■「2020年、コロナ禍にデビューしたOWVがファンからの声援を真っ向から浴びるのは初めてのこと。応援の声が響きわたる会場では、感極まって涙し、目元を手でおさえるファンの姿も見られた」(※ライブレポートより)
4月1日、東京・NHKホールにて『OWV LIVE TOUR 2023 -CASINO-』東京公演が開催された。
リーダーの本田康祐が生まれ育った福島県の郡山文化センター 大ホールから始まり、4都市で7公演を巡った全国ツアー。最終日の本公演は、単独ライブとしてはOWV史上最大キャパでの挑戦となった。
開演時間が近づくと、この日を待ち侘びたQWV(OWVのファンネーム)からの手拍子が会場いっぱいに響く。巨大ビジョンにオープニングムービーが流れ、メンバーの姿が映し出されると、手拍子は少しずつ歓声に変わっていった。
シルバーの装飾がされた黒いスーツに身を包み、サングラスをかけた4人がステージ中央から現れ、QWVから歓声が溢れ出る。2020年、コロナ禍にデビューしたOWVがファンからの声援を真っ向から浴びるのは初めてのこと。デビュー年に開催された初ファンミーティングも、無観客のオンライン開催だった。応援の声が響きわたる会場では、感極まって涙し、目元を手でおさえるファンの姿も見られた。
スタンドマイクの前に立った4人は、新曲「Gamer」を歌いだす。「CASINOに挑む者たち」という意味が込められた、本ツアーのテーマ曲だ。低音が響く重厚感があるナンバーだが、ダンスを封印し、なんと歌唱のみでのパフォーマンス。メンバーも歌いながら視線の先にいるQWVの姿をじっと見つめ、噛み締めているようだった。
凛とした表情と歌で観客を魅せると、定番ナンバーとなったアッパーなパーティーチューン「PARTY」へ。「もっと声出していけますか!?」と、浦野秀太も笑顔で客席を煽る。曲の後半では、突然4人のダンサーが登場。大きな会場ならではの試みに、ファンからも驚きの声があがった。
OWVがダンサーをつけてパフォーマンスをするのは初めてのことだ。本田とともにダンスを牽引している佐野文哉のキャリアは、バックダンサーから始まっている。OWVとしてデビューする以前、様々なアーティストを支えていた彼がダンサーとともにステージで輝いていることに、積み重ねてきた歴史を感じているファンも多かっただろう。
その後はOWVらしいクールなナンバー「My flow」「Sound the Alarm」、そしてメンバーの伸びやかな高音が印象的な「Caution」を連続歌唱。歌い切る頃には、4人の汗が煌めいていた。
「OWV LIVE TOUR 2023 -CASINO- にお越しの皆様こんにちは、OWVです!」と、メンバーそれぞれ自己紹介。本田は「本日ファイナル東京です。NHKホール、皆さん楽しみにしていましたか? 今日初めてOWVを観た方もいると思うので、簡単に言うと…吉本興業の4人です!」と挨拶。
「最後の公演なので僕たちも終わってしまうのは寂しいんですが、皆さんも悔いがないように、大声出していく準備はできてますか?」と本田が呼びかけ、1階席から3階席まで順番に声出しの練習を始める。すると、低めの声も多く耳飛び込んできて「メンズ、多いね!」とメンバーも感動していた。
和やかなMCを終えると、切ない失恋を歌った大人のミディアムナンバー「Let Go」と「Scattered」を艶っぽく歌う。普段は低音が魅力のラッパーの中川勝就も、柔らかな歌声で観客を引き込んでいた。
今ツアーでは、それぞれのソロコーナーが設けられた。浦野はスモークが炊かれたステージでひとり、ピンスポットを浴びながらアコースティックバージョンで「twilight」を歌い上げる。ライブ冒頭の自己紹介のときには「ペンライト黄色にしてっ!」と自ら観客に呼びかけていた浦野だが、歌い出すと客席は自然と一面、黄色の光でいっぱいに。今月で結成3周年を迎えるOWVのメインボーカルを担う浦野の伸びやかな高音を、ファンもじっくりと噛み締めていた。
プレゼントコーナーのあとは本田が登場し、軽快なダンスソロをパフォーマンス。本田が音ハメをするたびに、元気玉のような球体の映像が連動していく。『ドラゴンボール』シリーズの大ファンである本田が、その世界に飛び込んだかのようにオマージュされた演出だ。その後は4人のダンサーを従えて、力強いダンスを披露した。
廃棄漁網からアップサイクルされた真っ赤な新衣装にチェンジしたOWVが全員揃うと、ラップを軸にした新曲「DARKSTAR」と攻撃的チューンの「Slam Dog」を繰り出した。メインラッパーの中川はもちろんのこと、3人も負けていない。佐野は指先まで使いこなし、色っぽい表情で会場を煽る余裕も見せていた。
続いて中川のソロへ。羽織った真っ赤なロングトレンチコートの裾を軽やかに揺らしながら、ステージ前方のレッドカーペットを闊歩し、得意のラップを展開する。クールな曲の雰囲気に合わせて鋭い眼差しをキープしながらも、客席の端から端まで細やかに目配せを欠かさずにいた。
中川がラップを終えると、背後からDJセットとともにDJ佐野が登場。「What you waitin’ for」から吉本興業所属の後輩グループであるOCTPATHの「Perfect」に繋ぐと、会場も大盛り上がり。この日のセットリストには惜しくも入らなかったシングル曲「Time Jackerz」を流し、再び「What you waitin’ for」を繋げると、メンバーとダンサーがそのままパフォーマンス。佐野もDJプレイをしながら歌唱した。
ここから畳み掛けるようにメドレーへ。ポップにremixされたデビュー曲「UBA UBA」が流れると、「叫びなほら!」と歌詞のとおり、ファンも大興奮。「みんなもっと声出せるでしょ? NHK!」と、メンバーもフロアに向かってコールアンドレスポンスを目一杯求めていく。
「これが最後のナンバーです!」という本田の曲振りから、原曲よりさらにアッパーなremixとなった「Tararam」へと繋げると、声出しが叶わなかったコロナ禍にはなかった光景が広がる。ファンからの歓声がコーラスのように作用し、OWVの楽曲もさらなる魅力が輝いていた。
本編が終わっても、もちろん歓声は止まない。「OWV!OWV!」と繰り返すファンの前に、ツアーTシャツを着用したメンバーが登場し、恋の始まりを描いたハッピーな楽曲「TALK TALK TALK」からアンコールがスタート。会場が再び和やかなムードに包まれた。
曲開けのMCでは、dTVの冠番組『全力フルスイングOWVり!!』で吉本の大先輩・トレンディエンジェルから伝授された新・自己紹介を披露。ややウケの空気だったが、メンバーは「吉本のイベントでは積極的に使って、先輩の骨の髄まで脛をかじっていきます!」とコメントし、笑いをとっていた。
アパレルブランドのJUNRedやROUND1、バンプレストなど各企業とのコラボレーションの告知が続いたところで、リーダーの本田から重大発表があるという。ここで2ndアルバム『JACK POT』を7月19日にリリースすることと、新ビジュアルが解禁された。「めちゃめちゃかっこいいですよね?」「(ツアーが)終わってもたくさん楽しみがあるなんて、みんないいよね!」と満足げな4人。MCの最後にはそれぞれから、ツアーの感想とファンへの感謝が伝えられた。
「皆さん、CASINOツアーは楽しかったですか? 僕もめちゃくちゃ楽しかったです。早いものでもう千秋楽を迎えちゃったんですけど、今回から声出しありということで、皆さんの熱量をさらに体でひしひしと感じることができて、本当にうれしかったです。
これからもたくさんライブをしていくと思うんですけど、こうやって一歩ずつOWVが前進してるんだなと感じられるのがやっぱりライブです。皆さんと直接会って、音楽を楽しんでくれているんだなと思います。1年、2年、3年後もずっと一緒にいたいです。ツアーは終わっちゃうんですけど、また皆さんに会いに行きます。今日の公演もまだあるので、最後まで笑顔で、思いっきりはしゃいで、喉を枯らして、楽しんで帰ってください! これからも一緒に歩んでいきましょう!」(中川)
「このツアーは3月11日の福島公演から始まりましたけれど、個人的には考えさせられるライブだなと思いました。OWVももう3年目になるんです、いろいろ進化しなければならないツアーだということを思いながらやらせてもらいました。
その気持ちと、個人的にも藍備だったり、ガゼルだったり(それぞれ浦野が出演舞台等で演じた役)、それぞれにファンがいて、全部俺に来るわけだから。こんな感じで、OWVの浦野秀太も頑張っていきますので、これからよろしくお願いいたします。主体は僕なので、それを忘れずに生活してください。ありがとうございました!」(浦野)
「本日はお越しいただきありがとうございました。皆さんのおかげでこのツアーも無事完走できました。このツアーを通して思ったことは、僕たちOWVは大人に決めていただいたグループではなくて、自分たちの意思で手を繋いで進み出したグループだということ。このグリップの強さは本物だなと思いますし、ベクトルは同じ方向を向いていると思います。僕たちを信じて、皆さんがこれからもついてきていただけたら、必ず恩返しをします。
(会場の子どもに目配せしながら)かわいいちびっ子にも、必ず幸せな日々をお届けしたいと思います。これからも信じてついてきてくださればうれしいです。ただ僕たちはまだまだ道の途中ですので、これからも皆さんの支えが必要です。ぜひ、末長くこれからもよろしくお願いいたします。ありがとうございました」(佐野)
感極まって言葉が出なくなってしまった本田は、そっと宙を見つめ、涙がこぼれ落ちないように堪えていた。それにすぐ気がついた中川がタオルをそっと差し出す。涙を拭い、ひと息ついた本田は、改めて挨拶をした。
「僕の出身地の福島でツアーの初日をやらせてもらって、しかも『3.11』という、とても意味がある日にこのCASINOツアーをやれたことは、僕にとってもすごく思い入れがあります。福島、大阪、福岡、東京と全7公演やらせてもらったのは、本当に光栄です。
公演を観に来てくださった皆さんも、オンラインで配信を観てくださってる皆さんも、全員で作ったCASINO公演だと思います。今まで3月11日の思い出を振り返ってみても、そこまでいい思い出はなかった。けど、このCASINOツアーが始まって、そして最後はNHKホールでたくさんの人に見守られて完走できたこと、誇りに思います!」(本田)
「泣いちゃった…」とこぼす本田に、佐野は飄々としながら「驚きはしないです」と返す。「文哉のMCから泣きそうになっちゃって」つぶやく本田に「俺は!?」と浦野と中川が突っ込むと、会場がしんみりムードから一転、明るい雰囲気に。
ツアーのリハーサルの様子が映し出されると、「Better Day」へ。ファンとの絆を彷彿とさせる歌詞で、OWVのこれからを描く、明るく爽快感が溢れる新曲だ。
何度も会場に「ありがとう」「楽しかった!」と呼びかけ、最後は4人で「以上、OWVでした!」と深々とお辞儀をしてステージを去る。しかし、まだまだ彼らを求める歓声は止まない。
しばらくして、4人が「もう、休ませてくれよ〜!(笑)」とおどけながらステージに登場。本公演の1曲目に歌った新曲「Gamer」が2ndアルバム『JACK POT』のリード曲になっていることを告白し、もう一度パフォーマンスをした。冒頭ではスタンドマイクでの歌唱だったが、4人の息が揃った軽やかなダンスとともに完全版を披露。ファンも各々ペンライトを掲げ、幸せを噛み締める。
「ほんとにほんとに、CASINOありがとうございました! ツアーは終わりますけど、アルバムもあります! また会いましょう!」という本田の挨拶とともに、メンバー4人で改めて深々とお辞儀。CASINOツアーは無事に幕を閉じた。4月11日、本田の誕生日には結成3周年を迎えるOWV。7月19日にリリースされる2ndアルバム『JACK POT』を、ファンは楽しみに待とう。
本公演は、4月8日23時59までアーカイブ配信中。チケットの販売期間は4月8日20時まで。
TEXT BY 小沢あや(ピース株式会社)
PHOTO BY 山口比佐夫
<セットリスト>
Opening VTR1
M01. Gamer(新曲)
Opening VTR2
M02. PARTY
M03. My flow
M04. Sound the Alarm
M05. Caution
MC
M06. Let Go
M07. Scattered
M08. 浦野ソロ(twilight アコースティック)
VCR
M09. 本田ソロ
M10. DARK STAR(新曲)
M11. Slam Dog
M12. 中川ソロ
M13. 佐野ソロ (DJ time)
M14. UBA UBA (Remix)
M15. Tararam (Remix)
EN1. TALK TALK TALK
MC2
EN2. Better Day(新曲)
EN3. Here & Now
EN4. Gamer(新曲)
リリース情報
2023.07.19 ON SALE
ALBUM『JACK POT』
OWV OFFICIAL SITE
https://owv.jp/