■最終日は台風の影響により中止となるも、2日間で6万人が熱狂!「これはつまり続けろってことだと思うんで、また1年準備して来年を迎えたい」(西川貴教)
滋賀県出身のアーティストで滋賀ふるさと観光大使である西川貴教が、滋賀県草津市で国内最大級の野外フェス『イナズマロック フェス2022』(※以下『イナズマ』)を行い、2日間で6万人を動員した。イベントは9月17日・18日・19日の3日間で開催される予定だったが、台風14号の接近に伴い19日の公演を中止とし、18日、19日の2日間となった。
西川は2008年に観光大使に就任。翌2009年に「音楽を通じて地元にお返しがしたい」として琵琶湖の環境保全と地域振興を目的としたこのイベントをスタートさせた。コロナ禍において、2020年はオンライン開催、2021年は開催中止としたが、このたび新型コロナウイルス感染症対策を徹底して、通算14回目3年ぶりに現地開催。またあらたに、脱炭素の取り組みを強化した「カーボンオフセット」での実施となった。
会場は、遠くに比叡山、すぐそばに琵琶湖という、滋賀の壮大な風景を臨む琵琶湖畔の烏丸半島芝生広場。ライブが行われるメインステージ「雷神ステージ」を備える有料エリアの他に、誰でも無料で入場できるフリーエリアも充実しており、こちらにはメジャーアーティストやアイドルのライブが行われる「風神ステージ」、ご当地キャラクターやパフォーマーが出演する「龍神ステージ」、滋賀のご当地グルメが楽しめる飲食ブースや滋賀県観光PRコーナーに加え、子供連れも安心のキッズスペースも設置されている。
今年のメインステージ「雷神ステージ」には、T.M.Revolution、西川貴教をはじめ、ももいろクローバーZ、東京スカパラダイスオーケストラ、櫻坂46、アイドルマスター SideM、Vaundy など多彩な全16アーティストが出演(※中止となった3日目には、西川の他に、Little Glee Monster、OCTPATH、モーニング娘。’22、ClariS、Novelbright、布袋寅泰の出演が予定されていた)。またステージ転換の間は人気芸人14組が登場、2019年にフリーエリアの龍神ステージに出演してこのたび見事にメインステージに昇格した滋賀県東近江市出身のものまね芸人・JPをはじめ、M-1グランプリ2021ファイナリストのランジャタイなどが客席を盛り上げた。
■9月17日
三日月大造滋賀県知事の開会宣言で幕を開けた1日目、トップバッターは2019年に結成された4人組ボーイズグループ、OWV。ライブはシングル曲「Get Away」でスタート、2022年7月リリースの 6thシングル「Time Jackerz」など全7曲を披露した。佐野文哉は「僕たちはデビューして2年なので(その間イナズマの開催はなく)イナズマロック フェス初出場。3年間、3日間のトップバッターを務めさせていただくということで、西川さんに感謝」と意気込みを話した。「Summer Days」では会場が一体となってタオルを回し、最後は浦野秀太がステージセンターで服を脱ぎ、イナズマのマークが描かれた腹筋を見せて会場を湧かせた。
初出演となる櫻坂46は、2022年4月リリースのシングル「五月雨よ」をはじめ、ヒットナンバー「流れ弾」「BAN」など全5曲をプレイ。滋賀県出身のメンバーである武元唯衣は、4年前に観客として「イナズマ」に参加したと言い、「滋賀県ただいま。イナズマロック フェスが近づいてくると街全体が盛り上がる、滋賀にとって特別な時期。そのステージに立てる日が来ると思っていなかったので、今日は滋賀県に恩返しできるステージにしたいなと思います」と感激した様子で話した。今回出演が叶わなかったメンバーもいるが、全力でかけぬけた。
続いて、2019年以来2回目の出演となる5人組ダンス&ボーカルグループ、Da-iCEの登場。アクロバティックなダンスを見せると、客席からは大きな拍手が沸き起こった。会場を歌声で惹きつけたドラマ『極主夫道』の主題歌「CITRUS」など、バンド演奏に乗せてパフォーマンスを繰り広げるスタイルで「BACK TO BACK」「DREAMIN’ ON」「君色」など7曲をプレイ、その歌唱力とパワフルなダンスで観客を魅了した。
イナズマ初出演の東京スカパラダイスオーケストラは、ミントグリーンのスーツでビシッと決めて「HURRY UP!!」「DOWN BEAT STOMP」などで客席を盛り上げる。茂木欣一は「みんなも3年ぶりにこの場所に帰ってきてとんでもなく喜びで胸がいっぱいだと思います。それがめちゃめちゃ伝わってきます。その熱い気持ちは、たとえ消臭力でも消すことができない」と、西川がCMに起用されている「消臭力」の名前を出してイベントの熱を伝えた。そして『仮面ライダーセイバー』のエンディングテーマ「仮面ライダーセイバー」を披露したあと、東京スカパラダイスオーケストラのトリビュート集『楽園十三景』に参加した縁だという04 Limited SazabysのGENもステージに登場して「銀河と迷路 feat.GEN」をプレイ、「Paradise Has NO BORDER」など全7曲で会場を大いに湧かせた。
4回目の出演となる5人組エレクトロニコアバンド、Fear, and Loathing in Las Vegasは、「Acceleration」で勢いよくスタート。「最後まで笑顔で楽しんでいきましょう」(So)と「Just Awake」「Thunderclap」「Let Me Hear」をプレイした。Soは「西川さんには昔からお世話になっていて、1曲だけ楽曲提供させてもらったりしていてうれしい」と話し、この日ギター・ボーカルのTaikiがビキニパンツにTシャツという衣装で登場したことについては「さっき(西川に)挨拶に行ったら『服をもっと責めろ、もっと出せ』みたいな感じで言われて」と、西川のアドバイス(?)によるものだと暴露。「そんな西川さんの夢とみんなに会えるステージに立たせてもらって、本当にうれしいです」と、さらに「Virtue and Vice」「Massive Core」など、全7曲を披露した。
続く4人組バンドの04 Limited Sazabysは、2014年にフリーエリアの風神ステージに出演、2016年にはメインとなる有料エリアの雷神ステージでオープニングアクトをつとめ、さらに2017年、2018年と続けて雷神ステージに出演。徐々に大きなステージへと上り詰めた、まさにイナズマドリームを叶えたバンドである。GENは「西川さんは、本当に大切な場面で力を貸してくれて頭が上がらない」「僕らはあっち(フリーエリア)のステージから始まって8年目になるんだけど、このイナズマロック フェスがホームな気がしている」と、西川への感謝などを伝えた。また「swim」では、東京スカパラダイスオーケストラのホーンセクションを担当するスカパラホーンズが参加して盛り上げ、ライブの定番曲「midnight cruising」「Now here, No where」「fiction」「monolith」など全10曲をプレイした。
続いては、2019年以来2度目の出演となる⻄川貴教が登場。西川が主人公の声を担当した映画『Thunderbolt Fantasy 西幽玹歌』の主題歌「Crescent Cutlass」やスマホゲーム「アズールレーン」CMソング「As a route of ray」の他、「The Barricade of soul」「Claymore」をプレイ。またFear, and Loathing in Las Vegasが西川に提供したナンバー「Be Affected」では、メンバーのSoとMinamiがステージに現れ西川とコラボ、激しいシャウトを聴かせた。「本当に短い時間でしたが、久々のイナズマ、本当に染みました」と、ラストはTVアニメ『ブッチギレ!』のオープニングテーマ「一番光れ!-ブッチギレ-」を披露。ステージを右から左へと走り回り、圧巻の歌唱力とパフォーマンスで客席を揺らした。
1日目のトリを飾ったのは、イナズマの常連でもある、ももいろクローバーZ。高城れにが体調不良により急遽欠席となったが、百田夏菜子・玉井詩織・佐々木彩夏の3人でそれを感じさせない完璧なフォーメーションでのステージを披露。「行くぜっ!怪盗少女」に始まり、「stay gold」「The Diamond Four」「Hanabi」「ツヨクツヨク」「サラバ、愛しき悲しみたちよ」と、アップテンポからスローに聴かせる曲まで、全6曲でオーディエンスを湧かせた。アンコール1曲目は「走れ! -ZZ ver.-」、その後西川が紫(高城れにのメンバーカラー)のTシャツを着て登場。「れにちゃんに用意してあったTシャツ、そのまま着られました。(高城の)魂が入ってます!」とメンバーの健闘を讃え、エールを送った。
百田は「私たちイナズマロックス6回目の出演(※2014年、2015年、2016年、2017年は台風の影響で中止、2019年の6回、実質5回目)ということでありがとうございます。西川さんに呼んでいただき、久しぶりに会場で盛り上がることができて、とてもうれしい」としたうえで、「1日目のトリをつとめさせていただけてとてもうれしかったんですけど…(2019年に)初めてトリをお願いしてくださったときは、お手紙で丁寧にお知らせくださったんですが、今回はネットで知るという…!」と西川に訴える一面もあり、両者の仲の良さを見せた。そして最後に百田が「最後、一緒に1曲どうですか」と呼びかけ、西川貴教 featuring ももいろクローバーZとして今年3月に配信リリースした映画『KAPPEI カッペイ』の主題歌「鉄血†Gravity」を披露した。最後はももクロ側から「また来年もよろしくお願いします」と逆オファー、西川はそれに「言いましたね!」と笑顔で答えた。
■9月18日
橋川渉草津市長が開会宣言を行った2日目のトップバッターは、イナズマ初出演の4人組バンド、DISH//。「イナズマロック フェスみんな待ってたんだよな、飛ばして行くんでみんな楽しんでください」と、7月13日配信リリースのドラマ『ユニコーンに乗って』主題歌「しわくちゃな雲を抱いて」をはじめ、「僕たちがやりました」「沈丁花」「No.1」「勝手にMY SOUL」と、ドラマやアニメでおなじみのナンバーを繰り出すと、客席は大きく手を振って応える。霧雨が降る中、最後は「猫」で締めくくった。
続いては、こちらもイナズマ初出演となる、アイドルマスター SideM。ドラマチックアイドル育成ゲーム『アイドルマスター SideM』の16ユニット49人の所属アイドルから、今回は代表して12名(DRAMATIC STARS 仲村宗悟(天道 輝役)、Jupiter 神原大地(伊集院北斗役)、FRAME 濱 健人(木村 龍役)、彩 バレッタ裕(華村翔真役)/中田祐矢(清澄九郎役)、High×Joker 千葉翔也(秋山隼人役)/ 渡辺 紘(榊 夏来役)、神速一魂 益山武明(紅井朱雀役)/ 深町寿成(黒野玄武役)、S.E.M 伊東健人(硲 道夫役)/ 中島ヨシキ(山下次郎役)、THE 虎牙道 濱野大輝(円城寺道流役))が出演。ロックフェスに出演するのは初めてという彼ら、「西川さん、素晴らしいですね。こんなにきれいな美しい景色を見せていただけるなんて。みんな(客席)の手の上がる感じがすごくうれしいです(仲村)」と、客席に笑顔を見せた。煌びやかな衣装に身を包み、「Growing Smiles!」「バーニン・クールで輝いて」「笑顔の祭りにゃ、福来る」「Beyond The Dream」「NEXT STAGE!」と立て続けにパフォーマンス。ラスト曲「DRIVE A LIVE」は、指を「M」の形にする「SideMポーズ」をレクチャーして盛り上がり、客席の心をきゅっとひとつにした。
2019年以来、2度目の出演となる3人組の打首獄門同好会は、生活密着型ラウドロックバンドという肩書きどおり、ラウドなサウンドにユニークな世界観の歌詞で客席を一気に惹きつける。ボーカル・ギターの大澤敦史は「久しぶりのイナズマロック フェスにようこそ! 開催おめでとうございます。思ったより暑いですね、体が夏になるわ!」とT.M.Revolution「HIGH PRESSURE」の歌詞を引用してMC。「イナズマロック フェスが音楽フェスだということは知ってるんですが、どこか心の中で西川貴教筋肉祭りかもしれないと、大胸筋のコンディションを整えてしまいます」と話し、客席を笑わせた。岩下の新生姜への愛を歌う「New Gingeration」や三三七拍子のリズムで魚料理の名前を連呼する「島国DNA」、テレビ番組『しまじろうのわお!』の歌のコーナーでおなじみ「カンガルーはどこに行ったのか」など全7曲をプレイ、観客は笑顔で拳を振り上げた。
ちょうどこの頃、15時にイナズマロック フェスの公式サイトで3日目の中止が発表となった。
2012年にフリーエリアのステージに出演した経験のあるMY FIRST STORYは、今回が雷神ステージ初登場。客席を見て「最高の景色だ、滋賀!」そして「久しぶりにイナズマロック フェスに帰ってきました。そして初めてのこっち(雷神)のステージ」と、10年の時を振り返った。これが彼らの今年の夏フェス最後のステージだそうで「最後の夏を楽しもう!」と、アニメ『信長協奏曲』主題歌の「不可逆リプレイス」、トヨタのCMソング「With You」などをはじめ、「I’m a mess」「1,000,000 TIMES」「ACCIDENT」「REVIVER」と全6曲をプレイ。透明感のある歌声とクールなパフォーマンスで、会場を盛り上げた。
続いては、こちらも2013年のフリーエリアに出演して2016年に雷神ステージに昇格した、イナズマドリーム組、THE ORAL CIGARETTESのステージ。彼らは通算5回目の参加となる。初っ端からステージに座り込んでの激しいパフォーマンスで、勢いよくスタートした。奈良県出身の彼ら、「我々も奈良を盛り上げたいという気持ちは持っています。30歳を超えて、自分たちは何ができるだろうと思ったときに、西川さんの背中を見て、こうやって盛り上げられるんだと思ってます」と、自分たちも地元のために動きたいと表明した。「接触」「GET BACK」や、新進気鋭のラッパー”Kamui”をフィーチャリングに迎えて今年3月にリリースした「ENEMY feat.Kamui」、後半はライブの定番曲「カンタンナコト」「狂乱 Hey Kids!!」など全6曲で、客席を湧かせた。
その後は、イナズマ初出演のシンガーソングライター、Vaundyが登場。ステージでも、後ろ向きで歌ったり金髪のウェーブヘアで顔をはっきりと見せないスタイルのパフォーマンスで、純粋に曲の世界へと誘う。「Spotify Town」編 CMソングの「不可幸力」、「踊ろうか」と始まった「踊り子」のほか、「恋風邪にのせて」「napori」「裸の勇者」「東京フラッシュ」「花占い」「怪獣の花唄」と全8曲をプレイ。ステージに設置されている大型スクリーンにもライブ中の映像は流さない、スポットも当たらないシンプルな照明の中で歌う姿は、曇り空のイベントにマッチしていた。「緊張してる」と言いながらも堂々としたステージ、そして豊かな表現の歌声に客席は酔いしれた。
そしてイナズマ常連のUVERworldが登場、今年で10回目の出演となる。TAKUYA∞は「帰ってきたぞ!」と叫び、「IMPACT」でスタート。「AVALANCHE」「UNKNOWN ORCHESTRA」「Making it Drive」「Touch off」と、ライブはパワフルに進む。客席は声を出して応援できないぶん、手を高く高く上げて反応する。その様子を見て「ヤベー!」と感情を露わにする。そして「UVERworldにとって大切な曲。イナズマロック フェスでこれを歌うことを夢見ていた」と、コロナ禍で彼らが何を思ったのか、その思いが詰め込まれている「EN」を披露。2021年12月にリリースしたアルバム『30』からのナンバーを中心にプレイし、最後は8月17日リリースのニューシングル「ピグマリオン」で締めくくった。
2日間の大トリをつとめたのは、T.M.Revolution。図らずも1日早くイベントの最後を迎えることになったため、用意していたセットリストを急遽変更してプレイすることになった。「Inherit the Force」に始まり、続けて「Naked arms」へ。「3年ぶりのイナズマロック フェスにお集まりいただき、誠にありがとうございます。明日の3日目は残念ながら中止となってしまいました」と、改めて西川の口から翌日の中止が発表になる。しかし、客席の心配を吹き飛ばすように「LEVEL4」、そして「誰ですかもう夏は過ぎたなんて言ってる人は、これが終わるまで夏は続くでしょうが!」と「HIGH PRESSURE」へ。さらに「HOT LIMIT」「WHITE BREATH」と立て続けに大ヒットナンバーを今のT.M.Revolutionに合わせたアレンジで繰り出すと、客席は息つく間もなく盛り上がった。「いきなりの寂しい話題で申し訳なかったですけど、これはつまり続けろってことだと思うんで、また1年準備して来年を迎えたい」「(今回も)たくさんのアーティストのファンがみんな集まっていろんなやりとりがあったと思う。新しい発見、新しい出会いがあるのがここ、滋賀であってほしいと思います」と話すと、まるで演出であるかのように大粒の雨が降り始めた。そうして始まったラストナンバー「HEART OF SWORD」、西川が歌い始めると自然に雨足が弱まり、最後は涼しい風が吹き抜けた。
アンコールの手拍子に応えて再び登場した西川。アイドルマスター SideMの仲村宗悟とかつて他のイベントで共演したことのあるDRAMATIC STARSの楽曲「DRAMATIC NONFICTION」を2人で歌い上げた。そして最後は「もっとやりたい! この名残惜しい気持ちを残して、最後に本当は明日やるはずだったこの曲!」と、イナズマ最終日の定番曲「Lakers」をプレイ。「もしよかったら、来年またこの場所で皆さんと会えることを…約束させてもらっていいですか。また会おうぜ!」とステージをあとにした。
台風の影響による曇り空の中での開催、そして3日目は中止となったが、イナズマロック フェスらしい多彩なアーティストによる今年の夏の祭典はこうして幕を下ろした。
TEXT BY フジタアヤコ
リリース情報
2022.08.10 ON SALE
ALBUM『SINGularity II -過形成のprotoCOL-』
『イナズマロック フェス』OFFICIAL SITE
http://inazumarock.com/
西川貴教 OFFICIAL SITE
http://www.takanorinishikawa.com/