■「国際フォーラムでやるのは毎回特別なので、こうやって集まっていただいた皆さんに感謝します」(川谷絵音)
12月3日、東京国際フォーラムホールAで2マンイベント『馳せ合い vol.2』が開催され、川谷絵音がフロントマンを務めるふたつのバンド、ゲスの極み乙女。とindigo la Endが共演を果たした。
この組み合わせでライブを行うのは2019年に新木場スタジオコーストで行われた「馳せ合い」以来、約2年ぶり。この日は川谷の33歳の誕生日で、それぞれのバンドが来年のスペシャルな告知を行うなど記念すべき一夜となった。
開演時刻を過ぎると、まずはメンバーのコメントをフィーチャーしたindigo la Endの紹介映像が流れ、これから始まるライブに向けての期待が高まる。そして、メンバーが登場し、一曲目に披露されたのは、メジャーデビューアルバムから「ワンダーテンダー」。後鳥亮介のベースがグルーヴを引っ張るアッパーな幕開けで、中盤のコーラスパートでは場内から一斉にクラップが起きる。続く「乾き」も長田カーティスのトリッキーなギターフレーズや、佐藤栄太郎による手数の多いプレイが際立つアグレッシブな曲で、こんなロックなモードで始まるindigo la Endのライブはひさしぶりかもしれない。
このあとも比較的バンド初期の楽曲が演奏され、構築的なアレンジの「忘れて花束」に続き、今の季節にピッタリの「冬夜のマジック」では、青と白のオーロラのような照明が楽曲の雰囲気を引き立てる。この日のライティングによる演出は実に効果的で、「チューリップ」では照明の色が赤から白へと変化することにより、歌詞の物語性に寄り添ってみせると、圧巻だったのがインディーズ時代の楽曲である「大停電の夜に」。川谷絵音のモノローグと変拍子を交えたプログレッシブなリズムが特徴の曲だが、そこにめまぐるしく変化する照明が加わることで、非常にスリリングなパフォーマンスとなった。
「『大停電の夜に』はindigo la Endに休日課長がいた頃に作った曲で、昔は変拍子がはみ出しちゃったりしたけど、きれいに終われるようになった」と笑って話し、両バンドの関係性が垣間見えると、続いて「夏夜のマジック」を披露。この曲もすっかりライブの定番曲となって、サビではフロアから一斉に手が上がり、アウトロで川谷が栄太郎を煽りまくるのも、お馴染みの光景となった。さらには、ライブ当日に配信がスタートした新曲「邦画」を初披露。“泣いたり笑ったり”というコーラスが耳に残るミディアムチューンで、思い思いに体を揺らすオーディエンスの姿が見て取れた。
ここで再び映像が流れて、来年11月にバンド初の日本武道館公演が開催されることが発表されると、場内からは盛大な拍手が贈られる。「気負わずに、いつもどおりのindigo la Endのライブになると思うんですけど、楽しみにしていただけたらと思います」と川谷が話し、最後にもう一度インディーズ時代の楽曲である「楽園」がひさびさに演奏され、この日ならではの貴重なセットリストのライブが締め括られた。
後攻のゲスの極み乙女。もドキュメンタリー風の紹介映像から始まり、メンバーが登場すると、アッパーな「crying march」からスタート。映像内でも語られていたように、今年の彼らは、ほな・いこかの女優業をはじめ、それぞれの活動が多くライブもひさしぶり。だからこそ、この4人で演奏することの喜びがありあまるほどに伝わってきて、メンバー全員のテンションが非常に高い。「はしゃぎすぎた街の中で僕は一人遠回りした」では、そんなステージ上の雰囲気がしっかりとフロアにも伝わって、サビではオーディエンスが一斉に手を振り、序盤からかなりの盛り上がりを見せる。
クールな印象のジャズファンク「マルカ」、トラップ風のビートに生ドラムを組み合わせた「ドグマン」といった曲では、バンドの進化を感じさせつつ、「ユレルカレル」では川谷がメランコリックなメロディーを歌い上げ、この「せつなさ」もゲスの極み乙女。の真骨頂。さらには「ひさびさに叫ぶ曲をやります」と言って始まった「某東京」では、えつことささみおのスキャットのようなコーラスとともに、川谷が思いっ切りシャウトをしたりと、この曲調の振り幅も彼らならではだ。
ライブ後半にかけては再びアッパーな曲を続け、休日課長、ちゃんMARI、ほな・いこかがそれぞれソロを披露し、「えのぴょん、誕生日おめでとう!」という掛け声を合図に始まった「パラレルスペック」では、川谷と休日課長が向き合ってジャンプをしながら演奏したりと、やはりこのメンバーで演奏する喜びが伝わってくる。続く「キラーボール」では、お馴染みとなっている間奏のピアノソロで、川谷からの「インディゴやゲスのメンバーをピアノで表現して」という無茶ぶりにちゃんMARIが見事に応えると、「ゲスの極み乙女。と一緒に遊びませんか?」という呼びかけから「アソビ」へと一気に駆け抜けた。
「国際フォーラムでやるのは毎回特別なので、こうやって集まっていただいた皆さんに感謝します」と挨拶をして、最後に演奏されたのは、美麗なストリングスが印象的な「アオミ」。せつなさと表裏一体の清々しさが何とも心地よく、最後はステージにひとり残ったちゃんMARIがメランコリックなピアノソロを聴かせ、厳かに本編が幕を閉じた。
アンコールでは打ち込みのトラックに乗せて、川谷とほな・いこかがデュエットを聴かせる新曲「ドーパミン」を初披露し、バンドのあらたな側面を届けると、さらには「ファンクラブの投票で1位になった曲」という「ルミリー」を演奏。このせつないメロディーの曲が一位になるというのが、やはりバンドの本質をよく表している。最後はindigo la Endのメンバー3人が全員ギタリストとして加わり、両バンドのメンバーにコーラスのふたりを加えた全9人による「song3」! indigo la Endの3人がソロを弾いたり、お祭り騒ぎで曲を終えると、ちゃんMARIのピアノと後鳥の歌で「ハッピーバースデー」が贈られ、ステージにはケーキが運び込まれる。川谷がロウソクを吹き消すと大きな拍手が起こり、場内は親密なムードに包まれた。
メンバーがステージをあとにすると、来年結成10周年を迎えるゲスの極み乙女。が、5月に初のベストアルバムを発表し、6月には10周年記念公演を初アリーナワンマンと同じ会場の幕張メッセで開催することを映像で発表。『解体』というライブのタイトルが告知されると、一瞬場内が静まったが、川谷が映像の中で「解散じゃないよ」と笑ってコメントをするひと幕も。特別な一夜は、来年へのさらなる期待を募らせる一夜にもなった。
TEXT BY 金子厚武
PHOTO BY 鳥居洋介
【ゲスの極み乙女。、indigo la End 「馳せ合いvol.2」】
■indigo la End
1ワンダーテンダー
2渇き
3忘れて花束
4冬夜のマジック
5チューリップ
6大停電の夜に
7夏夜のマジック
8邦画
9楽園
■ゲスの極み乙女。
1crying march
2はしゃぎすぎた街の中で僕は一人遠回りした
3マルカ
4ドグマン
5ユレルカレル
6某東京
7パラレルスペック
8キラーボール
9アソビ
10アオミ
En.ドーパミン(新曲)
En.ルミリー
En.song3(with indigo la Endメンバー)
リリース情報
2021.12.03 ON SALE
indigo la End
DIGITAL SINGLE「邦画」
2021.12.24 ON SALE
ゲスの極み乙女。
DIGITAL SINGLE「ドーパミン」
indigo la End OFFICIAL SITE
https://indigolaend.com/index2.php
ゲスの極み乙女。OFFICIAL SITE
https://gesuotome.com/