■現時点での集大成と呼ぶべき圧巻のステージ
凛として時雨が、東京ガーデンシアターでメジャーデビュー15周年記念ライブ『凛として時雨 Tornado Anniversary 2023 ~15m12cm~』を開催した。
今年4月に5年ぶりのニューアルバム『last aurorally』を発表し、本作を引っ提げた全国ツアーを開催。さらに映画『劇場版PSYCHO-PASS サイコパス PROVIDENCE』の主題歌「アレキシサイミアスペア」や、Netflixシリーズ『陰陽師』のオープニングテーマ「狐独の才望」でも話題を集めるなど、アニバーサリーイヤーを彩る活動を継続してきた。
メジャーデビュー15周年のファイナルを飾るこの日のライブでは、インディーズ時代の初期の楽曲、キャリアを象徴する代表曲から最新曲までを組み込み、現時点での集大成と呼ぶべき圧巻のステージを繰り広げた。
■音楽を聴いているというより、極上のインスタレーションを鑑賞しているような感覚
ノイズと電話のコール、電子音が混ざり合うレトロフューチャー的なSEとともにTK(Vo,Gu)、345(Vo,Ba)、ピエール中野(Ds)がステージに登場。オープニングを飾ったのは、2008年リリースのメジャー1stシングル「moment A rhythm」(Short ver.)。陰鬱なイメージをもたらす音像、穏やかで痛々しいメロディ、そして、“曖昧な顔をして 12センチおきに君を刺すけど”という言葉が響き合い、大きな会場全体を包み込む。テレキャスターの鋭利な響き、厚みのある低音を奏でるベース、ディレイを使ったドラムが溶け合うサウンドも絶品。音楽を聴いているというより、極上のインスタレーションを鑑賞しているような感覚に導かれる。
さらにインディーズ時代のアルバム『Inspiration is DEAD』収録曲「i not crazy am you are」。研ぎ澄まされたギターフレーズ、爆発的なダイナミズムを感じさせるリズムセクション、TKと345のツインのボーカルなど、このバンドの独創性が凝縮された楽曲によって、観客の動きも激しくなる。その後は最新アルバム『last aurorally』から「Super Sonic Aurorally」「Marvelous Persona」へ。様々な時期の楽曲をつなげながら、現在の凛として時雨をダイレクトに表現していくステージに強く惹きつけられた。
「少々大きい会場で、緊張している方もいると思いますが、爆裂なライブを行うことを決めましたので、最後までよろしくおねがいします」(TK)という静かな挨拶の後は、「abnormalize」。2012年にリリースされたこの曲は、アニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』主題歌。ディストピア的な世界観のアニメ作品とのコラボレーションが、凛として時雨の知名度を高めたことは言うまでもない。この日のライブでも、曲が始まった瞬間に大きな歓声が起こり、会場全体のテンションもさらにアップ。ライブアンセムとしての機能の高さを改めて実感させられた。
■凛として時雨の色彩豊かな音楽性を堪能できるシーンが続く
この後は、凛として時雨の色彩豊かな音楽性を堪能できるシーンが続いた。フィードバック・ギターのノイズからはじまり、16ビートを基調とした「DIE meets HARD」、切れ味鋭いギターのカッティング、性急なバンドグルーヴが炸裂した「SOSOS」(TK、345のハーモニーも美しい)、直線的なビートと冷徹に磨かれたアレンジとともに“いいよおかしくなって”というフレーズがリフレインされる「I was music」。そして、345の爆裂ベースライン、TKの鮮やかなギターリフに導かれた「DISCO FLIGHT」で観客のテンションは最初のピークへと達した。
観客に驚きをもって迎えられたのは、「Sergio Echigo」。『Feeling your UFO』に収められたこの曲がライブで演奏されるのは、本当に久々だった。抒情的な雰囲気から始まりドラマティックに展開するメロディ、プログレッシブな楽曲構成やトリッキーなフレーズが絡み合うアレンジは、今聴いても本当に鮮烈だ。
TK、345がバックステージに戻り、ピエール中野のMC。
「凛として時雨、メジャーデビュー15周年を迎えました! マジで、本当にここまで続くとは思わず。そしてここにきて、我々の初期の初期の楽曲『Sergio Echigo』をやらせてもらいました。みなさん、楽しんでますか!」。さらに16分超えのバラード(「moment A rhythm」)でメジャーデビューした当時の思い出からはじまり、所属レーベルへの感謝を伝えた後、「ドラム叩けば、メンバー入って来ると思うんで。続きをお楽しみください」とドラムソロ。TK、345がステージに戻り、ここからライブは後半に突入した。まずはインディーズ時代の楽曲「CRAZY感情STYLE」「Telecastic fake show」などを次々と披露。「感覚UFO」ではTKが中指を立てながら叫び、345はステージに倒れ込む。00年代後半、バンドシーンに衝撃を与えた楽曲を現在の3人が全身全霊でパフォーマンスしてみせる。これもまた“15周年”でしか目撃できない場面だったと思う。
■最新型の凛として時雨を叩き付ける
「デビュー15周年、凛として時雨で演奏できることを本当にうれしく思っています。聴いてくれる皆さんや、いつもいてくれる周りの皆さんのおかげです。ありがとうございます。またライブをしますので、ぜひ会場で会いましょう。凛として時雨でした」(345)という言葉に導かれたのは、11月にリリースされた最新曲「孤独の才望」(Netflixアニメ『陰陽師』主題歌)、そして、「アレキシサイミアスペア」。最新型の凛として時雨を叩き付け、最後は初期の名曲「傍観」。憂いを帯びた旋律、静寂と爆音が共存するバンドサウンド、“僕は汚い”“僕は死にたい”というフレーズが共鳴し、大きな衝撃と感動に結びつく。エンディングではTKが渾身のギターソロを奏で、ライブはクライマックスを迎えた。
他に替えが効かない圧倒的なオリジナリティと、トレンドや時の流れに左右されない確固たる普遍性。自らの存在意義を明確に示す、記念碑的なステージだったと思う。
TEXT BY 森朋之
PHOTO BY 岡田貴之/石川浩章
凛として時雨 Tornado Anniversary 2023 ~15m12cm~
2023年12月8日(金) 東京ガーデンシアター
セットリスト
1.moment A rhythm
2.i not crazy am you are
3.Super Sonic Aurorally
4.Marvelous Persona
5.abnormalize
6.DIE meets HARD
7.SOSOS
8.I was music
9.DISCO FLIGHT
10.Sergio Echigo
11.CRAZY感情STYLE
12.Telecastic fake show
13.感覚UFO
14.狐独の才望
15.アレキシサイミアスペア
16.傍観
凛として時雨 OFFICIAL SITE
https://www.sigure.jp/