櫻坂46がニューシングル「Start over!」をリリースした。新キャプテンと新センターが誕生し、三期生が新たに加入した前作「桜月」から3度目となる全国ツアーを経て、約4ヵ月ぶり通算6枚目となるシングル。二期生の藤吉夏鈴がセンターを務め、“やり直そう”“やり直せるなら”と葛藤する表題曲に加えて、各期別曲も収録された新作について、二期生の井上梨名と大園玲のふたりに話を聞いた。
■メンバー自身がパフォーマンスで曲の世界観をより出せるようになってきた
──まず、全国ツアー『3rd TOUR 2023』を終えた感想から聞かせてください。
井上梨名(以下、井上):前回のツアーで櫻坂のライブはこういうものなんだよっていうのが示せたなっていう実感がありました。そこからどうレベルアップができるかを考えていたので、自分の感想よりは、皆さんの感想のほうが気になっていて。なんというか…自分ではわからないんですよね。「良かったよ」って言ってくださる方が多くて本当にうれしいんですけど、果たしてどう映っていたのかは、きっと永遠にわからないんだろうなって思ってます。
──自分で自分のライブを観ることはできないですからね。
井上:そうなんです。だから、どうだったのかな?っていうのは、何回ライブをやっても感じることだろうなとは思うんですけど、ただ、前回との違いということで言えば、今回は各会場でサプライズみたいなものを用意させていただき、チャレンジしました。どこの会場に行ってもまた新しい発見ができる、何度でも楽しんでいただけたと思うので、より櫻坂の強さっていうものを見せることができたんじゃないかなと思います。
大園玲(以下、大園):井上が言った通り、前回のツアーは、公演毎に質を上げていくみたいなツアーだったと思ってるんですが、今回は、同じことはやらない、みたいな。TAKAHIRO先生が、「ライブに行きたいって思ってもらうには、新しいことをやっていかないと、人は観たいと思わない」っていう話をしてくださって。私たちもすごく納得したので、今回は「BAN」を間奏長いバージョン、三期生バージョン、一期生二期生三期生が合体した全員でのパフォーマンスっていうふうに3段階で変化を起こさせたりして。新しいことに挑戦できたツアーになったかなって思います。
──声出しも解禁になってましたね。
大園:そうなんです。私たちが加入してから、この規模の声出しのライブをしっかり経験したのは初めてで。ファンの皆さんの声援を聞いて、振り絞れる力みたいものがあるなと感じて。今回、セットリスト的に後半きつい曲が続くところもあったんですけど、自分たちで“体力って永遠なんじゃないか?”って思えるぐらい力が湧いてきて。すごくありがたみを感じました。
──井上さんがおっしゃってた「櫻坂のライブとはこういうものだ」を言葉にすると?
井上:言葉にするのは難しいんですけど、演出面の部分で言うと、ファーストツアーに比べたら、カッコ良さという部分で固まってきたと思います。曲の繋ぎに関しても、暗転だけじゃなくて、照明・ダンス・演出で物語を作るようにライブの流れを大切にしています。休む間がないので、ほんとに難しいんですよ(笑)。でも、「櫻坂っぽいね」って言われることが増えたので、櫻坂が定まってきたというか、ツアーをやりながら、“あ、これなんだな”って感じるようになってきました。
大園:うんうん。前回はすごく凝った演出で、メンバーがセットの中にいるっていうイメージだったんですけど、今回はシンプルな囲いとLEDだけになってて。だから、今回はメンバーが演出の中にいるっていうわけではなく、メンバー自身がパフォーマンスで曲の世界観をより出せるようになってきて。TAKAHIRO先生も、それを「役者が揃った」っていうふうに表現してくださって。「誰がいつカメラに抜かれても、冷める瞬間がなくなってきてる」とも言ってくれたので、一人ひとりが世界観に入れるのは櫻坂らしさなのかなと思いました。
■今、持ってる自分たちの熱いものをこの曲に乗せて届けたいっていうポジティブな感情がすごい出てきた
──そして、6枚目のシングル「Start over!」がリリースされますが、最初に受け取ったときはどんな印象でしたか。
大園:タイトル聞いて、意味を調べて、“やり直す”っていう意味だって知って。私たちは実際に欅坂46から櫻坂46にやり直した身として、今、やり直して良かったなって思うことしかないんですね。だから、今から自分たちがやり直すとかではなくて、これからやり直そうとしてる人たちの先頭に立って引っ張れるような存在になれたらなって思っています。
井上:今までは現実と向き合うような歌詞って、歌ってて、ちょっと苦しくなったりしたんです。元気になれるっていうよりかは、どちらかと言ったら、この気持ちに寄り添うと苦しくなる、みたいなことのほうが多かったんですけど、この曲の場合は、苦しいとかはまったくなくて。今、持ってる自分たちの熱いものをこの曲に乗せて届けたいっていうポジティブな感情がすごい出てきて。なので、パフォーマンスしてるときも、すごい楽しいんです。現実的な歌詞があって、聴く人によっては“うっ…”となるようなものももしかしたらあるのかもしれないんですけど、歌っていて、全然そんなふうに思わなくて。今まで自分が思ってきたものとか、かける思いを解放しやすいなって思っています。
──それはこれまでの道のりに“やり直したい”と思うような後悔がないからですかね。
井上:いや、全然あります!
大園:にゃはははは。
井上:ははは。それこそ、いろんなお仕事をいただくなかで、どうやったらこのお仕事を通して、どうやったら櫻坂のことを知ってもらえるんだろうっていつも考えてて。でも、うまくいかないことのほうが多いんです。もっと知ってもらいたいのにっていう気持ちは、後悔ではないかもしれないですが、悔しいなっていう気持ちはいっぱいあります。
大園:私も後悔はありますけど、やり直したいとは思わないです。後悔って防げないのかなって思って。「後悔しないように」ってよく言うけど、そんなのは無理なんじゃないかって個人的には思います。後悔しないようにしたからといって、後悔しない結果になるわけではないから、後悔することがあってもいいのかなと思います。
──大園さんは、先ほど、やり直して「良かったことしかない」とおっしゃってましたね。
井上:欅坂のときは自分が参加した曲としてCDを発売することができなくて、ニ期生以降のメンバーはCDを出すことが当たり前じゃなくて。こうしてCDを出して、ファンの方と交流できる場があって、直接ファンの方の気持ちを聞く機会があるっていう。やっぱりファンの皆さんとの繋がりが櫻坂になって、本当により強くなったなって思うところが大きくて。再スタートって、なかなかうまくいくものでもないし、私たちも探り探りな部分があったので、一緒に頑張ってくれる人がいっぱい増えていくことが本当にうれしくて。そこは良かったなと思います。
大園:再スタートする前の欅坂のときだった自分はコンプレックスだらけだったんです。遅れて加入したというのもあって、今考えれば知らなすぎたと思います。グループについては知ってますけど、もっと奥深くまで自分たちが知ることはないんだろうなと思っていたし、知ろうとして知れることでもないと感じることが多くて。どこか欅坂のメンバーになりきれてない気持ちがあったんですけど、改名っていう再スタートのタイミングで、今まで積み上げてきたものがなくなるわけじゃないですけど、気持ちがリセットされて。みんなで1からまた作っていくぞっていう気持ちが生まれたので、再スタートしてから、ここにいてもいいんだなって思えるようになった感じはありました。
──「Start over!」は一期生と二期生の17人が参加する楽曲で、MV撮影はどうでしたか。
井上:今回は一人ひとりの設定があって。私は人見知りで誰ともしゃべらない人。ラストのサビだけはみんなハジけて踊ってるんですけど、そこの場面では、監督の加藤ヒデジンさんに初期の頃から言ってもらってる「なつっぽい笑顔」を出してもいいんじゃない?って言われて。
──人懐っこい笑顔ってことですかね?
井上:なんですかね(笑)。「なつっぽい笑顔」が何か自分ではわからないですが、人からはそう見えてるんだって思って。そういう設定がみんなしっかりしてて、演じながらやる、みたいなところがあって。自分の感情を出してパフォーマンスをしているんですけど、設定が軸にあったので、意外と私はそっちのほうがやりやすくて。楽しかったと思いますし、最後のサビは、それまでが無というか、表情もあんまり出ないし、本当に踊らされてるのかぐらいのレベルのダンスだったので、最後に爆発できてすっきりしました。
大園:私は前回の5thシングルのカップリング「Cool」のMVを褒めてくださって、あのときの「表情を出しすぎないけど、ちょっと出していくみたいな感じでやってみて」っていうふうに言っていただいて。(加藤)ヒデジン監督は一人ひとりを見てくださっていて。私は最後、「大園って、えへへって笑うよね」って言われて。お詳しい!と思って(笑)。「それもちょっと出してみてよ」って言ってくださって、最後は「えへへ」をやりました。
■最後のサビを見てて、“この子ってこんな笑顔するんだ”みたいな。新しい発見がいくつもあって
──(笑)最後だけ、みんな素を出してるんですね。ちょっとミュージカル感もありますよね。
大園:ストーリーがあるといえばあるけど、ないといえばないのかな。(藤吉)夏鈴ちゃんがみんなを巻き込んでいくんですけど、対立しているわけでもないし、何かを境にみんなが変わっていく。大きなきっかけがあるわけでもなくて、気づいたらみんなが円になって踊ってるっていう不思議な世界観で…なんていえばいいんだろう。メンバーはわりと笑顔が多かったのかなって思います。
井上:なんか難しいよね。自分が参加していないMVもあったので、そういうのを見ると、“うわ、これ、好きだな”とか、どんどん感想が溢れるんですけど、自分がちょっとでも携わってると、“これってどう見えてるんだろう、みんなは”って、そっちがもう気になりすぎて、自分ではよくわからなくなっちゃうんです。でも、最後のサビを見てて、“この子ってこんな笑顔するんだ”みたいな。ちょっと怖さも感じるような笑顔の子もいるし、この子ってこんな感じなの?みたいな部分を見えて。今までの櫻坂が進化したうえでできた作品だと思うんですけど、新しい発見がいくつもあって。ファンの方にも新しい発見をしてもらえたらうれしいですし、本当にそれぞれが思うようにこの曲を受け取って、力にしてくださったらそれで十分だなって思います。
──コメントを見ると「桜月」との幅の広さ、真逆の世界観に驚いてる人が多かったですね。そして、今作は初の二期生曲が入ってます。期別曲ができたことに関してはどんな思いですか。
大園:みんなで「いつか二期生でやりたい」みたいな話をしてたので、すごくうれしかったです。
井上:自分の中では、二期生で卒業しちゃった子もいたので。
大園:そうだね。タイミングがね。
井上:先にあった一期生さんの曲や三期生の曲を見てて思うのは、その期でしか出せない色とか、繋がりの強さはやっぱりあるなって思う。だから、この曲を通して、二期の強さや新しい二期の顔を見せたらいいのかなと思います。
──一期と三期はどんな色に見えてますか。
井上:一期生さんは、“さすがです!”って感じですね。
大園:あはははは。
井上:一期生さんは、私たちより長くずっといるし、グループを作ってきた人たちでもあるので、「タイムマシーンでYeah!」をライブでやってたとき、めっちゃ自由でめっちゃ楽しそうで。一期生さんたち、楽しそうやなって。見ていて、本当に笑顔になる感じだったので、すごいなって思いました。
大園:しかも、振り付けに、欅ポーズが入ってたりして。それを笑顔で踊ってる一期生さんたちを見て、それがうれしくて。やっぱり、そのときを乗り越えてきてくださって、一期生さんがいらっしゃるから、私たちはここにいれるので、感謝の気持ちが湧いてきますね。
井上:三期生は、本当にいろんな顔ができる子がいるんだなって。「夏の近道」もそうですし、今回の「静寂の暴力」もそうですけど、ここまで違う色、ここまで違う顔ができるんだ、この子たち、強いなって。“強っ”て思いました。
大園:「夏の近道」を踊ってる姿をツアーで見ていたんですけど、どんどんカメラとの関係も覚えてきたり、自分の見せ方みたいなのを研究して。すごいなと思っていたんですけど、最終公演のときに、三期生だけで集まって話してて。「今、パフォーマンスすることになれてき始めて、楽しむということができるようになってる。笑顔で踊れることはいいことだけど、MVの世界観を思い出してみないか」っていう話をしてたんですよ!すごくないですか?みんなでどう見せるかっていう話をもうできてるんだって思って。そこでびっくりしたんですけど、実際にパフォーマンスを見たら、笑顔がないわけじゃないんですけど、また笑顔の種類が違って、鳥肌がたちましたね。それを全員でやってて。“なんでできるのー!?”ってなりました(笑)。
──(笑)二期はどんな色で、同期はどんな存在ですか。
井上:難しいよね、二期って。すごいなと思う人がいっぱいいて、本当に尊敬できる部分がそれぞれにあって。みんないい方向で、いろんな人がいる感じなんです。例えば、学校だと、ちょっと苦手な感じだなとか、この人とは友達になれないな、とかがあると思うんです。でも、二期はどこにいても、“この人、いい人だな~”“しゃべってて面白いな~”“仲良くしたいな~”って思えるような人たち。
大園:わかる!
井上:本当にそういう人たちで良かったなって思います。
大園:全員、個性的だし、全員、自由ですね。えへへ。たぶんみんなあえてはしてはないと思うんですけど、自由だからこそ、距離感がすごく心地よくて。一緒に楽しむときは楽しんでくれるし、それぞれ全員、ひとりでいたいタイミングを見かけたことがあって。そういうときのみんなは、何も言わなくてもわかってる空気感があるので、本当に不思議ですね。仲良いときは本当に仲良いし、大人な目で見てくれるときは大人の目で見てくれるし。本当に一緒にいて居心地がいいです。
■子どもみたいだったあの子たちが、こんなに大人になっちゃったのかって、ちょっとハッとさせられるような表情ができたら
──二期生曲「コンビナート」はラブソングですよね。
大園:そうですね。大人の曲です。
井上:ちょっと子どもが背伸びした恋みたいな感じもするので、それこそ二期生は、一期生さんに比べるとまだまだ子どもの部分が多々あって。でも、天ちゃん以外は、みんな大人と言われるような年齢なので、「あれ、二期生って、こんな顔するんだっけ」みたいな(笑)。子どもみたいだったあの子たちが、こんなに大人になっちゃったのかって、ちょっとハッとさせられるような表情ができたらいいのかなと思います。
大園:最初に聴いたときは、こういう感じの恋愛曲なんだっていうのにびっくりしましたが、“コンビナート”って言いたくなりますよね。ファンの皆さんも一緒に「コンビナート!」って声を出していただけたらなって思います。
──6枚目のシングルはファンにはどう届いたらいいなと思いますか。
大園:遠藤光莉はお休みですけど、一期生・二期生での楽曲を待ってくださってた方も多いのかなと思うので、うれしい報告ができたのは、すごく良かったなと思います。でも、人数が増えたからこそ、「全員で良かったね」で終わるのではなくて、もっとレベルアップしたパフォーマンスをみんなでしないと、一期生・二期生全員で表現する意味ってないんじゃないのかなって感じてて。一期生・二期生全員だからこそできるパフォーマンスをしようという気持ちをみんなで持って、届けたいなと思います。
井上:MVの再生回数がいつもより伸びてるっていうのも聞くので、たくさんの人に届いていると感じています。その勢いをなくさないように、それこそ夏でいうと、いろんなフェスに出してもらったり、海外のフランス・パリでもパフォーマンスさせてもらうことが決まっているので、いろんな方々に見ていただきたいです。
──7月15日にパリ公演があるので、「オールナイトニッポンX(クロス)」で話していた田村保乃さんの妄想が叶っちゃいますね。
大園:あははは。「パリの私、私のパリ」をパリで言ってもらおうと思います。
井上:ね。海外でも日本でもこの夏は、私たちが櫻坂46です、ということを皆さんに示せればと思います!
■“なんだ!こいつらは!?”って思ってもらえるように衝撃的なパフォーマンスができたら
──全国区の知名度を獲得してるグループに見えてますけど。
井上:まだまだ前のグループの印象が強かったりするので、櫻坂としての印象を残せるような活動をして、好きになってもらいたいです。11月にはスタジアムでのライブもあるので、このシングルでたくさんの方を虜にできるぐらいの活動をして、櫻坂の輪が広って、満員のスタジアムの景色をみんなと共有したいですね。
大園:今、井上が言ったように、好きになっていただくのがいちばんいい結果だと思うんですけど、好きになるか嫌いになるなのかは、その人の自由だとして、まず知ってもらわないと始まらないと思うんです。いいって思ってもらってもいいし、悪いと思ってもらってもいいんですけど、“なんだ!こいつらは!?”って思ってもらえるように衝撃的なパフォーマンスができたらなって思います。
INTERVIEW & TEXT BY 永堀アツオ
PHOTO BY 関信行
楽曲リンク
リリース情報
2023.6.28 ON SALE
SINGLE「Start over!」
ライブ情報
櫻坂46「3rd YEAR ANNIVERSARY LIVE」
2023年11月25日(土) ZOZOマリンスタジアム
2023年11月26日(日) ZOZOマリンスタジアム
プロフィール
櫻坂46
サクラザカフォーティシックス/2020年10月14日より櫻坂46の活動がスタート。同年12月に1stシングル「Nobody’s fault」のリリースし、オリコンウィークリーランキング1位を獲得。2021年9月から10月にかけて初めての全国ツアー「1st TOUR 2021」を有観客で開催。10月に3rd Single「流れ弾」を発表, 12月には「1st YEAR ANNIVERSARY LIVE」を日本武道館で開催。そして実力・話題性共に評価を受けて2年連続となる第72回紅白歌合戦に出場した。2022年は4月6日に4thシングル「五月雨よ」を発売し、4作連続オリコンシングルランキング1位を獲得、各配信・ストリーミン グサービスの1位も席捲。8月に1stアルバム『As you know?』を発売。2023年1月、三期生メンバーオーディション合格者11名の加入を発表。
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