miletが3rdアルバム『5am』をリリースした。
新作は、ドラマ『転職の魔王様』主題歌「Living My Life」、『テレビアニメ「鬼滅の刃」刀鍛冶の里編』エンディング主題歌「コイコガレ」、ドラマ『やんごとなき一族』主題歌「Walkin’ In My Lane」など、数々のヒット曲を含む全15曲を収録した一枚。初の武道館公演や海外でのフェス出演など華々しい活躍を繰り広げてきたmiletだが、ニューアルバムは、自身のプライベートな側面がより前面に現れている一枚だという。
充実の新作についてじっくりと語ってもらった。
■このタイミングなら今までよりも自分の内側をさらけ出せそうだと思ったところがあった
──アルバムが出来上がっての最初の手応えはどんな感じでしたか。
今までよりいっそうプライベートに踏み入った曲たちが出来たと思いました。『5am』というタイトルからして、はっきりと私の意識する『5am』というものを提示できたなと思って。新録曲はほぼアルバムのために書き下ろしたものばっかりだったんで、テーマに沿ったものを書けたと思います。
──今おっしゃった、プライベートなものを作ろうと思ったというのは、どういうところがきっかけだったんでしょう?
プライベートなものを作ろうと思ったというよりは、このタイミングなら今までよりも自分の内側をさらけ出せそうだと思ったところがあって。というのも、ツアーを何度かしたり、武道館でライブをやったり、海外で歌うことができて、みんなの受け口の広さというものを感じることが多くて。私もそれにすごく自信を持てたんですよね。今まで出せなかった、自分の私生活が見えてしまうような部分とか、人に対する感情の抱き方みたいなものを、たとえ美しくなくても、もう少しさらけ出していいような気がした。出そうと思ったというより、自然と今なら出せるという心境で曲を書いていったので、今までとは少し捉え方が違う歌ができたのかなって思います。
──前のアルバムの『visions』のインタビューのときには、ポジティブな、前向きなアルバムを意識したとおっしゃっていましたよね。たぶん、そのときはより聴いてくれる人のため、他者のための曲が多かったと思うんです。それを形にしたことや、いろんな場所でライブをやったことの手応えがあったからこそ、プライベートなものを出してもいいと思える基盤になった、ということでしょうか。
まさにそうです。今までは人のために歌う曲も多くて、それこそ『visions』では支えてくれるみんなに感謝の気持ちと、みんなの未来がもうちょっと色とりどりになるようにという願いを込めて作ったアルバムだったんですけど。それでちょっと一段落したというか、ここからは私の内側を見せるべきかなと思って。これまでいろんな作品に携わる曲を書いてきて、いろんなベクトルの曲を歌う人だなっていうのはたぶん理解されていると思うんですけど、逆に、それによって、この人のベースはどこなんだろう?っていう混乱も与えてしまっているのかもしれないと思って。自分自身もそこに一度立ち返る機会が必要だなと思ったので。もちろん誰かのために歌う曲もありますけど、もう少し自分に向けて、自分と向き合う曲を作るべきときが来たと思った。そういう意味でも今までと音楽への向き合い方は違ったかなと思います。
■もともと大嫌いだったこの午前5時というものが好きになっていった
──今おっしゃったようなことを思うきっかけになった曲はありますか?
「Living My Life」という曲の歌詞に「5am」という言葉が入っているんですけれど、この曲ですね。午前5時という時間は私にとって特別な思い入れがあるもので。小さい頃からなかなか眠れなくて、不眠症だったときに、午前5時という時間がいちばん嫌いだったんです。いちばん暗かった時間から少しずつ日が出てきて、人々の一日が始まる時間で。自分が取り残されているのに周りだけ進んでいっているような疎外感と孤独感と置き去り感がすごく嫌いで。でも眠れなくて。動けない自分に嫌気がさす午前5時だったんです。でも、時間が経ってこの仕事をするようになって、歌と向き合って生きる喜びみたいなものを感じられるようになって、この時間がどんどん好きになっていったんですね。もともと大嫌いだったこの午前5時というものが好きになっていった。時間とともに対象のものを見る力っていうのが変わっていったり、それに対する思いが変わっていったりしたという、そう思わせてくれたきっかけが午前5時だったというのもあって、このアルバムのコンセプトも決まっていきました。
──「Living My Life」はドラマ『転職の魔王様』の主題歌として書かれた曲です。ドラマ自体も将来への不安や葛藤を抱えている人が登場するストーリーで、そういう意味でも、夜明け前の時間帯のイメージが重なり合うところもあったんじゃないでしょうか?
そうですね。午前5時は日の出前のいちばん暗い時間でもあって。そして光が見えてきて明るくなっていく時間でもあるし、グラデーションになっている時間だなと思うんです。その曖昧さが人々の心とちょっと似ていて。迷いがありながらも、ぶれない心があったり、決意しているんだけどそのすぐ裏に不安があったり、人の気持ちって一色には表現できなくて。そのグラデーションに敏感にありたいと思ったっていうのもあります。この原作も、迷っている人たち、不安な人たちと、その人たちに光を提示する人、だけど光を提示しながらも自分も実は迷っている途中でもある人がいて、そこにすごく共感できて。100%の自信って、ない気がするんですよね。喜びも悲しみも100%のものってなくて、絶対何かの感情と表裏一体である。喜びの裏には悲しみがあるし、悲しみがあるからこそうれしい気持ちも芽生える。光と影のようなものでもあると思います。そういったグラデーションが人の気持ちとこの時間とすごく合致するところがあるなって思いました。
──「Living My Life」の曲調やサウンドに関してはどんなイメージから作っていきましたか?
言葉を聴いてほしいという思いが特にあったので、サウンドは結構極限まで削ぎ落とした感じはありますね。朝の始まりという明るい印象と、ここからスタートしていくという思いを込めて鐘の音を散らしたりもしています。それでも、ただ明るい曲にはしたくなかったっていうのがあるので。喜びの中にも悩みを含んでいるような、そういったところも含めてこの曲に落とし込みたいなと思いました。けれどもやっぱり私は最後に光を見たいなと思っていたので。うっすらと小さな穴から光が射すような温かさは残したいなと思っての音作りでした。
──アルバムの1曲目は「Clan(5am mix)」です。既に出ているものとバージョンが違って、もともとアグレッシブな曲にさらに勢いが加わるような曲になっていますが、これを冒頭に持ってきたというのはどんな意図、どんなイメージからだったんですか?
もともとの「Clan」から大きく変わったのは特にイントロのギターソロなんですけれど、去年の『milet livehouse tour 2022 “UNZEPP”』というツアーの1曲目がこの「Clan」で、まさにイントロもこんな感じで始まっていて。1曲を違う聴き方ができるという意味でも私はこのイントロが好きだったんですね。あとはこの曲には切り込み隊長みたいな強さがあって、今からこのテンションでこのアルバムを始めますっていう宣戦布告のようなイメージもありました。「b r o k e n」とかギターサウンドが入っている曲もあるので。
──アルバム前半は「b r o k e n」などアグレッシブな曲が並んでいるイメージもあります。「b r o k e n」はどういうところから作っていた曲なんでしょう?
「b r o k e n」は「Final Call」でもアレンジで入っていただいたMEGさんという方と初めてふたりでやることになって。MEGさんも私もメタルが好きで、私もいつかゴリゴリの曲を作りたいと思っていたので、今回はMEGさんのサウンドを存分に広がりを持たせたいということで、いつもと違うテイストでやってみました。私的にはリファレンスはプリティー・レックレスですね。女の子が歌うちょっとヘヴィなロックを意識しつつ、新しいことに挑戦してみたいなと思っての「b r o k e n」でした。
──ちなみに、miletさんのルーツや影響を受けたメタルのアーティストには、どんな人がいらっしゃるんですか?
KORN、SLIPKNOT、あとはROB ZOMBIE、METALLICAも好きです。単なる激しさというよりも、激しさの奥に歌われている愛の深さ、愛ゆえの乱暴さみたいなものにドラマを感じて、メタルは大好きですね。
──なるほど。まだまだ「b r o k e n」の先にやれることはたくさんある。
そうですね。新しい扉を見せている段階です。
──アルバム収録の新曲で特にライブ映えしそうな曲が「Hey Song」でした。ハンドクラップやシンガロングで盛り上がっている絵が浮かぶタイプの曲ですが、これはどういうふうにして作っていったんですか?
この曲はその通りで、みんなと歌いたい曲を作りたいというのがまずあって。コロナ禍でずっとみんなの声を聴くことができないライブをしてきて、いつかコロナが明けてみんなと大合唱ができたら、そういうときに歌いたい歌を作りたいなと思って。この「Hey Song」では実際みんなの声をコーラスで収録したんです。
──そういう企画の場を設けたということでしょうか?
そうなんです。初めてファンクラブ限定ライブ(『milet×miles Room #301』)をすることができて。どうせだったら私のことが好きで、私も大好きな人たちの声を収録して思い出に真空パックしようって思って、そのライブでみんなの声を収録して、そのまますぐ曲に収録して完成させました。
■当時と今がコントラストみたいに浮かび上がってくる曲
──「b r o k e n」や「Hey Song」のようなアッパーな曲の一方で、例えば「You made it」や「December」とか、弾き語りに近い、じっくりと聴くようなタイプの曲もアルバムの大きなポイントになっているように思います。この2曲それぞれについても聞ければと思うんですけど、まず「You made it」はどういうところから作っていったんでしょうか?
この曲は今回のアルバムの中では唯一デビュー前に作っていた曲で、アルバムに収録するにあたって、主に日本語の歌詞を新たに書き換えたんです。1stEP(『inside you EP』)に収録されている「I Gotta Go」という曲と同時期に作っていて、冒頭の歌詞がおそろいでもあるんで、姉妹ソングのような感じですね。もともと全編英詞だったんですけど、英詞は基本的に当時のままで、好きな人に言いたかったけど言えなかったこととか、思っていたけど伝えられなかった思いみたいなものが書かれていて。久々にデモを聴き返したときに、なんだか取り繕ってるな、綺麗事を歌ってるなって思ったんです。でも今だったら歌えることもあるので。今思う、好きだった人への想いというのが、新たに日本語での歌詞のところに書き足されている。これを歌うと当時と今がコントラストみたいに浮かび上がってくる曲ですね。
──miletさんの作る曲の中でも、特にここ最近はやっぱり依頼されて何かのストーリーをもとに作る曲が増えているとは思うんですけど。自分自身の実体験を振り返って、そのときの思いを改めてもう一回書くみたいな、そういう体験ってちょっと珍しい感じですね。
そうですね。しかも「I Gotta Go」もラブソングだったんですけど、あれは自分のことに置き換えたくなくて。私、miletの恋愛っていう風に想像してもらいたくなくて、あえて主人公を別の人であるかのように描いた歌なんです。でも、この曲は私が思ったこと、私が考えたことを残したかったんですよね。今だったらみんなに生々しい部分を見せてもいいな、見せたいなっていう思いもあったので。
■誰か一人のために歌う歌は今までリリースしたことはなかったんですけど、今回はそれをしたいなって
──「December」に関してはどうでしょうか?
「December」も自分の中身を出した曲だなと思います。これは母を思って作った曲なんです。大人になって年を重ねると、母の感じ方っていうのがすごく変わってきて。今まですごく頼りがいがあって、ただただ愛してくれて、強くて美しいと思っていた母が、私が大人になって、母が少しずつ年をとっていくごとに、母の弱さと脆さと崩れてしまいそうな儚さと、だけど老いていく美しさと深まっていく愛の色が見えて、見え方がだいぶ変わってきたっていうのがあって。その母の姿を自分で認識したときに、今までの思い出を辿っていってようやくわかったことがいくつもあって。母が言ってくれた言葉の意味だったり、表面的にしか見えていなかった母の行動とか言葉だったりが、今になってすごく深いところで理解できるようになった。それを当時理解できなかった自分の幼さと弱さに後悔もして。「ありがとう」よりも先に「ごめんね」っていう気持ちの方が大きくなって。ちょっと前だったらありがとうって歌っていたかもしれないんですけど、今の私だったらこう歌うんだろうなって思って。その今の心境のまま残しておきたいという。誰か一人のために歌う歌は今までリリースしたことはなかったんですけど、今回はそれをしたいなって思いました。
──この曲を書いたことでmiletさんの中で、なにか変化は生まれましたか?
今まで曲を書いてすっきりするっていう感覚が結構あったんですけど、この曲の場合は、この曲への感情とか母への思いがどんどん濃くなっていってしまって。今までの制作とはまた違う後味みたいなのを味わっている感じがします。というのも、母という対象が生きていて、リアルタイムで私と共に時間を過ごしているっていうのもあると思うし。何だろう、不思議な、あまり言葉にしにくい感覚で今もこの曲がずっと生きていて。この曲の中でも感情がすごい動いている感じがするんですよね。嬉しいとか悲しいとかという一言で言い切れない感情が曲になっている。すごく曖昧な顔を持った曲だなと思うんですよね。でもその曖昧さがすごく心地よくもあり。ずっと抱きしめていたいものでもあって。この曲自体が母のようなものになっているのかな。すごく愛おしいものになっていますね。
──「Noël In July」に関してはどうでしょうか。夏に雪というモチーフって、miletさんが実際に思い浮かべたものが元になっている?
そうですね。私、クリスマスが大好きなんですけど、クリスマスが好きすぎて、夏からクリスマスソングを聴いてるんです。なのでクリスマスが近づくにつれて飽きて聴かなくなっていく。夏がいちばんクリスマスソングを聴いているので、脳内でも雪が降っているというときなんですけど。これって、私、あんまり共感されないことなんですけれど。だけど、だからこそ私の思い描く夏のクリスマスみたいなものを記録に残したいなと思っていて。これはすごく映像的な曲だと思うんです。絵を描くのが好きな女の子が出てくるストーリーで、この絵を描いている女の子と私とはすごく重なるところがあって。どんな絵にも雪を降らせてしまう女の子がいて、それは自分の大切な世界観だと思っていて、きっと誰にも理解されないと思いながら描いていたものが、いつしか人に好かれる、たくさんの人のもとに渡る絵になっていて。いろんな人と共有できて、シェアされて、うれしいはずなんだけど、私の本心なんてわからないくせに、この雪の意味がわかってたまるかって思ってしまうところがあったりする。それがすごく切なくて、またその子の描く絵にはどんどん雪が降り積もっていくっていうようなストーリーなんです。それがちょっと私の歌とも似てて。みんなに理解されたくて、わかってほしくて届ける歌なんですけど、ある意味、わかってほしくなくて作る曲みたいなものもある。私の世界で私のために歌う歌というのも少なからずあって。それが好きって言ってもらえたときに、うれしい気持ちと、どれくらいわかってるんだろう?って気になってしまう気持ちと、でもまあ、完全に理解されなくてもべつにいいやっていう気持ちもあったり、すごく複雑な気持ちがあって。それがこの子とすごく似ているところがある。そんな曲です。
── この曲はサウンド的にはキラキラしたシンセの音のイメージの強い曲ですが、サウンド、曲調のイメージはどうですか?
レイトな80’sか90年代の最初のほうのサウンドは意識しつつ、でもやっぱりクリスマスなので、しんしんと雪の降る世界観みたいなものは音でちゃんと表現したいなと思って、かなり深いリバーブをかけてます。コーラスも聴こえないぐらいかなり飛ばしているものもあったりして。みんなの耳に届くか届かないかっていうような瀬戸際を意識したコーラス作りみたいなのもしているので。実際にコーラスが入っているんだって気づかないところもあるかもしれないんですけど、でもそれも気づかれたくなくて入れたりしているものだったりもします。
──聴いている感触としては、まさにおっしゃる通り、ひんやりとした音の感触で、決して夏の感じがない曲なんですけど、言葉で「サマー」と耳に入ってくるんで、混乱するというか。夏の曲なんだけど夏の音じゃないみたいな、その不思議さがいい違和感になっているタイプの曲だなって思います。
それがまさに私の感じている、私の経験している夏のクリスマスなので。その違和感が好きなんですよね。
──「HELL CLUB」に関してはどうでしょうか? これはダークなエレクトロの曲ですが、どういうところから作っていたんでしょうか?
「HELL CLUB」は、今回初めてHiRAPARKくんという普段DJされたり、曲を作ったりしている方にお願いしました。彼がずっと私の曲を聴いてくれていて、私の曲をリミックスして送ってきてくれるんです。そのサウンドが好きだからいつか一緒にやりたいなって思っていたら、機会があって、お願いすることができて。お題は「HELL CLUB」ですって言ったら「いやあ、楽しみです」って言って 。毎回アルバムでは“沼曲”というか、ダークな曲っていうのは私の核の一つでもあると思うので入れてきたんですけれど、今回は「地獄のクラブソングを作りたい」って言って、そこから「HELL CLUB」に決定して。HiRAPARKくんの音感はすごく頼りになるだろうし、手加減なしでガンガンやっちゃってくださいというような音作りでお願いしました。
──曲のテーマに関してはどうでしょうか。
このときにギリシャ神話を読んでいて。読み進めていくうちに、古事記とリンクする場面があったんです。死後の世界の描き方みたいなところで、愛する人を死後の世界から生きている世界に引き戻そうとする場面があったりして。しかも死後の世界から帰っていくとき、取り戻すときに振り返っちゃいけないという、そういうところまで似ていて。そこから、私としてはギリシャ神話と日本の中間の、その令和版のクラブ解釈みたいな曲を作りたいなと思って。古事記では、死後の世界、黄泉国の食べ物を食べてしまうと元の世界に戻ることはできないんですね。それと同じように、クラブというのも、入った人が出られなくなる、また戻ってきてしまいたくなるような一種の中毒性があると思って。この楽しみを一度味わってしまったら、もう元の世界には戻れないというような。ある意味、黄泉国の食べ物のような役割を今のクラブが果たしているという、そういった世界観で作ってみました。
■自分の色というのが分かってきたというか、自分の出したい音が少しずつ明確になってきた
──アルバムにはこれまでシングルとしてリリースされた曲、いろんなドラマや映画やアニメの主題歌として歌った曲も収録されています。そういう曲と、今おっしゃったパーソナルな、プライベートなアルバムの新録曲が一つになったということで、一枚のバランスや統一感については、どんな風に感じていますか?
「コイコガレ」は梶浦由記さんに書いていただいた曲で、自分の今まで歌ってきたスタイルをある意味一新して、振り切って歌ったところもあって。いわゆるmilet節みたいなものをあえて抑えて歌ったり、でも尖らすところは尖らせたりっていうような挑戦もしたりしたんで、そこだけ少し違うところはあるんですけど、他の主題歌とか自分で作らせてもらえたものは、だいぶ自分の色というのが分かってきたというか、自分の出したい音が少しずつ明確になってきたというのもあって。統一感というか、筋みたいなものが一つ通っている気がするんですよね。お題のない新録曲のようなフリー演技の曲でもやっぱり自分の色っていうのがわかってきたので。そこと、アルバムで混ざったものになったときにすごく違和感がないというか。今まで以上に馴染みのあるものになってきたかなと思います。
──ライブについての話も聞かせてください。今年は海外でのフェス出演もありました。今までにない経験だったと思うんですが、やってみてどうでしたか?
衝撃的でしたね。今年は香港の『Clokenflap』というフェスから始まって、マカオ、上海でも歌うことができて。こんなに待ってくれている人がいたんだっていう喜びが大きかったです。ライブが始まる前からmiletコールが起こるというのも経験したことがなかったし。海外でライブをするって、私のことを知らない人の前で歌うものだというような認識でいたんです。前3列ぐらいしかお客さんがいなくても頑張って歌おうというチャレンジの気持ちで行ったら、たくさんの人が待っていてくれて、それはそれはうれしくて。日本語の曲も、日本語を母国語にしない人たちがこんなに完璧に一緒に大合唱してくれるんだっていう。不安な気持ちがすごく自信に変わって、それがこれからの希望にもつながって、もっと歌っていける気がするという確信に変わったので。すごく経験できて良かったなって思います。あとは、コロナが明けてきたという喜びもあって。みんなの声を聴けることがこんなにうれしいんだっていう。今まで聞こえなかった声たちが聞こえて。今までアーティストの人たちってこの声を聞いてライブしてたの?って。私はそういった方たちの倍、感動を味わって衝撃を受けています。
■新しい世界に足を踏み入れた感覚
──お客さんの声出しが復活したことも大きかった。
自分の感覚としてはコロナ禍でほぼライブが始まったっていうのがあって。私はお客さんとコミュニケーションをなるべくとりたいと思っているので、コロナ禍で声が出ないなりにコミュニケーションをとって、交わってきたつもりではいたんですけど、その何倍も上を行く熱い交錯があったというか。みんなの熱量が声に乗ってより顕著に出てきて、こんなに熱い人たちだったんだっていうのもわかったし、だったらもっといけるな、もっとこの人たちと歌いたいっていうことも思いました。新しい世界に足を踏み入れた感覚に近いです。
INTERVIEW & TEXT BY 柴那典
PHOTO BY 関信行
楽曲リンク
リリース情報
2023.8.30 ON SALE
ALBUM『5am』
特設サイト
https://www.milet.jp/5am/
ライブ情報
milet live tour “5AM” 2023
https://www.milet.jp/live/
プロフィール
milet
ミレイ/思春期をカナダで過ごし、グローバルな存在感を放つソングライティングとハスキーかつ重厚感のある独特の唄声を兼ね揃えた女性シンガーソングライター。2019年3月6日にメジャーデビュー。Toru(ONE OK ROCK)プロデュースによるデビュー曲「inside you」はiTunesなど人気音楽配信サイト11サイトで1位を記録。通算5枚のEPリリースを経て、2020年6月には1stフルアルバム『eyes』をリリースし、オリコン週間CDアルバムランキング及びオリコン週間デジタルアルバムランキングにて共に初登場1位を記録。さらにBillboard JAPAN “HOT ALBUMS”では2週連続で1位を獲得し、8週連続でTOP10入りも果たす。2021年8月東京2020オリンピック閉会式に歌唱出演。2022年2月にはNHKウィンタースポーツテーマソング「Fly High」など全15曲を収録した2ndフルアルバム『visions』をリリース。こちらも4週連続でオリコン週間デジタルアルバムランキングTOP10入りを果たす。2022年末3年連続となるNHK紅白歌合戦に出場。
milet OFFICIAL SITE
https://www.milet.jp/