TEXT BY 轟木愛美
(P)&(C) BIGHIT MUSIC
■『TOMORROW X TOGETHER WORLD TOUR <ACT : LOVE SICK>』初日レポート
デビューしてから3年4カ月。7月2日、韓国の5人組グロバールボーイズグループTOMORROW X TOGETHER 初のワールドツアー『TOMORROW X TOGETHER WORLD TOUR <ACT : LOVE SICK>』がソウル松坡区蚕室室内体育館にて幕を開けた。
パンデミックの影響により、デビュー後初となる今回の単独オフラインコンサート。
会えない時間を埋めるように毎日SNSで交流を続け、愛を深めてきたTOMORROW X TOGETHERとMOA(※TOMORROW X TOGETHERのファンの総称)。Weverse(ファンとの交流プラットフォーム)では、夜中までファンと会話が繰り広げられ、お互い高鳴る思いを胸に迎えたコンサート初日である。
■MOAの前で歌える喜びを噛みしめる、メンバーの姿
18時、氷をイメージした重々しい扉が開くと、ビジューを散りばめた貴公子のようなピンクの衣装で5人が登場。
オープニングを飾るのは、アルバム『The Chaos Chapter: FREEZE』のリード曲「0X1=LOVESONG(I Know I Love You) feat. Seori」だ。同アルバムは『ビルボード200』ではチャート5位と自己最高記録を更新し、グローバルアーティストとしての地位一気に押し上げた一曲である。この日を待ちわびたMOAが“Say you love me”の大合唱で彼らを迎え、凍てついた世界をその熱気で溶かしていく。
「ONE DREAM! こんにちは、TOMORROW X TOGETHERです!」の挨拶と共に、SOOBINから一人ひとり自己紹介。BEOMGYUが「紫ヘアのBEOMGYUです」と染めたばかりの髪色をアピールすれば、HUENINGKAIは「皆さんの初恋、HUENINGKAIです」と爽やかな笑顔を振りまく。YEONJUNはMOAを焚きつけるように「叫べー!」と声を上げ、TAEHYUNは手で歓声を煽るなど、有観客で開催できることの喜びを溢れさせた。
これから5人とMOAが作り上げる最高の夜に期待が高まったところで、「Wishlist」、コンサートver.にアレンジされた清涼感ある「Blue Orangeade」、初の英語曲「Magic」と、アップテンポなナンバーが続く。
特に「Magic」では、息ぴったりな手拍子にメンバーも感動した様子。「この夢のような時間が続くようにおまじないをかけます」というYEONJUNのコメントともに次の曲「Ghosting」へ。
ここではセルフィーの映像や、バズーカ型クラッカーを使って紙吹雪を噴射させるコンサートならではの演出もあり、会場の熱気は早くも最高潮に。SOOBINを筆頭に、サブステージの先端に座りファン一人ひとりと目を合わせながら歌うメンバー。MOAの前で歌えることがうれしくてたまらないといった、彼らのこうした一瞬一瞬の表情が印象的だった。
■炎が吹き荒れる演出で、自由を渇望する猛獣たちが覚醒
VCRを挟み、会場が黄色のレーザーで照らされると、ロックTシャツに、スタッズ付きのチョーカーやブレスレットというスタイルで身を固めた5人が登場。曲は1stアルバム『The Dream Chapter: MAGIC』収録曲で、久しぶりの披露となった「New Rules」。衣装も相まってよりハードな様相を呈しながらも、どこかエモさを感じたのは、当時全世界のハートを撃ち抜いたYEONJUNの“伝説の青髪”が帰ってきたからであろう。
炎が吹き荒れる演出で、自由を渇望する猛獣の姿を表現した「PUMA」で闇夜に鋭い眼光を輝かすと、MCを挟んで次のステージへ。
「今回の準備に際し、選択の瞬間がたくさんありました。例えば今次の曲に行くかどうか…」とYEONJUNが話し始めると、次の曲目を察知したMOAからは早くも歓声が! セットの階段を「上がる? やめる?」「やる? やらない?」「まだ何をやるかわからないでしょ?」といたずらっ子のような顔でMOAを焦らしに焦らした5人が披露したのは、“PUMA”繋がりの「What If I Had Been That PUMA」。韓国語のタイトルは、「밸런스 게임(バランスゲーム)」で、国内で流行中の究極の二択ゲームのこと。
曲中のBEOMGYUがSOOBINとYEONJUNのどちらかを選ぶというパフォーマンスでは、リハーサル中はずっとYEONJUNだったHUENINGKAIがSOOBINを選んだことで、ステージ後YEONJUNから不満があがる場面も。「TAEHYUN、BEOMGYUだったらどっちを選ぶ?」という問いに、ふたりは「もちろんMOA!」という100点満点の回答で会場をわかせることも忘れない。
■ずっと憧れていたウェーブタイム!
ここで「先輩たちの公演を見てずっとやってみたかった」というウェーブタイムに。
コンサート前のV LIVEでも事前告知するほど、ウェーブに並々ならぬ熱意をもっていたメンバーたち。それに応えるように会場が一体となり、美しいウェーブを披露した。MOAボム(オリジナルライトスティック)の光だけで埋め尽くされた美しい景色に、メンバーは「今まで見た中でいちばんきれいだった」と幸せそうな表情で見入っていた。
その恩返しにと披露されたのは、パワフルなスタンドマイクパフォーマンスが見どころの「LO$ER=LO♡ER」。一緒なら何でも乗り越えられるという思いがありながらも、君と僕を救うためにはお金が必要だという現実的な考えを歌った同曲。ラストには空からたくさんの紙幣が降ってくる演出で会場を盛り上げた。
ふたつの目のような車のライトが会場を照らす中、YEONJUNの絞り出すような切ない歌声から始まったのは「Trust Fund Baby」。お金がなければ愛することもできない世の中をシニカルに歌った曲であり、「LO$ER=LO♡ER」のテーマとリンクする。
■彼らの成長の軌跡を追う、怒涛のパフォーマンス
何やら不穏なVCRの後、ステージには大きな星が掲げられ、YEONJUNが登場。跪く彼を取り囲むように現れたメンバーのうちHUENINGKAIがその手を差し伸べ、そのまま4人がYEONJUNをいたわる様に包み込む。そう、デビューミニアルバム『The Dream Chapter : STAR』に収録された「Nap Of The Star」のMVの再現だ。そしてこのまま彼らの成長の軌跡を追うように怒涛のパフォーマンスが始まる。
イントロを聴いただけで胸が高鳴る、彼らのデビュー曲「CROWN (ある日、頭からツノが生えた)」、『The Dream Chapter: MAGIC』収録の「Magic Island」では、MVに登場した大木に腰かけ、世界を彩るような歌声を響かせる。
5枚の魔法カードが天へと上っていく幻想的な演出とともに、魔法陣が浮かび上がる。曲はもちろん彼らのマスターピースナンバー「Run Away」。キレが増した力強いダンスにMOAのぴったり揃ったかけ声が後押しする。
世界的なパンデミックが猛威をふるい、誰もが不安を抱える中、ディスコミュージックでとびっきりの清涼感を届けてくれたのが、3rdミニアルバム『minisode1 : Blue Hour』のリード曲「5時53分の空で見つけた君と僕(Blue Hour)」。5時53分とは、空がいちばん美しく染まる夕暮れの時間を表したものであり、会場は赤と青が交差する美しい光で染まった。
苦悩するように蹲る青年から一転、狂気をはらんだ美しい表情で登場したHUENINGKAI。不敵な笑みとともにダークな世界へと誘う「Frost」だ。
純白のボトルネックにタイトな黒パンツというシンプルな衣装が、退廃的な雰囲気をより一層際立たせ、ラストのYEONJUNの鋭く光る怪しい目つきに釘付けになっているうちに、練習生時代の不安と苦悩を綴った「Maze in the Mirror」へ。共同プロデューサーを務めたBEOMGYUの感性が光るこのナンバーでは、染めたばかりのパープルの髪の毛がライトを浴びて幻想的に輝く。
■歌だけで魅了できる卓越した歌唱力
振り付けなし。あるのは彼らの美しい歌声だけ。一糸乱れぬダンスパフォーマンスに注目が集まることが多いTOMORROW X TOGETHERだが、切なさを増幅させるTAEHYUNのハイトーンボイスを始め、歌だけで魅了できる卓越した歌唱力こそが彼らが唯一無二である理由のひとつだろう。
後世に残すべき伝説続きのパフォーマンスの中で、この日いちばんの歓声が上がったのは、今回初の振り付けフルバージョンでの披露となった「Eternally」だ。
最新アルバム収録曲「Opening Sequence」で見せたような現代舞踊を彷彿とさせる身体の動き。美しき獣のようにしなやかに肢体を揺らしたかと思えば、変調とともに雰囲気がガラリと変わる様は、まるで夢と現実を行ったりしているかのようで、まさに中毒性の高い楽曲に仕上がっていた。
彼らのアーティスティックな一面が爆発した衝撃的な4分間。森へと帰るかのようにステージを去ると、VCRを挟んで次の曲へ。
燃え盛る炎の中「Can’t You See Me?」のバンドバージョンと共に登場した5人。ロックなアレンジでより情感豊かに響き渡るメロディに、贅沢にレースをあしらった濃いブルーのブラウスが揺れる。
続いて、コンテンポラリーな振付が革新的な「Opening Sequence」。大きな見せ場であるTAEHYUNのソロパートでは、力強く伸びやかな歌声と迸るエネルギーで、ステージを完全に支配して見せた。
ここまで連続9曲。全身全霊のパフォーマンスに疲れを見せるどころか、その勢いは増すばかりだ。
■「改めて僕らの存在の理由がわかりました」
哀愁漂うギターの音色で始まったのは、初ユニット曲にして初披露となる「Lonely Boy」。別れを経験した少年が4番目の指に残ったカップルタトゥーを見ながら感じる感情を表現したもので、HUENINGKAIとYEONJUNが楽曲に参加。向かい合って歌うふたりの抒情的なボーカルと、エモーショナルなラップが見事に融合し、切ない余韻を残した。
このパートのラストを飾るのは、恋をしたいけど、傷つきたくないというティーンエイジャーの気持ちを代弁した「Anti-Romantic」。
少年たちの成長の物語を辿るような11曲連続のステージ。間にMCを挟まないことで、曲の世界観にたっぷり没入でき、まるで一本の映画を見たかのような贅沢な余韻に浸ることができた。
一気にリラックスした表情のMCでは、「Lonely Boy」の話題に。リハーサル中冗談でYEONJUNのラップパートをやっていたことをバラされたSOOBIN。鳴りやまない観客からのSOOBINコールに、先日のファンライブ「MOA X TOGETHER」に続き、またしても感性豊かなラップを披露し、この流れでメンバー全員がラップをすることに。
BEOMGYUはYEONJUNに歌詞を聞きながら、明るくチャーミングに。本家YEONJUNは、桁違いの声量で最高クールならラップを。HUENINGKAIは力強く、TAEHYUNは伸びやかなラップと、それぞれの個性がにじみ出る結果に。SOOBINからは、「良かったけど、全員僕には敵わないね(笑)」と会場をわかし、次の曲ではラップパートを奪うという宣言も飛び出した。
永遠のように思えた夢のような時間もいよいよ終盤に。最後の挨拶に際しTAEHYUNは、「本当に最高の瞬間だった」、YEONJUNは「去年と違って同じ空間でMOAと歌い合えたことが夢みたいでうれしかった」、BEOMGYUはオンラインで視聴するMOAに感謝を伝えると共に、客席の上の方までしっかりと目線を合わせながら、「2階席、3階席のMOAも一人ひとり見ていますので心配しないで。今日のことは一生忘れられません」とコメント。HUENINGKAIは「デビューステージのように緊張していたが、喜んでくれて本当にありがとうございます」、SOOBINは「皆さんの喜んでくれる姿を見て、改めて僕らの存在の理由がわかりました」と、満ち足りた表情で感想を伝えた。
ラストを飾るのは最新アルバム『minisode2: Thursday’s Child』のリード曲「Good Boy Gone Bad」。ロックなメロディにのせた躍動感あふれるステージで本編を締めくくった。
■TXTとMOAだけの秘密の合言葉なだけに厳しいチェックも!?
ツアーTシャツにデニムサロペットというラフな姿でアンコールステージへと戻ってきたSOOBIN、BEOMGYU、TAEHYUN。アンコール一発目は、もうひとつのユニットソング「Thursday’s Child Has Far To Go」。BEOMGYUがコンサートでMOAと一緒に盛り上がる姿をイメージしてプロデュースした曲だ。
TAEHYUNの力強いシャウトを合図に、ステージを飛び跳ねるように駆け抜ける3人。さらには客席にまで飛び出して、より近い距離でMOAと触れ合い、会場のボルテージは再びマックスへ。メンバーもとても楽しんだようで、TAEHYUNは「あと5回くらいやりたい」と笑顔でコメント。
5人が揃ったところで、ファンソング「MOA Diary (Dubaddu Wari Wari)」のステージを前に、サビの振り付けをおさらい。「Dubaddu Wari Wari」のコール&レスポンスと振り付けは、TOMORROW X TOGETHERとMOAだけの秘密の合言葉。それだけにちゃんとできているかのチェックが意外と(かなり)厳しい5人。
「2、3階席やってないよ! オンラインのMOAもちゃんとやって!」と真剣な表情でカメラに向かって熱血指導する姿は、ステージに、遊びにと、普段から常に全力投球の5人らしくて非常に微笑ましい。ウェーブの時と同様、MOAと一緒に作り上げるものに対する思いというものは、一際大きいのだろう。曲が流れ、再び魔法のような時間が始まる。
会場を震わせる息の合ったMOAの大合唱に、メンバーはありったけの笑顔とこの日だけのサービスダンスで応える。曲のラストのフレーズ、「Until you’re shining Shining shining by my side」を心から願うように歌い上げフィニッシュ。
声を出すことができず拍手のみだった前回のファンライブ。「MOAがいてこそ輝く曲」と、5人は一緒に歌うことができた幸せを噛み締めた。
■アンコールラストでメンバーが残したMOAへの感謝
本当に最後の挨拶。ファンライブでは涙を流す姿が印象的だったSOOBINは、「皆さんがいなかったら単独ライブもワールドツアーもTOMORROW X TOGETHERもいなかった」と話し、感極まるシーンがありながらも、「しばらくワールドツーアに行ってしまいますがいつでも皆さんがそばにいると思って、世界のMOAによいエネルギーをお伝えしてきます」と頼もしくコメント。
HUENINGKAIは、「3年ぶりに皆さんの声を聞けてうれしかったし、これがスタートなのでこれからもっと良い姿をたくさんお見せします」と笑顔を覗かせ、BEOMGYUは「ライブの時はいつも寂しい気持ちになるが、今日は残念ではない。ずっと願っていた夢を叶えて、MOAと3時間もの時間を過ごせて、今日が本当に幸せでした。辛い時でもうれしい時でもそばにいてくれるおかげで、僕は世界一幸せだと断言できる」と力強く語った。
YEONJUNは、「今日は夢のようでした。中3から歌手を目指して、8年経ってこの場を共にしてくださったMOAの皆さん、僕の夢を叶えてくれてありがとうございました。」と感謝の思いを述べた。最後にTAEHYUNは、「今日僕の幸せが再び更新されました。僕たちの力になるのは皆さんしかいません。普段からTwitterやWeverseを通じて、皆さんの考えや悩みを見て、みんなのためなら徹夜だってしないと! と思って。その時間は惜しくなく、貴重な時間でした。本当に感謝しています」と朝から夜までファンとの交流を欠かさない、彼らしいコメントを残した。
リーダー・SOOBINの「これからも信じ合って励まし合える星になって、永遠に輝いてください」という締めの挨拶で、最後の曲へ。フィナーレを飾るのは、彼らの成長の軌跡を描いた「;」(Sweat)。サイト上でパスワードを解いた者だけが聴ける、特別なシークレットトラックで、汗を流しながらも輝き続け、成長していくことへの決意を込めたこの楽曲。
これから始まるワールドツアー。大きな期待を胸に、必ず成長して戻ってくることをMOAに誓うように歌い上げた5人。彼らの充実感を表すように光る額のキラキラとした汗が美しかった。
約180分の公演で披露された楽曲は25曲。会えない時間もMOAを思い、休むことなく曲を作り続けてきた彼らのひたむきな努力が、今回の多彩なセットリストを可能にした。
ソウルでの彼らと過ごした魔法のような時間は一旦終わったが、TOMORROW X TOGETHERの物語はまだ始まったばかり。「一生一緒にいよう」という約束を胸に、これからどんな新しい5人に出会えるのか楽しみで仕方がないのだった。
2022.07.02@ソウル松坡区蚕室室内体育館
TOMORROW X TOGETHER WORLD TOUR <ACT : LOVE SICK>
SETLIST
01.0X1=LOVESONG (I Know I Love You)
◆MC
02.Wishlist
03.Blue Orangeade
04.Magic
◆MC
05.Ghosting
●VCR
06.New Rules
07.PUMA
◆MC
08.What if I had been that PUMA
◆MC
09.LO$ER=LO♡ER
10.Trust Fund Baby
●VCR
11.CROWN
12.Magic Island
13.Run Away
14.Blue Hour (Dance Break Ver.)
●VCR
15.Frost
16.Maze in the Mirror
17.Eternally
●VCR
18.Can’t You See Me?
19.Opening Sequence
●VCR
20.Lonley Boy (The tattoo on my ring finger)
21.Anti-Romantic
◆MC
22.Good Boy Gone Bad
[ENCORE]
●VCR
01.Thursday’s Child Has Far To Go
◆MC
02.MOA Diary (Dubaddu Wari Wari)
03.Sweat