■「私たちには絶対に、みんなが必要です」(緑黄色社会・長屋晴子)
緑黄色社会の全国ホールツアー『Actor tour 2022』が2022年6月18日、宮城・仙台サンプラザホール公演にてツアーファイナルを迎えた。
最新アルバム『Actor』のリリースツアーとして開催された『Actor tour 2022』は、3月20日の群馬・ベイシア文化ホール公演から全国19会場・20公演に及ぶ日程で総計3万5,000人を動員。緑黄色社会にとって最大規模の全国ツアーとなった。
今年3月に発生した福島県沖地震の影響により、当初はツアー序盤に予定されていた福島・仙台公演がツアーの最後を飾る形となった。それだけに、この日の仙台サンプラザホールは、3ヵ月間この日を待ち侘びたオーディエンスの期待感と、ツアーファイナルという特別なシチュエーションの高揚感のおかげで、最高にエモーショナルな熱気に満ちていた。
舞台後方の巨大な扉のセットが左右に開き、小林壱誓(Gu)、peppe(Key)、穴見真吾(Ba)、サポートドラマー=比田井修が登場してスタンバイしたところへ、長屋晴子(Vo&Gu)が高らかな歌声を響かせながらステージ前面に進み出ると、一階席から三階席まで一面に歓喜の拍手が広がっていく。
まずはアルバム『Actor』のラストを飾るピアノバラード「スクリーンと横顔」をじっくりと聴かせたところで、「Shout Baby」のアグレッシブな歌とサウンドで、仙台の観客を一気にクライマックス級の多幸感で包んでみせる。
さらに初期曲「またね」を畳み掛けたところで、「仙台、お待たせしました。『Actor tour 2022』へようこそ!」と呼びかける長屋の声に応えて、堰を切ったように熱い拍手が鳴りわたると、「やめてよ……みんなすぐ泣いちゃうんだから!」(長屋)とメンバーも感激を隠せない様子だ。
「お待たせしたぶん、最高の一日にしたいと思います!」という言葉のとおり、「リトルシンガー」「あのころ見た光」「ずっとずっとずっと」と躍動感溢れる楽曲を次々に披露し、割れんばかりのクラップを呼び起こしていく。コロナ禍の影響ゆえ、会場には歓声も合唱も湧き起こることはなかったが、「あのころ見た光」のコーラスパートで「心の中で一緒に歌ってくれるとうれしいです!」という長屋の呼びかけに応えて、観客の手がその想いとともに高々と突き上がり、ステージと客席の一体感を克明に伝えていた。
そこから一転、「座りながら、リラックスして聴いてください」と長屋自身もステージ上の椅子に腰掛け、ファンシーなポップナンバー「揺れる」、さらにジャジーなアレンジが印象的な「アラモードにワルツ」、と『Actor』の楽曲を続けて演奏。複雑な表情と感情が混在し交錯する日常のリアルを、「Actor=俳優」というキーワードでコンパイルした『Actor』。そんなアルバムの世界観が、メンバーの類稀なる表現力、そして長屋の伸びやかな歌声によって、ホールの空間に鮮やかに解き放たれていく。
中盤のMCの話題は、ライブ前日に仙台入りしたメンバーの行動。「スタッフチーム全員で野球をやって筋肉痛なんですよね」と明かした小林。そんななか、peppeはひとり岩手・平泉の中尊寺に足を伸ばしていたという。「今日、岩手から来た人いる?」という小林の問いに、会場のあちこちから手が上がる。「もともとファイナルは香川県の予定だったんですけど、こういう形でファイナルになって……日程も変わったのに、これだけの人が観に来てくれて、本当にうれしく思っています!」という小林の言葉に、拍手が巻き起こる。
「地元・愛知で初めてワンマンライブを行ったときに作った曲」という紹介とともに「安心してね」のカラフルなサウンドを響かせ、そこから「LITMUS」のミステリアスなドラマ性で観客を惹きつけ、さらに「merry-go-round」のタイトなビート感が、ミラーボールのきらめきとあいまって、場内のクラップを刻一刻と高めていく。長屋の手拍子レクチャーとともに流れ込んだ「Landscape」は、ホールの空間を突き抜けるような開放感で満たしてみせた。
「今回の『Actor tour 2022』を通して、みんなの目を見て、顔を見て、伝えたいことがあって」――ライブが終盤に差し掛かったところで、長屋が話し始める。
「『Actor』っていうアルバムを作ったとき、本当にいろんな曲が集まってきて。いろんなキャラクターがいるね、でもそれでいいよね、それがいいよね、って作ったアルバムです。みんな違っていて、輝いていて、素敵だなって思うけど……みんながみんな『ありのまま』の姿でいるのは、すごく難しいことなんじゃないかなと思う。でも、『ありのまま』でいられないときは、誰かを演じてもいいよね? アクターになってもいいよね? って。この世界に存在するすべてのものに、ちゃんと意味があると思えるようになった。だから、ここにいる誰ひとり、欠かしちゃいけない人だなと思う。みんなそれぞれ、必要なキャラクターであり、アクターだから。みんなに意味があって、みんな必要な存在です」
そして、特に力をこめて、長屋は観客に呼びかける。
「私たちには絶対に、みんなが必要です。みんなのことが大好き。たまらなく愛しい存在です」
――惜しみない拍手が、ステージへと降り注いでいった。
「この言葉を届けられたら、あとはただ、ライブを楽しむだけだなって。仙台、まだいける?」という長屋の言葉をきっかけに、「これからのこと、それからのこと」からライブはさらなる頂へと昇り詰めていく。「sabotage」では舞台天井からツアータイトルと会場名をあしらった電飾が登場、場内の祝祭感を高めたところで、「S.T.U.D」のパワフルなロック感から「Mela!」のダンサブルな熱狂へと客席を導いて、クラップとハンドウェーブで埋め尽くしていく。小林・peppe・穴見それぞれのプレイヤーとしてのポテンシャルが炸裂する場面は、名曲揃いの緑黄色社会のライブによりいっそうダイナミックな訴求力を与える重要なファクターだ。
本編の最後を飾ったのは「キャラクター」。「みんなのことが大好きだよ! 絶対また会おうね!」と叫ぶ長屋の声が、濃密な余韻とともに胸に残った。
アンコール改め<ボーナスステージ>では「夏を生きる」、さらに『映画クレヨンしんちゃん もののけニンジャ珍風伝』の主題歌でもある最新楽曲「陽はまた昇るから」を晴れやかに披露。穴見扮する「真吾先生」による恒例のグッズ紹介コーナーは、バンド史上最大規模のツアーでも健在だ。この日の最後を飾ったのは「始まりの歌」。ライティングで真っ白に照らし出されたホールに、緑黄色社会の熱演と会場一丸のクラップが歓喜とともに弾け回る。アウトロに重ねて「『Actor tour 2022』、これにて終幕!」と長屋の声が響く。至上のエンディングだった。
最後の挨拶で、自身初の日本武道館公演を9月16日・17日の2日間にわたって開催することに触れ、「バンドを始めた頃から憧れて目指してきた場所なんですけど。自分たちだけじゃ立てなかった場所だなって思います。みんなが応援してくれるからこその2日間だと思います」と感謝を伝える長屋。ツアーファイナルの最高のアクトと、今年・2022年に結成10周年を迎えた緑黄色社会の「これから」を讃えるように、ひときわ盛大な拍手が鳴り渡った。
CSテレ朝チャンネルで生中継されたこの日のライブの模様は、6月25日までスカパー!番組配信にて見逃し配信中。また、ライブ映像に加えて舞台裏の模様なども盛り込んだ完全版が、7月20日20時にオンエアされる。
TEXT BY 高橋智樹
PHOTO BY 安藤みゆ
■緑黄色社会 全国ホールツアー『Actor tour 2022』
2022年6月18日(土)宮城・仙台サンプラザホール
<セットリスト>
01. スクリーンと横顔
02. Shout Baby
03. またね
04. リトルシンガー
05. あのころ見た光
06. ずっとずっとずっと
07. 揺れる
08. アラモードにワルツ
09. 安心してね
10. LITMUS
11. merry-go-round
12. Landscape
13. これからのこと、それからのこと
14. sabotage
15. S.T.U.D
16. Mela!
17. キャラクター
[BONUS STAGE]
1. 夏を生きる
2. 陽はまた昇るから
3. 始まりの歌
リリース情報
2022.04.20 ON SALE
SINGLE「陽はまた昇るから」
緑黄色社会 OFFICIAL SITE
https://www.ryokushaka.com/