■「みんなの顔が見れたことを愛おしく思うし、幸せに思います」(中村未来)
Co shu Nie(「o」はウムラウト付きが正式表記)のワンマンライブ『A coshutic Nie Vol.3 in Billboard Live TOKYO and OSAKA』(「coshutic」の「o」はウムラウト付きが正式表記)の東京公演が、4月28日、東京・六本木のビルボードライブ東京にて開催された。
通常のロックセットとは異なる、そしてアコースティックセットとも一線を画した、独自のアレンジによる歌と演奏が展開されるライブシリーズ『A coshutic Nie』。
ビルボードライブ東京からの無観客配信ライブとして実施された「Vol.1」(2020年12月)、東京・大阪の2会場を舞台に行われた「Vol.2」(2021年11月)に続いて、今回が3回目の開催となる。
長いコロナ禍を経て、晴れて声出しOKとなった状況を受けて、舞台ぎりぎりまでテーブル席が並ぶ、ビルボードライブ本来の形での公演となったこの日のライブ。中村未来(Vo, Gu, etc.)も思わず「近っ!」と驚きの声を上げたほどの密接な距離感も、この日を待ち侘びたオーディエンスの熱気をさらに沸き立たせる原動力となっていた。
中村未来&松本駿介(Ba)の2人に加え、サポートメンバーとして和久井沙良(Key)・工藤誠也(Dr)を迎えた4人編成で、大阪・東京各1日2回、計4公演のステージに臨んだCo shu Nie。
まずは中村と和久井が舞台に登場、「Lamp」の神秘的なグルーヴを、ピアノと歌だけのシンプルな佇まいで体現してみせる。
そして、松本&工藤を呼び込んだところで、最新配信シングル「夢をみせて」の妖艶なアンサンブルを4人で披露していく。「やっと会えたね、みんな! もう声出していいらしいから、“フゥ〜!”って言ってもいいらしいよ。楽しんでいきましょう!」という中村の言葉に応えて、場内のあちこちから歓喜の声が巻き起こる。
和久井の繰り出すエレピの調べとともに、ジャズ〜ファンクのリズムが妖しく脈打つ「iB」。緩急自在な「アマヤドリ」のビート感のなかで、麗しく伸びやかに響く中村のファルセット…。その艶やかな歌声はもちろん、息遣いの一つひとつに至るまでが音楽になっていく『A coshutic Nie』というスタイルによって、Co shu Nieの繊細かつドラマチックな楽曲に織り込まれた細やかなニュアンスが、4人の熱演を通してくっきりと浮かび上がってくる。
前2回の『A coshutic Nie』とは異なり、今回は鍵盤パートをサポートの和久井に完全に委ね、ほとんどの楽曲で歌に専念していたこともあり、中村のボーカルはよりいっそうしなやかな訴求力と飛翔力をもって、観客を魅了していった。
松本の硬質なベースサウンドが光る「undress me」から「絶体絶命」、さらに「asphyxia」とスリリングな楽曲を畳み掛けていく4人。
「最初は無観客で、誰もいないビルボードだったんですけど、やったらみんなの顔が浮かんで、不思議な感覚になったのを覚えています。一歩ずつ歴史を作っていけてる気がして、それを観に来てくれてるのがうれしいです」(松本)
「この4人の演奏で作り上げてきたものが、今日でいったんおしまいなのは寂しいですけど。みんなの胸に刻みつけていきたいと思います」(中村)
というMCの言葉からも、このステージに懸ける特別な想いが伝わってくる。
そして、これまでの『A coshutic Nie』でも披露してきた未音源化楽曲「雨」。和久井の奏でる雨だれのごときピアノの音色のなか、ギターを奏でながら響かせる中村の歌声のイノセンスが、ビルボードライブの観客を濃密な没入感で包み込んでみせた。
「たぶん、みんなが思ってるよりも、私は――しゅんす(松本)もだけど――みんなに会えるこのライブの空間を特別に思っていて。大阪と東京、2ヵ所だけだけど、やっとまた新しいスタートが切れたような気持ちで…みんなの顔が見れたことを愛おしく思うし、幸せに思います。みんなのおかげで、またここに立って、こうやって歌って、どんどん先へ先へと進んでいけるっていうことを、すごく実感しています。ありがとう」…中村の万感のメッセージに、熱い拍手が会場に広がる。
ミステリアスかつエクスペリメンタルなロックの世界観で、唯一無二の存在感を放つCo shu Nie。だが、この日のステージで際立っていたのは何より、音楽を通してオーディエンスと響き合い融け合うライブ体験の、無上の喜びそのものだった。
切実なバラードナンバー「海へ」に続けて、「みんなで歌いたいと思って作った曲がありまして。ぜひ一緒に、この曲を完成させてください」という中村の言葉とともに「gray」を披露。“何度沈んだとして 凛と生きていくのさ”という決然としたフレーズが、オーディエンスの想いと共鳴しながら、美しく鳴りわたっていた。
「みんなそれぞれ、特別な人を思い浮かべながら聴いてください」(中村)と澄み切った歌声を聴かせた「miracle」から、ソリッドな躍動感に満ちた「butterfly addiction」、さらに美麗ファルセットと透徹したアンサンブルが乱反射するような「give it back」へ…とライブは終盤に向けてなおも高まっていく。
そんななか、中村からバンドの「その先」に関する告知が。今年9月にロックセットでの全国ツアー『Co shu Nie Live Tour 2023 -unbreakable summer-』を開催すること。6月28日に約1年ぶりの新曲を配信リリースすること。さらに。2024年秋には新作アルバムをリリースすること――。立て続けの発表に、ひときわ大きな拍手喝采が会場一面に巻き起こっていった。
「やっとこうやって、顔を突き合わせて音楽を共有できることに、何度でも何度でも“ありがとう”って言いたいし、みんなをハグしたいくらいの気持ちです」…終盤のMCで、中村はそんなふうに語っていた。
「生きてると、苦しいことも悲しいこともあるけど、“ちゃんと生きていく”っていうことだけはルールとして守ってて。だからこそ、こういうあったかい空間を積み重ねて、みんなと一緒に歩んでいきたいと思っています。みんなも、そうであればうれしいな」(中村)
“10年後もその先も君のままで居て/ただ生きてて欲しいの/そう願わずにはいられない”という「青春にして已む」のフレーズが、胸に染み入るように鳴りわたった。ラストは中村がギターを構え、「迷路〜序章〜」「迷路〜本編〜」の絶唱とダイナミックなサウンドスケープで、約90分のステージは大団円を迎えた。
3ヵ月連続インディーズ盤サブスク配信企画として、4月の『イドラ』に続いて5月1日にはミニアルバム『オルグ』の配信もスタート。「今年は動きまくるので」と意気揚々と語っていたCo shu Nieの「これから」に、誰もが胸躍らせずにいられない――そんな充実のアクトだった。
TEXT BY 高橋智樹
PHOTO BY 鳥居洋介
<セットリスト>
01.Lamp
02.夢をみせて
03.iB
04.アマヤドリ
05.undress me
06.絶体絶命
07.asphyxia
08.雨
09.海へ
10.gray
11.miracle
12.butterfly addiction
13.give it back
14.青春にして已む
15.迷路〜序章〜
16.迷路〜本編〜
リリース情報
2023.05.01 ON SALE
DIGITAL MINI ALBUM『オルグ』
2023.06.01 ON SALE
DIGITAL MINI ALBUM『パズル』
2023.06.28 ON SALE
DIGITAL SINGLE「タイトル未定」
2024年秋
ALBUM『タイトル未定』
Co shu Nie OFFICIAL SITE
https://coshunie.com