■「これからもこの時期にライブをやっていこうと思うので、来年も良かったら来てください」(川上洋平)
2021年の12月24日と25日に初めてソロアコースティックライブ『Yoohei Kawakami’s #room665』を開催した[Alexandros]川上洋平。2022年も同じ日程で開催されたソロアコースティックライブが2023年も開催。クリスマスイブ&クリスマス恒例になりつつあるスペシャルなイベントの初日、12月24日のライブレポートをお届けする。
場所は今年オープンしたばかりの新宿の新名所、東急歌舞伎町タワーの6階にあるTHEATER MILANO-Za。ステージ上にはベッドやテーブル等が置かれ、ライブタイトルに「room」と冠しているように、まるで部屋のような空間が広がっている。
そんな空間にふらっと現れた川上洋平は拍手と歓声が上がるなか、「いいね、ホテルだね」と呟いてから、ステージ中央の椅子に座った。アコースティックギターを手にし、「今日はリラックスしてやりますので」と言って、大きくひと息ついて、「spy」を奏でた。
「新宿まできてくれてありがとうね」と言った川上は、アコギを爪弾き、いつもと比べ随分とスローテンポの「city」を演奏。川上の背後のカーテンがすっと開くと渋谷の夜景が広がっており、「city」の世界観をいっそう高めた。しっとりとしたAメロBメロを経て、熱っぽくサビに突入。高いテンションのまま、2番に雪崩れ込み、アコギと歌だけで巧みに緩急をつけ、エモーションを高めていくのが見事だ。
「これまでのステージセットはホテルや俺の部屋か曖昧だったんですが、今回は完全にホテルです」と口にした川上。ライブタイトルにある665という数字は緯度が66.5度の場所で起こる「極夜」という太陽がずっと沈んだ状態が続く現象のこと。「終わらない夜を一緒に過ごしたい」という川上の思いが込められている。
「このホテルは緯度が66.5度にあります。ずっと夜が終わらないってロマンティックでしょ? 皆さん、夜通しお付き合いください。新宿に相応しい曲をやりたいと思います」と言って、「アルペジオ」へ。気づけばステージ上の窓から見える景色は、新宿の高層ビル群の景色に変わっていた。
2021年と2022年の会場だった天王洲・寺田倉庫E HALLの約2倍のキャパシティの場内に、「今年はこれまでのソロライブとセットリストがガラッと変わりました。これまでは『真夜中』から始まったり、しっとりした曲が多かったんですけど、今回はほぼ全編激しい曲をやります」と宣言。ギターをつま弾きながら話し始める。
「今住んでるのは東京なので、東京という街を好きだなと思います。最近この曲はやってなかったんですが、この出だしから始まるのがいいなと思って選んでみました」と言って、「東京はこんなんで どうもこうもないような日々が続いているよ」という歌詞から始まる「月色ホライズン」を演奏。「飛行機の窓から世界を眺めた」という歌詞と呼応するように、窓の外の風景が次々と変わっていく。
「バンドの大元みたいなものを聞いてもらいたい。(今日演奏した)『city』はアコギで作りました。だから、皆さんに聞いてもらったのはデモみたいなもの。『こういうふうに作っているんだ』という風に聞いてもらえれば。でも、アコギじゃなくて、エレキで作ってる曲もあるんですけどね」と川上が話すと、即座にオーディエンスから「例えば?」という質問が上がった。
「(反応が)早かったね(笑)。もう少し遅らせてもらってもよかったのに」と返し、近い距離でのファンとのやりとりを楽しんでいる様子が伝わってきた。「例えばこういう曲とか…これから激しくなっていくんでよろしくお願いします!」と言い、「Rocknrolla!」を弾き始めた。サビ後のテンポが下がるところは一転して柔らかく曲線を描き、奥行きのあるプレイでオーディエンスを引き込んでいった。
「エレキで作った曲なんですが、アコギも悪くないでしょう?」と満足気。「次の曲は、最近また好きになってきた曲です」と言って、「Rocknrolla!」に負けずとも劣らないヘヴィーな「Kill Me If You Can」を披露。曲間で人差し指をくいっと上に上げると、ハンドクラップが起こり、一体感が増大した。「最高!」という声がフロアのあちこちから上がるなか、「これまでの#665はしっとりが多かったんですが、今回はこんな感じでいこうと思います」と言って、レディオヘッドの「CREEP」のカバーを歌った。
「Famous Day」「閃光」と激しい曲を続けたあと、「僕はいつもステージドリンクにアイスコーヒーを置いてるんですけど」と話しているとインターホンの音が鳴り、スーツ姿の女性がアイスコーヒーを運ぶ。
「見たことあるような…お姉さん、ピアノとか弾けたりします?」と川上が話しかけると、女性がうなずく。[Alexandros]のライブではおなじみのキーボーディスト、THE LED SNAILのROSE(「E」は、アキュートアクセントありが正式表記)だ。窓の外の景色に雪がちらつくなか、ROSEと一緒に[Alexandros]のウィンターソング「SNOW SOUND」を披露した。
「僕はクリスマスから年末にかけての雰囲気が好きで、無意識に心が躍るんですけど、これからもこの時期にライブをやっていこうと思うので、来年も良かったら来てください」と早くも来年の開催を告知。
「恥ずかしながらでいもいいので歌ってもらっていですか? 新宿!」と呼びかけ、「Starrrrrrr」ではオーディエンスの大合唱が巻き起こった。合唱の余韻が漂うなか、「今年僕がいちばんうれしかったのはライブが声出し解禁になったこと。この曲をみんなと歌うのを待ち望んでいました」と言って、オーディエンス総立ちの1階席を眺め、「いつもの光景で緊張がほぐれます」とうれしそうに話した。
本編ラストは随一のシンガロングナンバー「Adventure」「Hello hello hello」という大合唱が響く。川上が「亜麻色に染まった新宿を」と歌詞を変えて歌うと、大歓声が上がった。
アンコールで川上が再登場すると、「おかえり!」という声が上がり、まさに部屋のようなやりとりが展開された。「ソロライブで武道館を目指そうかなって思います。そこまでいったら終わります」と言って楽しそうに笑った。「さっき『新曲をやって!』という声が上がったんで、新曲をやろうかな」と口にし、「今年は新曲は『VANILLA SKY(feat.WurtS)』しかリリースしなかったですが、来年は新曲をガンガン出そうと思います」と宣言。
「僕の友達で今年失恋した方がいらっしゃいまして、その方に向けて作った曲です。僕が今年経験したライブのこととかも含まれてます。仮タイトルで『Backseat』という曲です」と紹介し、甘酸っぱく瑞々しい失恋ソングを披露した。
再びROSEが現れ、ふたりで「ワタリドリ」を演奏。ハンドクラップのなか、「傷ついた あなたを笑わせたいから」と歌ったあと、「新宿!」と呼びかけると、さらに場内の温度が上がり「ワタリドリの様に」という合唱が響き渡った。
「最後に何を演奏するか迷ったんですが、コンセプトどおりに激しくいこうかなと思います」。爽やかなメロディが響く。「Don’t Fuck With Yoohei Kawakami」だ。一気に激しいパートに突入。川上とROSE、ふたりで呼吸をはかりながら、息の合った厚みのあるアンサンブルを奏でた。大歓声が上がるなか、とても気に入っている様子のステージセットと一緒に記念撮影し、川上は去っていった。
なお翌日の12月25日のライブはStreaming+で生配信され、12月31日までアーカイブ配信が実施されている。
TEXT BY 小松香里
PHOTO BY 河本悠貴
リリース情報
2023.12.20 ON SALE
[Alexandros]
ANALOG『But wait. Cats?』
[Alexandros] OFFICIAL SITE
https://alexandros.jp