■(クライマックスの朱のシーンは)「決定稿になかったですよね。絵コンテで拝見して、この映画が完成したと思いました」
全国公開中の映画『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス PROVIDENCE』の制作スタッフによる座談会が6月24日に開催された。
『PSYCHO-PASS サイコパス』シリーズファンで満席の劇場のなか、塩谷直義(監督)、冲方丁(構成/脚本)、深見真(脚本)が登壇。公開を迎えて1ヵ月以上が経過した今だからこそ話せるネタバレ満載の座談会となった。
2時間の大作である本作『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス PROVIDENCE』。しかし、冲方のプロットを元に深見が執筆した脚本は3時間映画並みのものがあがってきたといい、“重めのラブレターが届いた”という話題に。
深見は「プロットが超難解だったんですよ。この要素をどうやって2時間にまとめるんだと。脚本に入る前のプロットの会議がとにかく長くて、プロットの段階でとんでもない大作になるのが分かっていました。しかもTVアニメ三期の脚本会議をやりながら、劇場版のプロット会議をやるっていう」とハードな環境を語ると、それを受けて「全部並行でしたよね。SSとTVアニメ三期とこの劇場版の制作が並行してて。なんでそんなプロットが大変だったかっていうと時間軸が逆だったからです!」と冲方が当時の心境を吐露。
超大作の脚本を尺に収めるための工夫として塩谷監督は「会話劇があって、それの答えがわかってるものは答えさせない。お客さんが観てわかることに対しては、あまり説明過多にしないということの積み重ねが多いですね。映像になったときに観てわかるシチュエーションなら、必要な部分を立てるためにあえて言葉を省力するという演出をやることがあります」と演出テクニックについて解説した。
冲方は「あえてセリフにしておくことで制作陣にキャラクターの心情面をわかるようにするという役割も脚本にはあるかなって。各キャラクターの心情を確認する作業でもあるので」と脚本の役割について語ると、深見は「絵コンテになって変わっているものって、それは監督が出した答えなので。試写会に行って実物を観たら、“むしろ助かった”みたいなこともあります。本当にいつも監督に助けてもらっているというか、今回もすごい完成度でした」と脚本から本編を完成させるまでに至る塩谷監督の手腕に敬意を表した。
会場のお客さんからの質問コーナーで、映画のクライマックスシーンで主人公の朱が涙を流し感情を露にするシーンに質問が及ぶと、塩谷監督は「(そのシーンを入れたのは)最後でしたね。TVアニメ三期につなげるのがこの映画の目的ではなかったので。映画として成立させるために、今回は“常守朱”が今まで溜め込んできたものを最後に全部出すというところに行きつきました」と映画の肝となるシーンが最後に決定されたことを告白。
冲方は「決定稿になかったですよね。絵コンテで拝見して、この映画が完成したと思いました。ある登場人物のドラマとして、よくぞ完成させたと思いました」と大絶賛した。
最後の挨拶になると、深見は「今朝テレビを見ていたら、ロシアのニュースを扱っていてピースブレイカーのことを考えました。ニュースを見たときに『PSYCHO-PASS サイコパス』を思い出すっていうのはこの作品ならではだなって思います。これからも『PSYCHO-PASS サイコパス』を観て完結するのではなく、現実世界をどう考えるとか、そういうことを意識してくれるとうれしいなと思います」と述べ、続いて冲方は「脚本は一番最初にできあがるんですよね。そのできあがったあと、ものすごい数の絵作り、音作りに携わる方々が尽力して、それを監督がまとめあげて、本当に敬意を表します。ぶっちゃけて言うと、(映画完成まで)ちょっと時間がかかりすぎて、『残念ながら…』という連絡がいつか来るんじゃないかなとヒヤヒヤしていたんですが、そんなこともなく、見事に完成に漕ぎ着けた監督、本当におめでとうございます」と塩谷監督へ賛辞を送る。
それを受けて塩谷監督は「三期がTV放送したのが2019年。多分劇場版の脚本を受け取ったのが19年の年末あたりだと思うんですよね。終わってからいろいろ聞かれるんですけど、今の時点では“疲れた”しか言葉が出てこないです(笑)。これからBlu-rayとかも出ると思うので、いろいろ見て楽しんでいただければなと思います」と感謝の言葉を述べて、イベントは終了を迎えた。
(C)サイコパス製作委員会
『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス PROVIDENCE』公式サイト
https://psycho-pass.com/