■「踊る準備はできていますか?」(ReoNa)
“絶望系アニソンシンガー”ReoNaが、2ndアルバム『HUMAN』をひっさげた全国ツアー『ReoNa ONE-MAN Concert Tour 2023 “HUMAN”』のファイナル公演が東京・LINE CUBE SHIBUYAにて7月13日に開催された。
「ソードアート・オンライン」の世界観を鮮烈に描いた「Weaker」のファンファーレから始まったライブは、最初から出し惜しみなく“お歌”の世界を展開していく。
「生命線」「ないない」などのスリリングな展開、「絶望年表」「さよナラ」の絶望を感じさせつつもポップネスを感じさせる表現。「踊る準備はできていますか?」の合言葉とともに総勢10名のシャドウ・ダンサーズを率いてすべての観客と歌い、踊った「シャル・ウィ・ダンス?」など色々な音楽の世界を見せてくれた。
MCでは「今回のツアー、ほぼ全ヵ所で雨が降ったかもしれない…なんて言ってもサウジアラビアでも降りましたから」と自身の雨女ぶりを語ると客席からは笑い声も。マスク着用とはいえ、発声ありのツアーならではの久々の客席の声は新鮮でもあり、暖かい空気に包まれた瞬間だった。
生と死を歌った「メメント・モリ」から間髪入れず歌われた「VITA」では会場の盛り上がりは最高潮に。照明効果とともにバンドメンバーも全力で音を届けにくる。絶望に寄り添うことを選んだReoNaが歌う「命の物語」。巻き上がる声と拳が会場と心の温度を上げていく。
火照る心を冷ますように奏でられる「ALONE」は何度も演奏されてきた名曲だが、今日は特段と軽やかに聴こえた気がする。それはReoNaの成長が産んだ軽やかさなのだろうか? きっと絶望と寄り添つづけたReoNaが手に入れた「寄り添いながらも生きていく」という選択が、「We are alone」の言葉のその先を感じさせるものになっているような気がした。
アルバム表題曲「HUMAN」で、孤独を感じながらもひとりではいられない世界と、「それでも」と言い続けながら、どうしょうもなく生きていく姿を歌い上げたReoNaは、どこまでも人間としてそこに居た。
自身初の武道館を超えたReoNaはアーティストとして大きく成長していた。だが決して今のReoNaはフェーズ2に移行したわけではない。絶望を背負ったまま、ReoNaは長い道を歩き続けている最中だ。10月から始まるFCツアーではどんな景色を見せてくれるのだろうか?
最後に演奏された「SACRA」。舞い散り、降り注ぐ桜の花びらの真ん中で微笑むReoNa、響き渡る「Bye for now」のシンガロング。今はサヨナラ、また会いましょう。ReoNaの進む道の先に聴こえる“お歌”は、貴方の隣にきっとある。
TEXT BY 加東岳史
PHOTO BY 平野タカシ
リリース情報
2023.08.30 ON SALE
Blu-ray&DVD『ReoNa ONE-MAN Concert 2023「ピルグリム」at日本武道館 ~3.6 day 逃げて逢おうね~』
ReoNa OFFICIAL SITE
http://www.reona-reona.com/