■「今日はもう燃え尽きていこうと思いますので、最後まで楽しんでいってください」(iri)
iriが、全国8ヵ所を巡るホールツアー『iri Hall Tour 2023 “PRIVATE”』を完走。
本稿では6月18日に東京ドームシティホールで行われたファイナル公演のオフィシャルライブレポートを掲載する。
3月に20代最後の年を迎え、それまで感じていた不安や葛藤の先で悪くはない日常を見出したiri。その喜びが彼女を音楽的な挑戦へと駆り立てるとともに、肩の力を抜いてありのままの心情を投影したアルバム『PRIVATE』は自身の音楽キャリアにおける転機作となった。その変化は果たしてライブにどう反映されるのか。2023年最初のツアーである『iri Hall Tour 2023 “PRIVATE”』は、5月17日の神奈川県民ホールを皮切りに、全国8都市9公演を経て、この日、ついに最終公演を迎えた。
照明が落とされた場内に響くシンセサイザーのシーケンスに導かれて登場したのは、デビュー以前から親交が厚いキーボードの村岡夏彦とドラムの堀正輝、マニュピレーション、シンセサイザーを担うMop of Headのジョージ、ベーシストの村田シゲ、ギターのTAIKING(Suchmos)。鉄壁のフルバンドをバックに、ステージに立ったiriは爽快なハウストラック「friends」でライブをスタートした。80sマナーのシンセポップチューン「STARLIGHT」から、新機軸となるジャージークラブを取り入れた「Roll」、初めて鍵盤で作曲した「DRAMA」と続いた序盤は、新作で打ち出したフレッシュなサウンドが広がった。
その歌声はiriらしいクールさを湛えつつ、かつてのような張り詰めた空気は解きほぐされ、リラックスした響きに現在の心境が投影されているように感じられた。そして、スタンドマイクに向かったバラード「染」、イギリスのedblと組んだ初の海外アーティストコラボ曲「Go back」を披露すると、「今日はもう燃え尽きていこうと思いますので、最後まで楽しんでいってください」というMCをきっかけに、「Corner」で口火を切った中盤は躍動感を増した演奏とiriのボーカルは有機的に溶け合った。
生演奏のダイナミズムが際立った「フェイバリット女子」をはじめ、冒頭のジャムからスリリングな展開に雪崩れ込んだ「Sparkle」、新作のポジティブなマインドを象徴する「Season」、日本レコード協会の“ゴールド認定”を獲得した「Wonderland」、初期の代表曲である「rhythm」と、ボーカルとバンドの一体感がもらたす高揚感にオーディエンスも熱いリアクションで呼応。盛り上がりがピークを迎えると、終盤はよりパーソナルな表現世界へと踏み込んでいった。
ギターを弾き語るiriに寄り添うバンドが引き立たせたメロディと歌詞の一言一言。溢れれる思いをあふれるままに歌った「会いたいわ」、日常と地続きの情景描写やストーリーテリングを極めた「moon」「boyfriend」では、背伸びせず、着飾ることもなく、ありのままのiriが表現されていた。そして、カセットに録音した音源をラジカセから流し、そこに独り歌を被せた本編ラスト曲「private」は、自分の部屋で誰にも知られず歌を紡ぐ彼女を想起させる一瞬だった。その光景は、何かを伝えようと強く意識することなく、生まれるがままの歌をこれからも歌っていこうというiriのスタンスそのものであるように感じられた。
再びバンドを伴って登場したアンコールでは、「はじまりの日」のパーソナルな世界から「ナイトグルーヴ」「24-25」へと、グルーヴを大きくふくらませながら、ツアーファイナルのパフォーマンスは動きに満ちた日常に着地した。MCでは、11月にスタートする『iri Plugless Tour』の開催決定を発表。2022年にLINE CUBE SHIBUYAにて行われた『iri Presents “Acoustic ONEMAN SHOW』に続くミニマムな編成にて、東京、福岡、大阪、愛知の4都市を回るスペシャルなツアーになるということで、今後の続報とともに、iriのさらなる活躍を期待したい。
TEXT BY 小野田雄
【セットリスト】
friends
STARLIGHT
Roll
DRAMA
染
Go back
Corner
フェイバリット女子
Best Life
Sparkle
Season
Wonderland
rhythm
会いたいわ
moon
boyfriend
private
EN1. はじまりの日
EN2. ナイトグルーヴ
EN3. 24-25
リリース情報
2023.05.10 ON SALE
ALBUM『PRIVATE』
iri OFFICIAL SITE
http://iriofficial.com/