■「最初はファンクラブの方のために100人くらいの規模で始めたんですが、こうやってツアーができるのは本当にうれしいです」(中島美嘉)
中島美嘉の全国アコーステックツアー『Mika Nakashima Premium Live Tour 2022』の最終公演が4月2日、大阪・あいおいニッセイ同和損保ザ・フェニックスホールで行われた。
“Premium Live”は、アコースティック楽器と歌のシンプルな編成によるライブ。深いメッセージ性を込めた楽曲を中心に、中島美嘉の豊かなボーカルを堪能できるこのライブは、ファンの間で強く支持されている。
いまや中島美嘉のライフワークになっているPremium Live。今回のツアーでも昨年12月にリリースされたアコースティックカバーアルバム『MESSAGE~Piano & Voice~』の収録曲を軸に、大きな感動を生み出した。
なお本稿では、3月26日にイイノホールで行われた東京公演の2ndセットをレポートする。
会場が暗転し、まずはピアノの河野伸、ウッドベースの海老沼崇史が登場。繊細なピアノのイントロとともに、シックな黒の衣装に身を包んだ中島美嘉がステージに現われる。手を胸に置き、片膝をついて挨拶。笑顔で客席を見回したあと、「僕が死のうと思ったのは」からライブをスタートさせた。
生きることを真摯に求める姿を綴った歌がゆっくりと広がり、すべての観客が強く惹きつけられていくのがわかる。続いては、アルバム『MESSAGE~Piano & Voice~』の1曲目に収められた「サンサーラ」(『ザ・ノンフィクション』テーマ曲)。
一つひとつの言葉を丁寧に手渡すようなボーカル、そして、彼女の歌を支え、奥深い音響を生み出す河野、海老名の演奏にも胸を打たれた。
シリアスな雰囲気から一転、「中島美嘉です!」と笑顔で挨拶した瞬間、朗らかな雰囲気が広がる。「皆さん、どこから来たの…? って、声出せないんだよね。ごめん」「初めてプレミアムライブに来てくださった方は?」と話しかけ、親密な空気が生まれる。
改めて「最初はファンクラブの方のために100人くらいの規模で始めたんですが、こうやってツアーができるのは本当にうれしいです」とコメント。さらに「今日はカバーが多めですが、全力で皆さんに言葉を届けていきます」という言葉に対し、大きな拍手が送られた。
ここからはアルバム『MESSAGE~Piano & Voice~』から3曲を披露。叙情的なメロディと切ない雪の情景が合わさる「粉雪」(レミオロメン)、“嘆く夜はoh Baby / この手にすがって 泣いて”とうフレーズを響かせた「Baby if, ~ 愛が降る」(Fayray)、今はいなくなってしまった“あなた”から注がれる愛について歌った「愛が降る」(加藤ミリヤ)。
言うまでもなく、選曲は彼女自身。共通しているのは、“リスナーの皆さんの悲しみや辛さを少しでも癒したい”という強い願いだ。
アルバム『ROOTS~Piano&Voice』でカバーした「命の別名」(中島みゆき)のあとは、「雪の華」へ。ピアノのイントロが響いた瞬間に拍手が起き、“のびたかげを舗道にならべ / 夕闇のなかを君と歩いてる”と歌い始めると同時に、奥深い感動が生まれた。
何度も聴いている楽曲だが、ライブで披露されるたびにあらたな息吹が吹き込まれ、新鮮なエモーションが立ち上がる。「雪の華」の普遍的な魅力を改めて実感できる、素晴らしいパフォーマンスだった。
失恋の切なさをどこか愛らしい表現で描いたオリジナル曲「MY GENTLEMAN」(アルバム『VOICE』収録)からライブは後半へ。「ちょっと意外な選曲かも」(中島)という「不協和音」(欅坂46)で“意思を貫け!”という強烈なメッセージを伝えたあとは、本編最後の「JUMP」(忌野清志郎)。
嘘と欺瞞に満ちた世界のなかで、“空が落ちてくるその前に”“もう一度高く JUMPするよ”と高らかに歌うこの曲は、現在の深刻な状況とも重なり、強く胸に響いた。それはまちがいなく、手拍子で盛り上がる観客の心にもしっかりと届いたはずだ。
アンコールを求める手拍子に導かれ、ステージに戻ってきた中島美嘉は、ニューアルバム『I』のリリース、全国ツアーが決定したことを告げたあと、「懐かしい曲、聴いてください」と女同士の絆をテーマにした「ベストフレンド」(アルバム『TOUGH』収録)を歌唱。
そして、「今日は集まってもらえて、歌う場所を作ってくださって。本当に感謝しています」という言葉とともに哀切なラブバラード「知りたいこと、知りたくないこと」を歌い上げて、ライブはエンディングを迎えた。
5月4日には初のセルフプロデュース、そして、全曲の作詞・作曲を彼女自身が手がけたアルバム『I』をリリース。さらに7月より全国ツアー『MIKA NAKASHIMA CONCERT TOUR 2022『I』』の開催も決定している中島美嘉。
シンガーとしてはもちろん、ソングライターとしても才能を発揮しつつある彼女はここから、あらたなフェーズに突入することになりそうだ。
TEXT BY 森朋之
PHOTO BY 鳥居洋介
■『Mika Nakashima Premium Live Tour 2022」東京追加公演
03/26(土) 東京・イイノホール
<セットリスト>
01. 僕が死のうと思ったのは
02. サンサーラ
03. 粉雪
04. Baby if, ~ 愛が降る
05. 命の別名(1ハーフ)
06. 雪の華
07. MY GENTLEMAN
08. 不協和音
09. JUMP
[ENCORE]
10. ベストフレンド
11.知りたいこと知りたくないこと
リリース情報
2022.04.06 ON SALE
DIGITAL SINGLE「HELLO」
2022.05.04 ON SALE
ALBUM『I』
中島美嘉 OFFICIAL SITE
http://www.mikanakashima.com/