■「毎日生きるのが大変な人の味方でいたいし、味方でいてほしいです」(Mrs. GREEN APPLE・大森元貴)
Mrs. GREEN APPLEが7月8日、新体制によるフェーズ2初のライブであり、2020年2月に終幕したアリーナツアー『エデンの園』以来、約2年半ぶりのライブ『Utopia』を神奈川・ぴあアリーナMMで開催した。
本公演は、約1万人の会場キャパシティに対して、およそ10倍以上のチケット申し込みがありプレミアチケット化、さらに、全国映画館でのライブ・ビューイングで1万3,000人以上のファンが、そしてWOWOWによる生中継、PIA LIVE STREAMINGによりたくさんのファンがその瞬間を見届けることとなった。
巨大ビジョンにフェーズ2の世界に誘う扉が現れ、大森元貴(Vo)、若井滉斗(Gu)、藤澤涼架(Key)という3人のシルエットが目に入る。興奮の拍手が沸き上がり、紗幕が開き、3人が姿を現す。1曲目はまさかの「Attitude」。最新オリジナルアルバムにあたる4thアルバム『Attitude』のタイトル曲でありながら、一度もライブで演奏されていなかった曲だ。明らかに新しいフェーズに突入している。大森が1フレーズ歌い終わり、「行けるか? Utopia!!」と叫ぶ。サポートメンバー森夏彦(Ba)と神田リョウ(Dr)を入れた5人のバンドアンサンブルはとてもタイトで厚みがあって噛み合っている。
「楽しむ準備はできてますか? 最高の1日にしよう!」という大森の開幕宣言に続き、「CHEERS」が演奏される。カラフルな映像演出も相まって、極彩色のエンターテインメント空間が広がる。オーディエンスが手につけたライトバンドが色とりどりに光り、まさしく“CHEERS”な光景に。大森が、「生ぬるいjuiceで乾杯」の箇所で藤澤にマイクを向け、「乾杯」を促し、多幸感が増幅する。
ひんやりとしたイントロが聴こえ、メジャーデビュー盤『Variety』収録の人気曲「L.P」へ。ソリッドなギターロックにエレクトロニックなアレンジが施され、完全にフェーズ2モードだ。デビュー曲「StaRt」も、よりハイパーでハイブリッドに進化。「お手を拝借!」のハンドクラップも、藤澤の「なで肩ブーム」のジェスチャーも2年半ぶり。大森が歌の途中で思わず笑みをこぼすのも無理もない。
若井と藤澤がステージ中央からアリーナエリアに向かって伸びた花道に移動し、若井がギターを弾き倒す横でにぎやかす藤澤。大森はオーディエンスに向かって波のようなジェスチャーを求めたあと、ハンドクラップに移行。
オーディエンスが声の出せないコロナ禍でのライブはミセスにとって初めてだが、巧みに会場を一体化させる姿が本当に頼もしい。「ただいまー!」と大森が歓喜のシャウトを上げ、「StaRt」は2度目のデビュー曲のような新鮮さがあった。
ライブ当日にリリースされたミニアルバム『Unity』の収録曲6曲は全曲披露された。まずは、asmiがスペシャルゲストとして登場し、「ブルーアンビエンス」を。大きく声質が違う大森とasmiのボーカルが交互に入れ替わるたびに、オーディエンスが手につけたライトバンドが黄色と青を行き来する。
特殊な技術で作られた緑色の炎の柱が勢いよくステージから噴き出したハードなロックナンバー「延々」、大森ならではの孤独の本質が描かれたロッカバラード「君を知らない」と続け、リリース直後の新曲でアリーナを見事に掌握する。
活動休止中にストリーミングの再生回数がぐんぐん伸びたミセスの楽曲。総再生回数20億という驚異的な数字に特に寄与したであろう、「僕のこと」「青と夏」「インフェルノ」を立て続けに披露した流れは圧巻だった。
その後、バキバキのEDMナンバー「うブ」で大森が艶っぽいダンスを踊り、若井&藤澤が激しくヘッドバンキング。フロアからも勢いよく拳がつきあがる。『Unity』収録の「ダンスホール」では8名のダンサーが登場し、大森と一緒に華麗なダンスを披露。若井と藤澤のソロパートもあり、鮮烈にフェーズ2の幕開けを見せつける。
本編終盤、大森はこんなことを話した。
「ひと言で言うと、僕は本当にフェーズ1が大好きだし、すっげえ楽しかった。青春でした。でも青春は終わったわけじゃなくて、また新しい出会いや別れを繰り返していくことが生きていくことだと思ってます。すごく温かいものが詰まった7年間。僕らはずっとそれを歌っていきます」
「僕らにとっての青春ソング」として歌われたのはフェーズ1を完結させたベストアルバム『5』収録の「Theater」。フェーズ1を締め括り、フェーズ2の予感を感じさせる旅立ちの曲が、アリーナを感慨で満たす。
本編ラストは『Unity』の収録の「Part of me」。大森の伸びやかな歌声と藤澤の荘厳な鍵盤だけがアリーナに響き渡り、2番では楽器隊も加わり、“個”と“個”が合わさって成り立つ強固な“Unity”を創出する。
アンコールでは、傷ついた世界を愛と優しさで塗り替えようとするインディーズ時代の名曲「我逢人」を1曲目に披露。そして、最後のMCタイムに。
「休止期間は自分たちだけじゃ乗り越えられなかった。正直辛いときもありました」と言って感極まる若井、ライブを迎えられたことに対し心の底から安堵したような表情で感謝を伝える藤澤。大森は言葉を噛みしめるように話し出す。「あの…すごく支えられてます。サポートのふたりもそうだけど、若井も涼ちゃんも」。
ここで初めて、ミセスのライブ中に初めて大森が泣きそうになり、大森自身も動揺する。それほど休止中の不安は大きかったのだろうし、こうやってたくさんの人と一緒に活動再開を味わえることがうれしかったのだろう。
「毎日生きるのが大変な人の味方でいたいし、味方でいてほしいです」(大森)
『Utopia』をしめくくる最後の楽曲最後は、フェーズ2の始まりを高らかに告げる楽曲「ニュー・マイ・ノーマル」だった。
ライブ中、初のZeppツアーとしてアマチュア時代からの企画ライブ名を冠した「ゼンジン未到とリライアンス~復誦編~」を実施することも発表された。ミセスのフェースフェーズ2への期待で胸がいっぱいになる始まりのライブだった。
TEXT BY 小松香里
PHOTO BY 上飯坂一
■『Mrs. GREEN APPLE ARENA SHOW「Utopia」』
2022年7月8日(金)神奈川・ぴあアリーナMM
<セットリスト>
01. Attitude
02. CHEERS
03. L.P
04. アボイドノート
05. StaRt
06. 道徳と皿
07. Present
08. 嘘じゃないよ
09. In the Morning
10. ブルーアンビエンス(feat.asmi)
11. 月とアネモネ
12. 延々
13. 君を知らない
14. 僕のこと
15. 青と夏
16. インフェルノ
17. うブ
18. ロマンチシズム
19. ダンスホール
20. Theater
21. Part of me
[ENCORE]
21. 我逢人
22. ニュー・マイ・ノーマル
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