■tofubeatsのニューアルバム『REFLECTION』のオンラインリリースパーティーを約2万人が視聴!
tofubeatsの3年半ぶりとなるニューアルバム『REFLECTION』。そのタイトルどおり“内省”や“熟考”を感じさせるシリアスで陰りのある言葉と音に溢れていながら、地に足を付けて背筋を伸ばしているような清々しさを湛えた一作だ。グリッドから離れたスタッター的エディットの多用や、メトリックモジュレーションまで飛び出す没入を誘う曲間の繋ぎ、あるいは入れ子的セルフサンプリングなどなど、プロダクション面での新しいチャレンジと過去への眼差しが混在する独特な手触りが、“内省”をこれほどフレッシュに響かせているように思う。
そんな『REFLECTION』のオンラインリリースパーティーが5月26日に配信された。同作に参加したゲストが全員出演、かつ無料! という熱烈大サービスぶり。「ライブでやることを想定していない」と自らインタビューで語っていた本作をいかにライブで見せるのかも含めて、期待が高まる配信ライブとなった。
幕を開ける一曲は、アルバムではラストを飾る「Mirai」…のビートに乗せた、「RUN」。意表を突いたマッシュアップだ。冒頭から、ライブらしいサプライズが飛び出す。リミックスで参加したVaVaとKREVAのヴァースも交え、景気のいいスタートダッシュとなった。
続いては「PEAK TIME」。パフォーマンスするtofubeatsの周囲に配置されたモニターにはMVが流れ、モニターと並んでセットされた鏡がせわしなく動くtofubeatsの姿を映し出す。シニカルなようで最後に逆転ホームランを打つようなリリックに改めて心打たれつつ、そのままアルバムの曲順どおり、「Let Me Be」へ。かねてから傾倒していたバイレファンキのテイストを盛り込んだトリッキーなグルーヴの楽曲だ。浮遊感溢れるビートから、流れるように「STAKEHOLDER」へなだれ込む。こちらもバイレファンキでおなじみの口ドラムも引用したライブエディットだ。
まだまだノンストップ。BPMがぐいっと下がって突入したのは「Emotional Bias」。ゆるめのテンポのインストチューンだが、力強く打ち付けるビートとシンセブラスの響きが高揚感をじりじりと演出する。そのままテンションを維持しながらマイクを持ったtofubeatsが歌い出したのは、2021年のシングル「SMILE」。新型コロナ禍にあって音楽と自分に向き合い続けるリリックが印象的な一曲で、リリース当時は「アルバムに入ったら浮くんじゃないか?」と思うほどだったが、蓋を開けてみればむしろアルバムの空気感を予告する一曲だった。
ここでパフォーマンスはひと段落してMCタイム。と思いきや、立ち止まるつもりはないとばかりにMCを済ませ、ゲストタイムに突入する。
まずはNeibissのふたりが登場し、「Don’t Like You feat. Neibiss」がスタート。ルーズで飄々としたビートに2MCが絡む、『REFLECTION』の中で最もヒップホップ指数が高い一曲だ。ビートの印象とベストマッチなつかみどころのない佇まいと、ゆるそうでいて濃厚なラップは、『REFLECTION』(そしてこのリリパ)にフレッシュな風を吹き込んでいた。
続いて、Neibissに引き続いての神戸勢、UG Noodleが登場。「恋とミサイル feat. UG Noodle」。tofubeatsにしては異色のボサノバ曲だ。ハンドマイクでスウィートなボーカルを披露するUG Noodleには奇妙な色気がある。その姿に惹きつけられていると、歌い切ったあとに「Love and Peace, y’all. 音楽で小さな平和をこつこつと神戸で作っていこうと思っておる所存でございます。よろしければ皆さんもご参加ください」とUG Noodle。なんてかっこいいんだ…。
UG Noodleのパフォーマンスを受け、アルバムと同様の最高な前口上で登場したのは小鉄昇一郎。「VIBRATION feat. Kotetsu Shoichiro」はアルバムの中でもハイライトの一曲だと思うが、生のパフォーマンスでも息の合った掛け合いを見せつけ、抜群の存在感を放っていた。生でぶちかましたECDからの引用は今夜のベストモーメントだった。
ここからは、インストのダンストラックが続く。どこかキュートな「not for you」を経て、2021年のシングル「CITY2CITY」へ。NEXCOのCMソングらしく疾走感溢れる4つ打ちに、高揚感を煽るようにゆっくりと上昇するメロディライン。逆に高速道路でこれをかけて走ると危ないのではないか…と余計な心配をしてしまう。そんなハウシーなグルーヴを経て、「TBEP」にも収録されたアシッドなブレイクビーツ「SOMEBODY TORE MY P」が鳴り響く。
「SOMEBODY TORE MY P」は言わばtofubeatsの真骨頂と言うべき曲だ。歌モノのポップソングやヒップホップの仕事も多いtofubeatsが、自身のアルバムやEPでは執拗にインストのダンストラックにこだわり続ける、その真価が発揮されている。シンプルなリフと暴れるようなエグいアシッドシンセに呼応するかのように、huezの手掛けるライティングも激しさを増していく。HIHATTからのリリースEXELLLA「I FEEL」(THREE THE HARDWAREのテーマソングとしてもおなじみ)とのマッシュアップを挟みつつ、「Okay!」へ。トランシーな「SOMEBODY~」とは対照的に、しっとりと体を揺らしたくなるようなハウストラックだ。
すでに『REFLECTION』を聴いている人なら、「Okay!」が始まった時点で次の曲への期待もじわじわ高まったはず。ここまで、おおよそ収録順に楽曲は披露されている。とすると、このあとに控えるのは表題曲のはずだからだ。メトリックモジュレーションを使ったBPMチェンジを経て、いよいよその時がやってくる。
スクリューされた中村佳穂のボーカルが鮮烈に響くなか、BPMがじわじわと上がって中村佳穂が登場。先行曲かつ表題曲として話題を呼んだ一曲、「REFLECTION feat. 中村佳穂」のスタートだ。歌い出す前からオーラを放ち、tofubeatsを食ってしまうような歌唱。狭いステージが一気にスケール大きく見えてくるような存在感。ボーカルカットアップを再現するようなエクストリームな歌唱も含め、スキルとオーラを存分に見せつけていた。
アウトロで聴き馴染みのあるリフが流れ出すと、そのままラストはまさかの「水星」。「みんな、YouTubeの前で歌ってや!」とサービス精神に殉じるtofubeatsの姿には謎の迫力があった。なるほどこれで大団円か…と画面を眺めていると、気づけばステージ上にはまさかの人物が。「水星」という選曲自体がこのオチへのフリだったのだろうか。サービス精神のようにも、ちょっとした意地悪のようにも思える絶妙なユーモアに、きつねにつままれたような気持ちだけが取り残された。あれ、なんだったんだ。
パフォーマンスを通じてtofubeatsと『REFLECTION』への理解が深まったような、むしろ謎が深まっただけのような、不可解な後味を味わいながら改めて今回のリリパを反芻してみる。素晴らしい60分間だったことだけは間違いない。とりあえず、『REFLECTION』をかけながら、重刷が決まったという『トーフビーツの難聴日記』を読み返してみることにしよう…。
TEXT BY imdkm
■『tofubeats “REFLECTION” online release party 2022.05.26』
出演:tofubeats、Neibiss、UG Noodle、Kotetsu Shoichiro、中村佳穂
VJ:杉山峻輔
Visual&Lighting:huez
リリース情報
2022.05.18 ON SALE
ALBUM『REFLECTION』
tofubeats OFFICIAL SITE
tofubeats.com