■「新しいものを作り出すために一度壊してまた作り直す」(04 Limited Sazabys)
04 Limited Sazabysが彼らの地元である愛知県の愛・地球博記念公園、通称モリコロパークで2016年よりスタートした野外フェスティバル『YON FES』が、4月2・3日の2日間にわたり開催された。
2019年まで毎年開催されてきた『YON FES』だが新型コロナウイルスの影響により2020年は中止、2021年は開催断念と苦渋の決断を余儀なくされてきた。そして2022年、実に3年ぶりの開催となった『YON FES 2022』はライブシーン、フェスシーンにおいて大きな前進となるような、何かが大きく動き出したような、04 Limited Sazabysと出演者、スタッフ、そして足を運んだオーディエンスによって作られた希望のような2日間となった。
会場であるモリコロパークはSKY STAGE、LAND STAGEと2ステージで構成されており、物販スペースや飲食スペースも含め会場全体も例年とは異なるレイアウトながら感染対策を徹底しつつ、集まった人が安全かつ快適に過ごせるような導線、会場作りがされていたことにメンバーはもちろんすべてのスタッフにまずは敬意を表したい。
『YON FES』が『YON FES』として何も変わらないために変わらないといけない。あの頃に戻るのではなく、先に進む、進めるということが、言葉で言う何倍も難しいことは安易に想像できる。ライブができなくなったあの頃、少しずつ前に進むなかで試行錯誤しながら行った『YON EXPO』、そしてツアーと、描いては消し繰り返す手探りの先に新しい歩幅で進めた今年の『YON FES』。あの光景をまたモリコロパークで観れたことがたまらなくうれしい。
■4月2日
初日である4月2日にはHump Back、Track’s、SHANK、Suspended 4th、go!go!vanillas、Age Factory、Vaundy、ENTH、MAN WITH A MISSION、TOTAL FATが出演。それぞれのやり方、在り方で04 Limited Sazabysでバトンを繋ぎながら3年ぶりの『YON FES』を作り上げていく。
快晴のモリコロパーク、初日の開幕宣言では04 Limited Sazabysのメンバーとともに『愛・地球博』公式キャラクターであるモリゾー、キッコロ、そしてユリイカくん、キャブくん、さらにKEYTALKのタケマサくんといったキャラクターたちがステージに登場。あれ、ひとり誰か混ざっている? そう、『YON FES』に出演予定のなかったKEYTALKの小野武正が急遽乱入してメンバーと観客を驚かすというサプライズも飛び出し、『YON FES』がスタート。
トップからギア全開で青春を歌い上げたHump Back、『YON FES』初登場で独自のチル&メロディックパンクを提示したTrack’s、皆勤賞の貫禄を見せつけたSHANK、同郷名古屋の音楽野生児っぷりを叩きつけたSuspended 4th、永遠のティーンエイジャーであることをロックンロールで証明したgo!go!vanillas、青空の下で轟音と激情を響かせたAge Factory、普遍的な愛のメッセージを最新の在り方で届けたVaundy、ライフスタイル直系の散らかしまくりライブで魅せたENTH、野生のオオカミの野性でモリコロパークを高く飛ばせたMAN WITH A MISSION、ゲストにKEYTALK武正も交えポジティブなパンクロックを連打したTOTALFATと、計10バンドが繋いだバトンを受け取ったのはもちろん04 Limited Sazabysだ。
初日、04 Limited Sazabysが1曲目に選んだのは「Buster call」だった。この日までしばらく演奏されていなかったこの曲を久しぶりに披露したのが『YON FES』のステージだったこと。GENの歌い出しとともに歓喜の拳がモリコロパークに広がったあの光景を一生忘れることはないと思う。
扉を開ける音、高く飛ぶための音色が響き渡る「climb」、何気ない日常の中でフィクションを作り上げたいと宣言する「kitchen」、今のフォーリミを創造する過程にあった「Now here,No where」と続き、3年ぶりの『YON FES』を盛り上げる。
GENが「奇跡みたいな1日になった」と語っていたけど、奇跡を作り上げたのは紛れもなく04 Limited Sazabys自身で、そこに出演したバンドや集まった観客が両手を挙げてパワーを送ったことで大きなエネルギーがモリコロパークに充満していくことをビシビシ感じることが出来たんだと思う。そこに立っているだけでパワーを感じるんだから音楽と人の力は偉大だ。
もう何度もいろんなところで言っているが当たり前が当たり前じゃなくなった今、それでもなんとか前に進んでいくためにはトライ&エラーは付き物だ。何十回軌道修正したっていい。そうやって前に進めていく強いメッセージを込めた「Jumper」が『YON FES』で歌われることに強い意志を感じる。活動初期から歌ってきた「Grasshopper」も『YON FES』のステージで歌われることにうれしそうだし、「knife」「mahoroba」と続き「Just」では今この瞬間の気持ちを届ける。
そしてラストは「Feel」。まだ夢を続く。ただ先に進め。まるで今この瞬間に歌うために書かれたようなメッセージが突き刺さる。この2年間で夢が途絶えてしまった人はきっとたくさんいると思う。夢には現実がセットでついてきて、その現実に押し潰されそうになる。だけど諦めることなんてできなかった。自分にとって何が大切なのか、こんな時代だからこそ痛感した。
ポツポツ降り出した雨も味方につけてアンコールでは「Squall」を披露し、最後の最後で「俺たちが名古屋の04 Limited Sazabysだ。忘れるな!」とGENが声高々に叫び「Remember」でYON FES 2022初日を飾った。
■4月3日
2日目である4月3日はハルカミライ、四星球、Crossfaith、SPARK!!SOUND!!SHOW!!、東京スカパラダイスオーケストラ、Wienners、My Hair is Bad、ハンブレッダーズ、WANIMA、Saucy Dogが出演。
ステージぎりぎり最前まで躍り出て強烈なメッセージを放ちまくったハルカミライ、笑顔をクリエイトすることで涙腺を刺激する四星球、圧倒的世界観でモリコロパークをマッドマックス化させたCrossfaith、純度180パーセントの音楽火炎瓶を『YON FES』に投げ込んだSPARK!!SOUND!!SHOW!!、ハッピーでポジティブなヴァイブスを極上のスカサウンドで届けた東京スカパラダイスオーケストラ、こんな世界だからこそポップを連打する意味をまざまざと感じさせたWienners、『YON FES』皆勤賞であるが由縁を絆で感じさせたMy Hair is Bad、マイノリティであることに誇りを持てるような弱者の気持ちを代弁してひっくり返したハンブレッダーズ、5年ぶりに『YON FES』に帰還しモリコロパークに笑顔の花を咲かせたWANIMA、メロディとアンサンブルの美しさで初登場ながらLAND STAGEのトリを務めたSaucy Dogと熱演が続く。
そして、『YON FES 2022』すべての想いを受け取ってSKY STAGEに登場したのは我らが04 Limited Sazabysだ。モリコロパークにSEが響き渡るなか、たくさんの仲間に見送られステージに走っていく4人の姿は紛れもなくヒーローそのものだった。
「monolith」のイントロが鳴り響いた瞬間、何かが弾けて何かが大きく変わる感覚がした。その予感は本物で、このライブが終わった頃には04 Limited Sazabysが今年の『YON FES』をもって確実にシーンを前進させたことを参加した人は確信したことだろう。
「fiction」のリフの猛攻もライブハウスシーン、フェスシーンの再建を確信させたし、ささくれた気持ちとおさらばして本質を見極めることを歌った「fade」には気づかされることがたくさんあるし、そうなったらもう「Alien」でよーいドンだし、今のキーワードである先に進むことを全身で体現するかのライブに胸が熱くなる。
『YON FES』のステージで名古屋のライブハウスの名前が連呼される「758」を聴けたこともグッときた。「My HERO」じゃないけれど、04 Limited Sazabysは名古屋のライブハウスにとってヒーローであることは間違いないだろう。東京スカパラダイスオーケストラのホーン隊を迎えての「swim」の豪華さも彼らがヒーローである所以に拍車をかけていた。
そして「hello」だ。新型コロナウイルス以降、ライブハウスシーンやフェスシーンには厳しいルールが生まれた。それは安全安心のためには仕方ないことであるのは理解している。だけどルールがルールとしてあるなかでどう抗っていくか。この時期に何も考えていないアーティストはいないと思うけど、その一歩を踏み出すことって本当に勇気がいることだと思うし、何をするにも躊躇してしまうのも仕方ないと思っている。
そこで『YON FES』での「hello」だ。明言はしないが、この日の「hello」はライブハウスシーンにとって、フェスシーンにとって、大きな一歩を踏み込んだ瞬間だったと思う。新しい歩幅で進むこと。それを自ら体現したのが今年の『YON FES』だったと思う。
「新しいものを作り出すために一度壊してまた作り直す」と語り、「Buster call」を演奏した4人の姿はライブハウスを、フェスを、音楽ファンを先導する者として強烈に頭にこびり付いた。最低な世界のままで良いわけない。この世界をもう一度愛するために何ができるか。ラストナンバー「Terminal」を全身で浴びながらこの世界を取り戻して先に進めるために、アーティストが、僕らが、何をするべきか、何がでるか、ずっと考えていた。
アンコールでは「midnight cruising」「message」を披露して『YON FES 2022』 は幕を下ろした。3年ぶりの『YON FES』で04 Limited Sazabysが提示したもの、受け取った僕らが掴みかけたもの。それはひかり、それは希望、それは声。この先何が起きたって、04 Limited Sazabysがいるから大丈夫。そうはっきりと言い切れるほど、今年の『YON FES』で確信したのは、彼らの周りにはたくさんの仲間がいて、みんながみんなそれぞれのやり方で戦いながら、『YON FES』の名のもとに集結し大きなパワーを生むことを実感したから。
04 Limited Sazabysとみんなで作り上げた『YON FES 2022』 。まだここから何が起きるかわからないけれど、何が起きたって大丈夫。耐えて耐えて超えて来た景色をまたモリコロパークで4人は見せてくれるだろう。彼らは知っているから。立ち上がる以外方法はないことを。
TEXT BY 柴山順次(2YOU MAGAZINE)
PHOTO BY ヤオタケシ、藤川正典
『YON FES 2022』公式プレイリスト
https://lnk.to/yonfes2022
『YON FES 2022』OFFICIAL SITE
https://yonfes.nagoya/
04 Limited Sazabys OFFICIAL SITE
https://www.04limitedsazabys.com