■「このイベントがなかったら今年はもうみんなに会えなかった」(DREAMS COME TRUE・吉田美和)
かなりレアなライブだったと、会場を出て時間が経つごとに実感が湧いている。
『STAR CHANNEL presents DREAMS COME TRUE 5つの歌詩(うた)SUPER LIVE 2022』と題して大阪城ホール(12月7日、8日)と横浜アリーナ(12月17日、18日)で行われたDREAMS COME TRUEのスペシャルライブだ。
まずはこのライヴに至る経緯を簡単に説明すると、DREAMS COME TRUEの「歌詩」の世界を脚本家、岡田惠和らが紡いだオリジナル・ストーリーとしてドラマ化。それがスターチャンネルで配信され話題となった「5つの歌詩(うた)」だ。ドリカムの楽曲が各話の“原案”になっており、より深く歌詩の世界が堪能できるものとなっている。
今回は、そのドラマとリアルなライヴがどのように共鳴するのか、引いては日本のエンタメ・シーンにおいてどんな新たなメディアミックス的手法が立ち現れるのか大きな期待が寄せられた。
なんとも言えない静かな興奮が漂っている開演前のステージに3人の女性がいる。「5つの歌詩(うた)」第5話「スピリラ」で登場した彼女たちだ。
ドラマの中で友達になった証としてドリカムのライブチケットをコンビニで発券する場面が描かれていた。その日が今日、というわけだ。
土村芳(三島薫役)、前田亜季(遠山真理恵役)、足立梨花(中谷宏美役)が演じる女性たちはドリカムのライブ会場で待ち合わせをし、開演までの時間を過ごしている。短い時間のなかで巻き起こるそれぞれの心理描写がドリカムを軸に絶妙に描かれていく。
それはまさに今この瞬間にもリアルに会場にいる人たちの間で交わされているドラマなのではないかと思う。そう、まるでドラマの中にいるような、あるいはドラマが現実の世界になったような空間、それがこの『5つの歌詩(うた) SUPER LIVE 2022』なのだ。
「TRUE, BABY TRUE.」のovertureバージョンに乗せて吉田美和と中村正人が登場。1曲目は「連れてって 連れてって」。冬の代名詞ともいえるこの曲から始まったのは、コロナのためにライブツアーとしては開催できなかったドリカムの冬のイベント『WINTER FANTASIA』が想起され、そのことも今回久しぶりにフルバンドでのライブが実現した喜びを感じさせるものだった。
「このイベントがなかったら今年はもうみんなに会えなかった」(吉田)、「来年は『史上最強の移動遊園地DREAMS COME TRUE WONDERLAND 2023』がありますからね。それまでは一切ライブをやらないつもりでいたんです」(中村)、「そう。来年WONDERLANDがあるから今回はかなり攻めてます」(吉田)
いわゆる、ドリカムのメガヒットパレードではなく、今回はレアな楽曲を選び抜いたセットリストになっているのも特徴のひとつだ。
ただ、ポイントとして重要だったのが、歌詩だ。吉田美和の描く言葉の世界をよりダイレクトに深く感じられる楽曲という基準が貫かれていたのが何よりのサプライズであり、ドラマ『5つの歌詩(うた)』のスーパーライブである所以だ。
「マスカラまつげ」「空を読む」「何度でも」とドラマの原案となった楽曲を立て続けに3曲披露し、ここからさらに深淵なる言葉の世界に潜っていくことになる。「堕ちちゃえ」「せつなくなぃ?」「今度は虹を見に行こう」「THE ONE」のブロックは圧巻。言葉の立体オブジェが上から降り、それらが散らばったままステージ装飾として機能している様子は、まるで吉田美和の詩作過程に入り込んだような感覚になれた。
「虹」「雨」「せ」「N」「H」「鳥」「霧」などの文字が意味を成す前の状態でバラバラとあり、それらに照明が当たると、我々が認識しているものとは違う意味を付与された言葉として音楽とともに飛び込んでくる。
完成された歌詩としてよりも、断片として歌とともにあることで即時性と永遠性の両方を表現しているというとんでもなく深いライブ体験がそこにあった。
やはりDREAMS COME TRUEというバンドは、いついかなる時でもチャレンジャーなのだなとこのライブを観て、改めて納得させられた。『史上最強の移動遊園地DREAMS COME TRUE WONDERLAND』が最もわかりやすい例だが、彼らは普通のライヴなんて絶対にしてこなかったから。
最新曲「スピリラ」で感じられるのも、そんなドリカムのDNAに脈々と流れる反骨精神だ。初めてライヴで披露された「スピリラ」はより凶暴で、だからこそどこまでも優しく、楽曲としての振れ幅と芯の強さを同時に感じられるものだった。
ライブでやることは超レアな「BIG MOUTHの逆襲」から最後はドラマ『5つの歌詩(うた)」でも原案のひとつとなっていた「TRUE, BABY TRUE.」で本編を締めた。
アンコールでは、「スピリラ」のカップリングに収録された「羽を持つ恋人 – DCT Version -」、そして「サンタと天使が笑う夜」を披露。
最新曲と最初期の楽曲を最後に持ってきたのは、少し早いクリスマスプレゼントのように感じられた。そしてそれは、この3年間思うようにライブができなかったなかでもともに歩み続けてくれたファンへの感謝のようにも。
ライブ会場を出て思い思いの方向に向かうそれぞれの人たちのなかに、その人たちだけの物語があって、そしてこれからも“あなたの物語”の中心にはドリカムの楽曲が流れていることだろう。
ライブが終わってからもまだずっと続いているような最高のライブだった。
TEXT BY 谷岡正浩
PHOTO BY Taku Fujii & Kenichi Kurosaki
【セットリスト】
1. 連れってって 連れてって
2. MADE OF GOLD – featuring DABADA
MC
3. マスカラまつげ
4. 空を読む
5. 何度でも
6. 堕ちちゃえ
7. せつなくなぃ?
8. 今度は虹を見に行こう
9. THE ONE
10. スピリラ ※新曲
11. 自分勝手な夜
12. BIG MOUTHの逆襲
13. TRUE, BABY TRUE.
<ENCORE>
14. 羽を持つ恋人 – DCT Version – ※新曲
15. サンタと天使が笑う夜
『5つの歌詩(うた)』番組サイト
https://www.star-ch.jp/dreamscometrue
「スピリラ」特設サイト
https://dreamscometrue.com/supirira/
DREAMS COME TRUE OFFICIAL SITE
https://dreamscometrue.com/