■バンドメンバーとの関係性を深め、あらたなフェーズに入ったiriの表現世界!
シンガーソングライターのiriが、6月5日に東京・Zepp Hanedaにて、全国ツアー『iri S/S Tour 2022“neon”』の東京公演を行った。
4月27日に東京・LINE CUBE SHIBUYAにて行った『iri Presents “Acoustic ONEMAN SHOW”』ではデュオ形態による初のアコースティックライブを披露したiri。今回のツアーでは、2月23日にリリースした5作目のアルバム『neon』の作品世界にフォーカスし、フルバンド編成で全国を回ってきた。
開演と共に暗転した会場に響き始めたのは、コロナ禍の時期に生まれたというオープニングナンバー「はずでした」。メランコリックなピアノと共にiriの深い歌声が浮遊する無人のステージに、キーボードの村岡夏彦、ドラムの堀正輝、ベースの村田シゲ、マニュピレーション/シンセサイザーのジョージ(Mop of Head)、ギターの磯貝一樹(SANABAGUN.)からなるバンドが登場すると、音を重ね、非日常から日常へ。そこにステージ袖で歌っていたiriが加わり、チルなムードを湛えた「泡」から自らを奮い立たせるようなダンストラック「渦」、ギラギラした都会の躍動感に立ち返った「摩天楼」と続く流れには、コロナ禍における感情の移ろいがグラデーションのように投影された。
そして、オーディエンスをぐっと引き込むようなパフォーマンスに対して、MCはよりカジュアルに。自らをクールなパプリックイメージに縛ることがなくなったiriの歌は、感情表現の豊かさを際立たせていた。ラップと歌を行き来する「目覚め」、ギターを手に、普遍的なバンドサウンドと向き合う「はじまりの日」、ファルセットボイスが切なさを募らせる「言えない」と、多彩な楽曲の数々はバンドアレンジの広がりも相まって、大きな起伏を生み出した。
中盤は、再びギターを手にし、着席スタイルでしっとりとした情景を歌った「雨の匂い」を経て、両親に捧げたという「baton」で歌いながら思わず感極まったiriは、続くエモーショナルなバラード「darling」を歌い終えると、照れながら「1曲1曲に思い出、ストーリーがあって、入り込みすぎると歌えなくなったり、距離感が難しくて……」と語った。
その言葉どおり、今の彼女は溢れ出す感情そのままを歌にしている。繊細な歌はより繊細に、明るくダイナミックな歌はよりオープンマインドに。後半は、爽やかなアフロビーツのテイストを織り込んだ「Waver」をはじめ、iriのブライトなワイルドサイドが全開となった。レッド・ホット・チリ・ペッパーズを彷彿とさせるファンクロック「Freaking」に、バンドと共に躍動する「Corner」、遊び心に満ちた「The game」と、パッションを振り撒きながら、本編ラストまで一気に駆け抜けていった。
本編では、コロナ禍における気持ちの大きな浮き沈みを経験した末に、自分を取り戻し、自由なクリエイティビティを羽ばたかせるまでを描いたアルバム『neon』のストーリーを辿るように全収録曲を演奏したiri。
アンコールでは、毎回オーディエンスを湧かせてきたライブ定番曲「会いたいわ」「Sparkle」「24-25」「Wonderland」を怒濤のように披露し、心地良い高揚感のなかライブを締め括ると共に、彼女の口から今回のツアー中に仕上げたという新曲リリースの予告と、10月13日に東京国際フォーラムホールAにて過去最大規模のライブ『iri Presents ONEMANSHOW “STARLIGHTS”』の開催を発表。
バンドメンバーとの関係の深まりが独自なパフォーマンスに結実し、ライブアーティストとしてもあらたなフェーズに入ったiriの表現世界が、この先もさらに広がっていくことは間違いないだろう。
TEXT BY 小野田雄
PHOTO BY 田中聖太郎 (ライブ写真)
ライブ情報
iri Presents ONEMANSHOW “STARLIGHTS”
10/13(木) 東京・東京国際フォーラム ホールA
iri OFFICIAL SITE
http://iriofficial.com/