■「たとえ報われなくても皆さんのことを笑顔にできるなら、ずっと僕はこのステージで夢を目指して頑張りたい」(杢代)
二次元と三次元が混在する斬新なパフォーマンスで人気を博す7人組ダンスボーカルユニット・原因は自分にある。が、結成3周年の記念日となる7月7日に、ファンクラブイベント『私立げんじぶ学園~満天の推し空に、願い事を。~』を昭和女子大学・人見記念講堂で開催した。
2021年4月に有観客では初のワンマンライブを行って以降、2021年末には東阪、今春には東名阪を回るZeppツアーと、着実にステップアップしてきた彼ら。2021年夏に開設したFC『ゲンジブ観測所』による初のイベントであり、げんじぶ初のホール公演ということで、従来のライブとは異なる趣向がふんだんに。7人が“私立げんじぶ学園”の生徒となり、クイズやゲーム等の企画ではしゃぐ姿は、いわばオンではなくオフの楽屋風景そのものだ。大学の講堂という、学校仕立ての企画にはぴったりのステージで“観測者”(=ファンの呼称)を楽しませ、ライブパートでは7月7日にリリースされた最新曲「原因は君にもある。」を初披露。さらに、2023年1月28日のパシフィコ横浜ワンマンもサプライズ発表して、4年目に向けて格好のスタートを切った。
始業のチャイムが鳴ると、学級委員を務める最年長の自称“しっかり者”な武藤潤が幕前に現れ、私立げんじぶ学園のメンバーを1人ずつ紹介。写真好きな長野凌大、ふわふわ天然ボーイの小泉光咲、盛り上げ役でゲーム中毒な大倉空人、ナルシストと名高い杢代和人、ルービックキューブが得意な末っ子・桜木雅哉、バレエ仕込みのターンも優雅な低音ボイスの吉澤要人と、まずは7人の個性を的確かつ簡潔に紹介&披露していく。今日の7人は同じ学校の生徒ということで、全員が茶色いブレザーの制服姿。メンバーが登場するたび、客席から溜息と歓声が漏れるのも当然だ。
そして緞帳が上がると、短冊が下げられた笹の飾られた教室が現れ、教壇に立つ武藤と学校机に座る6人で朝のホームルームを開始。7人それぞれがメンバーランキングを提示し、他メンバーと観測者でお題が何かをペンライトの色で当てる「げんじぶランキングクイズ」を和気藹々と繰り広げた。
昼休みには、メンバーがふたりで向き合い“愛してるよ”と言い合って、照れてしまったほうが負けという「愛してるよゲーム」を杢代の仕切りで開催。各メンバーの予想のつかないアクション&リアクションに、やる方も観る方も半端ないカロリーとトキメキを消費することに。武藤が「こんなに序盤から体力いるとは思わなかったよ!」と漏らすのも当然だろう。
また、女性に対するスマートな振る舞いを競い合う特別授業「こんな時、げんじぶならどうする?」では、提示されたシチュエーションに対して“げんじぶっぽい台詞”が言えたかどうかを、客席の観測者たちがペンライトを振って判定。この企画で意外な才能を開花させたのが長野だ。“告白した瞬間大きなトラックが通って、彼女に聞こえず聞き返されてしまった”というシチュエーションに挑んだ吉澤と彼女役の大倉の間に、なぜかトラック役として割り込んで、そのリアルすぎる動きと声で場をかっさらってしまう。武藤に言い渡された“終電に間に合わず、横を見たら同じ状況の女の子が”というお題でも電車役を買って出て、メンバーから「凌大、乗り物ピカイチ!」と絶賛。一方、武藤は「歩いて帰ります?」と女の子役の小泉に語りかけ、新たな恋が始まりそうな予感を爆発させていた。
ちなみに当日は七夕ということで、来場者には入場時に短冊が配布。そこに観測者たちがメンバーへの質問を書き込んで掲げると、なんと7人が望遠鏡や双眼鏡で覗き込んで、面白い星=質問に答えていくという「天体観測」も行われた。
中には7月7日らしく“七夕のお願い事は?”という短冊も。「今日という日が最高の思い出になりますように」(武藤)、「身長が伸びますように」(長野)、「強くなれますように。気持ちがね」(小泉)、「健康が一番なので、皆さんの幸せと健康を願っております!」(杢代)、「楽しく生きられますように」(吉澤)、「もっと手先が器用になれますように。ゲームとか絵が上手くなりたい!」(大倉)、「観測者の皆さんとげんじぶで今年も良い1年にしたいなぁ」(桜木)といった言葉が。FCイベントにはありがちなファンからの質問コーナーを、なんとも粋な演出でロマンティックに変えてしまえるのは、天体モチーフやファンタジックな世界観とも馴染み深いげんじぶだからこそだ。
観測者たちが短冊を揺らす様を“満天の星空”に例えてからの記念撮影を挟み、7月7日リリースの最新曲「原因は君にもある。」のMVが初公開されると、久々のダンスシーン満載なビデオに観測者たちも騒然。曲に合わせて大きなクラップを送り、場内のテンションはMAXへと昇り詰める。そして朝を思わせるSEから杢代の「行ってきます」の一言を皮切りに、後半戦のライブパートでは春に配信リリースされ、それぞれ青・赤・緑の色をまとった三部作の楽曲を次々にドロップ。清らかで爽やかなサウンドに出会いの儚さを落とし込んだ「青、その他」に、爽快に疾走するメロディが切なさの隙間に熱情を浮かび上がらせる「結末は次のトラフィックライト」が継がれて生まれる清々しさは尊く、場内からは大きな拍手が巻き起こった。
MCでは現役高校生の桜木から「あんまりみんなの制服姿を見たことなかったんで新鮮でした」という発言も飛び出し、また、学級委員としてMCに奮闘した武藤へは、場内から大きな拍手が。続いて三部作の最終章「545」でも、モーツァルトのピアノソナタをモチーフにしたミディアムなバラードにより、軽やかさの中に地に足のついた歩みを感じさせて、平均年齢18.4歳という等身大の姿を垣間見せる。二次元的な見せ方をすることも多い彼らだが、より繊細な感情が表現されているこの三部作でフィーチャーされているのは、むしろ三次元のげんじぶ。加えて、長野の高いジャンプや流れるようなカノンなど、ダンス面での進境も著しく、アンコールで着替えた白基調のフォーマルな新衣装が、パフォーマンスの端整さを際立たせていた。自然体を写し取った清新な楽曲にメンバー自身の進化こそ、三部作すべてをストリーミングでチャート1位にランクインさせた原動力なのだろう。
そして三部作に続き、回るミラーボールがまばゆい光を客席に投げかけて、場内を星の海に変えたのが、本日リリースされた最新曲「原因は君にもある。」の初披露だ。クラップからの力強いダンスビートに、げんじぶらしい緻密なピアノラインが高速で流れる華やかなナンバーには、これまで彼らが発表してきた楽曲たちのフレーズや音、振り付けが所々に織り込まれ、まさしく原因は自分にある。の歴史を凝縮したものに。初披露にもかかわらず、1音1音にピタリとハマった動きも見ごたえ満点で、改めて3年間の成長の凄まじさを見せつけられた想いがした。しかも、曲が終わると、来年1月28日にパシフィコ横浜 国立大ホールで、ワンマンライブ『げんじぶ空間:case5 End of Infinity』を開催することを発表。パシフィコ横浜は7人が“今年の目標”と公言してきたステージであり、客席からは喜びの声と祝福の拍手が贈られる。
「研究生の頃から“ドームが夢”と言い続けてきて、本当に夢って叶うのかな? と思うこともあったんですが、こうしてファンの皆さんのおかげで夢を追いかけることができています。ステージに立って歌ったり、踊ったり、いろんなところで頑張れている僕たちの原因は、観測者の皆様です。「原因は君にもある。」の“報われない青春だ それさえも一興”という歌詞が、僕はすごく刺さって。たとえ報われなくても皆さんのことを笑顔にできるなら、ずっと僕はこのステージで夢を目指して頑張りたい。僕たちがここに立って目指している夢を、感謝を、この曲で伝えられたらと思います」
そう杢代が語り、「今日から4年目、俺たちがステージに立つこと、そんな原因は君にもある!」と長野が叫んで銀テープが噴き出すと、再び「原因は君にもある。」が観測者たちに向けて放たれる。嬉しいニュースの直後だけに、アッパーな楽曲が呼ぶ高揚感も増すばかりで、杢代も“明らかに君のせいだよね”という台詞を、“明らかに観測者たちのせいだ”と歌い替えて、曲前の言葉を有言実行。僕たちが今、このステージに立てているのは君たちのおかげ――それこそ「原因は君にもある。」という楽曲の真意であり、「原因は自分にある。」というセルフタイトル曲で始まった彼らが、観測者たちとの間で培ってきた愛と信頼の結晶なのだ。加えて、曲を彩るライティングも7人のイメージカラーが使われており、スタッフもファンと同じ関係性でメンバーと結ばれていることを証明。観測者たちを含めたチームの愛に包まれて、記念すべき3周年のアニバーサリーは幕を閉じたが、9月には東名阪に加えて福岡、北海道を回る5大都市ワンマンツアー『げんじぶ空間:case.4』が既に決定している。年に一度の七夕に、7人が夜空の星にかけた願い。それがどんな形で実るのか、4年目のげんじぶに期待したい。
【セットリスト】
01.青、その他
02.結末は次のトラフィックライト
03.545
04.原因は君にもある。
05.原因は君にもある。
TEXT BY 清水素子
PHOTO BY 米山三郎
イベント情報
『げんじぶ空間:case.5-End of Infinity- 』
2023/01/28 (土)パシフィコ横浜 国立大ホール
リリース情報
2022.07.07 ON SALE
DIGITAL SINGLE「原因は君にもある。」
原因は自分にある。OFFICIAL SITE
https://genjibu.jp/