■かつてコムアイが作り上げた水曜日のカンパネラを受け継ぎつつ、新しい水カンを描いてみせた詩羽。「ラブを伝えたいです」
水曜日のカンパネラが4月6日、『RELEASE PARTY 〜LET’S PARTY 2〜』を東京・渋谷clubasiaにて開催。七夕の夜に会った織姫が“令和ギャル化“していた、というストーリーの新曲「織姫」を4月27日にリリースすることを発表した。
2021年9月にコムアイが脱退し、2代目ボーカリストとして詩羽が就任。サウンドプロデューサーのケンモチヒデフミと、何でも屋のDir.Fと共に3人で水カンとして活動しているが、ライブでは詩羽のみがステージ上でパフォーマンスする。
昨年12月8日に東京・WALL&WALLで初の主催イベント『RELEASE PARTY 〜LET’S PARTY〜』を開催、今回はデジタルシングル「招き猫/エジソン」のリリースパーティで、2回目の主催ライブとなる。チケットは即日ソールドアウト。プレミアチケットを手に入れることのできた約190名が会場に集った。
定刻から10分押しの19時40分になると、照明が落ち、ずしりと響く低音とともに「ナポレオン」のイントロが流れた。真っ暗な会場の中、客席横の窓ガラスにスポットライトが当たると、そこには詩羽の姿があり、水カンらしい不意打ちの登場で観客を驚かせた。会場の底を低音がうねり、観客たちの手拍子が響くなか、詩羽がソウルフルな歌声で客席を歌い歩きステージに到着すると、新生・水曜日のカンパネラ初楽曲の1曲「アリス」へ。リズミカルでキャッチーな楽曲で自らパーティの祝砲を打ち上げた。続けて、コムアイ時代から歌い継がれる「シャクシャイン」へ。北海道の地名を、お経のような乗せ方で歌うオリジナリティ溢れる楽曲だが、詩羽は自分のものとして歌いこなし、新旧織り交ぜた楽曲でのっけから会場を大きく盛り上げた。
「改めましてこんにちは。水曜日のカンパネラの詩羽です!」と自己紹介し、おいしそうに水を飲むと拍手と笑いが起こった。「今日私が2代目のボーカルになって、初めて観にきた人?」と質問すると、半数以上の手があがり、詩羽は驚きつつも喜びを見せた。「一緒に盛り上がってくれたら最高です」と語り、銭湯を歌詞のモチーフにした「ディアブロ」へ。“いい湯だね いい湯だね”という歌詞に、観客は振り付けでコール&レスポンス。一体感を生み出すと、新生カンパネラもうひとつの始まりの楽曲「バッキンガム」へ。強調されたリズムにラップが掛け合わさる同楽曲をステージ左右に飛び跳ねながら歌った。魂揺さぶる男性の咆哮のボーカルサンプルがこだまし、ストリングスとコーラスが加わっていく「モヤイ」が流れ始めると、ステージ上のスクリーンに渋谷のスクランブル交差点や渋谷モヤイ像などの映像が映し出され、流麗なメロディを壮大に歌い上げた。
再び美味しそうに水を飲み「たのしい……」とボソっと気持ちが漏れると拍手がわき起こった。「北海道と沖縄と3日前にここでライブをしたんですけど、そこでも披露した新曲をやるので、頭と胸に残していってください」と笑顔で語ると、オリエンタルなアコースティックギターの音色と詩羽の歌声から始まり、パーカッシブなリズムと重心の低いキックでダンスミュージックに変容、抑揚の抑えられたラップと組み合わさり展開していく「織姫」を披露。エレクトロなサウンドの中でも詩羽のボーカルが心地よく輝く。一転、クラップ音から疾走感あるシンセベースが加わりホーンが鳴り響く、水カン流EDM楽曲「卑弥呼」で会場をさらにアゲていく。
楽曲が終わり、突如、照明が完全に落とされ会場が真っ暗になると、カメラマンのストロボを照明代わりに詩羽が客席に降りフロアのど真ん中で「ツイッギー」を歌った。ストロボに導かれるようにステージ後方に移動したと思いきや、そこには水カンではおなじみの脚立が。詩羽は脚立のてっぺんまで登っていき、オレンジの照明に照らされながら「メロス」をじっくりと歌い上げた。初代水カンの楽曲でありながら、完全に詩羽の楽曲として表現し、観客たちはその歌声に聴き入った。
脚立から降りてステージに戻った詩羽は、4月27日に「織姫」をリリースすることを発表。観客たちから拍手が起こるなか、「みんなは、この情報を初めて知ったヤツら」と笑いを誘った。そのあと歌った楽曲も初披露であることを明かし、間違えないかヒヤヒヤしたことを笑いながら語った。そして、白と紫、ピンクをベースとした衣装に触れ、「これまでの水カンを作ってくれた方とも、私と同い年くらいの知り合いのクリエイターとも一緒にやらせていただいているんですけど、20歳くらいのクリエイターさんたちは、わからないことだらけだし、できないことばかりだけど、それがいいことなんだなと思って。みんなで一緒に作っている感が楽しくて。ライブもまだ人生で13回目とかなんですよ。今日来てくれたみんなの中にも、ライブの乗り方もわからない人たちもいると思うけど、一緒にのってくれたり、手拍子してくれたり、そういうのが幸せだなと思って。ラブを伝えたいです。最後まで一緒に楽しんでいってください」と愛を伝えた。
そして、これぞ水カン! といった、キックの音が気持ちいいテックハウス楽曲「エジソン」へ。心地よいキック音とエレクトロサウンドに観客たちは踊り、まさにフロアはダンスホールへと変容した。続いて流れたのは、水カンの代表曲「桃太郎」のイントロ。楽曲の途中で、ステージ上に透明のウォーターボールが現れ、2番が始まる頃に詩羽はその中へ入り、スタッフが空気を入れて膨らませていった。完全にボールが膨らみ切ったところで、詩羽入りのウォーターボールが観客の頭上を転がり廻り、「桃太郎」で客席はいっそうの盛り上がりを見せる。ステージ上に戻りウォーターボールから出た詩羽は、初期水カン時代の名曲「一休さん」を披露。歌詞に合わせて、「1」「9」「3」という指で示しながら、とびきりの笑顔で歌う。
そのまま「招き猫」のサウンドが流れ始めると、ステージ上には風船型の巨大招き猫が登場。これも、初代水カンから受け継がれる伝統的演出のひとつだ。ステージ中央に鎮座して光る招き猫をパートナーに、詩羽はしなやかに動きながら、招き猫とじゃれたり、愛ながらしっとりと歌い上げた。そして、「ありがとうございました! サンキュウ!」と笑顔で指ハートを作り、ライブが始まってから終わるまで一度も盛り上がりの熱は収まることがないまま、水曜日のカンパネラ2度目となるパーティは幕を閉じた。終演後には、詩羽自らが観客たちに名刺を配って観客たちを見送った。
2回目のリリースパーティーにして、かつてコムアイが作り上げた水曜日のカンパネラを受け継ぎつつ、新しい水カンを描いてみせた詩羽。わずか50分とは思えない、愛らしくも威風堂々とした、内容がぎっしり詰まったパーティだった。
ライブレポート TEXT BY 西澤裕郎
PHOTO BY 横山マサト
<セットリスト>
1. ナポレオン
2. アリス
3. シャクシャイン
MC
4. ディアブロ
5. バッキンガム
6. モヤイ
MC
7. 織姫
8. 卑弥呼
9. ツイッギー
10. メロス
MC
11. エジソン
12. 桃太郎
13. 一休さん
14. 招き猫
水曜日のカンパネラ OFFICIAL SITE
http://www.wed-camp.com/