6月6日にバンド結成23周年、7月6日にはデビュー18周年を迎えたUVERworld。
彼らから届いた12作目のニューアルバム『ENIGMASIS』を聴くにつけ、これだけのキャリアを持ったバンドが今なおこんなにも瑞々しい初期衝動を保ち続けていることに瞠目せずにはいられない。なにせ収録された12曲中、既発曲は「ピグマリオン」のみ、ライブですでに披露されている「THEORY」「ANOMALY 奏者」を除いても全体の4分の3にあたる楽曲が新曲なのだから、その新鮮さと言ったら1stアルバムのそれをも凌ぐ。
これまで彼らの楽曲において特徴的な位置を占めていたシーケンスなど打ち込みの要素は必要最小限にまで削ぎ落とし、よりシンプルかつストレートにバンドのアンサンブルを聴かせるアプローチも、自身の表現に対してより貪欲になったTAKUYA∞が紡ぐ鋭くも深い歌詞の筆致も、今のUVERworldそのものを体現して実に躍動的。
すでに大きな話題となっているBE:FIRSTのSHUNTO、ラッパーのANARCHYとコラボレーションした楽曲たちももちろん必聴だ。バンドとしての原点を感じさせつつ、圧倒的に新しい、UVERworldの現在地。7月29日、30日に開催される彼ら史上最大規模となる日産スタジアムでのワンマンライブ(しかも30日は“男祭り”と銘打った男性限定ライブとなる)を目前に控えたバンドを代表し、TAKUYA∞(Vo)と克哉(Gu)に今作にまつわるあれこれをたっぷりと聞いた。
■具体的に動き始めたのだって、去年の年末に日産スタジアムでのライブが決まってから
──前作『30』のインタビュー時に次は「1年半でアルバムを作っていきたい」とおっしゃっていましたが、見事に有言実行となりましたね。
TAKUYA∞:まさか本当に1年半で出せるとは(笑)。『30』の作業をやりながら、ぼんやりと次はこんな曲が欲しいかなって考えたりはしていたかもしれないんですけど、アルバム単位でのイメージとかまったくなかったですからね。具体的に動き始めたのだって、去年の年末に日産スタジアムでのライブが決まってからなので。
克哉:日産スタジアムが決まって「よっしゃ、絶対にアルバムを出そう」って空気になって。だから実質3ヵ月くらいで作ったようなものですね(笑)。もちろん曲作りから数えたらもっとかかってはいますけど、キュッと形にしたのは、最後の3ヵ月で。
──それでこれだけの濃い作品を作り上げてしまえるんだから、さすがとしか言いようがないです。
克哉:そろそろ夏休みの宿題は早めに終わらせられるようになりたいですけどね(笑)。ホント年末も年末だったので、内心、“うっそぉ…”ってちょっと思ってましたもん。もちろんアルバムはめちゃめちゃ出したいけど、マジでやれるの?みたいな。その時点で、まだなかった曲も結構あるし。
TAKUYA∞:3曲ぐらいしかなかったんちゃう?
克哉:ホンマにそう。だから行程表を作ったけど、最初の1ヵ月くらい、ずっと空白で。曲がないから作業内容を書き込めないんです。行程表じゃなくて、ただの白紙(笑)。
──毎回思いますけど、火事場の馬鹿力がハンパじゃないですよ、UVERworldは。
克哉:そう、やれちゃうんですよね。みんな、頑張りますから、体ボロッボロになりながら(笑)。ちゃんと形になってよかったです、本当に。
──アルバムを目指しての作業はどんなところからスタートしたんですか。
TAKUYA∞:いつもお世話になっている札幌のスタジオにこの制作のタームでも3回合宿しに行ってるんですけど、そのへんからですかね。
克哉:最初が3月かな、そこからほぼ立て続けで行っていたので。その前にTAKUYA∞がスウェーデンのストックホルムとか、アメリカのLAに曲作りで行ったりとかしていて、徐々に曲が集まってきてたんですよ。最終的に15曲ぐらい集まったものを、時間との闘いのなか、どの曲がいいかジャッジしながらこの選抜メンバーになったんですけど。
──ストックホルムとLAではどの曲を?
TAKUYA∞:このアルバムに入った曲で言うと、LAでは「ビタースウィート」と「Don’t Think.Sing」、ストックホルムでは「two Lies」ですね。
──以前からLAには行かれていますが、なぜ今回はストックホルムにも?
TAKUYA∞:スウェーデンって今、めちゃめちゃいいコンポーザーが集まっているんですよ。Spotifyの本社がストックホルムにあって、作った曲をみんなそこに売り込みに行くから、世界各国から集まってくるんです。だから僕も行ってみたいなと思って。
■曲を作るのにいちばん大事なのはマインドセット
──どうでしたか。
TAKUYA∞:LAとは全然違いましたね。LAのプロデューサーたちは一貫して適当なんですよ、いい意味で。すっごいセンスのいい適当具合というか…本来、適当っていう言葉はすごくいい意味で使われてたと思うんですけど、まさにそんな感じで。でもストックホルムはまた全然違って、面白い人が多かった。全然合わへん人もいれば、日本人でもこんなに真面目な人はいないんじゃないかってくらい真面目な人がいたりして。僕が思うに曲を作るのにいちばん大事なのはマインドセットなんですよ。例えば「PRAYING RUN」とか「ALL ALONE」、「CHANCE!」とかは全部1日、しかも4時間ぐらいで作った曲なんですけど、だからって「じゃあ4時間あげるから今、曲を作って」とか言われても、当然できるわけがなくて。
──わかります。
TAKUYA∞:でも海外に行くと、スッとマインドセットされるんですよ。「作るぞ」の極みにいけるというか、そこに自分をセッティングしてもらえるというか。10何時間かけて向こうに行って、その日しかできないコライトを、そこにいるプロデューサーと対面して作業していくっていうのがいいマインドセットになるんです。なんとかして今日中に形にしないといけないっていうモードにもなるし、なんだかできる気にもなるし。それで実際、できましたしね。ここには入ってない曲もあるんですけど。
──面白いですね。今回のアルバムを聴いて、まず感じたのは新鮮さだったんですよ。ほとんどの曲が新曲だというのも驚きですし、サウンドもすごくストレートというか、バンドサウンドの比重がとても高いじゃないですか。バンドらしい初期衝動感に溢れつつも1曲1曲の完成度はめちゃくちゃ高くで、しかも今までにも増してバラエティに富んでいる、聴けば聴くほどおそろしい作品だな、と。
克哉:ありがとうございます。
TAKUYA∞:べつに新曲だらけのアルバムにしたいとか、そういうことを意図していたわけではないんですけどね。結果として新曲がいっぱい入ったアルバムになってファンのみんなには喜こんでもらえるかなとは思いましたけど。
■「そろそろ原点に戻りたいな」みたいな話はちょこちょこしていたので、それが形になった
──アルバムを作るにあたってのテーマやコンセプトは特にないと毎回おっしゃっていますが、今回に関してはどうでしょう。
TAKUYA∞:ないです!(←キッパリ:笑)
克哉:純粋にいい曲を作っていこうっていうだけですね。作っていく過程で“こういうテイストの曲もあったほうがいいかな”とか、そういうのはありますけど、ホンマに1曲集中というか。ただ、『30』を作り終わったぐらいから「そろそろ原点に戻りたいな」みたいな話はちょこちょこしていたので、それが形になったかなとは思います。今言っていただいたような、ストレートなバンドサウンドとか。だからって単に原点に戻ったっていうだけではないんですけどね。
──結成23年でデビュー18年、いろいろ積み重ねてきた今だからこそ作れたものだと思います。
克哉:そうですね、そういう意味ではちゃんと狙ったところに辿り着けた気がします。
TAKUYA∞:でも、それもやっぱり結果的にではあるんですけどね。アルバムの全体像を見て作っていたわけではなく、ホントその曲を良くしていくことだけしか考えてなくて。僕、一つのジャンルだけっていうのがダメなんですよ。アコースティックも好きだし、EDMも好きだし、R&Bも好きだけど、じゃあEDMの曲だけを10曲作れとか苦しすぎるんですよね。EDMを1曲作ったら、次は違うものを作りたいんです。今までデビューしてからの18年間でいろいろ曲を作って出して自分たちの振り幅を広げてきたなかで、それでも「ここからここまでがUVERworld」っていうイメージがファンのみんなにはあるとするじゃないですか。EDMでもアコースティックでも“なんかUVERworldっぽい”みたいな。でも、そこからはみ出るような曲を作ったとしても、それは自分たちの振り幅をさらに広げてくれるだけやと思ってるから、全然いいっていうか。作り始めはこんな曲にしようと思っていたものが完成したらまったく違う曲になってたとかよくありますし、いい曲になったならそれで全然構わないので。
──つまりは1曲1曲、バンドが一丸となって形にしたものを集めたらこのアルバムができたということですよね。そうした制作のスタンスは一貫して変わらないのに、毎回、個性の確立されたアルバムを生み出し続けているのもUVERworldのすごさだと思うんですよ。先ほど新鮮と言いましたが、今回はラブソングが3曲も入っているのが新しいなと思って。あったかくてキュートな「ビタースウィート」にプロポーズソングとも取れそうな「echoOZ」、切ないバラード「two Lies」。何より「ビタースウィート」が1曲目じゃないですか。ラブソングから始まるアルバムっていうのもかなり珍しいですよね。
TAKUYA∞:でも「ビタースウィート」に関しては、実はラブソングだと思って作ってないんです、僕は。でも、きっとラブソングなんでしょうね。今回の取材で他の方からも「ラブソングが際立ってますね」とか言われたりするんですけど「え、ラブソング?」って思ってたんですよ(笑)。でも、たしかにそういうふうにも捉えられるなと思って。
──違うんですか? すぐ怒ったりするけど、そういうところもかわいいよ、全部受け止めるよっていう、すごく愛情に満ちた曲だと思ったのですが。
TAKUYA∞:最終的に着地させるためにそう書きましたけど、そもそもはそこから始まってないんですよね、僕の中では。ファンクラブの企画とかで配信したりするじゃないですか。ファンからのコメントもいっぱい寄せられるんですけど、僕はあれ全部が一人の人間やと捉えているんですね。誰か一人が「教えて」って言ってきて、それに答えると他の人が「なんでそれ言うの!?」って怒ってきたりするんですけど、僕からすれば教えてって言ったのに答えたらなんで怒られんねん、みたいな(笑)。で、それを友達に相談したら「でも、人間関係でもそうだけど、相手側が完璧になればなるほど“楽しいな”とか“かわいいな”っていうのは失われていくものだよ」って言われて、ハッとしたんですよ。たしかにコメントも全部が行儀が良すぎたりしたら面白くなくなっていくのかもしれないなって。そう思って、この歌詞の結末を作ったんです。
──2曲目の「VICTOSPIN」はドラマ『CODEー願いの代償ー』の主題歌にも決定しましたね。
TAKUYA∞:これはアルバムの中でもいちばん最後にできた曲です。
克哉:ドラマのお話をいただいて作った曲なので。
■「VICTOSPIN」の歌詞に書いたことが今回、僕の中のいちばんのテーマと言えばテーマでした、アルバムの
──作曲クレジットが“克哉 / TAKUYA∞”となっていますが、どういった流れで作られたんでしょう。
克哉:きっかけはTAKUYA∞がこういう女性のコーラスワークの曲を作ってみたいって言ったところからですね。そうか、じゃあそのイメージに肉付けしていこうって。プラス、UVERworldらしい曲を作ってくださいっていう先方からのオーダーもあったので、“UVERworldらしさ”ってなんやろ?とか考えながらアップテンポでノリのいい感じにしたいなとは思ってましたね。ちょっとイカつい感じで、そこにコーラスワークで広がりをつけられたらいいのかなってざっくりとイメージしてから制作に挑みました。
TAKUYA∞:アカペラとパーカッションから入る曲が欲しいって思ったんですよ。あの…今ちょっと思い出したんですけど、この曲の歌詞に書いたことが今回、僕の中のいちばんのテーマと言えばテーマでした、アルバムの。どんなに長い闇も明けるし、どんな長い雨も必ず止む、でも必ずまた夜は来るし、雨だっていつかは降る。そうなったときにどういう行動をするのか、それを知るための時間だったって思えるように生きていこうっていう。それこそ僕たち、全世界がそういう時間を生きたじゃないですか。必ずまたそういうときは来ると思うんですよね。そのときこそは守りきれなかった大切なものや大切な人をしっかり守れるように準備しておこうよって、それが僕の今回のテーマだったんです、そういえば。で、それを掲げた楽曲にしたいと思って書いたのがこの歌詞で。
──コロナ禍を経験したからこそ書けた歌詞でもある?
TAKUYA∞:でも、どの歌詞もそうなんじゃないかなって気もしてますね。「VICTOSPIN」にも書きましたけど、今まで普通に見えていた景色はもう同じようには見えないし、人と出会って話せるっていうことも全然違った見え方をしているはずだし、ライブにしたって今後、どんな盛り上がり方をしていくかわからないけど、それでさえも全部が今までと同じようには見えないと思っているので。
──ところで、歌詞では“Victory spiral”なのにタイトルが「VICTOSPIN」なのはなぜですか。
TAKUYA∞:“Victory spiral”をタイトルにしてもよかったんですけど、造語っていいじゃないですか。0を1にする瞬間っていちばんしんどいんですよ。でも、それがいちばん好きなんですよね、ないものを作るっていうことが。
──そもそもUVERworldも造語ですし、これまでにも造語をタイトルにした曲やアルバムもありますもんね。
TAKUYA∞:今回のアルバムタイトル『ENIGMASIS』も造語なんですけど、一応、タイトルを決めるときにメンバーに聞いたんですよ。「『ENIGMA』にする? 『ENIGMASIS』にする? 『ENIGMATIC』もあるけど」って。“ENIGMATIC”は言葉として存在するけど、“ENIGMASIS”は造語だってことも伝えて。そしたら、みんな『ENIGMASIS』を選んでくれたから、たぶん嗜好が一緒なんだと思います。この曲も最初「VICTOSPIN」と一緒に「Victry spiral」も候補として挙げてたと思うんですけど、みんな「VICTOSPIN」がいい」って言うから「やっぱ、そうやんな?」みたいな(笑)。ないものは別に作ったらいいよなって。僕一人ではときどき不安を覚えたりもするので、みんなが同じ感覚でよかったって思いますね。
──ちなみに『ENGMASIS』の“SIS”は“GENESIS”から取ってたりしますか。
TAKUYA∞:いや、単に接尾語としての“SIS”ですね。“ENIGMA”をより際立たせる意味合いで付けました。だから特に深い意味はないんです。さっきネットで“ENGMASIS”って検索してみたら、これしか出てこなかったんですけど、それもまたいいなと思って。
■いつもとは毛色の違う曲が生まれて、すごくいいコラボレーションでした。そういう化学変化が楽しいんですよね、コラボって
──すでに大きな話題となっていますが、前作の『30』に引き続き、今作でも2曲、コラボレーション曲が収録されますね。
TAKUYA∞:コラボはどんどんしていきたいなと思ってるんですよ。昔はあんまりやりたくないって言ってた時期もあったんですけど、今はいろんな人とやってみたいです。
──「ENCORE AGAIN (feat.SHUNTO from BE:FIRST)」はBE:FIRSTのSHUNTOさんとのコラボですが、どういったきっかけで?
TAKUYA∞:お互いのファンが僕に教えてくれたんですよ、オーディション番組で勝ち上がった男の子がUVERworldを好きって言ってるって。そうなんだって思ってたら、フェス(rockin’on presents ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2022)で一緒になったときにCDを持って挨拶しに来てくれたんですよ。それを聴いてライブに行ってみたくなって、観させてもらったら想像より遥かに歌もパフォーマンスも素晴らしいSHUNTOがいて。冷静に考えたら、何万人の中から勝ち上がってきてる子だから素晴らしいのは当たり前なんですけど、とにかく一緒に曲を作りたいなと思って、僕からオファーしました。
克哉:ちょっと19歳とは思えないくらい人生経験もしてるし、それこそオーディションで出てきた子だからホント強いんですよ。声にも独特のオシャレさがあるし、おかげでいつもとは毛色の違う曲が生まれて、すごくいいコラボレーションでした。そういう化学変化が楽しいんですよね、コラボって。
──この曲の作曲クレジットには克哉さん、TAKUYA∞さんのほか、辻村有記さん、伊藤賢さんのお名前もあります。
克哉:僕がまずオケを作ったんですよ。で、メロディを作るにあたって一緒に考えてもらえる人が欲しいなと思ってコライトさせてもらったんです。前にTAKUYA∞は同じ人とコライトしたことがあって、僕も一回、やってみたいと思ってたんですよね。そこである程度まで構築したものをTAKUYA∞に渡して、歌詞によってはメロディも変わるやろうし、その先をお願いしたという感じです。ちなみに仮タイトルは「good vibes」でした(笑)。僕の中ではハッピーな曲を作りたいなっていうイメージがざっくりとあって、そこから作り始めたので。
──素敵です(笑)。克哉さんから受け取った曲はいかがでした?
TAKUYA∞:ちょっと苦手なタイプの曲やなって思いましたね(笑)。もしかしたら完成しないかもって思ってしまったくらい。僕、ミドルテンポの曲が苦手なんですよ、実は。これも、どんなふうにしようかなと思いながらちょっと歌ってみたけどハマらず、さらに、もう一回頑張ったけどやっぱりハマらず。しょうがないから、ちょっとサウナでも入るかと思って、サウナの中でパッと思いついたアイデアを試してみるんですけど、それも合わなくて“もう無理無理!”て。で、飯を食いに行って、帰ってきてからもトライしたけどやっぱり無理で“これはもう完成せぇへん! お手上げ!”って諦めかけたときに“そういや、俺、いつもこれやな”って思ったんですよ。“だったら勝負はここからやな”って、そのままこのことを題材にしようと思い直したんです。そしたら、その瞬間から稲妻が落ちたようにドドーッと。
──作詞にはSHUNTOさんも参加されたんですよね。
TAKUYA∞:はい。SHUNTOが歌うところだけ空けた状態でまず僕が全部を書き切って、こういう歌詞の世界観でいこうと思ってるって伝えたら、SHUNTOはSHUNTOでこれを書いてきてくれました。
──そして「FINALIST (feat.ANARCHY)」はラッパーのANARCHYさんとのコラボです。こちらはどういった経緯で実現したものなんでしょうか。
TAKUYA∞:彼が京都で僕らが滋賀県の出身なんですけど、隣の県なのでインディーズ時代から存在は知っていて。ヒップホップっていうカルチャーも僕は好きなんですけど、その中でも彼のスタイルが好きなんですよね。ちょっと、とっぽい感じというか。でも知り合ったのは最近で、いちばん初めは僕からDMをして、そこから共通の友達に間を取り持ってもらって、2020年の横浜アリーナのライブに来てもらったんです。それをきっかけに仲良くなったので、一緒に曲を作ろうってこれも僕から誘いましたね。この曲は最初から彼とのコラボをイメージして作ったんですよ。自分たちが日産スタジアムでやると決まってから、日産スタジアムのライブはほとんど観に行っていて、ここでどんな音が出たらカッコいいかなって考えていて。乃木坂46みたいにポップな曲をあの人数でワーッとやるのもいいし、Mr.Childrenみたいなロックなサウンドもすごく合うんですけど、でも、ここでウーハーがバシッと効いたヒップホップが鳴ったらめっちゃ最高やん!って思ったんですよね。それをこのコラボで形にしたんです。
──想像しただけでワクワクしてきました。ところで「Don’t Think.Sing」は「Don’t Think.Feel」のセルフオマージュなんでしょうか。
TAKUYA∞:まったく関係ないです(笑)。歌詞を書いていたときに出てきたのが「考えるな、歌え!」で、いちばんハマるタイトルがこれやったというだけで。僕は今、とにかく歌詞の表現の幅を狭められるのがイヤなんですよ。例えばさっきラブソングの話が出ましたけど、今までって書きたいのに書かなかったんですよね。書いたものがそのまま俺の恋愛観だと思われるのもイヤだったし、フィクションなのに“この人ってこういう人なんや”とか誤解されるのもイヤで。でも、それって周りの人から表現の幅を狭められてるっていうことじゃないですか。この「Don’t Think.Sing」にも書いたことなんだけど、本当は俺は性別関係なく人を愛して付き合うことができるとか、今だから言えるけど、ちょっと前だったら周りからどういう見方をされるかなとか、いろいろ考えて言えなかったことだったんですよ。それもやっぱり自分の表現の幅を狭められていたってことだと思うし。そういうのはもうイヤだなと思って「考えるな、歌え!」って。
──ヘヴィでアグレッシブなサウンドにも吹っ切れた強さを感じます。
克哉:めちゃくちゃライブで盛り上がりそうですよね。できあがったのは結構、最後のほうなんですけど、こういう曲が欲しかったなと思ってて。実際、日産スタジアムのライブをイメージに直結させながら、単純に聴いて体が動くか動かないか、みたいなところのジャッジをしながら作っていったんですよ。我ながらいい曲ができたと思ってます。
──「α-Skill」は音楽へのラブソングというか、特に歌詞にはTAKUYA∞さんの核そのものが表れていますよね。
TAKUYA∞:これはもう自然に出てきただけです。これも1日でできた曲なんですよ。たしか札幌合宿の1日目にできたんじゃないかな。レコーディングでもいい曲やなぁと思いながら歌ってましたね。
──ライブでもすでに披露されている「THEORY」は「セオリーとの決別の研究+81」(2012年リリースのシングル「REVERSI」のc/w曲)の歌パートをフィーチャーして再構築した曲だそうですが、よくぞ、こんなにも素晴らしい楽曲に生まれ変わらせたなと驚きました。
克哉:ファンクラブラジオでTAKUYA∞が「セオリーとの決別の研究+81」を最近聴いたけど、やっぱりいいからサビだけ抜いて曲にしようやって言い出したところから始まったんですよ。ファンの前で言ったし、やりたいなという感じで(笑)。
──それにしても11年も前の曲ですよ?
克哉:でも、本当にいいものって何周もできるもんやなって思いましたね。サウンドには時代感とか出てしまうかもしれないですけど、メロディと歌詞についてはいいものはいつ聴いてもいいなって。自分たちのやってきたことは間違ってないなと改めて思いましたし。
TAKUYA∞:ずっといい曲だよなって思ってはいたんですよ。そしたら、あるときファンが「この曲はいい」って言っていて、それにメンションされたのかな。それで僕も聴き直してみたら「これ、天才やな!」って(笑)。よし、こいつでもう一回、何か曲を作ろうって思ったんですよね。
──いや、マジで天才だと思います。唯一の既発曲「ピグマリオン」もアルバムに入ったことで、いっそう曲としての存在感の大きさを感じさせますし、さらに、こちらもすでにライブで演奏されているインストゥルメンタル曲「ANOMALY 奏者」に、UVERworldのアルバムに欠かせないSE曲「ENIGMASIS」とラストに歌のない曲が2曲並ぶのも最高にクールだと思いました。
克哉:インストがアルバムに入るのも久しぶりですからね(4thアルバム『AwakEVE』収録の「和音」以来)。ライブでもやってるからファンの人もちゃんと聴きたいだろうし、ずっと出したかったんですよ。ただ、ここのところシングルのリリースもなかったので、だったらアルバムに入れちゃおうぜって。やっぱり音もメッセージとして聴いてほしいですから。
■みんな、「echoOZ」だけでそんな反応してて大丈夫か?って思うくらい(笑)
──さて完成した『ENIGMASIS』について、改めてどんなアルバムになったと思っていらっしゃいますか。
TAKUYA∞:今、「echoOZ」だけが解禁されているんですけど(※取材時6月28日現在)、大反響なんですよね。みんな、「echoOZ」だけでそんな反応してて大丈夫か?って思うくらい(笑)。
克哉:あはははは、マジでそれ!めっちゃうれしいですけどね。
TAKUYA∞:でも僕は正直まだ客観的に見れてないんですよ、アルバムとして。リリースしてから、やっとその曲がなんだったのかわかることが多いんですよね。それに、やっぱりまだ不安もありますし、自分たちの中では。「echoOZ」だって、本当だったら僕ら、もっとこねくり回して転調したり、シーケンスをバッキバキに入れたくなるところを今回は全部外してバンドサウンドにしてるんですよ。もちろんそれは僕らの意志で、2周も3周も回って今、ソリッドでネイキッドなバンドサウンドにしたいよなって思ったからそうしただけなんですけど、振り返ってみるとそれって1stアルバムでもやってなかったよなって。それぐらい僕らからしたら初めてのことで、でもどこかで“みんなもこれ、好きやろ?”って思ってるところもあったんですよね。だから「echoOZ」に反応をもらえたことはすごくうれしいし、一方で“やっぱりな”って思ってるところもあるんですけど(笑)。だから、自分たちがやりたかったことをやれた喜びと、きっとみんなも好きだろうなっていう確信に近い気持ちと、でも今までやったことがないっていう不安、まだそんな思考の狭間にいるんです。
──日産スタジアムでも今作の楽曲はもちろん披露されるんですよね。
TAKUYA∞:いやぁ、わからないですよ?(笑)今ここで答えたら「聞きたくなかった」って言われそう。
克哉:出た、「ビタースウィート」(笑)。やっぱりラブソングちゃうかも、これは(笑)。
──では最後に日産スタジアムに向けての意気込みをお願いします。
TAKUYA∞:もう準備万端、完璧です。もちろん想像してドキドキする瞬間もあるにはありますけど、でもすぐに“もう全部準備してきているし、今までも最高のライブは何回もしてきているし”って思えるので。勝ちの感覚も自分の中にしっかりありますしね。
克哉:僕も楽しみですね。やっぱり目標があると人生楽しいです。今まで自分たちがやってきたことの集大成でもありつつ、自分としては初めてのチャレンジであり、高いハードルでもあるので、あとはもうやり切るだけ。あれだけ大きな会場なので初めてUVERworldを観てくれる人もたくさんいると思うんですけど、これまで支えてくれて、いつも応援してくれている人たちはもちろん、初めての人たちにもしっかり感動してもらえるライブにしますので。
INTERVIEW & TEXT BY 本間夕子
PHOTO BY 大橋祐希
楽曲リンク
リリース情報
2023.7.9 ON SALE
ALBUM『ENIGMASIS』
ライブ情報
UVERworld premium THE LIVE at NISSAN STADIUM
7月29日(土)NISSAN STADIUM
UVERworld KING’S PARADE 男祭りREBORN at NISSAN STADIUM 6 VS 72000
7月30日(日)NISSAN STADIUM
プロフィール
UVERworld
ウーバーワールド/滋賀県出身6 人組バンド。2000年に結成し、2005年D-tecnoLifeでデビュー。2010 年には結成10周年、メジャーデビュー5周年を迎え東京ドームライブを敢行し42,000 人を集客し大成功を収めた。さらに、2014年には京セラドーム大阪でのワンマンライブを敢行、約40,000人を即日完売。2019年に発売した10枚目のアルバム『UNSER』はオリコンウィークリーランキング1位を獲得、同年12月には9年ぶりとなる東京ドームを開催、そのうちの1日、12月20日には東京ドームでの男祭り「6 VS 45000人」を完売させ日本記録を樹立。2020年には結成20周年、デビュー15周年を迎えた。
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