■原因は自分にある。、福岡、東京、札幌、名古屋、大阪の全国5都市9公演を廻る秋のZeppツアーも決定!
ダンスボーカルユニットの概念を打ち破り、二次元と三次元を行き来するパフォーマンスで人気を博す気鋭の7人組、原因は自分にある。が、初の東名阪ツアー『げんじぶ空間:case.3』の最終日を4月5日に東京Zepp Hanedaで迎えた。2019年の始動以来、コロナ禍の中でも2021年4月に初ワンマンを行って、2021年末の東西ツアー、そして今回の東名阪も全公演がソールドアウトと、着実に飛躍を遂げてきた彼ら。この日も3月に連続配信された新曲で今までになく気取りのない“素顔”を垣間見せながら、中盤ではモーションキャプチャーによるアバターが出現したりと、まさしく次元を超える存在感をいかんなく発揮。“げんじぶ”の変わらぬ軸とあらたな顔を、観測者と呼ばれる自身のファンに昼夜の2部にわたって提示し、全国5都市を巡る秋のZeppツアーに向けて弾みをつけた。
小鳥のさえずりからステージに光が差し込み、扉を開ける音と「いってきます!」の声に続いて始まったのは、3月の配信リリース第1弾であり本ツアーのテーマ曲でもある「青、その他」。ステージの2階に現れた7人が一列で並び、涼やかなピアノの音色をバックに一人ひとり歌い上げて、清々しい朝の空気を感じさせてゆく。1階に置かれた液晶パネルに歌唱するメンバーの姿が大映しされる演出も、順にソロで歌い繋いでゆくこの曲にピッタリ。青春と別れの春をモチーフにした楽曲が、白シャツに黒パンツというシンプルな装いとマッチして、平均年齢18歳という思春期の真っただ中にある彼らの等身大を浮かび上がらせる。そこから爽やかな余韻を残し、一気に配信リリース第2弾「結末は次のトラフィックライト」へとテンポアップする展開も鮮烈。4:3で分かれて踊るサビ等のメリハリあるパフォーマンスに、ブレイクを挟んで“まだ……赤い”と武藤潤が歌うキメフレーズなど、切ない響きの中にもダイナミックな印象を残すのが新鮮だ。その後のMCでは、“お預けの結末”というサビで、“けつまつ”の4文字を一文字ずつ手話(指文字)で表現しているという裏話も。また、連続配信の2作は物語も繋がっているだけに、「青、その他」のラストと「結末は次のトラフィックライト」の始まりの立ち位置が同じだったりと、密かな繋がりが仕込まれているそうなので、ライブを見るたびにあらたな発見ができそうだ。
次元の狭間に生きる彼らのライブでは、映像とのコラボレーションも大きな見どころ。「今日は僕たちと皆さまで素敵な思い出を作っていきましょう!」と贈られたラブソング「シェイクスピアに学ぶ恋愛定理」では、7つのパネルに映し出される7人の甘い笑顔に花びらが舞い、トリッキーな疾走曲「以呂波 feat. fox capture plan」では言葉遊びに満ちた文学的リリックが画面を埋め尽くして、摩訶不思議な空気を際立たせてゆく。夜の2部では冒頭の「いってきます!」を担当していた杢代和人の発案により、他メンバーが「いってきます!」に挑戦する場面も。小泉光咲は宮城弁で「いってきますっちゃ!」と愛らしく首を傾げ、武藤はフェイントで2階から登場して観測者を楽しませた。続いて黒いジャケットを羽織って大きな目玉が底知れぬ不気味さを醸す「柘榴」を挟み、一転「豪雨」では、哀しい物語をエモーショナルなダンスのみで表現。バレエ歴の長い吉澤要人を筆頭に、エレクトロスウィングで躍動する「J*O*K*E*R」から「夢に唄えば」と、端正なショーダンスで魅せるパートも見ごたえ十分で、パフォーマーとしての確かな進化を感じさせる。
そうして全員一丸となってのグループ力を発揮する一方、「嗜好に関する世論調査」ではパネルの裏からメンバーが交互に現れて、ステージに7人が揃わないという大胆な見せ方も。終盤ではボーカルもボーカロイド風の音になり、生身の人間の代わりにアバター化した7人がパネル上で踊るのみとなる。続く「ジュトゥブ」もボカロ系のエレクトロなアレンジが施され、衣装チェンジしたメンバーが代わるがわる登場してアバターと共演するという驚きの光景が! まさしく次元の壁を超える彼らにしかできない仕掛けで、場内に大きな拍手を呼んだ。ちなみに、このアバターは実際に踊っている彼らをモーションキャプチャーしており、4月10日のメタバース特典会では参加したファンも触れ合えるとのこと。時代を先取りしたアイデアも、げんじぶならではだ。
ここで披露されたのが4月6日に配信リリースされる最新曲「キミヲナクシテ」。十代のマルチアーティスト、izkiによるナンバーで、げんじぶらしいピアノロックを基軸としながらもセオリー知らずの斬新な曲展開が、同世代である7人の切れ味よいパフォーマンスと抜群のマッチングを見せる。新世代とはこういうことかと思わせた直後、二段組みのステージを活用したフォーメーションで目を奪う「夜夏」で香らせたのはレトロな匂い。彼らが超えるものは次元のみならず、どうやら時代も同様のようだ。
「まだまだ盛り上がっていきましょう!」という大倉空人の号令で始まった「ギミギミラブ」では観測者たちもペンライトを振り上げ、その熱を伴って「0 to 1の幻想」にシームレスで雪崩れ込めば、げんじぶには珍しい正統派のダンスナンバーでも挑発的なラップを轟かせてクールに魅了。さらに、それぞれの色が覗くソロダンスもたっぷり堪能させながら揃いのスーツに着替え、歌詞のとおり成層圏を貫いて飛び出すような壮大な映像をバックに、「藍色閃光」へと繋げる流れがアツすぎる。これまでの7人の歴史を投影したという振りつけから覗く彼らのドラマは、観る者の脳裏に様々な想像を掻き立て、続く「ネバーエンドロール」でメンバー同士がギュッと肩を組む“今”に涙させられるのだ。
そんな“リアル”の直後には、許されない愛を歌った「半分相逢傘」で、げんじぶ最上級の“フィクション”を披露。本来は吉澤が担当しているキメ台詞を、昼の1部では桜木雅哉が「これでどっちも悪いね」と呟き、女心をもてあそぶワルい男を小泉が迫真の声音と表情で演じて、客席を色めき立たせる。かと思えば、「幽かな夜の夢」では“そばにいたくて”とピュアな想いをアピール。果たして、どちらが本当の彼らなのか? そう混乱させたところで突如曲が止まり、小泉が告げたのは「本当にありがとう」という言葉。そこから武藤がアカペラで曲を繋ぎ、ファルセットも交えて2サビを歌い上げるのだから、答えは明らかだろう。本編を締めくくった2度目の「青、その他」でも、海とも空ともつかない青をバックに伸び伸びと踊り、差しだされる7人の腕からは、観測者たちに向かって“言えない嘘”が放たれているかのようだった。
ピアノロック+哲学的リリックという彼ら独自の個性を強烈に刻みつけたデビュー曲「原因は自分にある。」で幕開けたアンコールでは、それぞれにツアーを振り返り、大倉は1部で「こんなにたくさんの方が僕らのことを知って、足を運んでくれるのがうれしい」と感謝の弁を。長野凌大は「これほど上手くいっていいのか? と思うようなスピード感でやっていて、不安になるときもあるんですけど、メンバーとスタッフさんが隣にいて、目の前に貴方がいる景色を見ながらライブをしていると、僕たち大丈夫だなって思います。これからも僕たちの背中だけを見て、絶対手を離さないで、僕たちが大きい景色に連れて行きます」と、いつになく素直な想いを吐露してくれた。2部では最年少の桜木が口を開くなり涙を見せ、「いろんな方に迷惑や心配をかけて、自分に足りないものを今回のツアーで知れて良かった。メンバー6人と観測者、スタッフさんの大切さを改めて知れたので、秋ツアーも頑張って突っ走っていきたいと思います」と激白。そして杢代は「リハーサル期間、ホントに青春や人生をかけてこの活動をしてるなって実感しました。明日地球が終わると言われたら、たぶんライブをすると思う。それくらい僕はライブが、観測者が好き。秋ツアーのその先も見据えて僕たちは活動しているので、1秒でも長くげんじぶのことを感じて、考えて、ライブに足を運んでもらえるとうれしいです。皆さんの支えに、人生の原因になれるよう頑張っていきますので、秋ツアー、その先へと共に歩み続けましょう」と堂々宣言し、満場の拍手を浴びた。
ライブの最後に贈られたのは「犬と猫とミルクにシュガー」(1部)と「黄昏よりも早く疾走れ」(2部)。スリリングなラップが炸裂する前者に、歪んだギターがかき鳴らされる後者という攻撃的な締めくくりは、今のメンバーの心意気をそのまま投影したものだろう。特に「黄昏よりも早く疾走れ」では思春期だからこその葛藤と焦燥、それを振り切り走りだそうとする破竹のパワーが、パネルで揺れる黄昏の太陽をバックに走る7人から滲んで、とりわけ“限界なんて破り捨てればいいさ”というサビ詞が胸を打つ。何があっても立ち向かっていく――ここまで生々しい、血の通った彼ら自身の意志を感じさせられたのは、原因は自分にある。の始動以来、今回が初めてかもしれない。
昨年12月には2ndアルバム『虚像と実像』もリリースし、さらなる楽曲のバリエーションを広げてきた7人。哲学的な世界観を武器に唯一無二のポジションを築いてきたが、ダンスパフォーマンスの魅力を押し出しつつも“報われない”心情を歌った楽曲が増え、新たな個性を獲得しつつある。そんな“等身大”な楽曲が歌えるようになったのも世間の認知度、シーンでの評価、彼ら自身のスキルや音楽に対する姿勢と、様々なものが“追いついてきた”証なのだろう。9月には福岡、東京、札幌、名古屋、大阪と全国5都市9公演におよぶZeppツアーも決定。原因は自分にある。にとって史上最大規模のツアーも、“今の貴方たちなら大丈夫”と思わせてくれたツアーファイナルだった。
TEXT BY 清水素子
PHOTO BY 米山三郎
リリース情報
2022.04.06 ON SALE
DIGITAL SINGLE「キミヲナクシテ」
原因は自分にある。OFFICIAL SITE
https://genjibu.jp/