韓国の8人組ボーイズグループ・Stray Kidsのワールドツアー「Stray Kids 2nd World Tour “MANIAC” ENCORE in JAPAN」京セラドーム公演が開催された。昨年日本公演は6月、7月に神戸と東京で大盛況のうちにコンサートを終え、今回はそのアンコール公演となる。今月11、12日にはさいたまスーパーアリーナ公演を開催し、25、26日の京セラドーム大阪は彼らにとって初めてのドーム公演。今回は2月26日の公演をレポートする。
■Stray Kidsの世界観に引き込まれる
彼らのライブが始まる合図となる「Question」、そして「Anthem」が流れると会場の温度は一気に上がり、ツアータイトルにもなっている1曲目「MANIAC」のイントロで8人の姿が見えると、STAY(Stray Kidsの公式ファンネーム)がペンライトと歓声で彼らを迎えた。
待ちわびたステージに、バンチャンのがなるような歌声やアイエンの魅惑的な微笑みなど、彼らの一挙手一投足に会場はどんどん高揚していく。
続く「VENOM」では、メインステージに機械仕掛けのクモの足のようなセットが登場。蜘蛛の巣を弾いたかのような弦の音を体現する振り付けは、大胆かつ繊細で、まさにハマったら逃れることができない、深い彼らの魅力を見せつけるようだ。
バンチャン・ヒョンジンのユニット曲を8人バージョンでパフォーマンスした「Red Lights」ではそれぞれがセットから伸びる紐を首につけ、ミステリアスな雰囲気でライブの世界観へ一気に引き込んでいく。
■多彩な8人の表現力
最初のMCで、2週間ぶりに訪れた日本への「ただいまー!」からスタート。スンミンいわく「ネタに走っている」という一人ひとりの自己紹介では、ハンはNetflixで配信中のドラマ『First Love 初恋』のセリフをもじり、フィリックスは「萌え萌えキュン」でファンを沸かせ、会場は温かい空気に包まれていく。驚くべきは、8人がMCのほとんどを流暢な日本語で行うこと。これは、世界中にいるSTAYを思うがゆえの努力の賜物だろう。
チャンビンとリノの「リノさん、次の曲は簡単ですよね?」「そうです、簡単です!」というやりとりから「Easy」「ALL IN」「District 9」を立て続けに披露。
「ALL IN」ではステージの上手・下手それぞれに全員が移動し、さらに途中からはダンサーを従え、迫力を増した舞台を繰り広げる。他の曲では炎が上がったり、レーザーを存分に使った照明など、ドームという場所だからこその演出でも楽しませてくれた。
「MANIAC」が収録されたアルバムタイトル、“ODD”と“ORDINARY”からなる造語『ODDINARY』をイメージした映像を挟み、ヒョンジンのシルエットから始まったのは「Back Door」。
次の「Charmer」ではバンチャン・フィリックス・アイエンが衣装をチラリとめくり腹筋を見せると、STAYから割れんばかりの歓声が上がり、ロックナンバー「Lonely St.」では「Put your hands up!」の声でペンライトが一斉に上がり、彼らの動きに呼応するように波打つ。
アレンジバージョンで披露した「Side Effects」は、原曲よりも激しさは抑えているものの、より強い打撃感や内に秘めた強さを感じるステージになっていた。
■バンドと奏でる新しい魅力
続いてのパートでも、最初のリノ・ヒョンジン・フィリックスのDANCE RACHAを中心とした華麗なパフォーマンスから観客の心をグッと掴む。さらにチャンビンがアカペラでのラップから「俺様の名前はなんだ?」とスキズの部長、もといバンチャンに問いかける。メンバーたちが好きなアニメ映画『君の名は。』のパロディを経て、会場に「あの人の名前は!」と尋ねると、“待ってました!”と言わんばかりの勢いで叫ぶ「ソチャンビン!」の掛け声で「Thunderous」がスタート。
さらに続く「DOMINO」「God’s Menu」のバンドアレンジでのパフォーマンスでは、生の音を感じながら8人のテンションがさらに上がっていくのがよくわかる。
その後のMCで会場全体で先ほどのチャンビンの名前を呼んだことが話題に上がると、「僕もやりたい!」と言い出したのはリノとスンミン。そのリクエストに応え「リノ!」「キムスンミン!」とSTAYから大きな声が上がると、メンバーたちを喜ばせた。さらにバンドとのパフォーマンスが続き、アイエンのクールさもキュートさも味わえる「1・2・3 チーズ!」の曲振りで始まった「CHEESE」、そして「YAYAYA」「ROCK」ではそれぞれがステージを走り回りながら、会場に集まったファンたちとコミュニケーションを取る姿が印象的だった。
会場の一体感がさらに高まる中で、チャンビン・ヒョンジン・ハン・フィリックスの4人がステージに残り、回変わりでの即興パフォーマンスを披露。バンドとともに作るコンサートだからこそできる、ファンが毎回楽しみにしているコーナーだ。
ヒョンジンがファンに贈ったのはメンバーも初めて聞くという自作曲でSTAYは感動しつつ、ヒョンジンの歌声に夢中になった。チャンビンは昨年末にリリースした『SKZ-REPLAY』収録のソロ曲「DOODLE」を披露。彼が繰り出す圧倒的かつ、唯一無二のラップに他のメンバーもノリノリでSTAYからの熱い反応も止まらなかった。
「シドニー公演を終えたスーパースター」という紹介から、バンチャン・リノ・スンミン・アイエンはユニット曲「Waiting For Us」を歌唱。冬に終わりを告げ、春の訪れを感じる暖かさがあるバラードは、バンチャンとスンミンの凛とした歌声、リノとアイエンの繊細なボーカルのハーモニーがファンの心を溶かしていく。
曲を終えると、こちらのユニットも即興コーナーへ。末っ子アイエンが歌ったのは、飛行機の中で泣きながら観たという映画『世界の中心で、愛をさけぶ』の主題歌、平井堅の「瞳をとじて」。誰もが酔いしれる穏やかな優しい声で歌う様子にメンバーもSTAYも感激。歌った後は緊張が解け、一気にかわいらしい末っ子の顔が戻ってくる。スンミンは「皆さんの初恋はいつですか?誰ですか?スンちゃん?(スンミンの愛称)」の問いかけから宇多田ヒカルの「First Love」を繊細に、しかし堂々と歌い上げる。頼もしいVOCAL RACHA2人の姿に、年上組のバンチャンとリノに顔には思わず笑みがこぼれていた。
そんな4人からの「泥水〜!」というユニークすぎる曲紹介でスタートしたのは、新たな時代の先頭を走ること、古い世代への宣戦布告のような強いメッセージを歌う「Muddy Water」。チャンビンとハンのリズミカルで緊張感のある掛け合い、そこに柔軟さを加えるようなヒョンジンの声、そして曲をダークにピリッと締めるフィリックスの低音と、四人四色の声色が楽しめる1曲だ。
■圧巻のラストスパート
MVの映像を挟み、彼らが歌ったのは、2月22日に発売されたばかりの日本フルアルバムのタイトルにもなっている「THE SOUND」。彼らから溢れ出る“音”を表現した楽曲で、サビの“DARAWARA DA”のパートではSTAYも一緒になり大きな声で歌い上げる。昨年トリプルミリオンを突破した『MAXIDENT』のタイトル曲「CASE 143」は、『THE SOUND』に収録された日本語バージョンで披露。日本でこの曲をフルバージョンで披露するのはこのツアーが初めてということもあり、「1!4!3!I LOVE YOU!」という掛け声には一層力がこもっていた。
本編最後のMCでは、ニューアルバムの楽曲に収録された楽曲の話題に。それぞれが手がけた楽曲の解説や、「There」のMV撮影を行った横浜で偶然STAYに会ったというアイエンの驚きのエピソードも飛び出す。そしてスンミンの「『Waiting For Us』『Maddy Water』のどちらが好きですか?」といういきなりの問いかけから、アンケートを実施。メンバーたちがSTAYにマイクを向けると、それぞれに大きな歓声があがったが、STAYはどちらの曲も好きだという結果になった。
最後の挨拶に惜しむ声が上がる中で、コンサートはラストスパートへ。ハンのハイトーンボーカルが圧巻の「Hellevator」、どんな困難にも負けず進み続ける決意を歌う「TOP -Japanese ver.-」、そしてフィリックスの歌い出しからパワフルで猛々しい雰囲気に変わる「Victory Song」で本編は終了。
■Stray KidsとSTAYの優しい愛
アンコールを待つ間にはファン参加型のゲームが行われ、さらに会場が一体になったところでトロッコに乗った8人が登場。STAYというファンネームが生まれた日にプレゼントとして発表された「Time Out」、ハンが作詞作曲を手がけた日本オリジナル曲「Fairytale」を歌いながら、さらにファンの近くで感謝の思いを伝える彼ら。
バックステージに到着すると、昨年リリースした「CIRCUS」を披露。高く迫り上がるステージで、歌とダンスにのせて、会場に来たSTAYへひとり残らず熱い思いを届ける。コンサートでは初歌唱の「SUPER BOARD」でメインステージに戻り、末っ子のアイエンから順に他のメンバーがラップで他己紹介する「FAM」では、昨年のライブで声出しができなかった分、今回はそれぞれの名前を全力で叫ぶSTAYたち。ヒョンジンがセクシーな即興ダンスを見せるのに盛り上がったり、舞台の中心でじっとあぐらをかくリノの周りでわちゃわちゃしたりと、お互いのやることを誰よりも楽しむその姿はまさに“FAM(家族)”だ。
ひとりずつがファンへの思いを語る場面では、「大事な家族が見に来ている」と話すチャンビンがスクワットをしながら健康ルーティンを共有し、スンミンは前日に京セラドームのステージに立ったときの感動を改めて語る。「STAYのおかげで幸せパワーがいっぱいになり、想像以上のパワーが発揮できる」と話したヒョンジン、バンチャンは涙を堪えながら「僕、こんなに幸せで良いんですかね?」と溢れる思いを言葉にした。
フィリックスは「限られた時間だからこそ、この瞬間がとても大切です」とコメントし、アイエンは「僕は一生ステージに立ち続けると思いますので、また戻ってきます」と決意を語る。「どうすればいいか分からないくらい幸せに溢れている」とたくさんのSTAYの前に立った感慨深さを伝えたハン、そしてリノは「日本で一番楽しみにしているのはSTAYに会うこと」とプリンより深いSTAYへの愛を聞かせてくれた。
バンチャンが「これからも僕たちがSTAYのそばにいます!」、リノは「みなさんがいるから僕たちがいます!」と改めて感謝を語り、最後に記念撮影をしようとすると、モニターにはこれまでの彼らの頑張り、そしてファンの想いが込められたサプライズ映像が。
映像とともに流れた「Scars」、そして「Grow Up」に合わせSTAYの大合唱が巻き起こると、メンバーたちの目には涙が浮かぶ。特にチャンビンとアイエンは立ち上がれなくなるほどに想いが込み上げたようで、「嬉しいときは涙が出ない!」と話すリノをはじめ、他のメンバーが頭をなでたり、肩を抱いたりと優しく慰める様子をファンは温かく見守る。そしてステージの中心で8人がぎゅっと固まり円陣を組む姿には、ここまでお互いを信じ、走り続けてきた彼らの深い絆を感じ、会場からは改めて大きな拍手が送られた。
「幸せすぎて涙が出てしまうみたいです」とバンチャンが今の思いを率直に話したあとに、“ありがとう”“STAY”の掛け声で涙で目元を赤くしながら記念撮影。
さらにバンチャンの「Stray Kids Everywhere All Around the World!」というフレーズにファンが「You Make Stray Kids STAY!」と答えると、「Star Lost」のイントロが流れ始め、8人はファンとコミュニケーションを取りながら、全身でファンへの思いを伝えるためにステージの隅々まで走り回る。
そして涙を見せたアイエンをなぐさめるハン、対照的に泣き続けるチャンビンとフィリックスをからかうスンミンなど、会場は優しい愛で満たされていく。
コンサートを締めくくった「Haven」のように、8人とファンが集まる場所はいつだって、心の赴くままに楽しむことができるStray KidsとSTAYだけの憩いの場であり続けるのだろう。最後には今回ともにステージを作り上げたダンサー、バンドメンバーを紹介。握手やハグでお互いを称え合う姿を見ていると、この信頼関係があるからこそ最高のエンターテインメントが生まれるのだと感じる。
バンドの演奏が終わり、「おつかれさまでした!」「バイバイ!」とあっという間にステージ裏へ帰って行きライブは終了…かと思いきや、「待って待って!名残惜しくない?」とバンチャンの声が。そこからメンバーたちもファンを煽り出し、スタッフと相談したバンチャンの「行きましょう!」の声で、予定にはなかった「MIROH」がスタート。歌とダンスで一体となった会場のテンションは最高潮になり、最高のエンディングを迎えた。
するとSTAYの熱気を受けて、8人が輪になり何かを相談している様子。そんな彼らに再度感謝の気持ちを贈ろうと、流れていた「THE SOUND」に合わせ自然と合唱が始まり、メンバーたちをさらに喜ばせる。そして「Stray Kidsが話したいことがあります」と会場を静かにさせると、全員で「ありがとうございました!」とマイクを通さずに挨拶。「楽しかった!」と満足した表情でそれぞれがステージをあとにし、最後はフィリックス・スンミン・アイエンの末っ子三人組”ポクスンア”の笑顔で約4時間にわたる公演は締め括られた。
TEXT BY 東海林その子
PHOTO BY 田中聖太郎
■セットリスト
2023.2.26@大阪・京セラドーム大阪
「Stray Kids 2nd World Tour “MANIAC” ENCORE in JAPAN」SET LIST
01. MANIAC
02. VENOM
03. Red Lights
04. Easy
05. ALL IN
06. District 9
07. Back Door
08. Charmer
09. Lonely St.
10. Side Effects
11. Thunderous
12. DOMINO
13. God’s Menu
14. CHEESE
15. YAYAYA+ ROCK
16. Waiting For Us
17. Muddy Water
18. THE SOUND
19. CASE 143 -Japanese ver.-
20. Hellevator
21. TOP -Japanese ver.-
22. Victory Song
23. Time Out
24. Fairytale
25. CIRCUS
26. SUPER BOARD
27. FAM
28. Star Lost
29. Haven
30. MIROH (26日公演のみ)
■公式サイト
Stray Kids OFFICIAL SITE
https://www.straykidsjapan.com/
▼Stray Kidsの最新情報はこちら
https://www.thefirsttimes.jp/keywords/723/
■関連動画
Stray Kids – SLUMP -Japanese ver.- / THE FIRST TAKE
Stray Kids – Mixtape : OH / THE FIRST TAKE
Stray Kids – Scars / THE FIRST TAKE
Stray Kids – CASE 143 -Japanese ver.- / THE FIRST TAKE