■最終日に開催された、AFAとSACRA MUSICによるスペシャルステージ
11月24日(金)~26日(日)にシンガポールで行われた東南アジア最大規模のJ-POPカルチャーイベント『Anime Festival Asia Singapore 2023』(AFA)。最終日の26日に開催されたのは、AFAとSACRA MUSICによるスペシャルステージ『AFA×SACRA MUSIC FES.』だ。
出演アーティストはFLOW、ASCA、halca、スピラ・スピカ、玉置成実(特別出演)。数々の人気アニメソングが披露され、会場に足を運んだオーディエンスを熱狂の渦に巻き込んだ。
■halcaの爽やかでエネルギッシュな歌声
『AFA2023×SACRA MUSIC FES.』のトップを飾ったのは、halca。“愛と言うには激しくて そっけないのに優しくて”というフレーズからはじまったのは、「時としてバイオレンス」(アニメ『邪神ちゃんドロップキック』OP曲)。アッパーなサウンドとキュートで力強い歌声、「ハロー、エブリワン!アイムhalca!」という挨拶が響き渡り、オーディエンスは赤いペンライトを振りまくる。
最初のMCで10回以上現地を訪れていることを告げ、シンガポール愛をアピール。さらにポップチューン「放課後のリバティ」(アニメ『ぼくたちは勉強ができない!』ED曲)、ロックナンバー「キミがいたしるし」(アニメ『BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS-』ED曲)などを次々と披露。赤と白を基調とした衣装をまとったhalcaは観客と「Do you like“NARUTO”?」と積極的にコミュニケーションを取り、心地よい一体感を生み出した。
「FIRST DROP」(アニメ『彼女、お借りします』特別ED曲)「恋愛ミリフィルム」(アニメ『彼女、お借りします』(OP曲)と同じアニメのラブソングを続けた後は、「アニメのタイトルを言うだけで“I Know”してくれてうれしいです」というMCに導かれた「センチメンタルクライシス」(TVアニメ『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』ED曲)を歌い上げる。ラストは疾走感あふれるギターロック「誰彼スクランブル」(アニメ『Engage Kiss』OP曲)。爽やかでエネルギッシュな歌声でイベントの幕開けを鮮やかに飾ってみせた。
■ボーカリストとしての魅力をアピールしたスピラ・スピカの幹葉
2番手として登場したのは、スピラ・スピカ(現在はボーカルの幹葉のソロユニットとして活動中)は幹葉にぴったりのポジティブなナンバー「リライズ」(アニメ『ガンダムビルドダイバーズRe:RISE』OP曲)からスタート。満面の笑顔で「シンガポール!Crap your hands!」と呼びかけ、観客の手拍子を引き出す。
「サンキュー!アイム“スピラ・スピカ”!」という挨拶からカバー曲を次々と披露。シンセのリフと解放感に溢れたメロディが印象的な「FLYING IN THE SKY」(アニメ『機動武闘伝Gガンダム』OP曲/鵜島仁文)、歌い出した瞬間に大きな歓声が沸き起こった「ブルーバード」(アニメ『NARUTO 疾風伝』OP曲/いきものがかり)、「I say“ヤッホー!”You say“ヤッホー!”」と呼びかけ、日本語(?)のコール&レスポンスが発生。阿波踊りをモチーフにした「イヤヨイヤヨモスキノウチ!」で盛り上げた後は、「ETERNAL WIND~ほほえみは光る風の中」(映画『機動戦士ガンダムF91』テーマ曲/森口博子)、「空色デイズ」(アニメ『天元突破グレンラガン』OP曲/中川翔子)、「紅蓮華」(アニメ『鬼滅の刃』OP曲/LiSA)をカバー。日本のアニソン史に残る名曲を響かせ、オーディエンスのテンションはさらにアップ!最後はスピラ・スピカの「燦々デイズ」(『その着せ替え人形は恋をする』OP曲)をキラキラと歌い上げ、ボーカリストとしての魅力をアピールした。
■玉置成実のダイナミックにして感情豊かなボーカル、卓越したステージング
今年デビュー20周年を迎えた玉置成実。高い歌唱力とエンタメ性を共存させたステージを繰り広げた。まずは「Realize」(アニメ『機動戦士ガンダムSEED』OP曲)。男性ダンサーふたりとともにダンサブルなパフォーマンスを披露し、イベント全体の高揚感をグッと引き上げる。ヘビィロック系のサウンドとパワフルな歌声が響き合う「Brightdown」(アニメ『D.Gray-man』OP曲)ではフロアが真っ赤なペンライトの光で埋め尽くされ、“未来に手を伸ばし続けたい”という思いを込めた「Sanctuary」(アニメ『牙-KIBA-』OP曲)では観客の心と体を揺さぶりまくる。
ドリンクを持って「カンパーイ!」とコールするなど、リラックスした雰囲気のMCを挟んで届けられたのは、「Get Wild」(アニメ『シティハンター』OP曲/TM NETWORK/2005年に小室哲哉のアレンジ・プロデュースでカバー)。近未来的なダンストラックとしなやかなボーカル、洗練されたダンスパフォーマンスが見事に一体化。“Get Wild and tough”というサビのフレーズはもちろん大合唱だ。
ラストは「機動戦士ガンダム」シリーズの楽曲を2曲。観客に向けて“いつもサポートしてくれてありがとう”と感謝の言葉とともに届けられたのは「Reason」(アニメ『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』ED曲)、そして、2003年のデビュー曲「Believe」(アニメ『機動戦士ガンダムSEED』OP曲)へ。ダイナミックにして感情豊かなボーカル、卓越したステージングからは、現在の“アーティスト・玉置成実”の充実ぶりが真っ直ぐに伝わってきた。彼女は今も進化の途中だ。
■一瞬で会場全体を自分の色で染め上げるASCAの世界観
1stアルバム『百歌繚乱』の冒頭に収録されたインスト「Profusion」とともにステージに登場したASCA。エキゾチックな衣装に身を包んだ彼女の1曲目は「セルフロンティア」(ゲーム『ソードアート・オンライン アリシゼーション・ブレイディング』主題歌)。凛とした強さを感じさせるボーカルを放ち、一瞬で会場全体を自分の色で染め上げる。楽曲の世界観とリンクした映像も素晴らしい。
“枯れない強い想いで輝くプライド 運命に抗ってゆけ”というサビからはじまった「RESISTER」(アニメ『ソードアート・オンライン アリシゼーション』OP曲)では気合いの入ったボーカルと強靭なロックサウンドによって観客の高揚感を一気に引き上げてみせた。シンガーソングライター・阿部真央の提供曲「NO FAKE」におけるアグレッシブなステージングも最高だ。
ASCAにとっては4年ぶりのシンガポールでの公演。「戻ってこられてうれしい」と英語で伝えた後、新曲「私が笑う理由は」(アニメ『豚のレバーは加熱しろ』OP曲)を披露した。彼女自身が歌詞を手がけたこの曲は、「誰かのためだけではなく、自分の道を歩いていくためのおまじないソング」として制作されたという。ひとつひとつのフレーズに気持ちを込めて届けようとする姿も強く心に残った。
ライブ終盤でも2017 年のデビューシングル「KOE」(アニメ『Fate/Apocrypha』ED曲)、「Howling」(アニメ『魔法科高校の劣等生 来訪者編』OP曲)など圧倒的な魅力を備えたアニメソングを歌唱。シンガーとしての凄さを実感できるステージだったと思う。
■アニメソングの訴求力、FLOWのロックバンドとしての求心力がひとつに
イベントの最後に登場したのは、もちろんFLOW。“アニメ×ロック”の先駆者であり、世界にアニソンを広め続けているロックバンドだ。
1曲目は「Steppin’out」(アニメ『デュラララ!!×2 結』OP曲)。ミクスチャー的なバンドサウンドとエモすぎるメロディが共鳴し、観客は赤いペンライトを振り回しながらブチ上がる。続いて“伝えに来たよ 傷跡を辿って”というフレーズが響き渡り、この日いちばんの大合唱が生まれた「Sign」(アニメ『NARUTO 疾風伝』OP曲)、GOT’S(Ba)、IWASAKI(Dr)による鋭利でしなやかなグルーヴ、TAKEのメロディックなギターソロによって観客が楽しそうに体を揺らした「COLORS」(アニメ『コードギアス 反逆のルルーシュ』OP曲)を演奏。「僕たちはいつでもアニメと音楽でつながっているから。これからもよろしくおねがいします」(KEIGO/Vo)という言葉からはじまった「United Sparrows」(アニメ『バック・アロウ』ED曲)では、KEIGO、KOHOSHI(Vo)がポジティブなメッセージを伝える。アニメソングの訴求力、FLOWのロックバンドとしての求心力がひとつになった素晴らしい場面が続く。
ここからはオリジナル、カバーを交えた“『NARUTO-ナルト-』縛り”。(FLOWは今年7月に歴代のNARUTO主題歌をカバーしたアルバム『FLOW THE COVER ~NARUTO縛り~』をリリース)。「遥か彼方」(アニメ『NARUTO』OP曲/ASIAN KUNG-FU GENERATION)から観客のシンガロング&ウェイブが巻き起こった「GO!!!」(アニメ『NARUTO』OP曲)。新曲「GET BACK」(アニメ「帰還者の魔法は特別です」OPテーマ)を挟んで「GOLD」(アニメ『BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS』OP曲)を繋げ、会場のテンションは瞬く間に最高潮に達した。勢いとエモさ、テクニックを併せ持ったバンドサウンドも凄いが、イントロが始まった瞬間に歓声を上げ、“NARUTO×FLOW”を楽しみまくる観客もめちゃくちゃタフだ。
アンコールではhalca、スピラ・スピカ(幹葉)、玉置成実、ASCAが呼び込まれ、出演者全員で「ビバ☆ロック」(アニメ『NARUTO』ED曲/ORANGE RANGE)をセッション。興奮と多幸感が渦巻くなか、イベントはエンディングを迎えた。AFAとSACRA MUSICによるスペシャルステージ『AFA×SACRA MUSIC FES.』は現地のファンにも強くアピールしたはず。日本発のアニメソングと海外のオーディエンスを直接繋ぐイベントは、今後もさらに加速していきそうだ。
TEXT BY 森朋之
『AFA×SACRA MUSIC FES.』
11月26日(日)Suntec Singapore Convention & Exhibition Centre
【halca】
1.時としてバイオレンス
2.放課後のリバティ
3.キミがいたしるし
4.FIRST DROP
5.恋愛ミリフィルム
6.センチメンタルクライシス
7.TTL
8.キミの隣
9.誰彼スクランブル
10.告白バンジージャンプ
【スピラ・スピカ】
1.リライズ
2.FLYING IN THE SKY(カバー)
3.ブルーバード (カバー)
4.イヤヨイヤヨモスキノウチ!
5.ETERNAL WIND〜ほほえみは光る風の中〜(カバー)
6.空色デイズ(カバー)
7.紅蓮華(カバー)
8.燦々デイズ
【玉置成実】
1.Realize
2.Brightdown
3.Sanctuary
4.Get Wild
5.Vivid Telepathy
6.Resolve
7.Result
8.Reason
9.Believe
【ASCA】
1.Profusio(Instrumental)
2.セルフロンティア
3.RESISTER
4.NO FAKE
5.私が笑う理由は
6.雲雀
7.Stellar
8.KOE
9.Real Dawn
10.Howling
【FLOW】
1.Steppin’ out
2.Sign
3.COLORS
4.United Sparrows
5.“遥か彼方(FLOW THE COVER ~NARUTO縛り~) ”
6.GO!!!
7.GET BACK
8.GOLD
9.ビバ★ロック
AFA×SACRA MUSIC FES. SETLIST PLAYLIST
https://sacra.lnk.to/AFA2023
SACRA MUSIC公式WEBサイト
https://sacramusic.jp/