■「バーチャルで演奏するのって、めちゃくちゃ楽しいですね」(のん)
1月22日、バーチャルサンリオピューロランド内で開催された『SANRIO Virtual Festival 2023 in Sanrio Puroland』DAY 2に、のんが出演。力強くも可憐なパフォーマンスで、テーマパークとエンターテインメントが融合したVR空間に瑞々しい歌の花を咲かせた。
1曲目の「やまないガール」から、のんはすでにフルスロットルだった。サイケデリックなギターのイントロと共にこぶしを突き上げると、オーディエンスが目の前にいるかのように会場を煽る。赤いテレキャスターをかき鳴らす様は勇ましく、ロックスターの片鱗を感じさせた。「むしゃくしゃ」に移りハンドマイクとなった彼女は、より一層自由になった。
歌い出しで飛び跳ねたかと思えば、足をガッと開いてみたり、腰を大きく曲げて手を掲げてみたり。楽器を持たないシンガーは時としてマイクを握っていない手の扱いに困ることもあるが、彼女にそんな心配は無縁。役者としての経験もフル投入し、全身全霊で表現へ向かっていく。それでいて、愛らしさも忘れてはいない。
「わたしは部屋充」で、がなり声と対照的に響いた透明感のある歌声はあどけなく純真だ。のんというアーティストは、ロックを全身で叫ぶこともできれば、少女のような儚さを香らせることもできる。音に乗せて紡がれていくパワフルでありながらセンシティブでもある佇まいは、紛れもない彼女自身なのだろう。誰のことも演じていない、ショージキなのんがステージにはいた。
MCでは「『SANRIO Virtual Festival 2023』、呼んでいただいて本当に嬉しいです。みんな見てる?」と、上に大きく伸ばした手をフリフリ。「バーチャルで演奏するのって、めちゃくちゃ楽しいですね」と話し、瞳を輝かせた。
のんの「なんと次は、あの方が来てくれます」という紹介を受けて、スペシャルコラボパフォーマンスのゲストであるハローキティが登場。声高く曲名をコールし、「ナマイキにスカート」へ繋いでいった。
可愛いだけじゃないどこかクセのある楽曲の世界観は、一筋縄ではいかないポップアイコンのハローキティともベストマッチ。ボリュームあるパンツをのんが揺らすと、ハローキティもレースのあしらわれたスカートをゆらゆらとひるがえす。時にアイコンタクトを取りながら楽しく歌い踊る様子は、ガールズトークが目の前で繰り広げられているようだった。
ハローキティをステージから送り出すと、ステージは暗転。先ほどまでの煌びやかな空気が一変して、しっとりした雰囲気に包まれた。ポロポロと転がっていくギターの音色、夜更けを彷彿する薄暗いステージ、しゅわしゅわと空へ昇っていく淡い光。のんはスゥッと「エイリアンズ」の世界に潜りこみ、歌詞をひとつひとつ落としていく。その歌声は清らかに澄み切っていって、言葉の美しさが一段と際立っていた。
ラストに投下されたのは、のんが監督・脚本・主演を務めた映画『Ribbon』をテーマにコロナ禍で制作されたという「鮮やかな日々」。爽やかで素朴なサウンドは、地に足をつけて自分の人生を生きるフラットな彼女自身を感じさせる。誇大に見せるでもなく謙遜するでもなく、ありのままののんを音楽に刻む。変わってしまった日々のなかでも揺るがない凛とした信念を、颯爽と歩く姿で示したのだった。
役者でありシンガーでありクリエイターである女優・創作あーちすと、のん。『SANRIO Virtual Festival 2023 in Sanrio Puroland』で仮想空間に舞い降りた彼女は、ポップな空気を放ちながらも、きちんと生の匂いがしていてリアルだった。力強さも可憐さも過激さも儚さも、どれも紛れもないのん自身。だって彼女は、ひとりの人間なのだから。嘘のない表現で真っすぐに向き合っているのんの次なる一手が今から楽しみだ。
TEXT BY Ayaka Sakai
PHOTO BY Koki Takezawa
のん OFFICIAL SITE
https://nondesu.jp/