■「黒沢監督の頭の中が毎日少しずつ開示されていく撮影は、とても楽しく、贅沢な時間でした」(菅田将暉)
主演:菅田将暉×監督・脚本:黒沢清の初タッグによる映画『Cloud クラウド』の製作が発表され、公開が9月に決定。併せて、スチール写真が解禁となった。
『スパイの妻』(2020年)で、第77回ベネチア国際映画祭銀獅子賞(最優秀監督賞)を受賞した黒沢監督が映画最新作に選んだのは、顔の見えない社会で拡散する、憎悪の連鎖から生まれる“集団狂気”を描いたサスペンススリラー。
本作の出演オファーを即決したという菅田は、“ラーテル”というハンドルネームを使い、転売で稼ぐ主人公・吉井良介を演じる。
黒沢と本作の撮影現場で10年ぶりに再会した菅田。初対面は、主演作『共喰い』(2013年/青山真治監督)で参加した2013年の第66回ロカルノ国際映画祭で、2022年に57歳の若さで故人となった青山監督から紹介されたとき以来だったという。
『ヘレディタリー/継承』『ミッドサマー』のアリ・アスター監督をはじめ、スリラーやホラー映画の作り手を目指す世界中の監督たちが、必ずその影響を口にする日本人監督“Kiyoshi Kurosawa”。1990年代にその道を切り拓き、2024年は第17回AFA(アジア・フィルム・アワード)の審査委員長も務める黒沢清が、現代映画界の寵児たちのリスペクト魂に応じるかのように、最高にスリリングな作品に着手した。
2023年で商業映画デビューから40年を迎えた黒沢がサスペンススリラー作品に挑むのは、2016年公開の『クリーピー 偽りの隣人』以来。菅田との初めてのコラボレーションで、どのような相乗効果が生まれるのか? 黒沢清が撮る、誰も見たことがない菅田将暉に注目だ。
『Cloud クラウド』は、2023年11月25日から12月22日にかけて撮影が行われ、現在制作中。劇場公開を待とう。
■菅田将暉 コメント
生活の中に潜む、怖さとユーモア。黒沢監督の頭の中が
毎日少しずつ開示されていく撮影は、とても楽しく、
贅沢な時間でした。ピュアで歪な人間のアクションがたまらない。
とにかく完成が待ち遠しい。映画『Cloud クラウド』宜しくお願いします。■黒沢清 コメント
【作品について】
現代日本の片隅で、時折まったく無目的と思われる暴力事件が起きることがある。原因を探っていくと、そこにはちょっとした恨みやムシャクシャした気分がインターネットによって集結し肥大していくシステムがあるようだ。私はこうした現象がアクション映画の題材になるのではないかと考え、この企画をスタートさせた。主人公は、ささやかな金儲けによって少しでも人より優位に立ちたいと願う、ごくありふれた男である。この人物が不用意に周囲の恨みを買い、最後には命を賭けた死闘へと引きずり込まれる物語だ。しかし撮影が進むにつれて、私はこの映画がそう簡単にスカッとするアクションにはなっていかないことに気づいた。その理由のひとつは、主演の菅田将暉が驚くべき演技力でこの人物に深い陰影と複雑さをもたらしてくれたこと。もうひとつは、この死闘が思いがけず“戦争”の様相を見せ始めたことだ。金儲けと復讐が折り重なって増幅され、ついに暴力が作動し、気が付いたらもう引き返せなくなっている。現代の戦争も、ひょっとするとこのようにして起こるのかもしれない。【主演・菅田将暉について】
菅田さんは、誰の目も釘付けにする俳優だ。何と言ってもあの顔つき、そして声、立ち姿、奥の方にいても一発で菅田将暉とわかる唯一無二の個性があらゆる場面から立ち昇る。にもかかわらず、人混みの中だと市井の人物に溶け込んでしまう一般性、庶民性のようなものも同時に持ち合わせている。持って生まれた資質と計算とを巧みに組み合わせることのできる実に聡明な方なのだろう。そんな菅田さんにお願いした主人公吉井良介は、真面目で一途な悪党という、現代日本映画ではほとんど見かけない人物である。キャラクターの分類としては矛盾しているのかもしれない。しかし菅田さんはこの難しい役を極めて繊細に、かつ堂々と演じてくれた。繊細な部分が計算で、堂々としたところが資質なのか、あるいはその逆なのか、どちらかはわからない。いや、どちらも計算かもしれない。それとも全ては直感なのか。正体は不明だが、この正体不明こそ大スターの証なのだなとあらためて納得した。
映画情報
『Cloud クラウド』
9月、TOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー
監督・脚本:黒沢清
主演:菅田将暉
(C)2024「Cloud」製作委員会
映画『Cloud クラウド』作品サイト
cloud-movie.com