■今回のライブは様々な驚きや発見のある、複層的な構成となっていた
11月24日(土)、25日(日)の2日間に渡って東京・Zepp DiverCity(TOKYO)で3公演が行われたClariSのワンマンライブ『ClariS AUTUMN LIVE 2023 〜Arcanum〜』。今年5月に開催された『ClariS SPRING LIVE 2023 ~Neo Sparkle~』ではライブハウスを舞台に、初めてのバンドスタイルでのライブに挑戦した彼女たちは、約半年ぶりとなるワンマンライブに、ラテン語で“隠されたもの、秘められたもの”という意味のタイトルをつけた。
メジャーデビュー10周年を迎えた2020年10月20日にキャリア初の配信ライブを行い、それまでヴェールに包まれていた素顔をメディアに向けて明かして以降、精力的なライブ活動に加えて、数多くのテレビ番組にも出演してきた彼女たちにはぴったりのタイトルだが、今回のライブは“仮面で素顔を隠す”という表層的なものではなく、様々な驚きや発見のある、複層的な構成となっていた。
ライブは、曲名がすでにタイトルを内包している「ナイショの話」で幕を開けた。ryo(supercell)が書き下ろしたアニメ『偽物語』のEDテーマで、兄に対する妹のヤキモチを歌ったロックンロールナンバー。歌詞がすでに“口には出せないもやもや”を歌っているのだが、この曲にはもうひとつ、秘められたものがあった。冒頭で、クララとカレンのふたりはステージ袖から「ワン、ツー、ワンツースリーフォー!」と元気よくカウントをとっていたが、実はこのフレーズはリリースされたばかりの27枚目のシングル「ふぉりら」にサンプリングされている。2012年リリースの4thシングルを1曲目に持ってきたのは彼女たちの遊び心の現れだろう。
■前半の8曲は、口に出して言いたいけど決して言えない、胸の内に“秘めた”思いに焦点が当てられていた
その後も“言えないその言葉 言えないこの気持ち”と歌う「ヒトリゴト」、“キミのこと 「好き!」って叫びたいんだ”と願う「コイセカイ」、ピュアな初恋ソング「君色」と言えない思いを抱えたままの甘く切ないラブソングを続けた。さらに、本当の気持ちを隠してしまう不器用な少女が主人公のデビューシングル「irony」から3rdシングル「nexus」へと、アニメ『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』関連の楽曲を繋いでみせ、恋に落ちた瞬間を描いた「blossom」ではアップリフテイングなダンスビートにのせて告白前のワクワク感を表現するも、「treasure」は一転して切ないバラードで、“君”にはもう届くことのない未練や後悔を吐露。前半の8曲は、口に出して言いたいけど決して言えない、胸の内に“秘めた”思いに焦点が当てられていた。
■ふたりの楽器演奏への挑戦
オープニングから会場の熱気が高く、ふたりがずっと踊りっぱなしだったことにも驚かされたが、今回のライブでは、歌とハーモニー、ダンスだけでなく、もうひとつ、“秘められたもの”の開示があった。それが、楽器演奏への挑戦。まず、カレンが「小学校の頃にクララとバンドを組んでいまして、そのときはクララがボーカル、カレンがギターで活動していました。この前、バンドの演奏を聴いて、楽器に触れたいという思いが強くなりました」と語り、「高校生の頃に両親が買ってくれた大切なギター」というアコースティックギターをプレイ。観客が濃いブルーとイエローのペンライトで星が瞬く夜空を作り上げた空間で、「忘れてもいいよ」でバンドのアンサンブルに加わり、優しさが滲む音色を爪びくと、クララは切なくエモーショナルな歌声を響かせた。続いて、クララがキーボードの前に座ると、観客は青空をイメージした水色と白のペンライトにチェンジ。カレンはまさに空を飛び回るかのように飛び跳ねながらソロ曲「カイト」をパフォーマンス。クラップが鳴り響くほどの盛り上がりとなったが、演奏後にクララは「最終公演がいちばん手が震えましたね。緊張しました」と新たなチャレンジを終えた感想を述べると、会場からはこの日いちばんの大きく温かい拍手が送られた。
■1980年代の歌謡曲を中心としたカバーメドレーの披露
さらに、“隠されたもの”として、松隈ケンタがアレンジを手がけたWinkのカバー「淋しい熱帯魚 -SCRAMBLES ver.-」を皮切りとした1980年代の歌謡曲を中心としたカバーメドレーへと突入。松田聖子「赤いスイートピー」でのクララの鼻にかかった歌唱方は新鮮で、岩崎良美「タッチ」では、クララがピッチャーになってボールを投げ、キャッチー役のカレンがキャッチするという、アニメに合わせたフリも導入。
そして、ロックバンドのボーカリストのような赤×黒の衣装から、ラメが入った青×黒の大人っぽい衣装へと着替えた本編の後半は人気曲を中心に一気に駆け抜けた。指切りを交わして、手を引き合う「コネクト」。お互いの手で目を隠し、鏡面からシンクロへとフリが移行していく「ルミナス」。カレンの体の傾き具合にストーリーを感じる「Gravity」。そして、交わりそうで交わらないふたりの距離感をダンスで表現した和風のヘヴィーロック「幻想恋慕」とテクノ歌謡「恋磁石」。観客のクラップと「オイ!オイ!」というコールは止むことはなく、会場全体のテンションが上昇していく中で、細かい手の動きや視線の行方、クララとカレンの距離感や立ち位置など、動きの一つひとつに意味があることを再確認させられた、ClariSの身体性も強く感じるステージとなっていた。
“待って” “置いてかないで”というセリフパートが印象的な「シニカルサスペンス」で会場のボルテージは最高潮へと達し、「いやだ!」というコールが湧き上がった「border」ではタオル回しで一体となり、TVアニメ『リコリス・リコイル』のOPテーマで新しい夢を目指す決意を込めた「ALIVE」で銀テープが発射され、ライブはクライマックスを迎えた。
■新しいものを次々と見せてくれるClariSの2024年にも期待
最終公演のアンコールでは赤いジャージにデニムスカート、手首にお揃いのシュシュをつけた、クララいわく“学祭感”という衣装で登場し、アニメ『カノジョも彼女』Season2のEDテーマとして書き下ろした最新曲「ふぉりら」を披露した。様々なハートポーズを盛り込みながら、ウィスパーボイスでのラップも繰り出したふたりは、「デビューして13年経っても新しいことに挑戦できるのはすごく楽しいし、ClariS最高!って自分たちでも思える」と胸を張った。そして、ライブの最後に歌われたのは10周年記念ベストに収録されていた「PRECIOUS」。“シアワセの音 届けにいくから”“これから先も そばにいるよ”という感謝の気持ちをこめたメッセージを贈り、観客に向けて「大好きー!」と笑顔で叫びながらステージを後にした。“隠されたもの、秘められたもの”という意味の“Arcanum”は幕を閉じたが、新しいものを次々と見せてくれるClariSは、2024年もまた、今まで見せてこなかったものを見せ続けてくれるのではないかと期待している。
TEXT BY 永堀アツオ
『ClariS AUTUMN LIVE 2023 〜Arcanum〜』
11/25(土) Zepp DiverCity Tokyo
<セットリスト 11/25(土)夜公演>
1. ナイショの話
2. ヒトリゴト
3. コイセカイ
4. 君色
5. irony
6. nexus
7. blossom
8. treasure
9. 忘れてもいいよ
10. カイト
11. カバー曲メドレー
・淋しい熱帯魚
・赤いスイートピー
・タッチ
・もういちどルミナス
12. コネクト
13. ルミナス
14. Gravity
15. 幻想恋慕
16. 恋磁石
17. シニカルサスペンス
18. border
19. ALIVE
<ENCORE>
EN1. ふぉりら
EN2. PRECIOUS
ライブ情報
『ClariS SPRING TOUR 2024』
5/25(土) Zepp Osaka Bayside
5/26(日) 広島クラブクアトロ
6/1(土) TOKYO DOME CITY HALL
6/2(日)TOKYO DOME CITY HALL
ClariS OFFICIAL SITE
https://www.clarismusic.jp/