■非日常に一瞬で引き込まれるインパクトあるオープニング
約5年ぶりとなるアルバム『暁』を携え、昨年9月からスタートした全国ツアー『18thライヴサーキット“暁”』。その29本目、最終公演が1月24日に東京・日本武道館で開催された。ポルノグラフィティが日本武道館のステージに立つのは、2015年開催の『14thライヴサーキット“The dice are cast”』以来、実に約8年ぶりのこととなる。
スモークが立ち込めるステージ。頭上にはシャンデリアがぼんやりと光を放ち、いくつもの窓が漆黒の闇をのぞかせている。洋館を思わせるセットの中にある古めかしいドアが開くと、岡野昭仁(Vo)と新藤晴一(Gu)のふたりが姿を現した。ステージから放たれる怪しげな雰囲気をなぞるように始まったのは「悪霊少女」。楽曲の持つ世界観と演出が相まって、非日常に一瞬で引き込まれるインパクトあるオープニングだ。音源以上の力強さが注ぎ込まれた「バトロワ・ゲームズ」、心地よくレイドバックした歌でグルーブ感を増していた「カメレオン・レンズ」まで一気に聴かせると、最初のMCへ。
「ファイナルに似合った空気になってるね。皆さんの気持ちが伝わってきております。泣いても笑っても最終日なんでね、記憶の中にしっかり刻み込むような1日にして帰りたいと思います」(昭仁)
「全国のみんなの熱を込めてもらい、今日ここで演奏することで『暁』がどんなアルバムになるのかが決まるんだと思います。最後までよろしくお願いします」(晴一)
■情感に満ちたボーカルとバンドの演奏がオーディエンスの心へと柔らかく注ぎ込まれていく
続くパートではポルノの歴史に刻まれた名曲を連続で。「爆上げしていこうかな」という昭仁の一言をきっかけに会場が大きく揺れた「ネオメロドラマティック」。シングル「VS」のカップリングとして19年にリリースされた「プリズム」は今回がライヴ初披露、そこに込められたファンへの思いがダイレクトに放たれた。ミディアムバラード「愛が呼ぶほうへ」では、情感に満ちたボーカルとバンドの演奏がオーディエンスの心へと柔らかく注ぎ込まれていった。
次のMCでは、配信でライヴを楽しんでいる人たちのコメントを昭仁が読み上げたり、数日前に発表された晴一が手がけるミュージカル「ヴァグラント」の話題などで大きく盛り上がる。リラックスしたムードでクロストークをするふたりの姿が微笑ましい。その後は、最新アルバム『暁』から「ナンバー」「クラウド」「ジルダ」が、楽曲の世界にマッチした映像とともに届けられた。そこには、ライヴならではのダイナミクスはもちろん、ツアーを通してよりふくよかな表現を手に入れたボーカルとギタープレイの進化が鮮明に刻まれていたように思う。
イスに腰掛け、アコースティックスタイルで歌われたのは、09年の東京ドーム公演以来、約14年ぶりの披露となる「うたかた」。続く、「瞬く星の下で」は1コーラスを昭仁がギターの弾き語りメインで歌い、2コーラス目からバンドが加わるというドラマチックな構成に。ツアーを共にしてきたバンドメンバーとの息の合ったアンサンブルが聴き手の心を感動的に震わせた。
■ダークでシリアスな表情はポルノというバンドの奥深さをしっかりと提示
「さぁ、みなさんが生ける屍となる時間がやってまいりました」という昭仁の一言で始まったのは「Zombies are standing out」。ステージに幾本も立ち上る炎の演出とともに鳴らされるアグレッシブなハードロックに客席の熱量も否応なしに上昇していく。「メビウス」では美しさと哀しみを同居させるボーカルが感情のままにほとばしる。圧倒的なラストのフェイクは観る者の心に鋭く傷をつけた。バンドメンバーによる荘厳でエモーショナルなセッション、晴一の泣きのギターソロで魅了したInterludeを経て、次の「証言」ではステージ両サイドのカーテンが開き、モノクロのパノラマ映像が大きく映し出される。そこで展開されるダークでシリアスな表情はポルノというバンドの奥深さをしっかりと提示していた。
「まだまだ“アゲアゲ”にしたいと思う。だって最終日じゃもん。しかしながら声が出せない。だからボディで表現して。手拍子なり、表情なり、踊るなり、カラダで表現してください!」と昭仁が煽り、始まった「アゲハ蝶」ではイントロからお決まりのクラップが日本武道館に響き渡っていく。ファンキーなアレンジが施された「ミュージック・アワー」では、イントロで昭仁が“暁ラップ”を炸裂させ、サビでは楽しい“変な踊り”で会場が一体となった。キャリアを重ねてもなお高みを目指すポルノの決意がにじむ「VS」、会場に集まったファンや配信、ライブビューイングを観ているファンたちの心の中の声が大合唱を巻き起こしたエールソング「テーマソング」と、ライヴはテンションを上げ続けながらクライマックスへと向かっていく。そして、昭仁が静かに語り始める。
「こんな素敵な、本当に素晴らしい時間を一緒に共有できたら、きっとここに来る前よりも、わしらにもみんなにも明るい光が差してきとるはず。“暁”とは夜明け前の、まだ闇の時間帯のことを言います。その“暁”の先にきっと今よりももっともっと強い光が差してくることを願って、信じて、みなさんにあと1曲届けたいと思います」(昭仁)
本編の最後を飾ったのは「暁」。両膝をついた状態で歌い出した昭仁のボーカルや、叫ぶように鋭いサウンドを鳴らし続ける晴一のギターには、「暁」という曲に、延いてはアルバム全体に注いだ思い、願いのすべてが全力で注がれていたように思う。夜を引き裂くように降り注ぐ照明の中で迎えた感動的なエンディングに大きな拍手が沸き起こった。
■アンコールでは未来へのヒントを提示するように、新曲「OLD VILLAGER」を披露
アンコールでは未来へのヒントを提示するように、「OLD VILLAGER」なる新曲が披露された。ポルノの代名詞ともいえるBPMの速い攻撃的なロックナンバーでありながらも、そこには確実に新たなポルノの姿が見えていたように思う。そして、ポルノ流パーティチューン「Century Lovers」と、定番のラストナンバー「ジレンマ」でこの日のライヴ、そして約4ヵ月にわたったツアーは猛烈な興奮に包まれる中、大団円を迎えた。
「たくさん集まってくれるみなさんの楽しそうな顔を見ることが、我々が長く続けている理由です。これからもみなさんの心に置き場所を作ってもらえるような、それにふさわしい曲を作っていきたいなと思います。またツアー、ライヴで会いましょう!」(晴一)
「わしらはみなさんの心にしっかりと波紋が立つような作品を届けていきたいと思いますので、これからも共に進んでいけたらいいなと。ぜひわしらについてきてくれたらうれしいです。今日は本当にありがとう」(昭仁)
このツアーを通して求め、見出した“暁の先”で見せてくれるであろう、ポルノグラフィティの“続”を楽しみに待ちたい。
TEXT BY もりひでゆき
PHOTO BY 入日伸介
ポルノグラフィティ 18th ライヴサーキット“暁”
2023年1月24日(火) 日本武道館
セットリスト
1.悪霊少女
2.バトロワ・ゲームズ
3.カメレオン・レンズ
4.ネオメロドラマティック
5.プリズム
6.愛が呼ぶほうへ
7.ナンバー
8.クラウド
9.ジルダ
10.うたかた
11.瞬く星の下で
12.Zombies are standing out
13.メビウス
14.証言
15.アゲハ蝶
16.ミュージック・アワー
17.VS
18.テーマソング
19.暁
【ENCORE】
EN1.OLD VILLAGER(新曲)
EN2.Century Lovers
EN3.ジレンマ
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