TEXT BY 小松香里
PHOTO BY 新保勇樹
次のシーンを作り出すであろうアーティストが出演する、あらたなる音楽イベント『CLAPPERBOARD -Enjoy the weekend!-』。第6弾目となる今回は、竹内アンナ、遥海、安田レイという、音楽性はバラバラだが、インターナショナルな表現でグローバルな活躍を目指す3組が集まった。
■心震わす歌声で一人ひとりと向き合う
まずは遥海が登場。活き活きとした表情を浮かべながら、パワフルな歌でオーディエンスを惹きつけていく。歌によって空間が振動していることを体感する。これぞリアルライブの醍醐味だ。物怖じしない堂々たる雰囲気も相まって、場をどんどん掌握していく。
MCで「遥海ワールドを見せたい!」と言った後、「大事な人だからこそ失いたくない。でも自分のすべてをさらけ出さないまま一緒にいるのはそのうち自分を削って駄目になるんじゃないかっていう不安がある。そんな弱った自分でも愛してもらえるかな? っていうちょっとだけ寂しい曲かもしれない」と説明し、ピアノバラード「WEAK」を歌い上げる。
歌に込めた切ない感情がひしひしと流れ出てくる。目で、耳で、震える空気を感じながらこうやって楽曲を聴くと、曲に込められた思いが何倍にもなって聴こえてくる気がするからライブというのは不思議だ。今、ここに自分がいれることへの感謝と手放してきたものを踏まえ、プライドを持って未来に突き進もうという彼女の強い意志が刻まれた「Pride」で遥海のライブは締め括られた。
■見えづらくなっているだけで、たしかにここにある想い
転換20分を挟み、照明がパッと暗くなり、再び点灯するとほぼ同時にドラムロールが轟きイントロが始まる。一斉に会場の温度が上がる中、安田レイが力強く歩を進めて姿を現す。伸びやかな歌声で陽性のタフなオーラを充満させる。
「Brand New Day」の途中、バンド演奏が止まって照明も暗くなり、安田の歌だけが響き渡る。そう、ライブとはアーティストだけでなく、照明、PA、楽器…様々なキャストがいてこそ成り立つエンターテインメントだ。
「東京に住んでいると星が見えづらい。人生もそうなのかなと思うけど、あなたという存在は見えると思った」という思いが込められた「blank sky」、そしてラストは安田自身にとっても大切な1曲となった「Not the End」へ。個人的な思いが込められた曲がダイレクトに目の前の人々に届き、オーディエンスもまた体を揺らして目の前のアーティストにダイレクトにレスポンスを送る。それによって歌や演奏や思いが育っていくことがオーディエンスの数だけ起きる。ライブとは、そんな唯一無二の交換の場であると改めて実感する。
「遥海さん、歌すごかったね! ひとりの体からあんなにエネルギーが出るなんて信じられない。竹内アンナちゃんはガチ友(笑)」と、楽しそうに話す安田。竹内がまもなく誕生日を迎えるということで、楽屋でプチバースデーパーティーをしたそうだ。こうやってアーティスト同士の関係性や交流が本人から語られるのもイベントの醍醐味である。
■歓声はなくとも生み出すことはできる“一体感”
その竹内は、キュートな魅力を振りまきながら、「YOU+ME=」からライブをスタートさせた。竹内の小気味良いギターのカッティングに合わせてエアギターを弾く仕草を見せるオーディエンスが現れる。オーディエンスの思い思いのライブの楽しみ方を見ることで、自分の感情もまた別の角度で育っていくのも興味深い。
「手のひら重ねれば」では、弾むむようなリズムに合わせて、自然とクラップが起こる。バンドメンバー同士がアイコンタクトをして、表情を緩ませる。ライブは、自分の意志で何をどう見るかが決められる。言ったら、目を瞑ってその空気を楽しむやり方だってありなのだ。
“手のひら重ねれば なにもかも違う ぼくら 分け合いたいこと増えるたび 解り合えているといいなあ”と竹内が歌う。人と人は誰もが違う。よって完全にわかり合うことは難しいかもしれない。でも、今のこの場の一体感は嘘じゃないという確信に満ちていく。
「Free! Free! Free!」のサビで竹内が勢いよくギターの弦を爪弾きながら“Free! Free! Free!”と歌い放つとオーディエンスがそれに合わせて3回拳を突き上げる。そのまま「I My Me Myself」になだれ込みクラップが起きる。“yeah yeah yeah”というアウトロでオーディエンスで腕を掲げ、左右に振る。どんどん一体感が増していく。
コロナ禍で一時は失われていた、オーディエンスが目の前にいるライブを今こうして体感できる喜びを噛み締めながらすべてのステージが終了。
本イベントのキーワードである“シンクロ”を体現するように、3組のアーティストが躍動感溢れるライブを行った。それぞれ個性の光るパフォーマンスだったが、その思いは観客一人ひとりの笑顔のために、また出演者とオーディエンスも音楽を通じて、さらにオーディエンス同士も、様々な形での“シンクロ”が目に見えて実感できた一夜だった。
2022.04.21@東京・渋谷CLUB QUATTRO
『CLAPPERBOARD -Enjoy the weekend!- Vol.6』SET LIST
■遥海
01.No One
02.Don’t want your love
03.WEAK
04.声
05.Pride
■安田レイ
01.Brand New Day
02.true colors
03.blank sky
04.It’s you
05.Not the End
■竹内アンナ
01.YOU+ME=
02.ICE CREAM.
03.TOKYO NITE
04.手のひら重ねれば
05.Free! Free! Free!
06.I My Me Myself
07.ALRIGHT
ライブ情報
CLAPPERBOARD -Enjoy the weekend!- Vol.7
05/26(木)東京・渋谷CLUB QUATTRO
出演:The Songbards / Dios / THIS IS JAPAN
Opening Act:ASTERISM
※50音順
https://eplus.jp/clapperboard22-official/
『CLAPPERBOARD -Enjoy the weekend!-』OFFICIAL Twitter
@clapperboard_JP