■「今日あなたが見てくれた景色が、一緒に歌ってくれた歌が、巡り巡ってあなたの背中を押してくれたらうれしい」(須田景凪)
須田景凪の全国ツアー『須田景凪 LIVE 2023 “Ghost Pops”』の初日公演が9月2日、東京・Zepp DiverCity(TOKYO)にて開催された。
5月リリースのメジャー2ndアルバム『Ghost Pop』を携えて開催される、須田景凪自身初の全国ツアー『須田景凪 LIVE 2023 “Ghost Pops”』。これまで東名阪福ツアー『HALL TOUR 2021 “Billow”』や東阪ツアー『LIVE 2022 “昼想夜夢”』といったホール公演は行われていたものの、全国を回る形式のツアーが開催されるのは今回が初めてのことだ。
この『Ghost Pops』ツアーで公演が予定されているのは、東京・広島・福岡・札幌・仙台・名古屋・大阪の計7都市。コロナ禍の影響で全公演中止となった2020年春の全国ツアー『須田景凪 TOUR 2020 はるどなり』で訪れるはずだった7都市すべてを、約3年半の時を経て巡るという、須田自身にとっても積年の宿願であったツアーは同時に、アーティスト・須田景凪の止まらない革新を自ら証明する場となった。
サポートメンバーとともに須田景凪がステージに登場すると、満場のフロアと2階客席には割れんばかりの拍手と大歓声が広がり、ライブ序盤から会場はクライマックスのような熱気に包まれる。
「『Ghost Pops』、始まりましたね! めっちゃ楽しみにしてました。初めて――やっと全国ツアーができることを、めちゃめちゃうれしく思っていて。肩の力は抜くけれども、全力で、最後までよろしくお願いします!」……熱く沸き返るフロアに語りかける須田の万感の言葉が、さらなる歓声を呼び起こしていく。
アルバム『Ghost Pop』の楽曲を主軸に据えつつ、『Billow』『Quote』といった既発作品からの楽曲、さらにはボカロP・バルーン時代からの人気曲まで盛り込んでみせたこの日のアクト。『Ghost Pop』から演奏した「メロウ」では、「よかったら、一緒に歌ってください」という須田の言葉に応えて、オーディエンス一丸の大合唱がZepp DiverCityの空間に響いたし、同作品の中でもひときわシリアスな緊迫感に満ちたハイブリッドなバラード「終夜」は、観る者すべてを強烈な没入感へと誘う熱唱を披露していた。サポートメンバーにキーボードを加えたバンド編成によって、そのサウンドがよりいっそうの輝度と躍動感を描き出していたのが印象的だった。
本編中には、「せっかくの初全国ツアーなので、いろんな曲をやりたいなと。いろいろ聴きたいよね?」という呼びかけとともに、初のメドレーを披露するひと幕も。サポートメンバーと一丸となって繰り広げるアグレッシブなロックアンサンブル、息もつかせぬスリリングなメドレーの選曲と展開が、観客をさらなる熱狂空間へと導いていく。
自らの内面の報われない・救われない想いに「Ghost」「Pop」というふたつの側面からフォーカスを合わせて音像化した『Ghost Pop』。これまで以上にポップなメロディが弾け回る楽曲もあれば、ハードエッジな疾走感や狂騒感に満ちた曲、深淵を覗くようなディープな切迫感を備えた楽曲まで、多様な音楽性に彩られたこのアルバムは同時に、これまで以上に人間のリアルに迫った作品でもある。須田景凪の音楽探求によって生まれた『Ghost Pop』はこの日、ダイナミックかつしなやかなバンドサウンドを得て、格段にドラマチックに鳴りわたった。
3年前に初の全国ツアーが中止になったことに触れつつ、「このツアーの先で、当時の喪失感を全部晴らしてやろうと思って――今日あなたが見てくれた景色が、一緒に歌ってくれた歌が、巡り巡ってあなたの背中を押してくれたらうれしいなと」……須田はそんなふうに自らの想いを語っていた。音楽と/自らと真摯に向き合い続けた須田景凪の進化の道程が、苦難に満ちた3年間の「その先」の希望を指し示す、充実のステージだった。
なお、ツアーに先駆けて5月27日に東京・昭和女子大学 人見記念講堂にて開催されたホールワンマンライブ『須田景凪 LIVE 2023 “Ghost Pop”』の映像が、受注生産限定のBlu-ray作品として12月6日にリリースされることも発表された。10月1日までは早期予約特典付きの予約特典の受付も行われている。
TEXT BY 高橋智樹
PHOTO BY Kana Tarumi
リリース情報
2023.12.06 ON SALE
Blu-ray『須田景凪 LIVE 2023 “Ghost Pop”』
※受注生産限定
須田景凪 OFFICIAL SITE
https://www.tabloid0120.com/