■「“死刑執行人”という非情な宿命を背負ったサンソンに再び向き合い、彼のような人物がいたという事実を、舞台を通して皆様に伝え、未来に繋げていければと思っています」(稲垣吾郎)
稲垣吾郎主演の舞台『サンソン ールイ16世の首を刎ねた男ー』が再始動。東京公演が4月14日から4月30日まで東京建物 Brillia HALL、大阪公演が5月12日から5月14日までオリックス劇場、松本公演が5月20・21に長野・まつもと市民芸術館 主ホールで上演される。
舞台『サンソン』は、18世紀のフランス・パリに生きた実在の死刑執行人、シャルル=アンリ・サンソンの眼差しを通して、王族、貴族、革命家、一般庶民にいたるまで、フランス革命にかかわった多くの人間たちの理想や挫折、生きざまを描く群像劇。
2021年4月に初演の幕を開けるも、新型コロナウィルスの感染拡大の影響により、わずか数公演で東京公演の中断、大阪公演の中止を余儀なくされた話題作が、いよいよ再始動の時を迎える。
死刑執行人という宿命を背負ったシャルル=アンリ・サンソンの葛藤を一身に背負うのは、稲垣吾郎。
本作の演出を手掛ける白井晃との初タッグとなった舞台『No.9—不滅の旋律—』(2015年初演)でも実在したベートーヴェンを熱演し、2018年、2020年と上演を重ねてきた。大きな時代の変化を見つめる知性と冷静沈着さを保ちつつ、その内面に息づく人間性、信念、情熱をも感じさせる多面的なサンソン像は、初演時にも深い印象を残した。
「アンシャン・レジーム」(旧体制)の打倒を目指す革命のドラマにふさわしく、キャストにはフレッシュな若手俳優が集結。
フランス革命のいちばんの当事者であり、サンソンの敬愛の対象でもあるルイ16世役には、蜷川幸雄演出『盲導犬』で舞台デビューを飾り、近年もウィル・タケット、鄭義信、ノゾエ征爾ら個性豊かな演出家から愛され続ける大鶴佐助があらたに挑む。
新キャストには、2.5次元舞台から映画、テレビドラマへと活躍の幅を広げ独自の存在感を放つ崎山つばさ、劇団EXILEのメンバーで映画、ドラマと多くの話題作への起用が続く佐藤寛太、2.5次元舞台から翻訳劇まで様々な舞台でキャリアを重ね進化を続けるD-BOYSの池岡亮介が加わり、革命期の青年たちを演じる。
初演メンバーからは、数多くの映画、ドラマでキャリアを築き、話題作への出演を続ける落合モトキ、舞台はもちろん映画やドラマでも着実に存在感を示す清水葉月が続いて出演。
さらに、ギロチンの発案者で医師、ギヨタン役には、重鎮・田山涼成、シャルルの父親とロベスピエールの二役には榎木孝明が続投、若者たちの群像劇に奥行きをもたらす。
演出の白井晃、脚本の中島かずき(劇団☆新感線座付作家)、音楽の三宅純は、英仏の百年戦争を舞台に、歴史の奔流に飲み込まれていくヒロインを描いた『ジャンヌ・ダルク』(2010年初演)、楽聖ベートーヴェンの半生を音楽と共に描く『No.9—不滅の旋律—』(2015年初演)、そして本作と、足掛け10年以上3度にわたり、実在の人物を題材とした歴史劇を創作してきた。
中島かずきは、史実に大胆な発想の飛躍を加え、歴史の転換点とそこに生きる人間たちの姿を鮮やかに捉える。ホームである劇団☆新感線で描く歴史のダイナミズムはそのままに、より抑えた筆致で、人の心の深淵を浮かび上がらせるのが、本シリーズの特色だ。
三宅純は、ジャズを出発点に古今東西の音楽の異種配合を重ね、独自のサウンドを構築する世界的な音楽家。全編書き下ろしによるオリジナル楽曲には、18世紀末のパリの混沌、喧騒と静謐が立ちこめる。
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そして、緻密な戯曲読解と演出を通じ、濃厚かつ洗練された劇世界を立ち上げる白井晃。音楽にも美術にも造詣の深い白井が、一流のクリエイター、個性豊かな俳優たちと立ち上げる、ドラマティックな劇空間に期待が高まる。
【あらすじ】
1766年、フランス。その日、パリの高等法院法廷にひとり一人の男が立っていた。
彼の名はシャルル=アンリ・サンソン(稲垣吾郎)。パリで唯一の死刑執行人であり、国の裁きの代行者 “ムッシュー・ド・パリ”と呼ばれる誇り高い男だ。市中で最も忌むべき死刑執行人と知らずに、騙されて一緒に食事をしたと、さる貴婦人から訴えられた裁判で、シャルルは処刑人という職業の重要性と意義を、自ら裁判長や判事、聴衆に説
き、勝利を手にする。
父・バチスト(榎木孝明)の仕事を受け継ぎ、処刑人としての使命、尊厳を自ら確立しつつあったシャルル。おりしもルイ15世の死とルイ16世(大鶴佐助)の即位により、フランスは大きく揺れはじめ、シャルルの前には次々と罪人が送り込まれてくるようになる。将軍、貴族、平民。日々鬱憤を募らせる大衆にとって、処刑見物は、庶民の娯楽でもあったが、慈悲の精神を持つシャルルは、自身の仕事の在り方に疑問を募らせていく。
そんなある日、蹄鉄工の息子ジャン・ルイ(佐藤寛太)が、恋人エレーヌ(清水葉月)に横恋慕した父を殺める事件が発生。その死は実際には事故によるものだったが、「親殺し」の罪は免れず、ジャン・ルイは車裂きの刑を宣告される。しかし、職人のトビアス(崎山つばさ)、後に革命家となるサン=ジュスト(池岡亮介)ら、彼の友人たちは、刑場からのジャン・ルイ奪還を目論み、成功する。この顛末を目の当たりにしたシャルルは、いっそう、国家と法、刑罰のあり方について、思考を深めることとなる。
さらに、若きナポレオン(落合モトキ)、医師のギヨタン(田山涼成)ら、新時代のキーマンとなる人々とも出会い、心揺さぶられるシャルルがたどり着いた境地とは…。
■主演・稲垣吾郎 コメント
『サンソン』再始動の話を聞いたときは素直に嬉しく思いました。白井さん、中島さん、三宅さんという素晴らしいクリエイターの方たち、そしてフレッシュなメンバーも加わるキャストの皆さんと、改めてこの作品に向かい合えることに感謝しています。
“死刑執行人”という非情な宿命を背負ったサンソンに再び向き合い、彼のような人物がいたという事実を、舞台を通して皆様に伝え、未来に繋げていければと思っています。
色々なお仕事をさせていただく中で、舞台は自分が自由に羽ばたけるような貴重な場所です。初演時は中止になってしまった公演も多く、ご来場が叶わなかったお客様もいらっしゃると思います。今回は多くのお客様と時間を共有できることを楽しみにしています。■演出・白井晃 コメント
2021年4月の突然の中断から2年。再び『サンソン』が動き出す。私は、今回の公演を再演とは捉えていない。あの日の憤りからこの作品はずっと続いている。だから、再演ではなく再始動である。2年間という時間の中で私たちは多くのことを学んだ。不安の蔓延、虚偽と真実の不確かさ、価値の変化。だからこそ、今、フランス革命の中心にいて、時代の波に翻弄されながらも、使命を全うすることで自己の存在を見出そうとした「サンソン」の姿が崇高に思えてくるのだ。■脚本・中島かずき コメント
『サンソン』が再始動する。2021年に唐突に中断され、その公演の大半を中止せざるを得なくなり、それでもなんとか神奈川公演で大千穐楽にだけはたどり着けた。だが、そこにいた誰もが不完全燃焼な思いを胸に「もう一度」と熱く願っていた作品だ。2年の時を経て、新しいメンバーを加えて、ようやく胸の燻りに火をつけることができる。暗く辛い時代の重い使命を抱えた男の物語だが、しかし、その炎があれば、闇の先の光にまでたどりつけると信じている。■音楽・三宅純 コメント
世襲の『死刑執行人』という宿命、動乱の時代がもたらす過酷な試練、シャルル=アンリ・サンソンをめぐる数奇な史実を知って、僕は震撼した。彼が責務を執行した現場の多くは、パリの住まいから徒歩圏にあり、街が今までとは違って見えてきた。サンソンの生きた時代、カオスとデカダンス、彼の美学とリリシズムを、白井晃さんの音楽構成案に繰り返し登場する「重低音」というキーワードと、どのように交差させるべきか、試行錯誤したのが今回のスコアだ。
この作品の初演はコロナ禍に翻弄され、余儀なく中断されたが、僕にはそれすらも物語の背景にある動乱の時代の事象に見えてきてしまっていた。今回の再演に際しては、中断された悔しさのエネルギーが昇華され、さらに凄みのある舞台になることを期待している。
舞台情報
舞台『サンソン ールイ16世の首を刎ねた男ー』
04/14(金)~04/30(日)東京・東京建物 Brillia HALL
05/12(金)~05/14(日)大阪・オリックス劇場
05/20(土)~05/21(日)長野・まつもと市民芸術館 主ホール
舞台公式サイト
https://sanson-stage.com/