■「キリエとして役をいただいてから、1年半以上経ちました。頭の中にずっとキリエがいました。公開してからいなくなると思っていましたが、まだいます」(アイナ・ジ・エンド)
全国で大ヒット公開中の映画『キリエのうた』。本作で映画初主演となったアイナ・ジ・エンドと岩井俊二監督が登壇する、ティーチイン付き舞台挨拶が10月25日に、東京・新宿バルト 9 シアター8にて実施された。
観客による盛大な拍手に包まれ登壇したアイナと岩井監督。「キリエ役を演じたアイナ・ジ・エンドです。本日はよろしくお願いいたします!」とアイナが挨拶し、続いて岩井俊二監督が「お忙しい中お越しいただきありがとうございます! よろしくお願いいたします」とコメントし、イベントが開始された。
10月13日に初日を迎えた本作。今回のイベントは上映前の開催となったが、なんと会場の約9割の人が一度は観たことのあるリピーターだと判明し、アイナと岩井監督に笑顔が溢れた。
MCから初めて観る人と、1回以上観たことのある人に対し、鑑賞にあたりそれぞれの注目ポイントを問われると、アイナは「初めての方には、時系列をとにかく集中して追いかけてほしいです」と訴え、続いて岩井監督「一度目は心を白紙にしてから観ていただくと、お家に帰る頃には整理整頓できていると思います。2回目以降ご覧の方は、皆さんの“推し”を中心に物語を追いかけていただけると楽しめると思います」とアドバイスした。
そして、事前にSNSで募集された質問に対し、アイナと岩井監督がいくつか回答。
Q. アイナさんが作詞作曲した楽曲を含め、アイナさんが歌う曲の中で、岩井監督が特に思い入れのある楽曲はありますか?
岩井監督:名曲揃いなのでどれも素晴らしいのですが、アイナさんは才能の塊で、特に素晴らしいと思ったのは「前髪あげたくない」のサビの部分です。「普通できないでしょ」と思うサビの展開を歌い上げたアイナさんは天才だと思います。ひと筋縄ではいかない、独特な詩も歌い上げる姿は、師匠みたいです。
アイナ:やめて〜〜! 師匠だなんてそれだけは! 岩井監督こそ私の師匠であり、東京のお父さんです!!Q. いちばん撮り直したシーンは?
岩井監督:いっぱい撮ったのは、夏彦の走りのシーンですね。いったいどのくらい撮ったのかわからないくらいで。合成するとかいろんな可能性があったので、グリーンバックで走ってもらったり、現地でも走って撮影したり、マシンの上で走ったり…と本当にたくさん走ってもらいました。普段鍛えている松村さんはちょっとやそっとじゃ息が切れないのですごいんです。でも走ると(松村さんとスタッフが)どんどん遠くなって、僕たちも走って着いて行くのに必死で、スタッフは大変でした(笑)。Q. アドリブですごいなと思ったシーンは?
アイナ:映画に出演することが、岩井さんの作品が初めてだったので、カットがかからないのが普通だと思っていたんですが、どうやらそんなことないみたいで。なかなかカットがかからないので、広瀬すずちゃんとのアドリブが多かったんですけど、(私が演じた)路花は話せないキャラクターなのですが、すずちゃんがずっと話しかけてくれるんです(笑)。ふたりで撮影した雪の中を歩いているシーンも、木の棒を持ちながら『遠くな〜〜い?』と叫びながら進むんですけど、ずっと私は(話せないキャラクターだから)無視で! 真緒里ちゃんがひとりで話しかけてくれるのに、うまく言葉が出ない路花の女子高生のシーンはとてもが好きでした。
岩井監督:海でアイナさんが歌って踊るシーンですね。アイナさんの歌が終わって、ふたりが寄り添っているシーンは実は台本がないんです。ふたりだけがゾーンに入って、ふたりだけが知っている感覚で撮影するところは、見ているだけで胸が締め付けられるような感覚になりました。段取りをしていないシーンが目の前で生まれるところにはジーンときました。
そして、この日会場に集まった観客とのティーチインへ。一度は観たことがある大勢の観客が集まるなか、本作で印象的なシーンである路上ライブシーンの撮影裏話や、特に観てほしい“細かい”ポイントは? といった質問が、アイナと岩井監督に投げかけられた。
Q. フェスでの歌唱シーンで、何度も歌っていたアイナさんはどのように気持ちを維持していましたか? また、岩井監督が本編で使用したシーンの起用理由をお伺いしたいです。
アイナ:あの日の岩井さんは覇気王だったんですよ! 粗品さんとか虹郎くんのスケジュールもあって、その日しか撮影できないのに雨予報だったんです。だから絶対に晴れてほしいと思っていたし、岩井さんもそう思っていたんです。すると撮影が始まった瞬間に、岩井さんがいつもと違うオーラを放っていて! いつもは柔らかいオーラで、お父さんみたいな優しさがあるのに、その日はどこかヒリヒリするオーラで。そのおかげで、負けてられない、妥協は許されないという思いが湧いてきて、岩井さんの覇気に刺激を受けて、気合を入れて歌っていました。そしたら晴れたんですよ!!
岩井監督:歌い出すと風が吹いてきて、木の葉が舞ってきて。本当に良い瞬間になりましたよね。
アイナ:岩井さんの覇気が空に届いていたんだ。覇気をコントロールしたんだなって思いました。
最後にアイナは「キリエとして役をいただいてから、1年半以上経ちました。頭の中にずっとキリエがいました。公開してからいなくなると思っていましたが、まだいます。自分の人生にとって『キリエのうた』は、とてつもなく大きい影響を与えてくれたと思う日々です。岩井俊二さんに見つけていただいて、今日も”あなた”と出会えて、私はうれしいです。よかったら何度も何度も劇場に足を運んでくれたら、キリエが待っています。映画の中で、みんな生きています。また映画の中でも会えたらうれしいです。本日はありがとうございました」とコメント。
続いて岩井監督は、「2年前にアイナ・ジ・エンドという方を知り、知れば知るほどすごい才能の持ち主だなと惚れ込んで。アイナ・ジ・エンドの映画を作るんだ! という気持ちが興奮冷めやらぬまま撮影に挑みました。そこに松村北斗という光り輝くスーパーノバのような才能がやってきて、広瀬すずというまた違う重力を持った才能がやってきて、黒木華というまた違った才能もまた入ってきて。本当に熱量の高い撮影でした。何よりアイナさんが歌うシーンがある日は、『誰よりも先に聴ける!』というファン心理で“幸せ”と思いながら撮影したりと、アイナさんと一緒に長い旅をしながら作品を作り上げたという思いで、胸が熱くなります。ここからは、腰を据えて、ゆっくりお付き合いいただいて、『キリエのうた』をまだ観ていない方が周りにいたら、『観たほうが良いと』と何度も言っていただけると、10年後くらいにはアイナさんの歌声がいろんなところに届くと構えております。旅はまだ長いですが、しばしお付き合いいただけたら」と、何十年先も本作がいろいろな人に届くよう思いを込めて語り、貴重なトークが盛りだくさんとなったスペシャルなイベントは幕を閉じた。
映画情報
『キリエのうた』
全国公開中
出演:アイナ・ジ・エンド 松村北斗 黒木華 / 広瀬すず
村上虹郎 松浦祐也 笠原秀幸 粗品(霜降り明星) 矢山花 七尾旅人 ロバート キャンベル 大塚愛 安藤裕子 鈴木慶一 水越けいこ
江口洋介 吉瀬美智子 樋口真嗣 奥菜恵 浅田美代子 石井竜也 豊原功補 松本まりか 北村有起哉
原作・脚本・監督:岩井俊二『キリエのうた』(文春文庫刊)
音楽:小林武史
主題歌:「キリエ・憐れみの讃歌」Kyrie
配給:東映
(C)2023 Kyrie Film Band
リリース情報
2023.09.18 ON SALE
Kyrie
DIGITAL SINGLE「名前のない街」
2023.09.18 ON SALE
Kyrie
DIGITAL SINGLE「燃え尽きる月」
2023.09.26 ON SALE
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DIGITAL SINGLE「キリエ・憐れみの讃歌」
2023.10.18 ON SALE
Kyrie
ALBUM『DEBUT』
2023.10.18 ON SALE
ALBUM『「キリエのうた」オリジナル・サウンドトラック ~路花~』
『キリエのうた』作品サイト
https://kyrie-movie.com/
アイナ・ジ・エンド OFFICIAL SITE
https://ainatheend.jp/