■東京公演2日目の2部では、『仮面ライダーギーツ』にメインキャストとして抜擢され、長期撮影のためグループ活動を制限中の杢代和人がサプライズ登場!
2次元と3次元の狭間で独自の独自の存在感を醸し出す7人組グループ、原因は自分にある。が、初の5大都市ワンマンツアー『げんじぶ空間:case.4』を9月24日に大阪・Zepp Nambaにて、大盛況のうちに終幕させた。
昨年4月の初ワンマン以降、今春の東名阪Zeppツアーまで全公演が完売していることから、北海道と福岡が初めて開催地に加わり、1階席は初のスタンディングに。それにもかかわらず、またもや全公演がソールドアウトと、今や“げんじぶ”の勢いは止まることをしらない。
さらに熱気の度合いが増した本ツアーでは、8面の移動型LEDパネルや映像を駆使した彼らならではの舞台演出のみならず、それに匹敵するタフでエモーショナルな“ライブ”パフォーマンスにより、グループとしての進化を高らかに証明。
東京公演2日目の2部では、現在放送中の『仮面ライダーギーツ』にメインキャストとして抜擢され、長期撮影のためグループ活動を制限中の杢代和人が急遽登場するサプライズもあり、“観測者”と呼ばれるファンとともに楽しく、熱く、切なく、泣ける『げんじぶ空間』を作り上げた。
メンバーが一人ひとりジャケットを整えるモノクロのオープニング映像が流れ、そこから抜け出たかのように6人がステージに現れると、8月配信の「貴方に溺れて、僕は潤んで。」でライブはスタート。
げんじぶらしい婉曲的なリリックが映し出される紗幕の向こう、今ツアーが初披露となるしゃれたフュージョン調の軽やかなナンバーを次々に歌い繋ぎ、それぞれ自分のパート以外は絶え間なく踊り続けるメリハリのあるダンスで、まずは観測者たちを惹きつける。黒と白の対比を活かした衣装や照明も、枯れていく世界のなかで“貴方”に溺れるさまを綴る世界観とマッチして、どこか寂しさが漂う“げんじぶ”らしさを増幅。武藤潤や小泉光咲、長野凌大らのハイトーンなど、ニュアンスの利いた歌唱もダンスも挑戦的で、現在進行形の成長ぶりにハッとさせられる。
一転、ロックな「黄昏よりも早く疾走れ」で衝撃的だったのも、ライブならではのパッションを惜しみなく表出させたパフォーマンス。黄昏色のライトのなか、湧き上がる激情のまま声が歪むのにまかせてアグレッシブなボーカルをブチまけると、最後に大倉空人からは狂気すら滲む笑い声まで。歌うメンバーのカラーを灯したペンライトが入れ替わり立ち替わり客席で振り上げられる景色も壮観で、これまで“魅せる”イメージの強かった彼らのライブが、こんなオーディエンス参加型の魅力を備えるようになっていたとは実にうれしい発見だ。
また、淡々とした打ち込みサウンドでポエトリーな世界を紡ぐ「灼けゆく青」では、再びモノクロに沈む世界でLED上を意味深なリリックが雨のようにすべり落ちて、受け手の想像力を刺激。ギターロック曲「嘘から始まる自称系」では、ようやく紗幕が落ちてメンバーの姿が鮮やかに目に飛び込み、カラフルな照明のなかで大倉が「OK?」と挑発的なラップを繰り出したりと、ひたすらアグレッシブな空気で押してくる。
多彩な楽曲をバリエーション豊かに並べ、それぞれの曲世界を忠実に体現することで成長を示しながらも、どうしても溢れ出すエモーションは、彼らの楽曲が思春期だからこその不安定な心象風景を描いているのに加え、スタンディングの熱気がステージにも伝わっているからに違いない。
「メチャクチャかっこいいんですけど、歌もダンスもメチャクチャ難しい!」(長野)という新曲「貴方に溺れて、僕は潤んで。」のお気に入りポイントをそれぞれ語ったり、はたまたタイトルが長すぎるので略称を決めようと、武藤“潤”が標的になって「あな潤」「おぼ潤」「ぼく潤」などが飛び出したり。公演ごとにテーマを変えてのMCに続いては、「次の曲は、ひと盛り上がりしてから!」と桜木雅哉がペンライトのウエーブで場内を沸かせ、全員ジャケットを脱いで「0to1の幻想」へ。バキバキのダンスチューンで一気に客席を揺らし、全員が一丸となってリズミカルなラップで攻め立てつつ、LED上で蠢く幾何学オブジェの動きとパーフェクトにシンクロするダンスブレイクでも目を奪う。
しかし、デジタルな世界観から一転、「青、その他」になると8枚立てのパネル全面に青空が! そんな清々しい景色の隙間からメンバーが順に現れて、小泉の透明感満点の歌唱が切なさを醸すというギャップには脱帽だが、多彩な楽曲をテンポ良く、かつ1曲1曲を丁寧に繰り出して、瞬時にモードチェンジをなせるのも、確かな成長の証だろう。
さらに、桜木が指を鳴らして始まった「In the Nude」ではクラップを誘い、「Joy to the world」では「まだまだ僕たちと一緒に突っ走っていきましょう!」と小泉が声をあげて、ジャズとエレクトロを融合させた大人びたダンスナンバーで観測者たちを煽動。特有の哲学的世界観で心に深く訴えるのみならず、実際に体を動かして感情を分かち合える喜びは、始動から間もなく見舞われたコロナ禍で、なかなか有観客ワンマンを叶えられなかった彼らだけに大きいのだろう。
事実、東京公演で武藤は「ずっとコロナ禍で無観客だったから、皆さんの前で、生でパフォーマンスできることがうれしい。回を重ねるごとに皆さんの優しさが沁みる」と語っていた。
一方で、げんじぶらしく映像とリアルが融合した試みも、もちろん健在。日常や街並みを映したアニメーション映像をバックに、ポップのなでセンチが滲む「ネバーエンドロール」では、歌詞に合わせて“好き!”とハートマークを作り、大サビではLEDパネルのなかに杢代が現れて、7人が一列に揃うというれしい仕掛けも。映像の杢代が指さす先で、次々にメンバーがソロダンスし、最後は7人全員が1枚のパネル内で踊るという映像演出は、二次元と三次元を行き来するげんじぶならではだ。
さらに、9月25日リリースの新曲「チョコループ」を、アバター化した3頭身キャラの6人+リアルの6人で一緒に飛び跳ねながら初披露。エレクトロポップをベースに、甘くてほろ苦い恋を青春にもなぞらえた等身大のラブソングは、MCでメンバーが「かわいいね!」と口を揃えるほどすべてが愛らしく、このツアーでは公演ごとに少しずつサビの振りもレクチャーされていた。
しかし、観測者の飲み込みの早さに、ツアー中盤の東京公演ですでにレクチャーが終了して、武藤が「次の札幌公演、皆さん一緒に出ましょう!」と勧誘する場面も。最終公演を迎えた大阪・Zepp Nambaでは、7人で出演したというイメージビデオが、9月25日20時にYouTubeプレミアにて公開されることが決定した。
「かわいいかわいい」といつになくメンバーへ推している小泉が言うように、これまでのイメージとはひと味違った”かわいいげんじぶ”が120パーセントで表現された映像となっている。
森を象った映像とリンクして、シアトリカルなダンスで切ない物語を描き出す「545」を挟んでは、公演ごとに内容の異なるトーク、さらに人気曲をチョイスした日替わりナンバーも。げんじぶらしく観念的な「柘榴」からかわいい「ギミギミラブ」、エレクトロポップな「J*O*K*E*R」、彼らの歴史を壮大に綴った「藍色閃光」など、全9公演の日替わり曲を並べただけでも彼らの多彩さがわかるだろう。
そこから突入した後半戦は、「僕たちが作る世界観、一緒に楽しんでいきましょう!」というメンバーの言葉どおりの展開となった。
まずは、見えない結末に惑う疾走曲「結末は次のトラフィックライト」から、歌もダンスもロマンティシズムに全振りした「シェイクスピアに学ぶ恋愛定理」、そして、あやうい関係に揺れるさまを台詞入りで妖しく綴る「半分相逢傘」の3曲をメドレー形式で披露。同じピアノロックながら描く情景の全く異なる3つを繋げて、まるでひとつのストーリーであるかのような妄想を、観る者に抱かせていく。
ちなみに「半分相逢傘」の曲中では、シルエットで映る女性と掛け合う“ワルい男”の台詞を、公演ごとに別々のメンバーが担当。毎回のお楽しみになっていたのはもちろん、それぞれのキャラが表れていたのも興味深い。
ラインダンスを挟んでの「夢に唄えば」でも、“GNJB”と書かれたネオンサインを背に、ブラス入りの華やかジャズナンバーとシアタースタイルのダンスで、ブロードウェイさながらのレヴュー感を演出。
そうしてげんじぶの持つ世界観を様々なベクトルから引き出したメニューの最後「ここからは一緒にクラップして、一緒に盛り上がっていきましょう!」という長野の言葉で一斉にクラップが湧いたのは、7月の3周年記念日に発表された「原因は君にもある。」だ。自分たちが今、このステージまで辿り着けた原因は君――つまり支えてくれるファンにもあると歌う、げんじぶ流のヒネリが利いた感謝のナンバーに、メンバーも観測者もヒートアップするばかり。
大倉が「まだまだいくぞ!」と喝を入れてからのダンスもパワフルに激しく、素肌をさらした映像内の自分とシンクロしながら次々にメンバーが歌声を放つスリリングな展開に、「皆さん一緒にお願いします!」(大倉)なんて言われずとも観測者は大きくペンライトを振るしかない。
そこから間髪いれず、セルフネームのデビュー曲「原因は自分にある。」へと雪崩れ込めば、4年間慣れ親しんだナンバーに即応してサビを踊る客席はさらに大揺れし、かつてなく感情を露わにしたパフォーマンスに場内からは大きな拍手が。
“case.1”から始まったワンマン『げんじぶ空間』は、東京公演で長野が「皆さんと一緒に作る『げんじぶ空間』でありたい」と伝えたとおり、回数を増すごとに観測者との相乗効果で心を動かすものになっている。
メンバーがステージ2階に現れて「嗜好に関する世論調査」で幕開けたアンコールでは、歌詞に登場する“2択”の振りを繰り返し客席に踊らせ、ひたすら盛り上げた末に彼らが告げたのは「皆さんのパワーが僕たちの救いになっています」(武藤)という感謝の言葉だ。
最終公演で、「今回のツアーで、最後まで出ることができなかった公演もあって悔しい思いもしたけれど、無事完走できてよかったです。」と語った桜木は目に涙を浮かべる場面も。長野は「観測者の皆さんと繋がれていることが、このツアーではいちばん実感できています。ここで誰かが待っている限り、僕たちは歌い続けるし、踊り続ける」と宣言。
そう考えれば最後のナンバーに、観測者のなかでも絶大な人気を誇る「ジュトゥブ」が据えられたのも納得だろう。キャンディが飛び交うパステルカラーの映像をバックに、大倉が長野をリフトしたりとラブリーなパフォーマンスで場内を笑顔いっぱいにして、吉澤と杢代が絡むシーンではひとりになる吉澤のために毎回誰かが杢代のうちわを持ってきていたところ、東京公演2日目の2部では、なんと杢代和人本人が「きちゃいましたー!」と登場。
顔を隠していたうちわを待ちかねたように杢代が放り投げた瞬間、場内は黄色くどよめき、吉澤が杢代をお姫抱っこするターンでは、メンバーから「あつっ!」と声が飛ぶ。急遽決まった出演だったため、杢代いわく「リハなし一発本番」だったそうだが、自身のメンバーカラーである緑のペンライトが客席に灯っているのを見て、「本当にありがとうございます!」と一礼。そして「(2部のライブを)ずっと観てたんだけど、カッコいいわ、あんたたち!」とメンバーを称賛し、「久しぶりの『ジュトゥブ』はこんがらがって大変だったけど、最高にかわくて、みんなの笑顔が見られたので幸せでした」と、心からの笑みを浮かべた。
東京公演での小泉いわく「今までの『げんじぶ空間』の良いとこ取りして、さらにプラスした演出」になっていた本ツアー。しかし、LEDパネルや紗幕にアバターといった仕掛け以上のインパクトを与えてくれたのは、目の前で息づくメンバーの感情がまざまざと伝わってくるような、パフォーマンスの生々しさだった。
端正な完成品をなぞるだけでなく、それぞれの曲世界に入り込んだ瞬間に湧き出る“今”のエモーションを、そのまま歌声や動きに投影してひとつのエンターテイメントとして成立させられるのは、苦しいコロナ禍を経ての研鑽と、そして観測者たちの声援があったからこそ。本ツアーで飛び出した「成長をやめず新しいことに挑戦していく」(大倉)、「進化をやめないで、これからもどんどん進んでいきます」(長野)といった言葉からも、それは明らかだろう。
今回のライブの模様が、10月29日よりHuluストアにて独占配信されることが決定。さらに10月30日には、メンバーとライブを振り返るライブTVチャットの配信も行われる。配信チケットの販売は、10月11日13時からスターする。改めてライブを鑑賞し、チャット会を通してメンバーと想い出を振り返れる良い機会になるだろう。
全国各地の観測者を魅了し進化し続ける彼らは、2023年1月28日に今年の目標と公言していたパシフィコ横浜 国立大ホールでのワンマンも決定。パシフィコ横浜で、さらにその先で出会う“原因は自分にある。”が、どれだけ熱く、深く観る者の心を揺さぶってくれるのかを楽しみにしたい。
TEXT BY 清水素子
PHOTO BY 米山三郎
■『げんじぶ空間:case.4』
2022年9月24日(土)大阪・Zepp Namba
<セットリスト>
01. 貴方に溺れて、僕は潤んで。
02. 黄昏よりも早く疾走れ
03. 灼けゆく青
04. 嘘から始まる自称系
05. 0to1の幻想
06. 青、その他
07. In the Nude
08. Joy to the world
09. ネバーエンドロール
10. チョコループ
11. 545
12. キミヲナクシテ(1部) / 藍色閃光(2部)
13. 結末は次のトラフィックライト
14. シェイクスピアに学ぶ恋愛定理
15. 半分相逢傘
16. 夢に唄えば
17. 原因は君にもある。
18. 原因は自分にある。
[ENCORE]
19. 嗜好に関する世論調査
20. ジュトゥブ
リリース情報
2022.09.25 ON SALE
DIGITAL SINGLE「チョコループ」
原因は自分にある。 OFFICIAL SITE
https://genjibu.jp/