながら即日完売。前回にも増して切れ味鋭い…ならぬ、ユルさが研ぎ澄まされたトークでオーディエンスを翻弄し、笑いの渦に巻き込んで、卓越したトーク力を証明してみせた。
今回のキービジュアルと同じく、白の拘束衣を着たふたりがもがき、さまよう、まるで幻想SFのようなオープニング映像から一転。白にゴールドのラインが入ったジャージ姿で素舞台に現れたふたりを目にした客席から、昼の1部ではさざ波のような笑い声が起こり、リョウガは「なんで何も言ってないのに笑われたんだろう?」とボヤいてみせる。
夜の2部ではオープニング映像について「意味が分からない」(リョウガ)、「持っていた林檎はスタジオにあっただけ」(カイ)と明かしたが、そんな不条理やナンセンスも彼らの人気の秘密で、中には今日のために中国や韓国から来日したオーディエンスも。さらに「この日のためにスケジュールを合わせてきた関係者もメッチャいる」(カイ)ほど場内の期待は熱かったが、それと反比例するように平常運転のふたりによるヌルいテンションで、待望のステージは幕を開けた。
大まかな構成は決まっているものの、「一回も頭の中で推敲せずに言葉が出てる」とカイが言う通り、完全ノープランなのが『稜海しました!』最大の醍醐味。超特急では2時間以上を費やしている当日リハーサルも、この日はわずか8分で終了したというが、そんな中で偶発的に生まれたネタが予想もつかない方向に転がって、客席の笑いをかっさらっていくのだからたまらない。
1部ではド頭から“欲しいグッズ”の話を持ち出して、リョウガが「俺はレンゲ。飲み干したら俺の顔が出てくる」と奇想天外なアイディアを出せば、カイは「裏側にいる俺は、ずっと汁に浸かってるから苦しそうな顔してる」とブッ飛んだ発想で返し、トーク巧者ならではの頭の回転の速さを発揮。そこから突然「相談事いい?」と警視庁を名乗る詐欺メールを受け取った話を始めたリョウガも、最終的には「本当にお金が必要なら電話が来るから、メールに来るのは全部嘘。騙されないでください!」と熱弁して、「すごい! セミナーみたい!」と拍手喝采を受ける。
しかし、すぐさま「でも、ここに来てる時点で俺たちには騙されてます!」と続けた通り、その後も不思議な稜海ワールドでオーディエンスを騙し続けることに。『稜海の妄想タイム』なるコーナーでは“背後霊と仲良くする方法を教えてください”というお題に、「一緒に綺麗なイルミネーションとか、ホラー映画を観る」(リョウガ)、「SNOWの自撮りで顔を交換する」(カイ)と真面目に答えるが、これで終わるわけがない。「霊は塩に清められちゃうから、できるだけ塩味をやめる。煙も嫌がるからタバコもやめる。つまり、健康に過ごせば仲良くなれるのです!」と両手を広げて訴えるカイには、満場の拍手が。若干エキセントリックな光景だが、確かにそのトーク展開の上手さには心酔するに値すると思わせる説得力がある。
2部では“UFOに連れて行かれそうになった時、回避の仕方を教えてください”というテーマに、リョウガが「科学的に言うと反重力装置だね」「宇宙人は未来人だと思ってるから。グレイ型は未来の人類の姿なんじゃないかな」と、知性派な一面を見せる一幕も。しかし「信じるか信じないかは、あなた次第です…!」とカイが続けて、再び「セミナーみたい」の声を呼ぶのだから、そのギャップのデカさに腹筋崩壊必至だ。
そんなトークの最中には、カイがリョウガの背後霊となって背中に張りついて回ったり、肩に拳を叩きつける美容院式マッサージをしたりと、普段のライブでは絶対に見られないアクションも。来場者からの質問をボックスからランダムで引いて答える『稜海!の質問コーナー!』では、「インドアな彼氏と共通の趣味が欲しいです」という質問に、ふたりでマンガを読んだり、一緒に『マリオカート』で遊ぶ場面をシミュレーションして、場内に笑いと黄色い悲鳴を呼んだ。
ちなみに、質問コーナーでは質問者に詳しい事情を直に聞いたり、解決策を会場に問いかけたりと、完全なる客席参加型になっていたのも大きな特徴。“最近買ったものは?”とふたりに聞いたファンに同じ質問を返したところ「ワンエン(ONE N’ ONLY)のグッズ」と後輩グループの名が出されて笑いが起きたかと思えば、“初対面の人と上手く話すには?”という質問に別のファンが“パッション!”とアドバイスを贈って、拍手を受ける場面もあった。
さらに、質問やトークの中で登場したキャラや人物がスクリーンに映し出され、ファンとふたりが同じ画像を一緒に眺めたり、マクドナルドやバーミヤンのメニューに「美味そう!」と声をあげたりと、会場がひとつになることも多々。メンバー、スタッフ、ファンが『稜海しました!』という時間と空間を心から楽しんでいることが、すべての演出から伝わってくる。
また『稜海しました!』は、あくまでも小笠原海と船津稜雅のイベントということで、1部では“超特急のカイ”を、2部では“超特急のリョウガ”をふたりで褒めちぎって! というニヤリとするようなお題も出された。
カイに関して「バラエティでも一発目として模範解答を見せてくれる」と納得の長所をリョウガが述べれば、カイは小笠原海として「可愛いところもあるんです。ドラマを観ながら湯船に浸かって、終わる頃を見計らって栓を抜くのに、思ったより分数が長いと、すっぽんぽんのまま空の浴槽に横たわってることが結構あって愛らしい」と衝撃の告白を。さらに「見た目は大人っぽくてクールっぽいのに人懐っこい。隙が無いように見えて鎖骨が弱かったりコーンが食べられなかったり、意外な弱点があって子ども好き」とリョウガが付け加えると、カイも「魅力は尽きないですよね…いいところだらけだ!」と胸を張った。
対照的に「リーダーとして頑張ってる」「髪型もこだわりがなくて、次、何色にしたらいい? って聞いてくる」「くしゃみと咳がほぼ一緒。リョウガさんは特に可愛いところが多い」とカイに畳みかけられたリョウガはガチ照れ。「時期によって好きな飲み物が変わる。最近はジャスミン茶ばっか」「手相の生命線が短すぎるのに悩んでたらしい」と、褒めちぎるのとは違うコメントを絞り出すが、それに対しても客席から“可愛い~!”の声があがって、「『稜海しました!』は“可愛い”禁止で!」と言い出す始末だ。それでも「可愛いって言ってるほうが…可愛いよね」と決めるあたり、さすがの彼氏力の高さである。
こんなふうにふたりのダンスパフォーマンスではなく、一挙手一投足を目撃しに来るファンの“濃さ”は推して知るべしで、この日の客席はふたりを全肯定。“マクドナルドでドリンクは何を頼むか?”という話になった際には、「子供のときは絶対ファンタ、今はオレンジ」と言うカイにも、「俺はずっとファンタグレープ。たまにQoo」と言うリョウガにも“可愛い!”の声が湧き、思わずカイが「重症者しかいない…」と呟くシーンもあった。
そこで“稜海のファンネームは?”という2部での質問には「重症者か患者」と即答。リョウガからは「ぢゅうしょうしゃ」とひと捻りしたネーミングも生まれたが、結論としては「好きに言ってください。何でもいいです!」ということになったので安心してほしい。また、前回は黒のスーツ、今回は白の拘束衣と、意表を突きすぎるビジュアルを立て続けに出してきた本公演だが、”次のキービジュアルどうします?”というスタッフからのリクエストに、カイは「インスピレーションが止まらない!」と大興奮。「甲冑、鎧、サムライとか。最後に切腹して、そこから『稜海しました!』って出てくる」、「テレビが生まれた時代にタイムスリップして、初めて放送された番組が『稜海しました!』とか」と次々にアイディアを披露して、さすが超特急の衣装担当と納得させた。
“好きな妖怪はなんですか?”というファンの質問に、子泣き爺と砂かけ婆を混同したリョウガは「おぶつきばばぁ」という新語を爆誕させ、“超特急の別のメンバーでトークショーをやるなら、どの組み合わせ?”という問いに、カイは「タカシとマサヒロ」と一択。「何しゃべってるかお互いわかってないまま、ずっと進みそう。1回YouTubeで配信してみてほしい!」と語ったりと、今回も客席の笑いのツボを突きまくった『稜海しました!』だが、その合間にポロポロと名言も飛び出した。
生命線の短さに悩むリョウガは「生き方なんて自分で決めろ!」と自身を鼓舞し、“好きな人が忘れられないから新しい恋がしたい”というお悩みには「恋って偶然。無理に出会おうとしなくていいと思いますよ。俺らもいるし」とカイが回答。ユルい笑いで日々の疲れを癒しつつ、その裏で明日を生きる力も秘かに与えてくれるのだから、人気が出ないはずがない。
1部の終演後には『稜海しました!』のLINEスタンプが制作予定であること、2部では月額定額動画サイト・スターダストチャンネルの人気企画『きまぐれ男子』に稜海ふたりで出演することが告知。スターダストプロモーションの所属メンバーが胸キュン台詞を囁いてくれる本企画にふたりが出演するのはかなり久々で、スクリーンに“きまぐれ男子出ます!”の文字が現れると、この日最大の歓声が場内に満ちた。
次回の『稜海しました!』開催は未定だが、カイは「第3弾はやりますよ!」と断言。春夏に全国ツアーを行う超特急の活動には被らないようにしたいということで「9月、10月とか」と見通しを語り、読み切れなかった質問に答える配信もやりますと約束してくれた。ちなみに今回、公演地に富山が入っていたのは第1弾のトークで富山の話題が出た縁からだったが、第2弾では特に地名が出なかったということで「美味しいものが食べたいので福岡か北海道のどっちかに行きたい!」とのこと。『稜海しました!』でも47都道府県開通を目指している彼らの野望は、まだまだ果てしない。
TEXT BY 清水素子
リリース情報
2024.01.09 ON SALE
DIGITAL SINGLE「Re-ver.」
2024.04.17 ON SALE
EP『Just like 超特急』
超特急 OFFICIAL SITE
https://bullettrain.jp/