マイケル・ジャクソン『スリラー』40周年記念“没入型体験イベント”の現地レポートが到着

■『スリラー』の世界観を全角度から体験できる最高に楽しくスリリングな究極イベント！　マイケル・ジャクソン『スリラー』40周年記念、“没入型体験イベント”がNYとデュッセルドルフで開催。

“人類史上最も売れたアルバム”であるマイケル・ジャクソン『スリラー』の40周年記念エクスパンデッド・エディションが世界で一斉に発売となったが、それを祝して米ニューヨークと独デュッセルドルフにて、『マイケル・ジャクソン：スリラー40周年記念没入型体験』と名付けられたイベントが開催された。

これは、『スリラー』のビジュアル世界に自ら入り込めたり、またはビジュアルが3Dとなっていきなり目の前に現れたり、最新テクノロジーで聴けたり、TikTok用に踊ったり、自らがゾンビになったりと、全角度から、『スリラー』の偉大さを新体感できる、最高に楽しくスリリングなイベントとなった。

この豪華すぎるイベントの入場はなんと無料。時間帯だけ決めて予約すれば誰でも入れた。NYでは11月18〜20日まで、エンパイアステイトビルすぐ近く、街のど真ん中の五番街で行われ、時間で区切られてはいたものの“いったいどんな体験ができるのか一刻も早く知りたい”と、最高気温5度という寒さのなかにさっそく長蛇の列が。このイベントは、ざっくり言うと曲ごとに究極の体験ができるというもの。

■「ビリー・ジーン」体験

まず入り口を抜けるとすぐに、「ビリー・ジーン」のMVのセットが再現されていた。セットの中に自分たちがいきなり入り込んだような設定となっていて早速ワクワクする。トレンチコートの男もいるし、電話ボックスもあるし、カメラ屋さんのウィンドウもある。新聞紙も道を舞っていた。

そこでカメラ屋さんのウィンドウに「ビリー・ジーン」の振り付けが映し出され、MVの中のマイケルのように枠組みが出てきて、自分たちが踊っている様子を録画でき、携帯にダウンロードできた。公衆電話で電話をかけるフリをするような人たちもいた。

またMVが壁一面に映し出されていて、その前には、マイケルのステップに併せて光る道も再現。そこで踊って映像を撮る人たちもいた。

■「スリラー」体験

それに続く部屋には、「スリラー」のMVを彷彿とさせる映画館が待っていた。次のアトラクションに向かうときにお化け屋敷の扉を開けるようなドキドキがあるのも最高だった。中に入ってシアターの座席に座ると、40周年を記念して最新デジタル技術で今に蘇った「スリラー」のあまりに鮮明な4Kリマスター版が上映。しかし、なんと、途中からその鮮やかの映像の中から飛び出してきたかのように、本当にゾンビのダンサーが登場したから驚き！

しかもさすがNYというか、無料のイベントであるにもかかわらずダンサーのレベルも高すぎた。実際ダンサーになる人たちで「スリラー」に何らかの影響を受けなかった人もいないかもしれない。「スリラー」の普遍性と影響力を垣間見るような瞬間でもあった。映像の中に自分が入ったような体験は4Kでリマスターされた映像の立体感と鮮明さにも通じるものがあった。

■「ビート・イット」体験

次の部屋に向かうと今度は、「スリラー」同様に今回4Kリマスターされた「ビート・イット」のMVを彷彿とさせるダイナーのカウンターと、ビリヤード台が置いてあった。

なんとスナックとペプシが無料で配布され、みんな一息、楽しそうに、ビリヤードやパックマンなどのゲームをして楽しんでいると、そこでもいきなり、今度は3人のダンサーが登場したから驚きだ。「ビート・イット」のMVを彷彿とさせる対決するダンスを繰り広げ、拍手喝采となっていた。

■360 Reality Audio

『スリラー』をソニーが開発した360 Reality Audioでまさに“没入型視聴”。これはソニーが開発した最新技術で、ボーカル、コーラス、ピアノ、ギター、ベースなど、すべての要素を360度に配置できるシステムだ。ここではヘッドフォンか、またはスピーカーが360度に配置された部屋の両方で“没入型”視聴できるようになっていた。

スピーカーの部屋に入ると、「どの曲を聴きたいか？」がリクエストできて、私たちのグループでは、誰かが真っ先に「“ヒューマン・ネイチャー”！」と言ったのでそれに決まりだった。美メロに、マイケルのボーカルの繊細さがひときわ輝く曲だが、マイケル自身によるコーラスもいきなり後ろのスピーカーから聴こえてくるなど、マイケルのボーカルに包まれるような新鮮かつ至極の体験となった。さらに、ギターやシンセサイザーによるアレンジの美しさも際立ち、おそらく本当のコンサートを観ることの次に感動的な新しい音楽体験の場と言えるかもしれない。これは用意されたヘッドフォンでも体験可能で、好きな曲を選んで視聴することができた。

■ゾンビ体験

これはまさにTikTokやインスタのフィルター世代にぴったりの楽しい体験で、カメラの間に立って好きなポーズを撮ると、自分の顔がゾンビに変身。「スリラー」の一員になったような体験で、人気コーナーとなっていた。これも撮ったあとに自分の携帯にダウンロードできるようになっていた。「スリラー」の映画的な要素、子供的な視点による遊び心などが2022年に蘇る、純粋に楽しい体験だった。

■ダンス体験

巨大なスクリーンに映し出されたマイケルの映像の前で自分が踊ると、その動きに画像が反応。まるでマイケルの映像と自分のダンスがコラボしているような体験ができる。小さい子供たちにも人気となっていた。これも最新技術だからできる体験だった。

■「P.Y.T（プリティ・ヤング・シング）」体験

「プリティ・ヤング・シング」と書かれた鏡の前では、永遠に続く自分のイメージが撮影できた。

その他、もちろん、『スリラー』のジャケットなどが飾られていて、そこでセルフィーを撮る人もいるし、「ビート・イット」が描かれた壁の前で、自分なりに振り付けをしておそらくTikTokの撮影をする人たちもいた。

出口を抜けると当然グッズ売り場もあった。40周年記念のTシャツから、40周年記念のアナログにCD、マグカップやキャップ、ポスターまでが販売され、早速賑わっていた。

『スリラー』が様々な形で2022年に蘇っているのを堪能する場所でありながら、何より感動的だったのは、あらゆる人種の人たちが集まっていたこと。老若男女どんな年代の人たちもすべてが集まっていた。しかも、誰もがみんなここにいるだけで笑顔だった。

赤ちゃんを抱えた若いお母さんがマイケル・ジャクソンの格好をして来ていたり、もちろんTシャツを着てる人もいた。誰をも歓迎する敷居の低さでありながらも、作品のクオリティの高さを堪能できるイベントであり、しかもそれが2022年の最新技術で更新されている。また作品の普遍性ばかりか、時代を超えてもどんな人もインクルーシブなこの作品のエンターテイメント性の本質を体感できるイベントでもあった。

この作品がどれだけの人に長年愛されてきたのかを一瞬で実感でき、今後も永遠に世界中の人たちに愛され続けるだろうという今作の偉大さが見える場所でもあった。

TEXT BY 中村明美