■「日本ではこれを“おかわり”って言うんだよ」([Alexandros]・川上洋平)
[Alexandros]の「閃光」のMVと音源を使用したYouTube動画ショートの累計再生回数が15億回を突破。
そして2023年1月15日から主題歌を担当した映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』がTVエディションとして放送決定。
ますます楽曲が大きく広がっていく可能性を感じさせる「閃光」だが、ここでは[Alexandros]が、11月20日(現地時間)に米国・NYで行ったライブの様子をレポートする。
【ライブレポート】
[Alexandros]が現地時間11月20日、興収22.1億円、動員数108万人突破の大ヒットを記録した劇場アニメーション『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』のテーマソング「閃光」を携えて、アメリカ・ニューヨークのJavits Centerで開催されたジャパニーズアニメコンベンション『Anime NYC』内のメインブースのひとつ『GUNDAM EXPO U.S.A. 2022』でサプライズコンサートを行った。
なんとこのコンサートが発表されたのは公演前日の11月19日。メンバー4人がAnime NYCの公式Twitterで、「このビデオをご覧になっているということは僕らがAnime NYCでパフォーマンスをすることになっていますが、(ビデオ撮影時点では)ビザに問題があるので、Anime NYCでパフォーマンスが出来ることを心から願っています」とコメントしたビデオが撮影されたのが公演2日前の18日。つまり、その後ビザが無事に降りた翌19日には海を越えてコンサート当日を迎えたことになる。その事実だけでも彼らの歴史にとどまらず同コンベンションにとっても記憶に残る出来事となった。
たった1日前の告知にもかかわらず彼らのサプライズ出演は一気に注目を集めて会場は満杯に。冒頭、『GUNDAM EXPO U.S.A. 2022』のスタッフからPremium BANDAI(p.bandai.com)で予約販売のアパレルや限定のガンプラの紹介が行われたあと、MCから[Alexandros]の登場が紹介されると指笛も含めた大きな歓声が起こった。
アメリカでも『Mobile Suit GUNDAM Hathaway』として紹介されている『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』と、「Senko」としてアメリカのファンにもすっかりお馴染みのテーマソング「閃光」がティーザー映像のような短さで流れたあと、バックスクリーンに「マフティー」と[Alexandros]のロゴが映し出され、メンバー4人が登場すると大きな歓声で迎える観客たち。
暗転のステージに影だけが映し出されるなか、川上洋平(Vo、 Gu)が腕を高く挙げて深く丁寧にお辞儀し、軽くギターをかき鳴らしたあと、観客を立つように促すと、「What’s going on New Yooooorrrrrrkkkk!!!!!」と叫んで観客を煽り、ほんの一瞬の間を明けて、電光石火の様な歌声で「Rock The World」を封切ると、「Let’s Go!」の掛け声で白井眞輝(Gu、Cho)の煌めきを帯びたギターが駆け巡った。
スタジアムやアリーナが主戦場の彼らにとってこの場所はスケールはもちろんコンベンションをメインとしたレアな会場で、シークエンスこそ使っていてもツアーメンバーもいない、4人だけのシンプルなステージということもあり、リアド偉武(Dr)のドラムも生音がよりアシッドに聴こえるのもとても新鮮。磯部寛之(Ba、Cho)がまるで観客の写し鏡のように無数のグロースティックや振られて盛り上がるフロアを見つめながらどんどんと表情を綻ばせ、ベースラインにさらなる躍動感が加わっていく光景にこちらまで笑顔が溢れてしまった。
アメリカのアニメコンベンションで彼らのような本物のロックバンドを観られる機会は珍しく、また、演者にとってもアニメコンベンションを観に来ている人々を前にしての演奏という普段なかなかないシチュエーションなのだが、[Alexandros]に至っては、そんな環境に冒頭こそ表情に気合と気迫のような緊張感が見えたものの、観客の盛り上がりぶりに心から安堵したのか2曲目の「無心拍数」になるとすっかりリラックスしている様子だった。
MCで磯部が「とても圧倒されているよ。日本はとても厳しくて、この3年間で初めて観客の声を耳にした。本当に素晴らしいよ」と英語で語っていたが、そんな彼らの言葉を受けて、続く「アルペジオ」でのコールアンドレスポンスの声はますます大きく響き渡った。
そしていよいよラストは、すべての観客、ストリーミングで鑑賞していた全米のファンが待っていた「閃光」。川上が「英語でもなければ日本語でもないとても簡単なパートだからこれをシンガロングしてほしいんだ」と、「ウォーオーオー」と歌い、観客も大きく応える。その声をもっとダイレクトに聴きたかったのだろう、川上はイヤモニを外して、一瞬静かにメンバーと呼吸を合わせ、リアドのカウントでイントロを鳴らした。それまでのシンプルなバックグラウンドが『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の映像をフィーチャーした「閃光(English ver.)」に。今まで以上に多くのグロースティックが激しく振られ、激しく飛び回る観客も。繰り返すが彼らのコンサートが発表されたのはわずか1日前。同映画のファンもまさかこの曲を生で聴けるなんてコンベンション初日の18日には予想だにしていなかったのだ、観客の興奮は察するに余りある。
2日前にビザが下りて無事コンサートを行えたことが第1のサプライズだとすれば、第2のサプライズは想定外のアンコール。ラストの「閃光」を終えてステージを去ったメンバーに、「アンコール!」「One more song!」という日英混じったアンコールの声が大きく鳴り響くも、『GUNDAM Expo U.S.A. 2022』のMCが登壇してイベントを締めたので、会場にいた人々も諦めて客席から移動し始めた矢先、突如バックグラウンドにバンドロゴが再び映し出されると飛び出すようにメンバー4人がカムバック! これには観客も走り込むように慌てて客席に戻り、歓喜の声が湧き上がった。
「準備してなかったら同じ曲、「閃光」をもう一度プレイしてもいいかな?」という川上の発言に磯部が「同じ曲をもう一度? 本当に?」と2度確認していたことからもアンコールが本当に想定外のものだったことを知るには十分だった。
しかも川上は「日本では弾かないから今回はギターを弾かない。でもさっきよりもラウドにやるよ」と宣言し、シーケンスの使用の有無すらもステージ上で話し合うほどの生々しさがリアルでたまらない。余程楽しかったのだろう、イントロでたまらず笑い声を乗せてしまった川上は、「日本ではこれを“おかわり”って言うんだよ」と説明。ギターが1本減ったのにもかかわらず確実に先ほどよりラウドで激しい「閃光」が鳴らされた。
イベント直前まで希望を見失わず、出来うるギリギリの日程で13時間かけて空を飛んで駆けつけた[Alexandros]の情熱がアメリカのアニメファンの心を突き動かし、そしてそんなファンの姿に突き動かされた4人が1時間という短いショーを心の底から愛おしむように全身全霊でロックを叩きつける、その全てが純粋に美しかった、最高のサプライズコンサートだった。
TEXT BY 宮原亜矢(LA在住音楽ライター)
PHOTO BY @ogata_photo
<セットリスト>
1. Rock The World
2. 無心拍数
3. アルペジオ
4. Girl A
5. Mosquito Bite
6. 閃光
[ENCORE]
7. 閃光
リリース情報
2022.07.13 ON SALE
[Alexandros]
ALBUM『But wait. Cats?』
[Alexandros] OFFICIAL SITE
https://alexandros.jp/