■「長生きしてみるもんだね。まさか俺たちみたいな様子の悪いバンドを好きだと言って、そのままプロになるミュージシャンが現れるとは思わなかった」(ELLEGARDEN細美武士)
10月12日の愛知・Zepp Nagoyaを皮切りに全国で繰り広げられてきたBLUE ENCOUNTの2マンツアー『ASSEMBLE A NEW AGE』のファイナル公演が12月7日、熊本・熊本城ホール展示ホールで行われた。
メンバーの地元・熊本、しかも2マンの相手はメンバー全員、特に田邊駿一(Vo、Gu)が憧れ続けてきたELLEGARDEN。しかも、今年2月の武道館公演を最後にアメリカへと渡った辻村勇太(Ba)が一時帰国し、久々に加わっての「完全体ブルエン」でのライ。そんな、特別が3つ重なったような貴重な一夜。ブルエンは流石のライブ猛者っぷりを見せつけたELLEGARDENを前に、堂々と自分たちのストロングスタイルを見せつけた。
■ELLEGARDEN
まずはELLEGARDENのステージからライブはスタート。細美武士(Vo、Gu)が「行こうぜ、熊本!」と叫んで始まった「Fire Cracker」から、 すさまじい熱量の演奏が会場を震わせていった。2018年に再始動を果たして以来初のアルバムを昨年末にリリース、再び最前線へと躍り出たELLEGARDEN。重さと迫力をさらに増した今の彼らの音が「Spacesonic」「Supernova」といった名曲たちを鮮やかにアップデートしていく。
フロアでは拳が突き上げられ、クラウドサーファーも続出。「チーズケーキ・ファクトリー」ではシンガロングも生まれ、場内の一体感は最高潮に。美しいハンズクラップが広がった「Mountain Top」では高田雄一のベースソロや高橋宏貴のドラムの優しい音色が温かな空気を作り出していった。
「久しぶり、熊本!」という細美の言葉にフロアから「対バンありがとう!」とブルエンの気持ちを代弁するような声が飛ぶ。昨年配信リリースされ、今年11月にCD化もしたトリビュートアルバムにBLUE ENCOUNTが参加したことに触れ、今では田邊と「サシで飯食いに行くくらいになりました」とブルエンとの関係性を語る細美。そんなMCから「ちょっと懐かしい曲やります」と鳴らしたのは「Red Hot」だった。
さらにファストなビートと美しいメロディがいつになっても色褪せない「BBQ Riot Song」へ。ラストのフレーズをプレゼントを手渡すように歌う細美に、歓声と拍手が送られた。さらにトリビュートでブルエンがカバーした「The Autumn Song」を経て、クリスマスが近づくこの時期にぴったりの「サンタクロース」を演奏すると、立て続けに「Missing」。細美の「いこうぜ」を合図にフロアが揺れた。
そして「Salamander」を投下すれば、オーディエンスの熱狂はさらに高まっていく。演奏を終えて生形真一(Gu)は「すごい気持ちいいです。ありがとう!」とフロアに語りかけたとおり、メンバー4人もとても楽しそうだ。
そして細美が「自分がかっこいいと思ってるやつがいちばんかっこいいんだよ。見た目なんか関係ねえからな」と言って「ジターバグ」へ。これまできっと数え切れないほどの人の心を救ってきたこの曲が、今日も同じ強度で突き刺さる。そして「風の日」、細美は冒頭の歌をオーディエンスに任せる。美しい合唱が、ホール中に響き渡った。
「長生きしてみるもんだね。まさか俺たちみたいな様子の悪いバンドを好きだと言って、そのままプロになるミュージシャンが現れるとは思わなかった」と細美。
「ぜひ、あなたの進む道すがら、常に誰かがいてくれますように。そしてあなたの手を握っていてくれますように」。そんな願いを込めた「Make A Wish」で再び大合唱を巻き起こす。そしてラストは「Strawberry Margarita」。現時点での最新シングルで今のELLEGARDENを存分に見せつけると、4人は笑顔で去っていった。
■BLUE ENCOUNT
そしていよいよBLUE ENCOUNTの出番。いつものSEとともに登場した田邊がギターをかき鳴らし声を上げる。「ただいま、BLUE ENCOUNTです、よろしく!」と届けられた1曲目は「ポラリス」。高村佳秀のドラム、江口雄也のギター、そして少し髪の伸びた辻村のベースがテンション高く溢れ出す。田邊の声も生き生きと躍動している。地元に帰ってきた喜び、憧れのバンドと2マンができた喜び、この4人でツアーを回れた喜び、すべての喜びが重なり、最高のヴァイブスが生まれている。
続く「Survivor」のアッパーなビートと重厚なサウンドが会場を震わせる頃には完全に空気ができあがっていた。「ヤバいね、すげえいい景色です」と感慨深げにフロアを見渡す田邊。そして「今日ここを選んだことをマジで後悔させない」と「DAY×DAY」へ入っていく。心なしかいつもより前のめりの演奏が、4人の気持ちを物語っているようだ。さらに「ロストジンクス」、そして辻村による「熊本、熊本!」というコールアンドレスポンスを経て「NEVER ENDING STORY」へ。田邊も江口も笑顔でギターをかき鳴らし、オーディエンスと声を合わせる。気持ちのいい光景が鮮やかに広がった。
改めて「ほんとに幸せです」と田邊。「ファンを殺すセットリストでしたね」とELLEGARDENのライブを振り返り、ELLEGARDENをどれほど好きかを語り始める。ライブを観に行ったときのこと、ライブでカバーしていたこと、そのカバー(「指輪」だったそうだ)を褒められ、ついに自分の新曲だと偽ってしまったこと。エピソードは尽きない。「20年前、あの人たちの音楽に憧れてバンドを始めて、『俺たちはエルレと対バンする』って言い続けた。そのたびに先生や友達は『あり得ない』と言った。そのあり得ないが現実になりました」。その実感とともに鳴らされた「もっと光を」が、まるで彼らの歩みを照らすようにキラキラと眩しく輝き、フロアのシンガロングとともにこの日のハイライトのひとつを描き出した。
その後も「HEART」「VS」「バッドパラドックス」とアグレッシブな楽曲を畳み掛けてフロアの温度をさらに高めると、再び田邊が語り出す。「絶対泣くと思ってたのね。でも今日涙を流すとここがゴールになりそうだから、そんなことをさせねえって。不思議な感情です。エルレ先輩、今日来てくれてるあなた、これからもよろしくお願いします」。決意を込めたそんな言葉とともに歌われたのは「PLACE」だった。彼らの1stアルバム『BAND OF DESTINATION』に収められた1曲。その性急なツービートとリフが、ブルエンの原点を思い起こさせる。そこに込められた想いと願いと記憶があるからこそブルエンは今も走り続けている。そして自らを鼓舞するように鳴り響いた本編ラスト「灯せ」が、いっそう力強く鳴り渡った。
オーディエンスが「もっと光を」の合唱でバンドを呼び戻してのアンコール。田邊はまたすぐに熊本に帰ってくると再会を誓い、今年の春に細美と飲んだときに「エルレと2マンやりたいです」と直訴したことを告白。そして、そこから積み上げてきた気持ち、その前から抱きしめてきた気持ち、すべてを注いだ「だいじょうぶ」が鳴り響いた。オーディエンス記念すべき、というよりもこれから先、一生記憶に残るであろう1日はこうして終わりを迎えたのだった。
TEXT BY 小川智広
PHOTO BY 浜野カズシ
リリース情報
2023.10.11 ON SALE
Blu-ray&DVD『「BLUE ENCOUNT TOUR 2022-2023 ~knockin’ on the new door~THE FINAL」2023.02.11 at NIPPON BUDOKAN』
熊本城ホール公演のプレイリスト
https://BLUEENCOUNT.lnk.to/KUMAMOTO1207
BLUE ENCOUNT OFFCIAL SITE
http://blueencount.jp/