■「この作品は柄本佑さんが最期に見る走馬灯だと思う」(森山直太朗)「編集のときから言ってました」(柄本佑)
10月27日、「『カク云ウボクモ』配信リリース記念!MUSIC VIDEO先行上映会」と題したYouTubeでの生配信イベントが、東京・代官山にある映画館シアターギルドにて開催。森山直太朗、スペシャルゲストの柄本佑、司会のクリス智子が登壇した。
「カク云ウボクモ」は、柄本主演で、森山が兄弟役として出演した、阪神・淡路大震災時に被災者の“心のケア”のパイオニアとして奮闘した精神科医の姿を描くヒューマンドラマ『心の傷を癒(いや)すということ』(NHK総合 2020年放送)の映画化作品『心の傷を癒すということ <劇場版>』(2021年1月公開)の主題歌。10月27日に配信リリースされた。
自身の出演作に初めて書き下ろし楽曲を提供した森山が紡ぐ「カク云ウボクモ」は、ストーリーに寄り添う歌詞と美しいサウンド、心に染み入る優しい歌声に聴き入ってしまう楽曲となっている。
楽曲のリリースを記念した今回のイベントでも仲の良さを見せつけた、柄本と森山。ふたりは、柄本が出演していた青春ドラマ『若者たち』(フジテレビ系 2014年放送)の同名主題歌を森山が担当したことから続く縁だという。
以降も共演し、プライベートでも仲の良い柄本が、森山の依頼で「カク云ウボクモ」のMVを撮影。制作に半年をかけた「冬篇」と「春篇」の2バージョンのMVは、なんとスマートフォンでの撮影によるもので、晴れて本イベントにてこの2本を初公開することとなった。
柄本は、「カク云ウボクモ」の撮影をするにあたって、「この曲を聴くと、手の届く範囲の小さな幸せのことを思った。日常生きているなかで、僕が感じた光のきれいさ、花が咲いていることなどの一瞬のきらめきを、そのときにカメラでまわしたものを編集して、この歌にのせて、この曲を聴いた人たちも幸せになっていけば」という願いをMVに込めたと語った。
森山は「(柄本)佑くんの日常や息づかいが感じられる作品なので、初公開できるこの日をずっと楽しみにしていた」と語り、同作は森山から柄本に対する「恋文」なのだと明かした。
さらに「ファミリーの雰囲気も似ている」と柄本に親しみを感じる森山が、しかし「その環境を選んだ自覚はないし、根っこは知っているけれど、もっと奥の根っこは知らない」と自身が存在する意義、ルーツへの思いを吐露。そんな森山だけではなく、「みんなあまりルーツを追求しないから、無意識で感じることや輪廻の共有を音楽で表現できればという想いで作りました」と、楽曲の制作秘話を語った。
そしていよいよ、「カク云ウボクモ ~冬~」のMVが公開された。すっかりくつろいだ様子の森山、柄本、クリスの3人は、さっきまでいたソファからおりて地べたに座っている。
MVを観ていた森山は「通り過ぎてしまいそうな景色をあえてカメラに収めていて。感情は言葉にできないこと、でも、みんなが知っているシーンでもあり、なんでもない時間や他愛のないひとときの積み重ねが人生。その心理がそこにあるから、この作品は柄本佑さんが最期に見る走馬灯だと思う」と話し、会場の笑いを誘った。
それを聞いた柄本は、「編集のときから言ってましたよ」と、クリスへ訴える。また、「ねらって撮るのではなく、みんな普遍的に感じるけれど生活に追われて見逃しそうなことを撮る、自分が撮りたいものを撮ることが普遍性に繋がる」と、撮影時の意識を告白した。
やがて溢れ出す撮影秘話を語りだす柄本と森山は、冬篇のMVを再度流しながらのトークへ。YouTubeライブが初めてだという柄本も「副音声みたいだね」と、楽しげだ。お互いに好きなシーンや、印象的だったシーンを語り合い、あたたまっていく会場。
「僕らの武器は長い時間をかけられること」。MVの締め切りがなかったことで「季節感を感じられる作品になった」と語る柄本。
続いて、「カク云ウボクモ ~春~」の初公開。森山は「春篇と冬篇のどっちが好きかと聞かれたら、50.5対49.5ぐらいの僅差で春が好き」と話し、柄本は「上に向かって手を伸ばす最初のシーンが好きだ」とし、「春篇と冬篇と観てみると、観終わったあとの余韻がちょっとずつ違う」と感想をのべた。
MVの注目ポイントとして、森山は「最後に佑くんが車に乗って頭を触るところがすごい好き」と告白しつつも、そのシーンについて「あとから聞いたんだけど、『チュルル チュルル』と歌うところを佑くんもつぶやいてくれるかな」と思っていたと語り、でも一見それがわからないため、「よーくあのシーンを観るとかすかに『チュルル』みたいなことをやっている」と、見どころをアドバイス。
あまりにもさりげなく口ずさむシーンだけに、一度観ても気づかなかったり、そのシーンを探したりしたい人は、この注目ポイントをじっくり観察してみるのもいいかもしれない。
そして、柄本は歌手としても活動し、いきものがかりの水野良樹が主催する5人の作家、5人の歌い手、5人の音楽家がそれぞれ5つの歌と小説を生み出す『OTOGIBANASHI』という企画に参加したという話題へ。
水野が作曲、重松清が小説(『星野先生の宿題』)と作詞、トオミヨウがアレンジャーを担当した楽曲「ステラ2021」を柄本が歌唱。本日10月27日から配信、28日から小説と楽曲を楽しめるCD付属の書籍が発売される。
また、森山は「カク云ウボクモ」の他にも、現在放送中のドラマ24『スナック キズツキ』(テレビ東京系 毎週金曜24時12分)のエンディングテーマ「それは白くて柔らかい」を担当し、上白石萌音が歌う、12月28日開幕の『第100回全国高校サッカー選手権大会』の応援歌「懐かしい未来」の作詞作曲も務めている。
さらに、2020年より始動した公益社団法人 日本芸能実演家協議会による『JAPAN LIVE YELL project』において、リアレンジされた森山の楽曲「花」が起用され、自身も出演するWeb Movieが26日から公開中だ。リリースが続く森山は、「ぜひ情報をキャッチしてください。よろしくお願いします」とカメラ目線で伝言した。
最後にイベントを締めくくるのは、「カク云ウボクモ」の生歌唱だ。ここで森山のライブではお馴染みのギタリスト・西海孝が登場。そこで「クリスさんの家でパジャマパーティしているような気分」というぐらいリラックスした森山から、「せっかくなので」と、ラジオ番組での曲紹介のようにと、曲振りを頼まれてクリスが紹介する。
ソファに座りながらハンドマイクで歌う森山と、西海が奏でるアコースティックギターの音色が、会場を染め上げていく。
「人前でマイクで歌うのが久しぶりで。ちょっとマイクをまわしちゃった」とおどける森山。クリスからも「マイクさばきが素敵」と拍手が。続いて、「もう1曲どうですか?」と勧められ、「花」を歌唱。場内そしてYouTubeを通して、視聴するファン一人ひとりに、しっかりとその歌が届けられた。
そばで森山の歌を聴いていた柄本は、「贅沢なものを見せていただきました。幸せでした」と話し、クリスも「いい時間をありがとうございました」とコメント。それぞれが「名残惜しい」と口にするなか、配信終了の時間となり、後ろ髪を引かれながら「さよならー!」と手を振る3人だった。
2022年でデビュー20周年を迎える森山の、これからの幅広い活動がさらに楽しみになる、スペシャルな一夜だった。
TEXT BY かわむらあみり
リリース情報
2021.10.27 ON SALE
森山直太朗
DIGITAL SINGLE「カク云ウボクモ」
「カク云ウボクモ」配信リンク
https://naotaro.lnk.to/Kakuiubokumo
森山直太朗 OFFICIAL SITE
https://naotaro.com/