昨年12月に私立恵比寿中学を卒業し、ソロアーティストの道を進み始めた柏木ひなた。高く評価されるボーカル力を活かし、柏木は6月28日に配信シングル「From Bow To Toe」でソロデビューを飾る。彼女はゴージャスなショーの幕開けのようなサウンドで、ファンへの感謝とこれからの意気込みを歌で伝える。これまでにないソウルフルなボーカルは、かなり刺激的だ。では、デビュー曲のこだわりやソロアーティストとしての思いをたっぷり聞いていこう。
■エビ中に入って10周年だったときに、10年前に持ってた夢を改めて追いかけてみたいなと思って
──まずは12年在籍した私立恵比寿中学(以下、エビ中)から離れて、柏木さんがソロの道に進もうと思った経緯からお聞きしたいです。
もともと私が芸能の世界に入ったのは、ひとりで歌って踊れる人になりたいって夢がきっかけだったんです。そこから、2010年にエビ中(私立恵比寿中学)に入って、グループですごくいろいろなことを経験させてもらいました。私が初めてグループの卒業を相談したのは2020年の夏ぐらいで、ちょうど私がエビ中に入って10周年だったんです。そのときに、10年前に持っていた夢を改めて追いかけてみたいなと思って、そこで初めてソロでやってみたいという気持ちが芽生えました。ただ、心の隅でソロでやってみたいなって気持ちはあったけど、やっぱりグループでの活動をいちばん大事にしていたので、そのときはエビ中の活動を続けることにしたんです。そのあと、私はいつも3月に生誕ライブをやらせていただいてるんですけど、2021年と22年のときにソロでバンドで回らせていただいて、そのときに自分のやりたい音楽を追求したいなと思いました。ひとりで歌う機会が少ないなかで、生誕ライブでバンドでみんなと音楽を作る感覚がすごく楽しくて。それでひとりで挑戦してみたいって気持ちが高まって、昨年末にエビ中を卒業しました。
──もともと柏木さんは、安室奈美恵さんに憧れて歌を目指した人でした。キャリアを重ねたことで、自分のやりたかった原点を見つめ直したって感覚でしたか。
そうですね。グループでたくさんのことを学ばせてもらって大人になって、そういうところに戻って考えられるようになったのがいちばん大きかったと思います。
──昨年12月16日のエビ中の卒業ライブでは、どんな感想がありましたか。
ほんとに、その日まで全然実感がなかったんです。ライブの準備もありましたし周りのメンバーも実感がなくて、普通の楽しい大学芸会でちょっとひなたがフィーチャーされてるぐらいの気持ちだったんですよ。でも当日、どんどんライブをやるに連れて“ああ、私もう卒業なんだ”って感覚になっていきました。ペンライトもオレンジ(柏木のイメージカラー)が多くてうれしかったです。メンバーのみんなも翌日に新体制お披露目ライブがあって準備で大変だったのに、それでもちゃんと送り出してくれてありがたかったです。
──自分が育ったエビ中に対して、今はどんな思いがありますか。
私が12年も続けられたものってエビ中しかないんですよ。人って、どんなに好きなものでもなかなか長続きしないじゃないですか。だから、ほんとに続けられてよかったなって思いますし、卒業した今でもエビ中のことはすごく大切だし大好きですね。私が辞める前に、自分が体調とかで活動をお休みしてたときに、みんなが頼もしく思えたんですよ。私がいなくてもみんななら大丈夫だなって思えたことで、卒業の選択をできたっていうのもあります。今のエビ中、新しい10人体制でかわいいな〜って見てますね(笑)。
■やっぱり音楽は誰かと一緒じゃないと作れないというのはすごく思ってる
──なるほど。では、ソロとしての柏木さんは、現時点ではどんなアーティストになりたいと思ってますか。
昔は、奈美恵ちゃんみたいになりたい!って感じだったんですけど、エビ中でいろんなタイプの曲を歌わせてもらったことも大きな経験になりました。あとさっきも話しましたけど、生誕ライブや『ちゅうおん』(エビ中のバンド編成の野外ライブ)で経験した、バンドでみんなで音楽を作る楽しさというのも自分の中で大きくて。これからソロで活動していくんですけど、やっぱり音楽は誰かと一緒に作るのが楽しいというのはすごく思ってます。もちろん目標として奈美恵ちゃんは尊敬してますけど、真似をするんじゃなく、自分のやりたいと思ったことや好きなことを追求して、少しでも女性アーティストってところに近づけたらいいなと思ってます。まだ明確なアーティスト像は無いんですけど、無いからこそ自分で作っていきたいなと思ってます。自分らしさを出して、柏木ひなたってアーティストを確立させていけたらいちばんいいなと思いますね。
──ちなみに、バンドで作る音楽の楽しさというのは、どんな部分に惹かれたんですか。
やっぱり、間近で楽器を弾くのを見るのは刺激になるし勉強になるんですよ。曲をちょっとアレンジしたり、間奏を伸ばしたり、逆にカットしたり、自由が効くじゃないですか。リハでやってないことでも、本番で臨機応変に変えたりもできるし。私が勝手にボーカルフェイクしちゃってギターがアレンジ加えてくれたりとか、その場で音楽を作ってるなって感じがすごく楽しかったんですよね。お客さんから見ても、バンド編成だと同じセトリだけど毎回ライブが違うと思うんですよ。そういうワクワクもあると思います。もちろん、オケも素晴らしいんですよ。完成形の音源でライブをするわけですから。それとは別の部分で、生の音の迫力とかにすごく気持ちを動かされたところはありますね。
──では、ソロになることで歌唱面で変化をつけたいという思いはありましたか。
歌い方は、エビ中のときから、みんなで歌うときとソロコンサートで歌い方を変えてたんです。グループはみんなでやるものだから、自分らしさはもちろん必要だけど、ある程度みんなに合わせるというのは絶対大事なんです。前後の差がありすぎると、曲の全体の雰囲気やバランスが崩れちゃうので。でも、ソロになってひとりで歌うことになって、歌い方の制限がまったくなくなるんです。なので、自分が楽しくて、聴いてくれる皆さんも楽しくなるような感じで、自由に歌っていこうと思ってます。ただ、ソロになったとは言え、聴いてくださる方は、エビ中の曲で私の声を知ってくださった方がほとんどだと思うんです。実際、エビ中時代に私のソロ曲は1曲だけしか音源になってないので(ユニットアルバム『エビ中のユニットアルバム さいたまスーパーアリーナ2015盤』に収録の「Fantastic Baby Love」)。実質1曲通して、全部が私の声ですって曲を出すのは今回が初めてのことなんです。なので、今までと歌い方はちょっと違って聴こえると思います。
──かなり違うなと思いました。
ほんとですか?よかった〜。なので歌い方は、ちょっとひとりになったよ感?(笑)みたいなものを感じてもらえたらなって思います。
■華やかにかっこよく輝くようなショー、ミュージカルみたいな雰囲気がいい
──そしていよいよ6月28日にリリースされる配信シングル「From Bow To Toe」で、柏木さんはソロデビューとなります。曲調も歌もソウル感たっぷりで驚きました。かなり予想外な曲調でしたが、この曲をデビュー曲に選んだ理由を聞きたいです。
皆さん予想外って言ってくださるんですよ。きっとみなさんは、バラード系だったり、エビ中で言えば「I’ll be here」みたいなR&Bな感じで来るのかなと予想してたと思うんです。今回ソロになったこともあって、初めて楽曲を選ぶところから参加させてもらったんです。最初に楽曲を決めるときに私は、ファンの人をいい意味で裏切りたい、でも私らしさは残したものをやりたいって言ったんです。100曲近くデモを聴いていいなと思う曲を選んでいって、これを聴いたときに自分が歌ってる姿が想像できたんですよ。あとソロデビューの第一弾で、華やかにかっこよく輝くようなショー、ミュージカルみたいな雰囲気がいいなと思って「これにしたいです!」って言ったんです。そしたらスタッフさんたちも一緒の意見でこれに決まりました。
──『ムーラン・ルージュ』的な、ショーの始まりを感じますね。
そうなんです。今までのことも残しつつ、柏木ひなたの第2章が始まるってなったら、幕開け感もあってこれがいちばんいいなと思いました。私、こういう路線も大好きなんです。今までいろんなジャンルを歌ってきたけど、この手の楽曲は歌ってなかったというのも決め手としてはありましたね。
──歌詞は、ファンへの感謝の気持ちと、これからの思いが感じられますね。
ハイ。まさに、皆さんありがとうございますって歌詞ですね。ソロの最初の曲なので、今まで応援してくださってたみなさんや待ってくださってる皆さんに、一番に感謝の気持ちを伝えたかったんです。やっぱり、私がいちばん大事なのはファンの皆さんなんですよ。12年やってきて、ファンの方が少なかった時代も見てますし、だからこそ、今こんなにもたくさんの人に応援していただけてることがすごくありがたいなと思うんです。改めて曲を通して、応援してくださってるみなさんに恩返しをしたい、感謝の言葉を曲に込めたいなと思って歌詞にしていただいたんです。
──歌詞にも、柏木さんの意思が反映されているわけですね。
そうです。私はあまりMCとかが得意じゃないんですよ。言葉で直接言うのが恥ずかしいなってところもあるんですけどね。でも、歌だったら全然平気なんです。
──歌でなら感謝を伝えられると。それは音楽の素敵なところですね。
そうなんです。だから、自分の中で音楽がすごく大事になってるんですよ。なので、音楽の力を借りて、ファンのみなさんに感謝の気持ちや、これからの期待だったりとかを含めて歌詞を書いていただけたらって作家さんにお願いして書いてもらいました。最初の歌詞が、“これから 始まるゲーム あなたついてこれるのかな?”って言ってるんですけど、皆さんに期待してついてきてほしいなと思いますね。
──特に印象に残ったフレーズを挙げるとすると?
私、歌詞に自分の名前が入るってことがほぼなかったんですけど、“He-Nam-Nam-Nam-Nam”ってコーラスで、“あ、名前が歌詞に入った!”って思ったんです(笑)。今は、ようやくライブの声出しが解禁になったじゃないですか。だからライブで、そこをみんなに言ってもらえたらなって思いました。自分の名前を呼んでもらってるような感覚になれそうですし、そこ好きですね。私はコロナ禍で卒業しちゃったから、みんなの声を聴けずに終わっちゃったんです。だから、次にみんなの声が聴けるとなるとソロでのライブなんです。なので掛け声や、“大大だい好き”とかの追っかけとか、私ひとりじゃ歌えないところもあるので、みんなに言ってもらえたらなって思ってます。なので、この曲は意外とライブに向いてる曲だなって思いますね。
──あと柏木さんはダンスも得意ですが、この曲はどんな振り付けになってるんですか。
今まで12年アイドル的な振りを多くやってきたんですけど、今回はいわゆるバキバキのダンスに振り切って踊ったんです。先日この曲のMVを撮ったんですけど、久々に“踊ったな〜!”って感覚でした。ジャンル的に今までと全然違う振り付けで、バックダンサーさんと一緒に踊ったのがすごく楽しかったです。
──MVでは新鮮なダンスショットが見れると。MV撮影中のエピソードはありますか。
MVでは、マイクを持たずに久々に両手振りをやったんです。普段マイクって左手に持つんですけど、私、12年のクセがついてて指が勝手に曲がっちゃうんです。まっすぐにしてるつもりが、気がつくと指が丸まっちゃうんです(笑)。MVでも、絶対、指が伸びてないところがあると思います(笑)。でも、久々に両手振りでバキバキに踊って、曲にすごく合っだダンスだなと思いました。
──振り付けのアイディアも出したんですか。
ハイ。今まで振り付けは、基本的に振付師さんがつけてくださってたので、どうしようかな?ってすごく考えました。ショーみたいな華やかな感じで、強いけど女性らしさも残ってって意見を出させていただいたんです。そしたら素晴らしい振りが完成したので、ぜひMVをたくさん見ていただきたいなって思ってます。
──ダンスの面でも新しいものを見せられたと。
そうですね。ほんとにこの曲は、全部が新しい感じがします。
──ちなみに、エビ中のメンバーにこの曲を聴かせたりは?
まだ聴かせてないです。聴いてくれるかな?(笑)でもデビュー曲のタイトルを発表したときに、(星名)美怜ちゃんがインスタのストーリーに「楽しみだね」って返事くれたんですよ。なんか美怜ちゃんは、私が何か発表するごとに楽しみにしてくれてるんです。私がKANGOLさんとコラボしたお洋服も買ってくれてたんです(笑)。
──星名さん、柏木さん推しだったんですかね(笑)。
アハハハ。でも、何気に気にかけて見てくれて、自分と同じようにワクワクして楽しみにしてくれてるのはうれしかったです。だから、美怜ちゃんに限らずですけど、みんなが曲聴いてくれてどんな反応が返ってくるのかすごい楽しみです。
──では、デビュー曲が完成して、今の自分の手応えは?
もー、バッチリだと思います(笑)。今まで歌ったことがないジャンルですごく楽しかったし、それをファンの人に聴いてもらうのがとにかく楽しみです。この曲を聴いて、直感で“好きだ!”って思ってもらえたらうれしいです。
■ひとつのジャンルにとらわれちゃうと、それ以上できなくなっちゃうので、決め事はせずなんでも歌いたい
──ここから新たな一歩を踏み出す柏木さんですが、今後の予定を聞かせてください。
7月12日に「From Bow To Toe」も含めた5曲入りのEPが発売されるんです。EPの中の楽曲も、全てジャンルがバラバラなんです。「From Bow To Toe」以外にも今まで歌ってきたことのないタイプの楽曲もありますし、全部が新しいなって思えると思います。私は、あまり自分が歌う楽曲のジャンルをひとつに決めたくないんです。今までエビ中でいろんな曲を歌ってきて、そのすべてのジャンルの楽しさを知っちゃったんですよね。それに、ひとつのジャンルにとらわれちゃうと、それ以上できなくなっちゃうので、決め事はせずなんでも歌いたいなと思ってます。なので初EPは、いろんな味が楽しめるお菓子のバラエティーパックみたいな作品になってると思います。
──ちょっと気が早いかもしれないですが、ワンマンライブもいずれはやりたいですよね。
もちろんです。ライブをやりたいやりたいってひとりでやる気マンマンなんですけど、ライブは曲がないとできないんですよ(笑)。その前にイベントの予定(LINE MUSICの再生回数キャンペーン特典で、8月12日に東京、13日に大阪でミニライブとミート&グリートを開催)も決まってるし、いつかファンクラブイベントとかもやりたいですね。
──ライブもお楽しみにってことですね。
そうです。ライブがいちばん好きな私にとって、ライブができないことがいちばんつらいんです。このままだと一生カラオケ屋に行くことになるので、それは嫌なんです(笑)。やっと3年半振りにみんなの声が聞けるから、だから早くみんなと一緒に楽しめたらいいなって思ってます。
──ちなみに、これからのソロ活動でどんな曲を歌ってみたいですか。
やりたいのはいっぱいあるんです。いつかは全編英語の曲が歌ってみたいです。全然しゃべれないんですけど(笑)、洋楽を聴くのは好きなんです。「From Bow To Toe」も海外の作家さんの曲ですし、いろんな海外の音楽を歌ってみたいなって思ってます。
■理想像としては、人の記憶に残るアーティストになりたいっていうのはすごくある
──では、この先のソロとしての目標を聞かせてください。
今までは“エビ中の柏木ひなた”ってところからたくさんの方が知ってくださっていたけど、これからはひとりなので、より自分が頑張らなきゃいけないんですよ。これからもっとたくさんの方に知っていただけるように音楽活動を頑張りたいし、ゆくゆくはライブが活動のメインになればと思っているので、ツアーを回ったり、大きい会場でやりたいって目標はありますね。とにかくがむしゃらに頑張るしかないなって思ってます。あと理想像としては、人の記憶に残るアーティストになりたいっていうのはすごくあります。昔聴いてた曲って、パッと聴いたときに誰かもわかるし歌もずっと覚えてるじゃないですか。みなさんが何年何十年って歳を重ねたときに、ふと“柏木ひなたのあの曲よかったな”って思い出してもらえたら素敵だなと思いますね。
──人の記憶に残るアーティストっていうのはいいですね。
やっぱり、声を使ったものってすごく人の耳に残るじゃないですか。だから音楽っていいなって思ったりもするんです。
──声はどの楽器よりもいちばん強いですからね。それこそ、柏木さんの歌声が好きって人はかなり多いですよね。
ありがたいことに、声を褒めてもらえることがすごく多くて。そんなに人の心に残ってるんだなって思うと、“ありがとう、両親”って思います(笑)。なので、自分の歌声を通して人の記憶に残るアーティストになれたら幸せですね。そうやって、私はずっと歌っていきたいなと思います。
INTERVIEW & TEXT BY 土屋恵介
PHOTO BY 関信行
楽曲リンク
リリース情報
2023.6.28 ON SALE
DIGITAL SINGLE「From Bow To Toe」
2023.7.12 ON SALE
DIGITAL EP『ここから。』
プロフィール
柏木ひなた
カシワギヒナタ/千葉県出身・24歳。私立恵比寿中学のメンバーとして、2010年~2022年まで活動。2020年にはテレビ朝日系「関ジャム 完全燃SHOW」で「令和アイドル界スゴいボーカリスト10人」に選出されるなど歌唱力やダンスの評価は非常に高い。ソロとしてはエビ中時代に全国主要都市ワンマンツアーを2回成功させた。24歳となる2023年3月末よりソロシンガーとして本格的に始動。同年6月28日(水)にSMEレコーズよりソロデビュー曲となる「From Bow To Toe」をリリース。
柏木ひなた OFFICIAL SITE
https://hinatakashiwagi.com